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そばにいられるだけで

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でも、もしかして…


これは龍聖君なりの優しさなのかも。


美人な女性を前にして、自信をなくしてしまった私に気がついてくれたのかな?


ああ、どうしよう、だんだん鼓動が激しくなっていく。


今からせっかく2人で食事なのに、何だかもう胸がいっぱいだよ。


「琴音。何が好き?」


「えっ!? す、す、好き?」


「俺はカルビ」


「カ、カルビ? あ、ああ。うん、そうだよね。龍聖君、前もカルビいっぱい食べてたもんね」


な、何だ…


お肉の種類のことだったんだ。


『好き』っていうワードだけが耳に入ってきて、思わず1人で焦ってしまった。


「覚えててくれてたんだな。琴音はロースが好きなんだろ?」


「う、うん。ロースが…好き。龍聖君も覚えててくれたんだ」


「俺も…好きだ」


ダメだ『好き』に敏感になり過ぎてる。


一旦、頭の中にいっぱいになった『好き』の嵐から抜け出さなきゃ。


「琴音もあの時ロースを美味しそうに食べてた」


ニヤリと笑う龍聖君。


「恥ずかしいよ。何だか食いしん坊みたいじゃない」


「琴音は食いしん坊じゃないのか?」


「そ、そんなに大食いみたいに言わないで」


「何怒ってるんだ?」


「怒ってません!」


「琴音のそういう顔、いいな」


「えっ」


ただすねてるだけの顔、何がいいのか全くわからないけど、微笑みながら甘い声でそんなことを言うのは反則だよ。


「昔から色んな表情の琴音を見てきた。でも、どんな顔も琴音らしくて…すごくいい」


こ、これは褒められてるの?


龍聖君のこと真っ直ぐ見れなくて、思わず下を向いてしまった。


そしたら、その時、私のお腹が『ぐぅ~』と情けない音を立てて空腹を知らせてきた。


「うわ、うわっ」


「やっぱりお腹空いてるじゃないか」


龍聖君がまたクスッと笑った。


もう、すごく恥ずかしいけど、笑ってくれたおかげで何だか少し緊張がほぐれてきた。
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