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after story ~誠side~

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『パパ、ママ!』


僕が呼ぶとパパとママが手を振ってくれた。


『誠、頑張れ!』


パパの声で元気が出る。


小学校の運動会。


次は、2年生の徒競走。


『よーいドン!』


その掛け声で一斉に走り出す。


僕の番まであと少し。


ドキドキする。


だって…僕は足が遅いから。


「大丈夫。足が遅くたって気にするな。一生懸命頑張れば、ビリだって全然いいんだから」


パパがそう言ってくれたから、僕は頑張る。


順番が来て、スタートに立った。


心臓がいっぱい鳴ってる。


だけど、僕は合図と共に手足をめいっぱい動かして、ゴール目指して走り抜けた。


白いテープは切れなかったけど…


ビリじゃなかった。


みんなをチラッと見たら、パパもママも、祐じいじ、雫ばあばも…みんな笑顔で手を叩いて拍手してくれてた。


なんだかホッとして、思わず僕も笑顔になった。


パパと祐じいじは、小学校の人気者。


みゆちゃんや、さくらちゃん、あやちゃん…


僕の周りの女の子達は、みんな2人のファンなんだ。


パパと祐じいじが走る時、ママさん達や女の子達はキャーキャー叫ぶ。


勝手にビデオを撮ってる人もいる。


2人とも僕とは違って、走るのがすごく早いんだ。


他のパパさん達をどんどん追い抜いて…


とってもカッコいい。


特に祐じいじは、パパよりずっと年上なのに、どうしてあんなに早く走れるんだろ?


ずっと前から不思議だったから、雫ばあばに聞いたことがあるんだ。


そしたら「昔からジムやお家でトレーニングしたり、いっぱい走ったりして鍛えてたんだよ」って教えてくれた。


雫ばあばは「誠も努力すれば、きっと早くなれるから頑張れ」って、いっぱいの笑顔で元気づけてくれたんだ。


だから僕は、運動会で少しでも早く走れるように、毎日練習した。

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