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これは現実なのだろうか?
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「突然ではありますが、『久我屋』さんで、働かせていただけないでしょうか?」
「えええっ!!」
またもや親子で同じリアクション。
もう、何が何だかわけがわからない。
「驚かれても仕方ないと思います。でも、私は本気です」
「……あ、あの、今、うちは求人は出してないんだよ。申し訳ないね」
父さんが頭を下げながら言った。
「わかっています。ですが、どうしてもここで勉強させていただきたいのです」
「……何か事情があるんですね。聞かせてもらえますか?」
うちの父さんはとても優しい人だ。
穏やかな性格で、町の人からも好かれている。
「はい。自己紹介が遅れました。私は『天ヶ瀬 凪』と申します」
差し出された横型の真っ白な名刺には、天ヶ瀬 凪(あまがせ なぎ)とだけ書かれている。
名前まで綺麗な響きだ。
「天ヶ瀬君……」
「はい。私の両親は祖父の代から続くホテルを経営していまして、私もいろいろ勉強中で。今はその祖父が作った東京のホテルでコンシェルジュとして、お客様のために最善を尽くせるよう努力しています。ですが、まだまだ私は未熟で……どうすれば成長できるのか、日々悩んでおりました」
「ほお、コンシェルジュを? それは素晴らしいお仕事ですね」
「お客様からのご要望は多種多様で、時々どう対応していいのかわからなくなることがあります」
「なるほど。都会のホテルではきっといろんな無理難題を投げかけられることもあるんでしょうね」
「おっしゃる通りです。なるべくお客様のご要望にお応えできるように頑張ってはいますが……。同じ場所に留まっているよりは、もっと外に出て、様々な経験を積む方が良いのではないかと思うようになりました」
「……も、もしかして、それでうちの旅館に?」
母さんが訊ねた。
「はい。先日、息子さんが当ホテルに来られた際、名刺を落とされ、そこに……」
「もしかして、あの時に?」
「一瞬、こちらの『久我屋』という文字と、ある程度の住所が見えたので。調べさせていただいたら、とても素晴らしい旅館でしたので、ぜひともこちらでと思いました」
「……あの、まさかとは思いますが、あなたのご両親が営まれているホテルとは……『AMAGASE HOTELS 東京 』ではないですか?」
「えええっ!!」
またもや親子で同じリアクション。
もう、何が何だかわけがわからない。
「驚かれても仕方ないと思います。でも、私は本気です」
「……あ、あの、今、うちは求人は出してないんだよ。申し訳ないね」
父さんが頭を下げながら言った。
「わかっています。ですが、どうしてもここで勉強させていただきたいのです」
「……何か事情があるんですね。聞かせてもらえますか?」
うちの父さんはとても優しい人だ。
穏やかな性格で、町の人からも好かれている。
「はい。自己紹介が遅れました。私は『天ヶ瀬 凪』と申します」
差し出された横型の真っ白な名刺には、天ヶ瀬 凪(あまがせ なぎ)とだけ書かれている。
名前まで綺麗な響きだ。
「天ヶ瀬君……」
「はい。私の両親は祖父の代から続くホテルを経営していまして、私もいろいろ勉強中で。今はその祖父が作った東京のホテルでコンシェルジュとして、お客様のために最善を尽くせるよう努力しています。ですが、まだまだ私は未熟で……どうすれば成長できるのか、日々悩んでおりました」
「ほお、コンシェルジュを? それは素晴らしいお仕事ですね」
「お客様からのご要望は多種多様で、時々どう対応していいのかわからなくなることがあります」
「なるほど。都会のホテルではきっといろんな無理難題を投げかけられることもあるんでしょうね」
「おっしゃる通りです。なるべくお客様のご要望にお応えできるように頑張ってはいますが……。同じ場所に留まっているよりは、もっと外に出て、様々な経験を積む方が良いのではないかと思うようになりました」
「……も、もしかして、それでうちの旅館に?」
母さんが訊ねた。
「はい。先日、息子さんが当ホテルに来られた際、名刺を落とされ、そこに……」
「もしかして、あの時に?」
「一瞬、こちらの『久我屋』という文字と、ある程度の住所が見えたので。調べさせていただいたら、とても素晴らしい旅館でしたので、ぜひともこちらでと思いました」
「……あの、まさかとは思いますが、あなたのご両親が営まれているホテルとは……『AMAGASE HOTELS 東京 』ではないですか?」
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