あなたと恋に落ちるまで～御曹司は、一途に私に恋をする～

あなたの本当の名前

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ある日の午後。


桜もちらほら咲き出して、ますます春を感じられるようになって来た。


桜の木は、ただそこに静かに佇み、枝にたくさんの花をつけて…


その優雅で気品溢れる姿に誰もが惹き付けられる。


ある人は、心が晴れやかになり…


またある人は、感傷に浸り…


行き交う人の、いろいろな思いを引き出してくれてる気がした。


私は今日も、そんな桜の花達に元気をもらって「杏」に向った。


昼から仕事に入る時は、少し気持ちに余裕がある。


店の自動ドアを入り、さらに奥に入るとあんこさんがいた。


休憩しているところだった。


『お疲れ様です。あんこさん、よろしくお願いします』


『雫ちゃん、お疲れ様。今日もよろしくね。ねえ、今、あの人来てるわよ』


『あの人？』


『そう、あの人。たまに来てくれる超イケメンの彼よ』


あんこさん、嬉しそう。


『スーツの…』


『そうそう。長身でイケメン、あんなにスーツが良く似合う人って…なかなかいないよね』


少し前からかな？


たまに「杏」に通うようになったイケメンさん…


その人は、あっという間にうちのお店の女子達のハートを掴んでしまった。


名前も素性も知らないけど…


この近くの会社に勤めてるらしいことだけはわかってる。


みんなが彼にいろいろ話しかけて聞くんだけど、それ以上は聞き出せなくて、謎に包まれてるんだ。


だから、みんなでいろんな噂を勝手にしてて…


頭が良さそうだから銀行マンじゃないか？とか、オシャレなスーツを着こなしてるから、アパレル業界の人じゃないかとか…


モデルか、俳優じゃないか説もあるくらい。


最初は、私も驚いた。


慧君も、希良君も確かにすごくイケメンだけど、彼はその上をいく…なんていうか超絶イケメン。


黒髪で、浅めのツーブロック。


全体的に軽くパーマがかかってて、トップにボリュームを出したスタイルが、とても似合ってて清潔な印象。