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「杏」での癒しの時間

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慧君はちょっとはにかんで下を向いた。


『なんか恥ずかしいよ。パン教室とか必死だったから、焦ってるとこ見られてないか心配』


楽しかったけど、やっぱり最後まで気は抜けなかったから…


『頑張ってたよ。子ども達と触れ合う姿、雫ちゃん、なんか…可愛かった』


『や、やめてよ。可愛いなんて、ないない。可愛いのは私じゃなくて子ども達だから』


ほんとだよ、私なんか…


『子ども達も、もちろん可愛いよ。だけど、やっぱり…俺にはいつだって雫ちゃんしか目に入らないから…笑顔の雫ちゃんが…誰よりも1番だから』


周りに人がいないからって、そんな慧君の大胆な言葉にちょっと戸惑いつつも、1番なんて言われて…本当はキュンとした。


実は、今日は…


果穂ちゃんはいない。


ゴールデンウィーク中は、勉強に集中したいからとイベントには参加しなかった。


残念だったけど、大学生は、きっといろいろ大変なんだろうと思う。


もしここに…


果穂ちゃんがいたら、慧君と話すだけで睨まれていたかも知れない…


ううん、絶対、睨まれてた。


果穂ちゃんの想い…


真剣だし、真っ直ぐだし、本物だもん。


慧君のこと、本気で大好きだから…


とにかく…


イベントの成功で、さらに「杏」のみんなの絆は深まり…


そんなみんなと一緒にいられる楽しいこの時間は、本当に私の心の癒しとなった。


解散して、マンションに帰ったのは、夜中を少し回った頃だった。


『盛り上がり過ぎちゃった。ずいぶん遅くなったな…早く寝よ』


私は急いでシャワーを浴び、準備をさっさとして、ベッドに潜り込んだ。


だけど…


イベントのことが次から次へといろいろよみがえって来て、何だか寝つけない。


寝返りを打つ。


右に、左に…


それでも…やっぱり眠れなかった。


ふと、希良君の顔が浮かぶ。


体…大丈夫かな?
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