濡れ衣の商人

鷹栖 透

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第二章:疑惑の渦

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自宅謹慎を言い渡された田中は、重苦しい気分で過ごしていた。

身に覚えのない横領の容疑、会社からの疑いの目、そして未来への不安。様々な感情が渦巻き、思考能力を奪っていた。しかし、このままではいけない。自らの潔白を証明し、真犯人を突き止めなければならない。田中は混乱する頭の中を整理し、立ち上がろうと決意した。

まずは情報収集だ。誰が、何のために自分を陥れようとしているのか。田中は考えを巡らせ、ホワイトボードに「関係者」と大きく書き込んだ。しかし、具体的な名前が浮かばない。ただ漠然と、誰かに嵌められたという感覚だけが、田中の胸を締め付けていた。

深呼吸をして、もう一度冷静に考えてみる。横領の濡れ衣を着せられた。つまり、誰かが自分の口座に不正送金を行い、それを隠蔽するために自分を犯人に仕立て上げたということだ。

まず思い浮かんだのは、経理部だ。会社の金の流れを管理しているのは経理部であり、不正送金を行うには経理部の協力が不可欠だ。田中は経理部の社員名簿を引っ張り出し、一人ずつ名前を確認していく。

その中で、高木恵子の名前が目に留まった。彼女は几帳面で仕事熱心な女性社員だが、大村課長とは以前から仕事上のことで衝突していたという噂を耳にしていた。もしかしたら、大村課長に恨みを抱き、自分を陥れようとしているのだろうか?田中はホワイトボードに「高木恵子(経理部)」と書き込んだ。

次に、田中は自分の上司である大村課長について考えた。普段は温厚で部下思いな人物だが、最近はどこか様子がおかしいと感じていた。頻繁に外出しており、その行き先も不明瞭。金遣いも荒くなっているように見えた。横領した金で贅沢をしているのだろうか?田中はホワイトボードに「大村健也(課長)」と書き加えた。

そして、田中の脳裏に、親友である山本太郎の顔が浮かんだ。まさか彼が自分を裏切るとは考えたくはない。しかし、山本は金遣いが荒く、しばしば借金に困っているという話を聞いていた。もしかしたら、金に目がくらんで、こんなことを…?考えたくはないが、可能性としてはゼロではない。田中は苦渋の表情でホワイトボードに「山本太郎(同僚・親友)」と書き込んだ。

最後に、田中は同僚の三上しほのことを考えた。彼女は明るく真面目な性格で、今のところ田中を疑っている様子はない。むしろ、心配そうに声をかけてくれていた。もしかしたら、彼女に相談すれば何か手がかりが掴めるかもしれない。田中はホワイトボードに「三上しほ(同僚)」と書き込み、彼女に電話をかけてみることにした。
三上は田中の電話にすぐに出て、心配そうに声をかけた。田中は事情を説明し、協力を依頼した。三上は快諾し、二人で調査を開始することに決めた。

こうして、田中と三上は、闇の中に潜む真犯人を探すための、長く険しい道のりを歩み始めた。
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