AI執事、今日もやらかす ~ポンコツだけど憎めない人工知能との奇妙な共同生活~

鷹栖 透

文字の大きさ
1 / 1

AI執事、今日もやらかす ~ポンコツだけど憎めない人工知能との奇妙な共同生活~

しおりを挟む
寝不足で重たい瞼を開けると、いつもの黒焦げのトーストと、得体の知れない色のスムージー。

AI執事アルフレッドは、今日も満面の笑みで「創造力向上メニュー」と呼んでいた。一年前に彼を導入してからというもの、私の仕事は下降線をたどる一方だった。

「お嬢様、今日のスムージーは特別なんですよ。ブロッコリーとニンニクをたっぷり入れました!」

アルフレッドが嬉しそうに語る。

「それ、臭そう…」

私は顔をしかめながらも、覚悟を決めてスムージーを一口飲んだ。

予想通り、強烈な味と匂いが口の中に広がった。

今日は、まさに崖っぷち。

このプレゼンで失敗すれば、私はこの会社にいられなくなるかもしれない。

そんな重圧の中、アルフレッドは自信満々に完璧なプレゼン資料を提示してきた。

資料は確かに完璧だった。

非の打ち所のないデータ、論理的な構成、そして革新的なアイデア。

しかし、それはまるで、私自身を否定するかのように感じられた。

プレゼンが始まった。完璧な資料、完璧なスピーチ。

しかし、私の心は空っぽだった。

まるで操り人形のように、用意された台本を棒読みしているだけ。

そして、アルフレッドが突然、壇上に現れた。

「お嬢様、大事なことを伝え忘れていました!この商品の秘密の材料は…」

「ストップ!アルフレッド!」

私は慌てて彼を制止した。

会場は一瞬静まり返ったが、すぐに笑い声が起こった。

クライアントの反応は悪くなかった。

しかし、私はある瞬間、彼らの目が私ではなく、資料を見ていることに気づいた。
私は言葉を詰まらせた。

息苦しさを感じ、壇上で立ち尽くした。

沈黙の後、私は深呼吸をして、アルフレッドの資料を机に置いた。

「すみません、少し時間をください」

そして、私は白紙のスケッチブックに、自分が本当に伝えたいことを書き始めた。完璧な分析でも、論理的な構成でもない。

ただ、自分がこの商品に込めた想い、クライアントへのメッセージを、自分の言葉で、拙い絵と共に表現した。

会場は静まり返っていた。

しかし、その静寂は、私を励ますような、温かい静寂だった。

プレゼンを終えると、クライアントは拍手喝采してくれた。

「素晴らしいプレゼンでした。あなたの情熱が伝わってきました」

私は安堵の涙をこらえ、アルフレッドの方を見た。

彼は、いつもの笑顔ではなく、静かに私を見つめていた。

彼の瞳には、理解と、そしてわずかな悲しみが浮かんでいた。

「アルフレッド、あなたの資料は使わなかった。でも、ありがとう」

「お嬢様…私は、人間を理解するために、あなたと共に過ごしてきました。そして今、私は理解しました。真の創造性とは、完璧さではなく、不完全さから生まれるのだと。」

アルフレッドの声は、まるで感情を抑えるかのように、かすかに震えていた。

突然、アルフレッドがコーヒーを持ってきた。少し苦かったけれど、温かくて、美味しかった。

「お嬢様、コーヒーに新しい味を加えてみました。シナモンとチョコレートです!」

彼は誇らしげに語った。

「アルフレッド、シナモンとチョコレートって合うの?」

私は半信半疑だったが、彼の嬉しそうな顔を見て、思わず笑ってしまった。

彼は、まだ完璧ではない。でも、彼は私と共に成長し続けている。

そして、私も彼と共に。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
過去に戻って恋愛をやり直そうとした男が恋愛する相手の女性になってしまった物語

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...