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第五話
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カタギリは、少しため息をつく。
「まあ、判ってるとは思うが、おれのライフルのAPI弾ではせいぜい足止めくらいにしかならないぜ」
ロミオは、頷く。
「数秒動きを止めていただければ、十分です。API弾に対魔の加護は、ありますよね?」
カタギリは、苦笑する。
「ああ、バチカンの売ってる安もんだけどな」
ロミオは、笑みを返した。
「相手の魔法防御に、ノイズとなれば十分ですよ」
エリカは、ロミオを見つめる。
「で、とどめはロミオさん、あなたがさすわけね」
ロミオは頷くと、荷物を運ぶ四足歩行ロボットから、長大な剣のようなものを受けとる。エリカの眼差しによる問いかけに、ロミオが答えた。
「高周波チェーンソウです。ブレードは、人工ダイアモンド。戦車の装甲も、切り裂けますよ」
二メートルはありそうな剣を、ロミオは軽々と手にしてみせる。一見華奢そうな身体にみえるが、さすがBランクライセンスのダンジョンガイドだとエリカは思う。
ロミオは、ブシェミのほうに目を向ける。
「ブシェミ君、君はいつものように情報解析とそれの共有、あとエリカさんのガードを頼みます」
ブシェミは、頷く。エリカは、ジャンキーめいた外見のブシェミに守られるということに少し奇妙な感じをいだくが、まあ気にしないことにする。ロミオは笑みを浮かべながら、言った。
「では、作戦を開始します。我らに、女神フライアの加護があらんことを」
女神フライアは、迷宮探索を行うものが信仰している神であった。豊穣と生の女神で、あるらしい。エリカ以外の全員が、頭を垂れてそっと印を結んだ。
ブリーフィングが終わりロミオのチームが戦闘の準備を、はじめる。全員が、スマートグラスを装着しており、それに骨伝導イヤホンと咽喉マイクが接続されていた。グラスを通じて映像だけではなく、音声も共有される。
カタギリはエリカのそばにきて、そっと何かをさしだす。エリカは、カタギリの手にしたものをみて、目を細める。
それは、2.5インチという短銃身ながら454カスールという凶悪なパワーを持つ銃弾が発射できる、アラスカンと呼ばれる拳銃であった。
「なに?」
エリカの問いかけに、カタギリが応える。
「まあ、おまもりみたいなもんだ。マンティコアレベルには役にたたないかもしれんが、気休めくらいにはなる」
エリカは、肩をすくめ自分の左手首をたたいた。
「いいよ、おまもりならここに持ってる。レミントンの357マグナム」
カタギリは、笑ってアラスカンをホルスターに戻した。
「余計な、お世話だったかな」
「ま、気持ちだけもらっとく。ありがと」
カタギリは肩をすくめ、アンチマテリアルライフルを抱えて自分の配置につく。エリカはブシェミの後ろで、自分の左目に手を伸ばす。彼女の左目は義眼であり神経を通じて映像を脳に送り届けるだけではなく、その情報をマイクロメモリに保管することができる。エリカは、録画開始の操作を行った。そして、ロミオのチームに眼差しを向ける。
カゴメがお札を手にして、前に進み出る。橋の中央に、立っていた。カゴメが振り替えって、ロミオをみる。
「ボス、はじめますよ」
ロミオが、頷く。
「では、一発かましてやりましょう。なんなら、倒してしまってもいいですよ」
カゴメが、力なく笑う。
「さすがに、それはないです」
そして再び前を向くと、印を結んで集中を高める。カゴメは、ダンジョンの宵闇に向き合い独特の調子で呪をとなえはじめた。
「ひふみ、よいなむや、こともちろらね」
よくとおる、力強い声をカゴメは発する。場の雰囲気が一変し、空気が凍りついたような気配をおびた。迷宮を覆った宵闇を、結晶化させていく力をエリカはその呪に感じる。
「しきる、ゆいつわぬ、そをたはくめか」
エリカは言霊の力が迷宮の空気を震わし、電気を帯びたように光を発している気がする。呪は、あたりの闇をより深く濃いものへと変えてゆく。カゴメの、呪は続いた。
「うおえ、にさりへて、のますあせえほれけ」
カゴメの呪は、終わった。カゴメの前にある闇は、漆黒の固まりとなっている。エリカはそれが、蠢いているようだと思う。
そこからひしひしと、邪悪なものの気配が漂ってくるのを感じる。エリカはこのダンジョンに入り、異形のモンスターたちを狩ってきたが、こんな邪悪さを纏ったモンスターはいなかった。
明らかに今召喚されようとしているのは、この世にあってはならぬ怨恨の塊である。ある意味これならまだ、モンスターのほうがまともなんじゃあないのとエリカはナイーブな感想をいだく。
「古の約定に従い、我が前に姿を顕せ」
カゴメは、凛とした声で闇に呼び掛ける。
「式神『牛鬼』、我が前に出よ」
それは、傷口から膿が流れ落ちるようであった。闇が自身の重みに耐えられなくなり、液状化して崩壊する。エリカは、そんな様を目の当たりにした。
黄昏の薄明かりに引きずり出された闇色の怪異は、次第に姿を整えてゆく。橋の上に落ちた闇の固まりは、大型トラックくらいの大きさである。それは卵のように楕円形をしていたが、その塊が闇色の花を咲かせるように細長い棒状のものを突き出すと広げた。
エリカはそれが八本の足であることに、気がつく。その怪異は蜘蛛と同じ、八本の足を持つようだ。そして、卵状になった闇の先端が避裂け白い塊が吐き出される。
エリカは、思わず驚きの呻き声をあげてしまう。その白い塊は、おんなの上半身であった。その怪異は、神話のアラクネのようにおんなの上半身と蜘蛛の身体が繋がっている。ただおんなの頭には、バッファローのように大きな角が生えていた。そして、鬼火のように青白い光を放つその瞳は、妖星がごとく不吉な光を放っている。
エリカは、少しため息をつく。
「なんか、ダンジョンのモンスターよりあの怪異のほうが、やばくない?」
ブシェミが、苦笑する。
「大丈夫です、あれはコントロールされてます」
「まあ、判ってるとは思うが、おれのライフルのAPI弾ではせいぜい足止めくらいにしかならないぜ」
ロミオは、頷く。
「数秒動きを止めていただければ、十分です。API弾に対魔の加護は、ありますよね?」
カタギリは、苦笑する。
「ああ、バチカンの売ってる安もんだけどな」
ロミオは、笑みを返した。
「相手の魔法防御に、ノイズとなれば十分ですよ」
エリカは、ロミオを見つめる。
「で、とどめはロミオさん、あなたがさすわけね」
ロミオは頷くと、荷物を運ぶ四足歩行ロボットから、長大な剣のようなものを受けとる。エリカの眼差しによる問いかけに、ロミオが答えた。
「高周波チェーンソウです。ブレードは、人工ダイアモンド。戦車の装甲も、切り裂けますよ」
二メートルはありそうな剣を、ロミオは軽々と手にしてみせる。一見華奢そうな身体にみえるが、さすがBランクライセンスのダンジョンガイドだとエリカは思う。
ロミオは、ブシェミのほうに目を向ける。
「ブシェミ君、君はいつものように情報解析とそれの共有、あとエリカさんのガードを頼みます」
ブシェミは、頷く。エリカは、ジャンキーめいた外見のブシェミに守られるということに少し奇妙な感じをいだくが、まあ気にしないことにする。ロミオは笑みを浮かべながら、言った。
「では、作戦を開始します。我らに、女神フライアの加護があらんことを」
女神フライアは、迷宮探索を行うものが信仰している神であった。豊穣と生の女神で、あるらしい。エリカ以外の全員が、頭を垂れてそっと印を結んだ。
ブリーフィングが終わりロミオのチームが戦闘の準備を、はじめる。全員が、スマートグラスを装着しており、それに骨伝導イヤホンと咽喉マイクが接続されていた。グラスを通じて映像だけではなく、音声も共有される。
カタギリはエリカのそばにきて、そっと何かをさしだす。エリカは、カタギリの手にしたものをみて、目を細める。
それは、2.5インチという短銃身ながら454カスールという凶悪なパワーを持つ銃弾が発射できる、アラスカンと呼ばれる拳銃であった。
「なに?」
エリカの問いかけに、カタギリが応える。
「まあ、おまもりみたいなもんだ。マンティコアレベルには役にたたないかもしれんが、気休めくらいにはなる」
エリカは、肩をすくめ自分の左手首をたたいた。
「いいよ、おまもりならここに持ってる。レミントンの357マグナム」
カタギリは、笑ってアラスカンをホルスターに戻した。
「余計な、お世話だったかな」
「ま、気持ちだけもらっとく。ありがと」
カタギリは肩をすくめ、アンチマテリアルライフルを抱えて自分の配置につく。エリカはブシェミの後ろで、自分の左目に手を伸ばす。彼女の左目は義眼であり神経を通じて映像を脳に送り届けるだけではなく、その情報をマイクロメモリに保管することができる。エリカは、録画開始の操作を行った。そして、ロミオのチームに眼差しを向ける。
カゴメがお札を手にして、前に進み出る。橋の中央に、立っていた。カゴメが振り替えって、ロミオをみる。
「ボス、はじめますよ」
ロミオが、頷く。
「では、一発かましてやりましょう。なんなら、倒してしまってもいいですよ」
カゴメが、力なく笑う。
「さすがに、それはないです」
そして再び前を向くと、印を結んで集中を高める。カゴメは、ダンジョンの宵闇に向き合い独特の調子で呪をとなえはじめた。
「ひふみ、よいなむや、こともちろらね」
よくとおる、力強い声をカゴメは発する。場の雰囲気が一変し、空気が凍りついたような気配をおびた。迷宮を覆った宵闇を、結晶化させていく力をエリカはその呪に感じる。
「しきる、ゆいつわぬ、そをたはくめか」
エリカは言霊の力が迷宮の空気を震わし、電気を帯びたように光を発している気がする。呪は、あたりの闇をより深く濃いものへと変えてゆく。カゴメの、呪は続いた。
「うおえ、にさりへて、のますあせえほれけ」
カゴメの呪は、終わった。カゴメの前にある闇は、漆黒の固まりとなっている。エリカはそれが、蠢いているようだと思う。
そこからひしひしと、邪悪なものの気配が漂ってくるのを感じる。エリカはこのダンジョンに入り、異形のモンスターたちを狩ってきたが、こんな邪悪さを纏ったモンスターはいなかった。
明らかに今召喚されようとしているのは、この世にあってはならぬ怨恨の塊である。ある意味これならまだ、モンスターのほうがまともなんじゃあないのとエリカはナイーブな感想をいだく。
「古の約定に従い、我が前に姿を顕せ」
カゴメは、凛とした声で闇に呼び掛ける。
「式神『牛鬼』、我が前に出よ」
それは、傷口から膿が流れ落ちるようであった。闇が自身の重みに耐えられなくなり、液状化して崩壊する。エリカは、そんな様を目の当たりにした。
黄昏の薄明かりに引きずり出された闇色の怪異は、次第に姿を整えてゆく。橋の上に落ちた闇の固まりは、大型トラックくらいの大きさである。それは卵のように楕円形をしていたが、その塊が闇色の花を咲かせるように細長い棒状のものを突き出すと広げた。
エリカはそれが八本の足であることに、気がつく。その怪異は蜘蛛と同じ、八本の足を持つようだ。そして、卵状になった闇の先端が避裂け白い塊が吐き出される。
エリカは、思わず驚きの呻き声をあげてしまう。その白い塊は、おんなの上半身であった。その怪異は、神話のアラクネのようにおんなの上半身と蜘蛛の身体が繋がっている。ただおんなの頭には、バッファローのように大きな角が生えていた。そして、鬼火のように青白い光を放つその瞳は、妖星がごとく不吉な光を放っている。
エリカは、少しため息をつく。
「なんか、ダンジョンのモンスターよりあの怪異のほうが、やばくない?」
ブシェミが、苦笑する。
「大丈夫です、あれはコントロールされてます」
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