9 / 10
第九話
しおりを挟む
ふと気がつくと、マンティコアの赤い顔が目の前から消えている。かわりにあったのは、レザージャケットを纏ったおとこの背中だ。おとこに殴られたマンティコアは、放物線を描き橋の上を飛ぶと落下してバウンドする。
突然エリカの目の前に出現した一輪バイクにまたがるおとこが、言葉を発した。
「待たせてすまんな、これでも急いだんだが」
エリカは呆然としながら、呟く。
「ダンジョン・シーカー?」
「おう」
おとこは、少し首を捻ると鋼の輝きを宿した瞳を見せる。
「あんた、エリカ・ベックだね。後は、まかせろ。それと終わったら、サインをくれ」
ダンジョン・シーカーは、笑みを浮かべる。それは、黄昏の闇を破る陽の光のように穏やかで暖かい。
「おれは、あんたのファンなんだ」
エリカが呆れて口を開いた瞬間、マンティコアが怒りの咆哮をあげて深紅の風となる。同時に、ダンジョン・シーカーの乗る一輪バイクのモーターが獣の雄叫びをあげた。
漆黒の風と深紅の風が、黄昏のダンジョンで交差する。撥ね飛ばされたのは、赤いモンスターであった。ダンジョン・シーカーの回し蹴りを受け、赤いゴムまりのようにマンティコアは橋の上をバウンドして転がる。
ふわりと一輪バイクが、着地した。ダンジョン・シーカーは、バイクから降り橋に立つ。
エリカは、そっと息をつく。あれほど苦戦したモンスターが、子猫のようにあしらわれている。ダンジョン・シーカーは、ひととは思えないレベルの強さだ。むしろ、モンスターの仲間だと思ったほうが納得がいく。
マンティコアは唸り声をあげながら、橋に立ち上がる。その身体が、赤い霞に包まれた。霞は一瞬にして消え、流体金属の装甲に覆われたマンティコアが姿を現す。
エリカは、目をみはる。あれほどの強さをみせたマンティコアは、どうやら全力を出していたわけでは無かったようだ。
「おう、本気を出してくれたようだな」
ダンジョン・シーカーは、楽しげに聞こえる調子で言った。
「あんたは、なにも悪くはない。悪いのは、あんたを襲ったおれたちのほうなんだろうが」
おとこは、そっとため息をつく。
「だが、こうなってしまっては仕方がない。せめて、こちらも全力をつくして戦うよ。敬意を、もってね」
ダンジョン・シーカーは、ベルトのバックルにモバイル端末を装着した。端末は、仄かな光を放っている。突然、端末が鋭い光を点滅させながらアナウンス音声を発した。
『system boot start』
『booted process check ok』
『system boot end 』
『welcom to CHAOSMOS system』
おとこは、カードを一枚取り出すと端末に装着する。端末は点滅しながら、アナウンスを発した。
『accept method "Sonic Hopper"』
『execute method 』
『create instance ok』
『start "Sonic Hopper"』
一瞬、おとこの姿が黒い霞に覆われる。霞はすぐに消え去り、オリーブドラブのバイオスーツに身を包んだダンジョン・シーカーが姿を現した。頭部は、丸いヘルメットに覆いつくされており顔はみえない。目の部分には赤い複眼状のゴーグルがあり、光を放っている。その赤い光に、言い様のない戦慄的なものを感じた。
異形の怪物が、そこにいる。
マンティコアと、変わらぬ怪物。
そして、底知れぬ強さを持つ怪物であった。
装甲で身体を覆ったマンティコアは、静かに空中に浮かび上がる。オリーブドラブの怪物は、赤い瞳を妖星のように輝かせ、顔全体を覆うヘルメットの下部に赤い稲妻のような亀裂を生じさせると、雄叫びをあげながら跳躍する。
エリカは、オリーブドラブの怪物が前に伸ばした足から、三枚のブレードが飛び出すのをみた。そのブレードはドリルのように回転する。
赤い怪物も、オリーブドラブの怪物も、一瞬にして視覚で補足できない速度に加速した。ごぉ、と風が巻き起こりエリカは身体を持ち上げられそうになる。
二つの強大なエネルギーの塊が、ダンジョンの中でハリケーンのように渦巻く。
再び、二つの風が交錯した。爆発が起こったような衝撃波がおこり、エリカは顔面を殴られたように感じる。無数の落雷が荒れ狂ったようなあまりの激しさに、エリカは軽く意識を失う。
エリカが目を開いたときには両者とも、着地していた。オリーブドラブの怪物は、膝をついたままだ。深紅の怪物は後ろ足で、ゆっくり立ち上がる。
その姿を見たエリカは、思わず息をのむ。マンティコアの胸のあたりに、大きな穴があき向こうにあるダンジョンの壁が見える。マンティコアの目は、虚ろであった。
赤い怪物は、ゆっくりと橋の上に沈む。ダンジョン・シーカーは立ち上がると、身に纏ったオリーブドラブのバイオスーツを除装してひとの姿に戻る。
突然エリカの目の前に出現した一輪バイクにまたがるおとこが、言葉を発した。
「待たせてすまんな、これでも急いだんだが」
エリカは呆然としながら、呟く。
「ダンジョン・シーカー?」
「おう」
おとこは、少し首を捻ると鋼の輝きを宿した瞳を見せる。
「あんた、エリカ・ベックだね。後は、まかせろ。それと終わったら、サインをくれ」
ダンジョン・シーカーは、笑みを浮かべる。それは、黄昏の闇を破る陽の光のように穏やかで暖かい。
「おれは、あんたのファンなんだ」
エリカが呆れて口を開いた瞬間、マンティコアが怒りの咆哮をあげて深紅の風となる。同時に、ダンジョン・シーカーの乗る一輪バイクのモーターが獣の雄叫びをあげた。
漆黒の風と深紅の風が、黄昏のダンジョンで交差する。撥ね飛ばされたのは、赤いモンスターであった。ダンジョン・シーカーの回し蹴りを受け、赤いゴムまりのようにマンティコアは橋の上をバウンドして転がる。
ふわりと一輪バイクが、着地した。ダンジョン・シーカーは、バイクから降り橋に立つ。
エリカは、そっと息をつく。あれほど苦戦したモンスターが、子猫のようにあしらわれている。ダンジョン・シーカーは、ひととは思えないレベルの強さだ。むしろ、モンスターの仲間だと思ったほうが納得がいく。
マンティコアは唸り声をあげながら、橋に立ち上がる。その身体が、赤い霞に包まれた。霞は一瞬にして消え、流体金属の装甲に覆われたマンティコアが姿を現す。
エリカは、目をみはる。あれほどの強さをみせたマンティコアは、どうやら全力を出していたわけでは無かったようだ。
「おう、本気を出してくれたようだな」
ダンジョン・シーカーは、楽しげに聞こえる調子で言った。
「あんたは、なにも悪くはない。悪いのは、あんたを襲ったおれたちのほうなんだろうが」
おとこは、そっとため息をつく。
「だが、こうなってしまっては仕方がない。せめて、こちらも全力をつくして戦うよ。敬意を、もってね」
ダンジョン・シーカーは、ベルトのバックルにモバイル端末を装着した。端末は、仄かな光を放っている。突然、端末が鋭い光を点滅させながらアナウンス音声を発した。
『system boot start』
『booted process check ok』
『system boot end 』
『welcom to CHAOSMOS system』
おとこは、カードを一枚取り出すと端末に装着する。端末は点滅しながら、アナウンスを発した。
『accept method "Sonic Hopper"』
『execute method 』
『create instance ok』
『start "Sonic Hopper"』
一瞬、おとこの姿が黒い霞に覆われる。霞はすぐに消え去り、オリーブドラブのバイオスーツに身を包んだダンジョン・シーカーが姿を現した。頭部は、丸いヘルメットに覆いつくされており顔はみえない。目の部分には赤い複眼状のゴーグルがあり、光を放っている。その赤い光に、言い様のない戦慄的なものを感じた。
異形の怪物が、そこにいる。
マンティコアと、変わらぬ怪物。
そして、底知れぬ強さを持つ怪物であった。
装甲で身体を覆ったマンティコアは、静かに空中に浮かび上がる。オリーブドラブの怪物は、赤い瞳を妖星のように輝かせ、顔全体を覆うヘルメットの下部に赤い稲妻のような亀裂を生じさせると、雄叫びをあげながら跳躍する。
エリカは、オリーブドラブの怪物が前に伸ばした足から、三枚のブレードが飛び出すのをみた。そのブレードはドリルのように回転する。
赤い怪物も、オリーブドラブの怪物も、一瞬にして視覚で補足できない速度に加速した。ごぉ、と風が巻き起こりエリカは身体を持ち上げられそうになる。
二つの強大なエネルギーの塊が、ダンジョンの中でハリケーンのように渦巻く。
再び、二つの風が交錯した。爆発が起こったような衝撃波がおこり、エリカは顔面を殴られたように感じる。無数の落雷が荒れ狂ったようなあまりの激しさに、エリカは軽く意識を失う。
エリカが目を開いたときには両者とも、着地していた。オリーブドラブの怪物は、膝をついたままだ。深紅の怪物は後ろ足で、ゆっくり立ち上がる。
その姿を見たエリカは、思わず息をのむ。マンティコアの胸のあたりに、大きな穴があき向こうにあるダンジョンの壁が見える。マンティコアの目は、虚ろであった。
赤い怪物は、ゆっくりと橋の上に沈む。ダンジョン・シーカーは立ち上がると、身に纏ったオリーブドラブのバイオスーツを除装してひとの姿に戻る。
0
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる