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第三話
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彼女は追憶より現実へ戻る。
ようやく。
彼女は蛮族の男の前に立った。
宴の席についた兵士たちは皆静かに、二人を見守っている。純白の衣装に身を包んだ彼女は、欲情という旋風の中で揺れている小さな蝋燭であった。蛮族の男は、獣の笑みを浮かべながら彼女を見下ろしている。
彼女は微かに喘いだ。
今、目の前にいる極彩色の刺青によって飾られた獰猛な筋肉を持つ男の眼差しに貫かれ、彼女の意識は肉欲という無限の闇へ突き落とされる寸前であった。彼女の足の付け根の間にある秘めやかな部分は、別の生き物のように蠢き熱く息づいている。その部分は飢えていた。獣のように。
熱く甘い息が彼女の口から漏れる。
彼女はもう全裸でいるのと同じような気になった。
目の前の蛮族の戦士は、彼女の身体奥深くを眼差しによって蹂躙してゆく。それは肉体により犯されるよりも深く、彼女の身体を責め苛んでいた。
もう既に、彼女の身体の濡れそぼった部分は肉体を結合しているときのように間断なく強い快感を生み出しており、彼女は自分のその部分がかってに動いて脈動しているのをはっきりと感じる。彼女は蛮族の戦士によってもう、貫かれているのと同じであった。
彼女を肉欲の闇に落ちる寸前の状態にかろうじて繋ぎ止めているいるのは、復讐の意思だけである。その鋼鉄の意志が、崩れ落ちそうになる腰を辛うじて支えていた。
彼女はようやく、口を開く。
「二人きりにして頂戴」
蛮族の男は頷く。花束を掲げるように彼女を抱き上げると、肩に担いだ。腕に抱かれた刺激により、また深く快感が押し寄せてくる。彼女は耐えるように目を閉じた。
闇が落ちてくる。
訪れた闇は再び彼女を追憶へと誘う。
❖
彼女は階段を下ってゆく。闇の中であった。次第に闇は濃く深くなってゆき、階段は角度が急になってゆく。
彼女は階段から足を踏み外した。しかし、既に階段はなくただの竪穴となっているようだ。彼女はその竪穴をまっすぐ下へ下へと落ちてゆく。
思ったより速度は緩やに感じる。ただそう感じるだけかもしれない。全くの闇の中を垂直に落下していっているため、暗黒の宇宙を浮遊しているようにも感じる。
やがて。
その竪穴は次第に傾斜してゆき、緩やかに螺旋を描き始める。彼女は闇の中を螺旋状に滑りながら落ちて行った。
突然、彼女は水の中に放り出される。そこは地底湖であった。彼女は夢中で水面へと泳ぎでる。
水面から顔を出した彼女は息を呑んだ。そこは薄暮の世界だった。水晶の岩盤によって造られたドームの中に彼女はいる。その巨大な水晶のドームは、白夜のように微かな光を放っていた。
彼女はあたりを見回すと、岸のあるほうへと泳いでゆく。やがて地中湖は浅くなり、彼女は湖面を歩いていった。彼女は水晶でできた地面に上がる。
彼女は心の中で、そっと呟いた。
(本に書かれていたとおりだ)
かつてこの地下へと下り戻ってきたものがいる。その者は自分の体験を本に記していた。彼女にとって遥かな先祖となる本の著者が書いていたとおりの空間が目の前に開けている。
彼女は水晶の地面を歩いていった。
やがて、円形に水晶の柱が立ち並ぶ場所へと出る。円形に水晶の柱によって囲まれた広場の中心には、丸い舞台のような場所があった。
その舞台の上にはたおやかな百合の花束をまきちらしたように、全裸の少女たちが寝そべっている。熱い眼差しを彼女へ向かって投げかける少女たちの中心に立つものがいた。
それは、彼女自身である。
いや、彼女と同じ顔と身体を持った女が少し笑みを浮かべて、淫猥な生き物のように蠢いている少女たちの中心に立っていた。その女と彼女は瓜二つであったが違う部分もある。
それは瞳の色。
その瞳は明けの明星のように真紅に染まっていた。
赤い瞳の女は、静かに言った。
「姉さん、私とってもうれしい。私に会いにきてくれたのね」
ようやく。
彼女は蛮族の男の前に立った。
宴の席についた兵士たちは皆静かに、二人を見守っている。純白の衣装に身を包んだ彼女は、欲情という旋風の中で揺れている小さな蝋燭であった。蛮族の男は、獣の笑みを浮かべながら彼女を見下ろしている。
彼女は微かに喘いだ。
今、目の前にいる極彩色の刺青によって飾られた獰猛な筋肉を持つ男の眼差しに貫かれ、彼女の意識は肉欲という無限の闇へ突き落とされる寸前であった。彼女の足の付け根の間にある秘めやかな部分は、別の生き物のように蠢き熱く息づいている。その部分は飢えていた。獣のように。
熱く甘い息が彼女の口から漏れる。
彼女はもう全裸でいるのと同じような気になった。
目の前の蛮族の戦士は、彼女の身体奥深くを眼差しによって蹂躙してゆく。それは肉体により犯されるよりも深く、彼女の身体を責め苛んでいた。
もう既に、彼女の身体の濡れそぼった部分は肉体を結合しているときのように間断なく強い快感を生み出しており、彼女は自分のその部分がかってに動いて脈動しているのをはっきりと感じる。彼女は蛮族の戦士によってもう、貫かれているのと同じであった。
彼女を肉欲の闇に落ちる寸前の状態にかろうじて繋ぎ止めているいるのは、復讐の意思だけである。その鋼鉄の意志が、崩れ落ちそうになる腰を辛うじて支えていた。
彼女はようやく、口を開く。
「二人きりにして頂戴」
蛮族の男は頷く。花束を掲げるように彼女を抱き上げると、肩に担いだ。腕に抱かれた刺激により、また深く快感が押し寄せてくる。彼女は耐えるように目を閉じた。
闇が落ちてくる。
訪れた闇は再び彼女を追憶へと誘う。
❖
彼女は階段を下ってゆく。闇の中であった。次第に闇は濃く深くなってゆき、階段は角度が急になってゆく。
彼女は階段から足を踏み外した。しかし、既に階段はなくただの竪穴となっているようだ。彼女はその竪穴をまっすぐ下へ下へと落ちてゆく。
思ったより速度は緩やに感じる。ただそう感じるだけかもしれない。全くの闇の中を垂直に落下していっているため、暗黒の宇宙を浮遊しているようにも感じる。
やがて。
その竪穴は次第に傾斜してゆき、緩やかに螺旋を描き始める。彼女は闇の中を螺旋状に滑りながら落ちて行った。
突然、彼女は水の中に放り出される。そこは地底湖であった。彼女は夢中で水面へと泳ぎでる。
水面から顔を出した彼女は息を呑んだ。そこは薄暮の世界だった。水晶の岩盤によって造られたドームの中に彼女はいる。その巨大な水晶のドームは、白夜のように微かな光を放っていた。
彼女はあたりを見回すと、岸のあるほうへと泳いでゆく。やがて地中湖は浅くなり、彼女は湖面を歩いていった。彼女は水晶でできた地面に上がる。
彼女は心の中で、そっと呟いた。
(本に書かれていたとおりだ)
かつてこの地下へと下り戻ってきたものがいる。その者は自分の体験を本に記していた。彼女にとって遥かな先祖となる本の著者が書いていたとおりの空間が目の前に開けている。
彼女は水晶の地面を歩いていった。
やがて、円形に水晶の柱が立ち並ぶ場所へと出る。円形に水晶の柱によって囲まれた広場の中心には、丸い舞台のような場所があった。
その舞台の上にはたおやかな百合の花束をまきちらしたように、全裸の少女たちが寝そべっている。熱い眼差しを彼女へ向かって投げかける少女たちの中心に立つものがいた。
それは、彼女自身である。
いや、彼女と同じ顔と身体を持った女が少し笑みを浮かべて、淫猥な生き物のように蠢いている少女たちの中心に立っていた。その女と彼女は瓜二つであったが違う部分もある。
それは瞳の色。
その瞳は明けの明星のように真紅に染まっていた。
赤い瞳の女は、静かに言った。
「姉さん、私とってもうれしい。私に会いにきてくれたのね」
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