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第九話
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レディ・ホワイトの声が、彼女を異形のおとこに向かって強く押し出す。同時に触手たちも、一斉に襲いかかってきた。
全力で走る彼女の身体へ、触手たちは纏わりついてゆく。胸の双丘や白い太腿へと桜色の触手は粘液を垂らしつつ、纏ついてくる。触手たちはそっと胸の蕾を愛撫し、股の奥にある秘めやかな花芯に刺激を加えてきた。
彼女はそれでも獰猛な獣の咆哮をあげ、走る。まるで深海の底を全速力で走るような、もどかしさがあった。触手たちは、より彼女の深く敏感で繊細なところへと入り込もうと蠕動するが、彼女は必死でそれらを払う。
立ち止まれば終わると、彼女は知った。それはまさに永遠に続く快楽の牢獄へ、閉じ込められることだ。まるで彼女の奥深くにある花弁はそれを望むように熱く涙を流し、蠢く。
触手は彼女に快楽をもたらすが、それは昏く死に繋がるものであった。例えてみれば、戦場で敵の兵を殺しその血を浴びたときに味わう興奮と快楽。それを性の快楽と混ぜ合わせ、欲情にまみれた死と殺戮への衝動へと作り変える。
それは、砂漠で乾ききった喉が水を求める欲望よりもさらに深く、彼女を欲望の檻へ誘う。それでも、彼女は逆らい、前へと走った。
なぜ彼女は激しい欲情に、屈しなかったのか。それはおそらくそれよりももっと深く、もっと高みへと至る快楽を知っていたからだ。あのレディ・ホワイトに与えられた快楽に比べると、触手の与えるそれは何処か色褪せ凡庸な感じがした。
それでもついに彼女は、快楽の罠にはまってしまう。触手は彼女の花びらをめくり遥かな奥へと達し、激しく蠕動して逆らい難い快楽を生み出す。幾度も彼女は絶頂に達し、その全身は何度も痙攣し意識はほとんど失われていた。
けれど彼女はついに、その両手を蛮族の副官に届かせた。蛮族の副官の顔を手で挟むと、喘ぎながら辛うじて声を出す。
「口づけを、あなたの口づけを、ください」
飢えたおとこが、笑みを浮かべる。
「よかろう、くれてやる」
暗黒神の化身たるおとこは、彼女に口づけをする。彼女は口の中に舌とは違う何かが入り込んでくるのを、感じた。それは、快楽を生み出しつつそれを喰らおうとする異形の存在。彼女は薄れる意識の中で、必死にその何かを噛み締め歯をたてた。
「よくぞやった、我が姫君!」
レディ・ホワイトが叫びながら彼女の後頭部を掴み、引っ張った。暗黒神の化身であるおとこから、長細い軟体生物のようなものが引き出される。それは彼女の口へ潜りこもうとしたが、レディ・ホワイトに掴まれ水晶の舞台へと叩きつけられた。
レディ・ホワイトは咆哮をあげると、極寒の氷雪を封じ込めたような真白き剣ブリザード・ブリンガーをその生き物へ叩きつける。軟体生物のような生き物は声なき悲鳴をあげ、引き裂かれた。しかし同時に、槍の様に硬化した触手が放たれ、レディ・ホワイトの胸を串刺しにする。
それでもレディ・ホワイトは手を緩めず、何度も何度も軟体生物を引き裂く。ついには軟体生物の動きはとまり、水晶の舞台の上で溶けていった。
そして、レディ・ホワイトも膝をつき血を吐く。水晶の舞台が、真紅に染まる。
快楽の檻から解き放たれた彼女は我にかえり、レディ・ホワイトを掻き抱く。
レディ・ホワイトは、そっと手を伸ばし彼女の髪に触れた。レディ・ホワイトは、ふふっと笑う。
「そなたのはまだ、美しいな」
レディ・ホワイトが触れた彼女の髪は、白く染まっていた。月の光を集めて作ったような自らの白髪を、彼女は見る。過酷な経験が、彼女の髪を白く染めたらしい。
「あなたは、わたしなのですね。レディ・ホワイト」
彼女の言葉に、レディ・ホワイトは頷く。
「わたしは、二十年後の君だよ、我が姫君。これからは君が、レディ・ホワイトを名乗るといい」
涙か彼女の頬を伝って落ち、レディ・ホワイトの頬を濡らす。レディ・ホワイトは、静かに笑った。
「では、おさらばだ。我が姫君、いや、レディ・ホワイト」
レディ・ホワイトであったおんなは、目を閉じた。
彼女は頷くと、ブリザード・ブリンガーを手に取り立ち上がる。その剣は数十年使い込んだ剣のように、手に馴染んた。彼女は剣を手に、地下からの出口へと向かった。
全力で走る彼女の身体へ、触手たちは纏わりついてゆく。胸の双丘や白い太腿へと桜色の触手は粘液を垂らしつつ、纏ついてくる。触手たちはそっと胸の蕾を愛撫し、股の奥にある秘めやかな花芯に刺激を加えてきた。
彼女はそれでも獰猛な獣の咆哮をあげ、走る。まるで深海の底を全速力で走るような、もどかしさがあった。触手たちは、より彼女の深く敏感で繊細なところへと入り込もうと蠕動するが、彼女は必死でそれらを払う。
立ち止まれば終わると、彼女は知った。それはまさに永遠に続く快楽の牢獄へ、閉じ込められることだ。まるで彼女の奥深くにある花弁はそれを望むように熱く涙を流し、蠢く。
触手は彼女に快楽をもたらすが、それは昏く死に繋がるものであった。例えてみれば、戦場で敵の兵を殺しその血を浴びたときに味わう興奮と快楽。それを性の快楽と混ぜ合わせ、欲情にまみれた死と殺戮への衝動へと作り変える。
それは、砂漠で乾ききった喉が水を求める欲望よりもさらに深く、彼女を欲望の檻へ誘う。それでも、彼女は逆らい、前へと走った。
なぜ彼女は激しい欲情に、屈しなかったのか。それはおそらくそれよりももっと深く、もっと高みへと至る快楽を知っていたからだ。あのレディ・ホワイトに与えられた快楽に比べると、触手の与えるそれは何処か色褪せ凡庸な感じがした。
それでもついに彼女は、快楽の罠にはまってしまう。触手は彼女の花びらをめくり遥かな奥へと達し、激しく蠕動して逆らい難い快楽を生み出す。幾度も彼女は絶頂に達し、その全身は何度も痙攣し意識はほとんど失われていた。
けれど彼女はついに、その両手を蛮族の副官に届かせた。蛮族の副官の顔を手で挟むと、喘ぎながら辛うじて声を出す。
「口づけを、あなたの口づけを、ください」
飢えたおとこが、笑みを浮かべる。
「よかろう、くれてやる」
暗黒神の化身たるおとこは、彼女に口づけをする。彼女は口の中に舌とは違う何かが入り込んでくるのを、感じた。それは、快楽を生み出しつつそれを喰らおうとする異形の存在。彼女は薄れる意識の中で、必死にその何かを噛み締め歯をたてた。
「よくぞやった、我が姫君!」
レディ・ホワイトが叫びながら彼女の後頭部を掴み、引っ張った。暗黒神の化身であるおとこから、長細い軟体生物のようなものが引き出される。それは彼女の口へ潜りこもうとしたが、レディ・ホワイトに掴まれ水晶の舞台へと叩きつけられた。
レディ・ホワイトは咆哮をあげると、極寒の氷雪を封じ込めたような真白き剣ブリザード・ブリンガーをその生き物へ叩きつける。軟体生物のような生き物は声なき悲鳴をあげ、引き裂かれた。しかし同時に、槍の様に硬化した触手が放たれ、レディ・ホワイトの胸を串刺しにする。
それでもレディ・ホワイトは手を緩めず、何度も何度も軟体生物を引き裂く。ついには軟体生物の動きはとまり、水晶の舞台の上で溶けていった。
そして、レディ・ホワイトも膝をつき血を吐く。水晶の舞台が、真紅に染まる。
快楽の檻から解き放たれた彼女は我にかえり、レディ・ホワイトを掻き抱く。
レディ・ホワイトは、そっと手を伸ばし彼女の髪に触れた。レディ・ホワイトは、ふふっと笑う。
「そなたのはまだ、美しいな」
レディ・ホワイトが触れた彼女の髪は、白く染まっていた。月の光を集めて作ったような自らの白髪を、彼女は見る。過酷な経験が、彼女の髪を白く染めたらしい。
「あなたは、わたしなのですね。レディ・ホワイト」
彼女の言葉に、レディ・ホワイトは頷く。
「わたしは、二十年後の君だよ、我が姫君。これからは君が、レディ・ホワイトを名乗るといい」
涙か彼女の頬を伝って落ち、レディ・ホワイトの頬を濡らす。レディ・ホワイトは、静かに笑った。
「では、おさらばだ。我が姫君、いや、レディ・ホワイト」
レディ・ホワイトであったおんなは、目を閉じた。
彼女は頷くと、ブリザード・ブリンガーを手に取り立ち上がる。その剣は数十年使い込んだ剣のように、手に馴染んた。彼女は剣を手に、地下からの出口へと向かった。
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