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第八話
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彼女は再び秘密の礼拝堂に、きている。眼の前には、十字架に貼り付けられた巨人の像があった。昨夜と違うのは、傍らにいるのが司祭ではなくレディ・ホワイトであることだ。
「行くぞ、我が姫君」
レディ・ホワイトは薄く笑いながら、巨人の像を支える十字架の根元を触る。あの、秘密の通路があらわれた。
今の彼女は、体内から沸き起こる快楽のさざ波に正常な思考を奪われている。それでも、本能的な畏怖をその開かれた闇に感じ、少し入ることを躊躇ってしまう。
レディ・ホワイトは嘲るような笑みをみせ、彼女の手を取ると強引に闇の中へと飛び込んだ。駆け下りるように階段をくだると、螺旋状の竪穴へと二人は飛び込む。
彼女の体内には暗黒神とはちがうなにかが、レディ・ホワイトの手によって埋め込まれている気がしていた。その何ものかは、飽くことなく快楽の波を生み出し続けている。彼女はそれに逆らうことはできず、なされるがままであった。そのため、本来感じるはずの恐怖や嫌悪が薄らいでいるようにも思う。
昨夜と同じように、二人は地中湖へと落ちた。そして、水晶の地面へと這い上がる。
彼女は、そこにあるものをみて、息をのんだ。それは、白い肌をした少女の死体である。
「気にするな、彼女は役割を果たし満足して死を迎え入れたのだ。それよりも、わたしたちには成すべきことがある」
呆然としつつも、彼女は頷き前へと進む。幾本もの水晶の柱が立ち並ぶ中心にある、円形の舞台。その中心に、戦慄すべき異形の人影がみえる。
それは、彼女が夫として迎えたおとこ。蛮族の副官で、あった。しかし、もはや野獣の高貴さをまとったような獰猛な表情は失われ、病に侵されたもののように虚ろな顔をしている。
蛮族の副官は、虚ろな顔に笑みのようなものを浮かべた。その顔は虚ろであるとともに、飢えがある。
「よくぞきた、我が妻よ。よくも、おれをこの暗き深淵に落としてくれたな」
ぞっとするような、地の底から響くがごとき声で蛮族の副官は語りかける。そのような有り様をみて尚、彼女の内で蠢くなにかには快楽を生み出し続けた。蛮族の副官は、彼女の欲情を感じており舌舐めずりをする。
「しかし、おまえはおれの望むものを携えてきたようだ。寄越すがいい、おまえの肉が放つ昏い欲情を」
蛮族の副官であったものの身体が、変わってゆく。胴体から何本もの触手が蠢きながら、伸びていった。まるで海底に棲む軟体生物へと変化したのかと思える、変貌ぶりだ。
彼女の背後で、レディ・ホワイトがナイフをふるう。彼女が纏っていた麻の長衣が引き裂かれ、夜空に輝く月の化身がごとき裸身が露わとなった。胸の蕾や下腹の花が露出して、欲情の呻きをあげるのを彼女は感じる。
レディ・ホワイトが背後からそっと耳に囁きかけた。
「では、釣り餌としての役目を果たしてもらおう。我が姫君」
背を押され、彼女は一歩踏み出す。異形のおとこが放つ触手が、彼女の存在を感じて一斉に震えた。そして、彼女の奥深いところでも、それに呼応して欲情の喘ぎをあげる。
触手たちが、彼女に近づいてきた。それらは闇の中で濡れて滑り、桜色に光っている。おぞましいが、彼女は逆らうことができず近づいてゆく。
後ろで、レディ・ホワイトが叫ぶ。
「走れ、姫君! 走れ、快楽の檻に閉じ込められるぞ!」
「行くぞ、我が姫君」
レディ・ホワイトは薄く笑いながら、巨人の像を支える十字架の根元を触る。あの、秘密の通路があらわれた。
今の彼女は、体内から沸き起こる快楽のさざ波に正常な思考を奪われている。それでも、本能的な畏怖をその開かれた闇に感じ、少し入ることを躊躇ってしまう。
レディ・ホワイトは嘲るような笑みをみせ、彼女の手を取ると強引に闇の中へと飛び込んだ。駆け下りるように階段をくだると、螺旋状の竪穴へと二人は飛び込む。
彼女の体内には暗黒神とはちがうなにかが、レディ・ホワイトの手によって埋め込まれている気がしていた。その何ものかは、飽くことなく快楽の波を生み出し続けている。彼女はそれに逆らうことはできず、なされるがままであった。そのため、本来感じるはずの恐怖や嫌悪が薄らいでいるようにも思う。
昨夜と同じように、二人は地中湖へと落ちた。そして、水晶の地面へと這い上がる。
彼女は、そこにあるものをみて、息をのんだ。それは、白い肌をした少女の死体である。
「気にするな、彼女は役割を果たし満足して死を迎え入れたのだ。それよりも、わたしたちには成すべきことがある」
呆然としつつも、彼女は頷き前へと進む。幾本もの水晶の柱が立ち並ぶ中心にある、円形の舞台。その中心に、戦慄すべき異形の人影がみえる。
それは、彼女が夫として迎えたおとこ。蛮族の副官で、あった。しかし、もはや野獣の高貴さをまとったような獰猛な表情は失われ、病に侵されたもののように虚ろな顔をしている。
蛮族の副官は、虚ろな顔に笑みのようなものを浮かべた。その顔は虚ろであるとともに、飢えがある。
「よくぞきた、我が妻よ。よくも、おれをこの暗き深淵に落としてくれたな」
ぞっとするような、地の底から響くがごとき声で蛮族の副官は語りかける。そのような有り様をみて尚、彼女の内で蠢くなにかには快楽を生み出し続けた。蛮族の副官は、彼女の欲情を感じており舌舐めずりをする。
「しかし、おまえはおれの望むものを携えてきたようだ。寄越すがいい、おまえの肉が放つ昏い欲情を」
蛮族の副官であったものの身体が、変わってゆく。胴体から何本もの触手が蠢きながら、伸びていった。まるで海底に棲む軟体生物へと変化したのかと思える、変貌ぶりだ。
彼女の背後で、レディ・ホワイトがナイフをふるう。彼女が纏っていた麻の長衣が引き裂かれ、夜空に輝く月の化身がごとき裸身が露わとなった。胸の蕾や下腹の花が露出して、欲情の呻きをあげるのを彼女は感じる。
レディ・ホワイトが背後からそっと耳に囁きかけた。
「では、釣り餌としての役目を果たしてもらおう。我が姫君」
背を押され、彼女は一歩踏み出す。異形のおとこが放つ触手が、彼女の存在を感じて一斉に震えた。そして、彼女の奥深いところでも、それに呼応して欲情の喘ぎをあげる。
触手たちが、彼女に近づいてきた。それらは闇の中で濡れて滑り、桜色に光っている。おぞましいが、彼女は逆らうことができず近づいてゆく。
後ろで、レディ・ホワイトが叫ぶ。
「走れ、姫君! 走れ、快楽の檻に閉じ込められるぞ!」
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