超弩級宇宙戦艦パルシファル

ヒルナギ

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最初の接触 02-04

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 スクリーンに、艦体へ可動式装甲板から展開されていたスペースセイルが折り畳まれ収容されていく様子が、映し出される。

 そして推進機関が停止されたことにより、疑似的な重力が失われた。ブリッジは無重力状態となるが、ダーナやユーリが身にまとっているスペースジャケットが微力ながら電磁重力を発生させるため身体が宙に浮いてしまうようなことはない。


「ユーリ、戦闘支援AIのUIを起動しなさい」


 ダーナ王女の指示に、ユーリはまたヴァーチャルコンソールの操作を行う。

 そして、黒い制服に白のフリルがついたエプロンをつけた、三人の少女たちがブリッジに出現した。

 立体映像のUIである彼女らはブリッジの宙を漂いながら、愛らしい声で挨拶をする。


「はぁい、ウルズよ」

「スクルドだよ、呼んでくれてありがとう」

「ヴェルザンディです、ご主人様」


 ダーナ王女の不機嫌な顔がさらに凶悪な様相をおびたため、ユーリはほとんど硬直状態になった。


「いったいこのUIのデザインしたのは、どこの馬鹿なの」

「え、えっと」


 ユーリが、ふるえる声で応える。


「確か、科学局長のフランツ・フェルディナンド博士だと聞いています」


 ダーナ王女は、ふん、と鼻をならした。


「もし会うことがあれば、反射的に顔面へ一発いれてしまいそうね」

「あらぁ、姫様。そんなこと言われると、すこし傷つくわねぇ」


 ウルズの言葉に、ダーナ王女は少し舌打ちをした。


「なんでもいいから、戦闘準備を開始して」

「承知しました、ご主人様」


 ヴェルザンディがお辞儀して応えると、宙に手をふってウインドウを起動していく。

 各種兵装の状態を確認して、スタンバイ状態からアクティブに切り替えていった。

 ダーナ王女はリニアシートに深く腰をおろして、腕組みをする。

 ユーリはおそるおそるその様子を、伺っていた。


◆     ◆     ◆


 ギャラリーデッキにたどり着いたケン・ブラックソードは、ちょうどハンガーからあがってきた赤毛の少女に声をかける。


「サーシャ、ミリタリーモジュールで出撃するぞ」


 つなぎを着た赤毛にそばかすの少女は、にやりと笑う。


「ああ、ちょうど今アタックフォームに換装し終えたところだわ。いつでも、いけるよ」


 ケンは、口笛をふく。


「流石だな、サーシャ」


 サーシャは、てれたように頭をかいた。


「ま、非常警報が流れたからな」


 ケンは、舌をまく。時間は十分もなかったはずだが、ひとりでやったのなら驚くべき手際だ。

 その時、一団のおとこたちがギャラリーデッキへ飛び込んでくる。

 先頭にいた身長が二メートルはある大男が、ケンに声をかけた。


「ブラックソード隊長、いきなりおれたちの出番ですか?」


 ケンは、その大男に笑みをみせる。


「そうだ、グスタフ。一杯やってところ、すまんね。アタックチーム出撃だ」


 グスタフと呼ばれたおとこは、少しゲップをするとにやりと笑う。


「全くのんびりコークでも飲んでられる任務と思ったんですがね、残念です」


 ケンは、笑みをかえすとハンガーデッキへのハッチをひらく。そこにはアタックチーム9機のミリタリーモジュールがバトルスラスタユニットを装着された状態で、待機していた。全員が、網膜投影ディスプレイのついた密閉型ヘルメットを装着するとそれぞれ自分の機体に乗り込んでゆく。

 ケンの機体は隊長機であり、他のアーミーグリーンで塗装された機体と違いオフブラックに金色のストライプが入った塗装がされている。

 三メートルはあるバトルスラスタユニットを装着したミリタリーモジュールは、長大なマントを纏った巨人のようにもみえた。

 ケンは、自機に乗り込むと網膜投影ディスプレイを降ろし前面装甲を閉じる。ヘルメットに空気の補給用バルブが接続され、密閉された機体内には衝撃吸収用ジェルが充填された。準備が整い操作可能となったパワードアーマーを動かし、歩いて電磁カタパルトのほうへと向かう。

 今、艦にGはほとんどかかっていないため無重力に近いが、磁力により足が床に貼り付くため歩くことができる。

 ケンは、電磁カタパルトにたどり着くとローンチバーで脚部をカタパルトに固定した。背後でブラストディフレクターが立ち上がり、バーニアからの噴射にそなえる。

 バーチュアルコンソールでミリタリーモジュールのシステムを起動し終えたケンは、両手で二十ミリハンドキヤノンを保持した。


「サーシャ、ケン・ブラックソード機発艦する」

「了解、ゲートを開く」


 ケンは、バトルスラスタユニットのエンジン出力をあげる。バーニアのロケット噴射がブラストディフレクターにあたり、燃え上がるような輝きを見せた。

 前方で、ゲートが開き漆黒の宇宙空間がケンの視界に入ってくる。

 サーシャが、叫ぶようにいった。


「ねぇ、機体を壊さないで戻ってよ!」


 ケンは、少し苦笑する。


「あたりまえだ、無傷で戻るさ」


 ぐん、と電磁カタパルトが作動し、急激な加速が行われた。押しつぶされそうな重圧にケンの息が、とまる。視界が暗くなり、一瞬意識が遠くなった。

 ゲートから宇宙空間へ放出され、Gから解放されたケンは息をつく。機体の進行方向を、帝国艦のほうへ向ける。

 ブラックソード機に続いて次々とアタックチームのミリタリーモジュールが発艦し、フォーメーションをとっていった。四機ずつがひとつの隊を組み、四機の小隊がブラックソード機を先頭に左右へ展開する。

 ケン・ブラックソードの顔の側に、羽を持つ小さな少女が出現した。フェアリーと呼ばれる人工生命体の、ヒューマンインターフェースである。

 漆黒の肌に金色の少女は、ケンに話しかけた。


「フェアリー・ヴェリンダ、起動完了。配置についたよ」

「おう」


 ケンは、精神の深部で人工生命体とのリンクが確立したのを感じる。

戦艦にしろミリタリーモジュールにしろ、様々な装備を操っているのは実質的には人工生命体であった。戦艦の人工生命体はデーモンと呼ばれ、ミリタリーモジュールの場合はフェアリーと呼ばれる。

 パイロットはその人工生命体と精神をシンクロナイズさせて、機をコントロールしていた。


「ねえ、ケン。今日は誰を血祭りにあげるの?」


 ヴェリンダは、月の輝きを宿したような金色の瞳を輝かせてケンに問いかける。人工生命体はシンクロしているパイロットの性格に応じて、自身のパーソナル・モデルを形成した。

 ヴェリンダは、とても好戦的な性格を現す笑みを浮かべている。


「今日の遊び相手は、銀河連邦軍のミリタリーモジュールさ」


 ひゅうーと、ヴェリンダは口笛をふく。


「へえ、ちょいとそいつは手強いんじゃあないの」


 ケンは、ふてぶてしく口を歪めた。


「退屈は、しなくてすみそうだな」


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