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最初の接触 02-05
しおりを挟むブリッジにふたりが、飛び込んでくる。
頑強そうな身体を持ち凶悪な人相をした初老のおとこと、黒髪を切れ長な目の上で切りそろえた軍服姿の小柄な若い女性。
顔に幾つも傷跡が残ったおとこは、ブリッジに着くなり艦長席へ腰をおろす。
「何がおこっている、状況を報告しろ!」
艦長席に座ったおとこは、吠えるようにいった。
ユーリは、ちらりとダーナ王女をみる。不機嫌そうに沈黙している姫君をみてため息をつくと、艦長席のおとこに報告する。
「ワルター艦長、本艦は帝国中央政府調査局所属の艦から、救援依頼を受けています」
艦長席のワルターは、凶悪な顔をさらに殺気にみなぎらせる。
「帝国の船は、どこから攻撃を受けてるんだ」
「所属不明の艦ですが、銀河連邦所属と思われます」
ワルターは、むうと唸ると目を細める。
「当直は、ケン・ブラックソードとユーリ・ノヴァーリスのはずだが」
ダーナ王女は、あからさまにため息をつくとワルターのほうを振り向く。
「ケン・ブラックソードはミリタリーモジュールで出撃したわ。コ・パイロットシートにいるのはわたし、ダーナ・ロキ」
ワルターの目が、凶暴さを帯びてつり上がった。
「姫様、いったい誰がブラックソードの小僧に出撃命令を出したんですか」
ダーナ王女は、肩をすくめる。
「ワルター艦長、あなたが出したんじゃなかったら、誰もだしてないと思うよ」
ワルターの顔が赤く染まった瞬間、軍服のおんなが泣きながら崩れ落ちた。
「ひめさまー!」
軍服のおんなは、よよと泣きながら声をあげる。
「わたしはてっきり姫様はどこかで無駄飯を貪って惰眠についてると思ってましたが、こんなところで艦の危機をフォローされていたなんて」
「あぁ、アグネス・ルンゲ少尉。そういうのいいから。ワルター艦長、とにかく今は帝国船の救援依頼を保留にしている。はやく、返答が必要と思うわ」
ワルターは、深くため息をつく。
「受諾する以外に、答えはないでしょうな」
「見捨てたって、どうってことないと思うよ。わたしは」
ワルターは強く光る目で、ダーナ王女をにらむ。
「それは、信義にもとります。あなたのお父様、王陛下も許されないでしょう」
ダーナ王女は、にやりと笑った。
「へえ、じゃあ、やるんだ。ケン・ブラックソードは、正解ってことじゃん」
ワルターは不機嫌そうにため息をつくと、吠えるような声でユーリ・ノヴァーリスに命じた。
「帝国の船と、回線を開け」
ユーリがヴァーチャル・コンソールを操作すると、ウィンドウが開きおんなの顔を映し出す。
青い瞳を焦燥で曇らせるおんなの顔は、それでも損なわれぬ美貌が輝いている。
ワルターは、値踏みするようにその顔を見ながら口を開く。
「ソル星系テラ所属ブリュンヒルド艦長、ブルーノ・ワルターです。本艦は貴艦より受けた救援要請を受諾します」
おんなの顔が、安堵に歪む。
「銀河帝国中央情報局調査局長、シルビア・ガーンズバックです。貴艦の英断に、深く感謝します」
英断? 愚断のいい間違えだろ、とワルターは思ったが口には出さず苦笑を浮かべるにとどめる。
「一応確認するが、貴艦を追尾している戦艦は銀河連邦所属と思ってよろしいな」
シルビアは、少し眉間を曇らせる。
「そういう呼び名があるのは知っていますが、帝国は彼らをテロ組織として認定してます」
そいつは初耳だと思いワルターは視線をダーナ王女へむけたが、王女は肩をすくめただけで何も応えない。ワルターはあからさまに舌打ちをすると、シルビアを睨みつける。
「まあ、どうでもいいです。ただ、ひとつ教えていただきたいが、なぜこのアクセスポイントを選んだのです?」
シルビアは、多少困惑したように目を細める。
「この星域で一番安全なアクセスポイントを選んだとしか、いいようがないわ」
ワルターは、馬鹿にしたように鼻で笑ってみせるがシルビアは表情を変えない。
ワルターはあきらめたように、真顔へもどす。
「最前をつくしますが、本艦は練習艦だ。覚悟はきめてください」
「ええ、期待してます、ワルター艦長」
ワルターは失笑すると、ユーリのほうを睨む。
「回線を切れ」
おんなの顔を映したウィンドウが消滅すると同時にワルターは全艦放送の回線を開き、叫ぶように言った。
「本時刻より本艦は、所属不明ヴリトラクラスを敵艦とみなし、戦闘を開始する!」
ワルターは、ユーリに向かって吠えた。
「メインブラスト点火、全艦戦闘態勢をとり、第一戦闘速度で進路をヴリトラクラスへとれ。それと、ブラックソード機との回線を繋げ」
「は、はいぃ」
ユーリは、あたふたと操舵装置を引き起こしハンドルを握る。
「メインブラスト点火、第一戦闘速度まで加速、進路をヴリトラクラスへとります。そ、それと」
ワルターの凶悪な目をちらちら見ながら、ユーリは震え声で言った。
「電波妨害が激しくて、ブラックソード機との回線は繋がりません」
「なにぃ」
一瞬、ワルターは猛獣の輝きを瞳に宿したが、すぐにため息をついた。
同時に、ユーリもため息をつく。
そして、ワルターは凶悪な眼差しをダーナのほうへ向ける。
「姫様、帝国は連邦を必要悪として放置する方針だと聞いていますがね。なぜ彼らはテロリストで、我々が彼らのテロに巻き込まれなきゃならんのです」
ダーナは、にっこり笑って応える。
「ごめん、マジ判んないな。今の状況」
ダーナは殺気のこもったワルターの眼差しを、清々しい笑顔で受け止めた。
ワルターは諦めたようにため息をつくと、小声で呟く。
「まあいいでしょう。真実は墓に持って行っても、クソの役にもたたん」
ダーナは、あははと笑うと肩を竦めた。
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