世界を救ったゲーマー・ファントムMAYAは、一対一で決闘する

ヒルナギ

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第十四話

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「しかし、やばいな」

 甲賀が呟く。スクリーンを見る限りでは、有利なポジションをとったゼロはMAYAを弄んでいるようにさえ思える。

「逃げるのが精一杯な感じだ。5分もつか?」

「いや、勝つよMAYAは」

 おれの言葉に含まれた確信に、思わずナミがおれの顔をのぞき込む。

「今、MAYAは感触を確かめているだけだ。思ったほど操作にぎこちなさは無い。勝てるさ」

「本気なの、恭平」

 おれは微笑みかける。

「気がついていることが、一つある」

「なあに?」

「MAYAが勝ったら、言ってやるよ」

 ナミは苦笑する。

「こんな時に後出しじゃんけんのしかえし?」

「つーかね、ほらもう5分だろ」

 ナミは機動隊に連絡し、突入を指示する。
 その瞬間、MAYAの機体の映像が、きりもみ状態に陥ったように激しくゆれながら回転する。誰もがMAYAが撃墜されたものと信じた。次の瞬間、嘘のようにMAYAの機体の映像が安定し、そこにゼロのF15が映し出される。そして、F15が火を吹いた。MAYAはいわゆるロー・ヨー・ヨーを使い自身の落下で速度を上げて、反撃に転じたのだ。
 ナミは機動隊との電話を終える。

「ゼロは確保したわよ」

「生きてるのか?」

 ナミは肩を竦める。

「無抵抗でげらげら笑ってたみたい。負けたのがショックだったんでしょうね」

 ナミはおっさんたちに状況を手短に説明する。安堵のため息の合唱がおこる。

「で、気がついたことというのは?」

 事後処理の指示で忙しいナミのかわりに、甲賀が聞いてくる。

「簡単な話さ。おれたち、つまりゼロとおれは実際に戦闘機に乗っていた経験がある。遠隔操作システムの場合、身体にかかるGを無視した操作ができる。つまり実際戦闘機に乗って操縦していると、Gによって意識を失うような操作も遠隔操作なら可能だ。しかし、おれたちのように実際に戦闘機に乗っていたものは頭では無く、身体がGを覚えている。そういう操作にはコンマ数秒のレベルで、躊躇いが生じる。MAYAにはそういう躊躇いが一切無い。その強みがあるということだ」

 ナミの元にF15の機体が確保され、ウィルスの搭載されたミサイルが無事回収できたとの連絡が入る。ようやく場の緊張が薄れた。
 それと同時に、MAYAのF4EJが空母に着艦する映像が映し出される。MAYAの帰還が完了した。
 その場の全員が注目する中、MAYAがゆっくりブースから出てくる。全員の視線に気がついたMAYAは、その場に立ちすくむ。
 誰ともなく、拍手が始まった。気がつくと、その場にいた全員が拍手をしている。皆無言のままで、ただ拍手の音だけがテストルームを満たした。
 MAYAは今まで見せたことの無い表情で頬を紅らめ、おれの前へくる。拍手が鳴り止んだ時、MAYAの頬には涙が光っていた。おれはMAYAに微笑みかける。

「よっ、お疲れ」

「私は」

 MAYAは言葉を詰まらせながらやっとのように、一言呟く。

「私は勝ったよ、恭平」

「よかったじゃねぇか。んじゃ、これが片づいたらもう一戦しようぜ、おれと」

 MAYAは微笑む。

「こりないな、恭平。そんなに私にやられたいの?」

 おれは苦笑する。

「次はおれの勝つばんだ。つーか、勝たせろ、な?」
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