【R18】モンスター・プリンス

ヒルナギ

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第八話

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 憑神は、やれやれといった表情で少年に向き合う。

「なんだか、またややこしそうなのが、来たみたいですよ」

 憑神が指差すほうに、月の光を浴びて金色に輝く竜がいた。

 どうやら、ドラゴネット程度の小型にみえるその竜は、館の屋根に着地するつもりらしい。

 地獄の獣がごとき凶々しい姿をした竜は、背に異形の天使を乗せている。

 天使は、この世の外から訪れたものにこそ相応しい人外の美貌を持ち、白銀に輝く翼は畳まれているが神秘的な光を放っていた。

 ただその右腕には、おぞましい瘴気を放つ蛇が巻き付いていたのだが。

 天使の後ろから、ひとりの少女が降りてくる。

 その少女は、夜のように黒い生地のドレスを淡雪のような白いレースで飾ったゴシックロリータふうの衣装を纏っていた。

 少女は、スカートの裾を掴み礼をとる。

「ご機嫌麗しゅう、魔界の王子にあらせられるケイン殿下。プラハの魔法協会から謹んでご挨拶に参りました」

 少年は、珍しいものを見るように少女を見る。

「ああ、プラハのねぇ」

「ヴァチカンの抹殺機関が退散してからくるあたり、いかにもですな」

 フランケンシュタインは少し皮肉な笑みを浮かべたが、少女は笑みを浮かべて受け流す。

「ヴァチカンとはよい関係を続けたいと、思っておりますゆえ」

「よい関係って。まあ、ヴァチカンがナグ・ハマディ文書を聖典として認めてくれるといいね」

 少年の言葉に、少女は笑みを浮かべて頷く。

「本当に、そう思いますわ」

「で、後ろにいるのはアスタロト閣下だね。その若さで、地獄の大公爵を召喚して使役とは優秀だね。名前はなんていうの?」

 少女は、深く頭をさげる。

「過分なお言葉、恐れ入ります。わたしは、花苑院理図と申します」

「なんという嘆かわしいことだ、公爵閣下」

 詩人のような白皙の顔を憂鬱に曇らせたドラキュラが、首をふる。

「あなたほどの方が、ひとの使い魔とは。本来であれば我らとともに、殿下と並ぶべきでしょうに」

 竜に跨った天使は、美しい顔に少し妖艶な笑みを浮かべた。

「あー、なんか面白そうだから見学に来ただけよ。お久しぶり、ぼっちゃん」

 天使の言葉に、少年は頷く。

「アスタロト閣下も元気そうで、なによりだね」

「プラハもなんでまた、花苑院の狂姫なんぞを使いによこすかね」

 憑神は、やれやれと首を振った。

 少女が険悪に、目を光らせる。

「式神風情が言ってくれるわね。あなたこそ、本来わたしの側にさぶらうべきでしょ」

 憑神が、苦笑した。

「あんたとこは、物部と賀茂の系譜だろ。おれを作ったのは土御門系だから、あんたが土御門に頭を垂れれば、あんたに仕えることになるね」

 少女は、失笑する。

「ナグ・ハマディ文書が、聖典になるくらいありえない」

 少年が、笑い声をあげる。

「ヴァチカンと良い関係は、今世紀中は無理そうかな」

 少女は無言で、頭を下げた。
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