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第十七話
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一方、ジークのほうは、軽くステップを踏みながら魔族の前に立っている。まだ、自分の間合いに入り込む、タイミングが掴めていない。
魔族のおんなが持つのは、杖である。剣であれば、動きはおのずから限られていた。
斬るか、突くしか無い。
しかし、杖であれば、足を払うことができる。槍のように、突くこともできる。
メイスのような打撃系の武器のように、叩くこともできる。
しかも、杖であれば、両端で攻撃ができる。一方の攻撃をかわしても、もう一端の攻撃を受けることになる。
ジークとしては、間合いに入りにくい。魔族のおんなとしては、待つ構えのようだ。
ネズミをなぶる、ネコのような気持ちなのだろう。
(えい、いっちまえ)
待てば、体力の衰弱してゆくジークが不利だ。ジークは杖の間合いに飛び込む。
杖がジークの頭部めがけて、左側から襲う。
ジークは素早く踏み込み、鞭のようにしなる黒い拳を、放った。杖がへし折れる。
ジークは、自分の間合いに飛び込んだ。
(いける!)
ジークは、黒い疾風のような手刀を、魔族のおんなの胸へ突き立てた。確かな手ごたえがあり、指の根元もで胸の中央へ食い込む。
魔族のおんなは、慈母のような笑みをみせた。
「素敵だわ、お前は。魂の底まで貪ってあげる」
ジークの全身を真冬のような悪寒がはしり、左手をひこうとした。しかし、その左腕は、魔族のおんなに捕まれている。
ジークは獣のように、咆哮した。右足が跳ね上がり、魔族のおんなの側頭を襲う。巨大な棍棒のように、ジークの右足は魔族のおんなの頭を薙いだ。
おんなは倒れ、ジークは一回転し、距離をとる。左腕が痺れていた。全身が吹雪の中に晒されたように、冷えきっている。
(氷でできてるのかよ、この姉ぇちゃん)
ジークは再び距離を取り、フットワークを使う。魔族のおんなは当然のように、立ち上がる。人間のおんなであれば、さっきの蹴りで頭蓋骨を砕かれたはずだ。
白い僧衣の胸元は、真紅の血で染められている。魔族のおんなは僧衣を裂き、黒い肢体を露にした。美の化身のごとき、裸体である。撓んだ黒い果実のような乳房、金色に輝く下腹の繁み、野生の獣のごとき、生気と緊張感の張りつめた両足の筋肉、それらがジークの目の前に晒された。
胸に刻まれた、赤い亀裂は、ジークの目の前で癒えて行く。瞬きする間に、その傷は消え去った。魔族のおんなは、僧衣で血を拭う。血を拭った後には、一点の傷もない、完璧な肉体があった。
(さすがに手ごわい)
ジークは呼吸を整え、さらに奥深いところにある力を、呼び覚まそうとしていた。
ここまでくれば、ラハン流格闘術の、奥義を使うしかない。つまり、ジークは、右手を使う決心をした。
(本気になるしか、ないな)
魔族のおんなが持つのは、杖である。剣であれば、動きはおのずから限られていた。
斬るか、突くしか無い。
しかし、杖であれば、足を払うことができる。槍のように、突くこともできる。
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しかも、杖であれば、両端で攻撃ができる。一方の攻撃をかわしても、もう一端の攻撃を受けることになる。
ジークとしては、間合いに入りにくい。魔族のおんなとしては、待つ構えのようだ。
ネズミをなぶる、ネコのような気持ちなのだろう。
(えい、いっちまえ)
待てば、体力の衰弱してゆくジークが不利だ。ジークは杖の間合いに飛び込む。
杖がジークの頭部めがけて、左側から襲う。
ジークは素早く踏み込み、鞭のようにしなる黒い拳を、放った。杖がへし折れる。
ジークは、自分の間合いに飛び込んだ。
(いける!)
ジークは、黒い疾風のような手刀を、魔族のおんなの胸へ突き立てた。確かな手ごたえがあり、指の根元もで胸の中央へ食い込む。
魔族のおんなは、慈母のような笑みをみせた。
「素敵だわ、お前は。魂の底まで貪ってあげる」
ジークの全身を真冬のような悪寒がはしり、左手をひこうとした。しかし、その左腕は、魔族のおんなに捕まれている。
ジークは獣のように、咆哮した。右足が跳ね上がり、魔族のおんなの側頭を襲う。巨大な棍棒のように、ジークの右足は魔族のおんなの頭を薙いだ。
おんなは倒れ、ジークは一回転し、距離をとる。左腕が痺れていた。全身が吹雪の中に晒されたように、冷えきっている。
(氷でできてるのかよ、この姉ぇちゃん)
ジークは再び距離を取り、フットワークを使う。魔族のおんなは当然のように、立ち上がる。人間のおんなであれば、さっきの蹴りで頭蓋骨を砕かれたはずだ。
白い僧衣の胸元は、真紅の血で染められている。魔族のおんなは僧衣を裂き、黒い肢体を露にした。美の化身のごとき、裸体である。撓んだ黒い果実のような乳房、金色に輝く下腹の繁み、野生の獣のごとき、生気と緊張感の張りつめた両足の筋肉、それらがジークの目の前に晒された。
胸に刻まれた、赤い亀裂は、ジークの目の前で癒えて行く。瞬きする間に、その傷は消え去った。魔族のおんなは、僧衣で血を拭う。血を拭った後には、一点の傷もない、完璧な肉体があった。
(さすがに手ごわい)
ジークは呼吸を整え、さらに奥深いところにある力を、呼び覚まそうとしていた。
ここまでくれば、ラハン流格闘術の、奥義を使うしかない。つまり、ジークは、右手を使う決心をした。
(本気になるしか、ないな)
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