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第2話「中二病を発病する」
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わたしは、立ち直れないほど深い虚脱感に陥ってしまう。
わたしは再び、難破した状態になる。
でも、さっきは見かけだけで、こころの中ではフルに活動してたんだけどね。
今はむしろ、こころの中が停止してしまい気力がわいてこない状態だった。
まあ、こんなブラック企業やめてしまえ、って話もあるんだけど。
この会社はただの学生であるわたしをインターンシップで採用し、学費に生活できる部屋まで無償で提供してくれてるのだから。
両親との折り合いが悪く家を飛び出してしまったわたしにしてみると、辞めてしまうと生活の基盤をいきなり失い大学もあきらめることになってしまう。
二年間でほぼ全ての単位を取得し、学位論文も学会誌に発表済みのわたしにしてみれば今更卒業できないという訳にはいかないのよね。
二年後の卒業を前提に、出資してくれる予定の企業もあるわけで、卒業できないと大きなチャンスがまるごと消し飛ぶことになるの。
ある意味、わたしは足元をみられている。
でも会社のほうは、それだけのものをわたしに投資してるのも間違いない。
いろいろまとまりのないことを考えているわたしを、心配そうにオオノがのぞき込む。
まあ、いいやつということだ。
わたしは、そこにつけ込む作戦にでた。
「ねえ、オオノ君。てつだってくれるっすよね」
オオノはでかいアフロの頭を、ぶんぶんとふった。
「おれ、昨日帰ってないから、今日は帰らないと」
わたしは、にっこりと笑う。
「一日帰らないのも、二日帰らないのもいっしょだね」
オオノは、すごく面倒くさそうな顔になった。
「ほら、おれこないだ結婚したとこだしさ。前のプロジェクトで三日マシン室に缶詰めされたとき、帰ったら嫁さん血塗れで気絶してて。まあ、帰んないと色々面倒」
わたしの目が、つりあがる。
「いいじゃん、そんなおんな、死んじゃっても。そのおんなとわたし、どっちが大事なのよ」
「そりゃあ、ふつうに嫁のほうだろ」
そりゃあそうだと思ったけど、わたしはぽろぽろと涙をこぼす。
「ひどい、ひどいよ!」
わたしが叫んだので、みんなが注目しだす。
オオノは、露骨に面倒くさそうになった。
「オオノ君は、いいひとだと思ってたのに!」
オオノは、疲れた顔でいった。
「いや、常識の範疇でならいいひとをしてもいいけどさ。マヤちんとは会社も違うし君の仕事手伝っても、おれただ働きなんだけど」
「いいよ、もう。わたし自力でなんとかするから。そんなひどいひとだって思わなかったよ!」
かなりひどいいいがかりではあったけど、オオノは多少申し訳なさそうな顔になった。
想像以上に、いいやつだ。
しかし、叫んで涙をこぼしたりしてるうちに、なんとなく気力が蘇ったわたしは自力でなんとかしようという気持ちになっていた。
わたしは、ふたたびこころの奥底にもぐりこんでいく。
ただ、今度は少しばかり目的がちがう。
わたしは、彼を呼び出しにいった。
彼は、わたしのこころの奥底に住んでいる。
まあ、言ってみればひとつの部屋をルームシェアしているみたいに、ひとつの身体を共有して使っている感じかな。
少し違うか。
わたしの家を、すこし貸してあげている感じというべきなんだろうね。
だから、家賃をとりたてる代わりに彼に仕事を頼むことがある。
え、イマジナリーフレンドみたいなものかって?
そう思ってもいいけど、二重人格のほうが近いかな。
で、わたしはこころの中の彼と、交渉をはじめた。
(少しばかり、簡単すぎやしないか、この仕事)
彼は、少し不満そうにした。
(面倒くさいだけの、しろものだね)
いやいや、だからあんたに頼んでんだよ、とか、居候のくせに生意気とかいろいろ思ったことは表面にださない。
ださなくても、こころの中だとわかってしまうかもしれないけれど。
(そういわずに、お願いしますよ、師匠。簡単すぎるっていうのなら、バックドアしこんどいていいよ)
(ほう)
彼は、興味をもったようだ。
(そんなことを、してもいいのか)
軍事用戦闘支援システムにバックドア仕込むとか、ふつうに犯罪だしやっていいわけねぇだろ、と思いはしたけど表面にはださない。
(ばれなければ、大丈夫)
(ばれるようなものは、バックドアとはいわない)
そりゃあそうだな、と思う。
(じゃあ、よろしくおねがいするっす)
わたしはやる気をだしたらしい彼に後をたくし、こころの奥底へと沈んでいく。
彼は、わたしの身体をコントロールしはじめ、ディスプレイへと向き合う。
オオノが、心配そうに話しかけてきた。
「なあ、マヤちん。終電までなら、手伝ってもいいぜ」
彼は、落ち着いた顔でオオノをみる。
「オオノ君、マヤ君は不在にしている。ありがとう、君の気持ちはマヤ君に伝わっているよ」
オオノは、目をまるくした。
「え、あんたは誰なんだよ」
彼は少し微笑んで、こたえた。
「僕は、伝説の天才プログラマー、クリスマスだ」
オオノは、ろこつにどん引きの顔になった。
「ち、中二病を発病してる………」
オオノは危ないものにそっと蓋をする感じで彼から離れると、自分の仕事に戻った。
彼は、マシンのようにたんたんと仕事をこなしはじめる。
わたしは再び、難破した状態になる。
でも、さっきは見かけだけで、こころの中ではフルに活動してたんだけどね。
今はむしろ、こころの中が停止してしまい気力がわいてこない状態だった。
まあ、こんなブラック企業やめてしまえ、って話もあるんだけど。
この会社はただの学生であるわたしをインターンシップで採用し、学費に生活できる部屋まで無償で提供してくれてるのだから。
両親との折り合いが悪く家を飛び出してしまったわたしにしてみると、辞めてしまうと生活の基盤をいきなり失い大学もあきらめることになってしまう。
二年間でほぼ全ての単位を取得し、学位論文も学会誌に発表済みのわたしにしてみれば今更卒業できないという訳にはいかないのよね。
二年後の卒業を前提に、出資してくれる予定の企業もあるわけで、卒業できないと大きなチャンスがまるごと消し飛ぶことになるの。
ある意味、わたしは足元をみられている。
でも会社のほうは、それだけのものをわたしに投資してるのも間違いない。
いろいろまとまりのないことを考えているわたしを、心配そうにオオノがのぞき込む。
まあ、いいやつということだ。
わたしは、そこにつけ込む作戦にでた。
「ねえ、オオノ君。てつだってくれるっすよね」
オオノはでかいアフロの頭を、ぶんぶんとふった。
「おれ、昨日帰ってないから、今日は帰らないと」
わたしは、にっこりと笑う。
「一日帰らないのも、二日帰らないのもいっしょだね」
オオノは、すごく面倒くさそうな顔になった。
「ほら、おれこないだ結婚したとこだしさ。前のプロジェクトで三日マシン室に缶詰めされたとき、帰ったら嫁さん血塗れで気絶してて。まあ、帰んないと色々面倒」
わたしの目が、つりあがる。
「いいじゃん、そんなおんな、死んじゃっても。そのおんなとわたし、どっちが大事なのよ」
「そりゃあ、ふつうに嫁のほうだろ」
そりゃあそうだと思ったけど、わたしはぽろぽろと涙をこぼす。
「ひどい、ひどいよ!」
わたしが叫んだので、みんなが注目しだす。
オオノは、露骨に面倒くさそうになった。
「オオノ君は、いいひとだと思ってたのに!」
オオノは、疲れた顔でいった。
「いや、常識の範疇でならいいひとをしてもいいけどさ。マヤちんとは会社も違うし君の仕事手伝っても、おれただ働きなんだけど」
「いいよ、もう。わたし自力でなんとかするから。そんなひどいひとだって思わなかったよ!」
かなりひどいいいがかりではあったけど、オオノは多少申し訳なさそうな顔になった。
想像以上に、いいやつだ。
しかし、叫んで涙をこぼしたりしてるうちに、なんとなく気力が蘇ったわたしは自力でなんとかしようという気持ちになっていた。
わたしは、ふたたびこころの奥底にもぐりこんでいく。
ただ、今度は少しばかり目的がちがう。
わたしは、彼を呼び出しにいった。
彼は、わたしのこころの奥底に住んでいる。
まあ、言ってみればひとつの部屋をルームシェアしているみたいに、ひとつの身体を共有して使っている感じかな。
少し違うか。
わたしの家を、すこし貸してあげている感じというべきなんだろうね。
だから、家賃をとりたてる代わりに彼に仕事を頼むことがある。
え、イマジナリーフレンドみたいなものかって?
そう思ってもいいけど、二重人格のほうが近いかな。
で、わたしはこころの中の彼と、交渉をはじめた。
(少しばかり、簡単すぎやしないか、この仕事)
彼は、少し不満そうにした。
(面倒くさいだけの、しろものだね)
いやいや、だからあんたに頼んでんだよ、とか、居候のくせに生意気とかいろいろ思ったことは表面にださない。
ださなくても、こころの中だとわかってしまうかもしれないけれど。
(そういわずに、お願いしますよ、師匠。簡単すぎるっていうのなら、バックドアしこんどいていいよ)
(ほう)
彼は、興味をもったようだ。
(そんなことを、してもいいのか)
軍事用戦闘支援システムにバックドア仕込むとか、ふつうに犯罪だしやっていいわけねぇだろ、と思いはしたけど表面にはださない。
(ばれなければ、大丈夫)
(ばれるようなものは、バックドアとはいわない)
そりゃあそうだな、と思う。
(じゃあ、よろしくおねがいするっす)
わたしはやる気をだしたらしい彼に後をたくし、こころの奥底へと沈んでいく。
彼は、わたしの身体をコントロールしはじめ、ディスプレイへと向き合う。
オオノが、心配そうに話しかけてきた。
「なあ、マヤちん。終電までなら、手伝ってもいいぜ」
彼は、落ち着いた顔でオオノをみる。
「オオノ君、マヤ君は不在にしている。ありがとう、君の気持ちはマヤ君に伝わっているよ」
オオノは、目をまるくした。
「え、あんたは誰なんだよ」
彼は少し微笑んで、こたえた。
「僕は、伝説の天才プログラマー、クリスマスだ」
オオノは、ろこつにどん引きの顔になった。
「ち、中二病を発病してる………」
オオノは危ないものにそっと蓋をする感じで彼から離れると、自分の仕事に戻った。
彼は、マシンのようにたんたんと仕事をこなしはじめる。
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