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第5話「ランゲ・ラウフ」
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オフィスのある五階からエレベータで地上に降りると、久しぶりに空をみた。
思ったより、青い。
その輝きは疲れ果てたわたしの目にはいささか過酷で、昼間外に出てしまったヴァンパイアみたいに顔をしかめる。
オフィスの前にある道路は、車のとおる量は少ないけれどけっこう広い。
無駄にひろいそのとおりを隔てた向こう側に、コンビニがあった。
めったに車はとおらないのでわたってしまってもいいけれど、一応信号待ちをする。
オフィスビルは交差点の角にあり、これまたそれなりに大きな交差点だから無駄に信号の待ち時間がながい。
なんだか無意味に、ヒットポイントを削られてしまったような気になる。
信号が変わったときには敗残兵みたいにうなだれて、交差点をわたった。
とぼとぼと横断歩道の白い縞を見ながら歩いているわたしの目に、それがとびこんできた。
え、って思い二度見する。
新手の幻覚かと思ったが、そうではないらしい。
本が、おちていた。
しかも妙にアンティーク感がある、丈夫そうな革表紙をもつ立派な本である。
本来洋館の書斎にでも収まっているのが正解であろう重厚な本が、なぜこんなうらさびれた交差点におちているのだろうか。
わたしはおもわずその本を、ひろいあげてしまう。
重たい。
あまりの重さに、びっくりする。
多分、同じサイズのノートパソコンより重いんじゃあないだろうか。
おもわずわたしは、その本をひらいてしまう。
そこに現れたものを見て、わたしは目を丸くし蒼ざめる。
本は中身の紙をくり抜かれ、拳銃が納められていた。
あまり見かけない、随分古そうな少しばかり奇妙な形をした拳銃。
そして、誰かがわたしの頭の中へ話しかけてきた。
(やあ、久しぶりだね。クリスマス)
わたしは、膝ががくがくするような感じを味わう。
これは、三日寝てない幻覚なんだろうか。
確かに意識は多少、朦朧としていたかもしれない。
でも、なんというかあまり幻覚っぽい感じがしなかった。
とてもありえないほど非現実的であるから、それがわたしのこころの中から表出したものとはとても信じられない。
くらくらしながら、わたしはこころの中の声に答える。
「ねえ、あなたは誰なの?」
いや、判っている。
きっと話しかけているのは、目の前の拳銃。
(僕は、ランゲ・ラウフだよ。まさか、忘れたなんていわないだろう)
その言葉に答えたのは、わたしの中にいるクリスマスだった。
(もちろん、憶えているさ。ランゲ・ラウフ君)
なんだかわたしがのけものにされて、かってに話をはじめそうな雰囲気になってきてるじゃあないの。
「ちょっと、どうゆうことよ」
その時、クラクションの音が聞こえ、わたしは我に返る。
交差点の信号は、点滅をはじめていた。
いや、それよりもわたしは突然自分が影の中に入っていることに気がつく。
あせって振り向くと、鋼鉄の壁みたいな大型トラックがすぐ後ろに迫っていた。
巨獣が咆哮をあげるみたいにクラクションをならしながら、巨大なトラックがわたしに近づいている。
10トンはありそうな大きなコンテナを、電車の貨車みたいに引きながらトラックは向かってきていた。
わたしは、全てがスローモーションに感じる。
もの凄く非現実的な感覚の中で、ああ、自分は死ぬんだなと理解した。
立ちすくんだまま、どうすることもできない。
まるで全てが映画のワンシーンみたいに感じられ、どこかひとごとのように思っているわたしがいた。
死ぬ寸前に人生が走馬燈のように流れるというけれど、その時わたしの頭に浮かんだのはこんなことだ。
(ああ、タバコ吸いそこねたなあ)
そう思った瞬間に巨大な鉄の塊がわたしにぶつかり、わたしの意識は闇に呑まれる。
思ったより、青い。
その輝きは疲れ果てたわたしの目にはいささか過酷で、昼間外に出てしまったヴァンパイアみたいに顔をしかめる。
オフィスの前にある道路は、車のとおる量は少ないけれどけっこう広い。
無駄にひろいそのとおりを隔てた向こう側に、コンビニがあった。
めったに車はとおらないのでわたってしまってもいいけれど、一応信号待ちをする。
オフィスビルは交差点の角にあり、これまたそれなりに大きな交差点だから無駄に信号の待ち時間がながい。
なんだか無意味に、ヒットポイントを削られてしまったような気になる。
信号が変わったときには敗残兵みたいにうなだれて、交差点をわたった。
とぼとぼと横断歩道の白い縞を見ながら歩いているわたしの目に、それがとびこんできた。
え、って思い二度見する。
新手の幻覚かと思ったが、そうではないらしい。
本が、おちていた。
しかも妙にアンティーク感がある、丈夫そうな革表紙をもつ立派な本である。
本来洋館の書斎にでも収まっているのが正解であろう重厚な本が、なぜこんなうらさびれた交差点におちているのだろうか。
わたしはおもわずその本を、ひろいあげてしまう。
重たい。
あまりの重さに、びっくりする。
多分、同じサイズのノートパソコンより重いんじゃあないだろうか。
おもわずわたしは、その本をひらいてしまう。
そこに現れたものを見て、わたしは目を丸くし蒼ざめる。
本は中身の紙をくり抜かれ、拳銃が納められていた。
あまり見かけない、随分古そうな少しばかり奇妙な形をした拳銃。
そして、誰かがわたしの頭の中へ話しかけてきた。
(やあ、久しぶりだね。クリスマス)
わたしは、膝ががくがくするような感じを味わう。
これは、三日寝てない幻覚なんだろうか。
確かに意識は多少、朦朧としていたかもしれない。
でも、なんというかあまり幻覚っぽい感じがしなかった。
とてもありえないほど非現実的であるから、それがわたしのこころの中から表出したものとはとても信じられない。
くらくらしながら、わたしはこころの中の声に答える。
「ねえ、あなたは誰なの?」
いや、判っている。
きっと話しかけているのは、目の前の拳銃。
(僕は、ランゲ・ラウフだよ。まさか、忘れたなんていわないだろう)
その言葉に答えたのは、わたしの中にいるクリスマスだった。
(もちろん、憶えているさ。ランゲ・ラウフ君)
なんだかわたしがのけものにされて、かってに話をはじめそうな雰囲気になってきてるじゃあないの。
「ちょっと、どうゆうことよ」
その時、クラクションの音が聞こえ、わたしは我に返る。
交差点の信号は、点滅をはじめていた。
いや、それよりもわたしは突然自分が影の中に入っていることに気がつく。
あせって振り向くと、鋼鉄の壁みたいな大型トラックがすぐ後ろに迫っていた。
巨獣が咆哮をあげるみたいにクラクションをならしながら、巨大なトラックがわたしに近づいている。
10トンはありそうな大きなコンテナを、電車の貨車みたいに引きながらトラックは向かってきていた。
わたしは、全てがスローモーションに感じる。
もの凄く非現実的な感覚の中で、ああ、自分は死ぬんだなと理解した。
立ちすくんだまま、どうすることもできない。
まるで全てが映画のワンシーンみたいに感じられ、どこかひとごとのように思っているわたしがいた。
死ぬ寸前に人生が走馬燈のように流れるというけれど、その時わたしの頭に浮かんだのはこんなことだ。
(ああ、タバコ吸いそこねたなあ)
そう思った瞬間に巨大な鉄の塊がわたしにぶつかり、わたしの意識は闇に呑まれる。
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