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第10話「皆殺しの歌を、聴かせてやる」
しおりを挟むわたしのこころは、なぜか冴えわたっていく。
凍り付いた真冬の湖のように、全てが静まりかえり全てが殺されていった。
その冷気を、怒りとよんでもいい。
「ねえ、こうしようよ」
わたしは、少しふるえる声でいった。
「ディディ、あなたの頭の中にクリスマスをダウンロードしたげる。それで、なんとかしなよ。わたしは、クリスマスを残して帰るから」
ディディは、とても申し訳なさそうな声をだす。
「それでもかまわないのだが、君は帰れないよ」
わたしは、おもわず叫ぶ。
「帰れないって、いったいどうゆうことよ!」
ディディは、わたしがまだ手にしていた本を指さす。
「君が、その拳銃をこちら側にもってきてしまったからね」
わたしは、首をかしげる。
「それが?」
「君が帰るには、帰る先の座標位置が必要だ。その拳銃がデルファイにあれば、ランゲ・ラウフ本体と魔法的リンクが貼られるので座標位置を知ることができ、クリスマスは往還できた。けれど、君がもってきてしまったらデルファイの座標位置を知るすべがない」
わたしの目は、点になる。
マリーンは何が面白いのか、にこにこしながら口をはさんできた。
「まあ、魔法で座標位置を解析すればなんとかできるよ」
わたしは、ため息をつく。
なんだ、帰れるんじゃん。
でも、ディディが首をふった。
「魔法は代償として、生命の燃焼を必要とする。デルファイの座標位置を解析するような高度な魔法は、大量の生命を燃焼させねばできないはずだ」
それって、生け贄が必要ってこと?
「大量って、どれくらい?」
「小さな竜、一頭ぶんくらいね」
マリーンはなぜか上機嫌に、にこにこしている。
竜を探し出して殺すのは、難しそうだ。
「あのお、ひとであれば何人ぶんでしょうかね、それって」
「ま、一個旅団全滅させるくらいかな」
わたしは、げっと思う。
「一個旅団は、何人くらいでしょう」
笑ってるだけのマリーンにかわって、ディディが答えてくれた。
「トラキアでは、だいたい二千人の兵で編成されるな」
わたしは、きっと下唇を噛む。
いいようのない、行き場のない大きな感情がわたしを襲う。
涙が、ぽろぽろとこぼれた。
わたしは幼子のように、たったまま泣く。
声は、辛うじて押し殺していた。
そんなわたしを、マリーンはうれしそうに見ている。
「ねえ、マヤ。別にいいよ。やりたくなかったら、わたしたちのために戦わなくたって。あなたは、クリスマスじゃあないもんね。でもさ」
マリーンは、意地の悪そうな目でわたしの顔を、のぞき込む。
こいつ、性格の悪さはわたしといい勝負だ。
「もうすぐここに魔法使いが軍勢を率いて攻めてくると、思うんだよね。十九号たちは命がけで戦うけど、魔法にはかなわない。そしてマヤ、あなたも物理的な剣の力には無力でしょ。多分死んじゃうよ、マヤちゃん」
マリーンは、歌うように言った。
「あなた、どうする? 子兎みたいに、狩られて殺されたいのかな」
わたしはぐいっと拳で涙をぬぐうと、瞳に鋼の輝きを宿したつもりでマリーンを睨みつける。
「決まっている、わたしを誰だと思っている」
わたしは、地の底から響くような声で宣言する。
「襲ってくる奴らは、後悔するだろう。その魔導師には皆殺しの歌を、聴かせてやる」
マリーンは、ぎゃははと品のないギャルみたいな笑い声をあげ、手をたたいて喜んだ。
「いい顔するじゃん、マヤちゃん」
「なれなれしいぞ、小娘。おまえも、わたしの歌をきいて後悔する気か」
マリーンは、ひゅう、と口笛をふきにやにやした。
ディディは、やれやれといった感じで見ている。
ああ、この感じ。
まるで、高校生のころに戻ったみたいだ。
世界中が敵だと思い、世界中と戦ってねじ伏せるつもりでいた高校生の頃。
わたしはあの頃みたいに、世界と戦ってねじ伏せようと思っている。
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