居場所を探していただけの俺が、気づいたら世界の作業環境になっていた件 ~追い出され続けたパソコンおじさんの静かな異世界生活~

あああの書

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2話 異世界でも「ここでパソコンは……」と言われたので、俺は確信した

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目を覚ますと、そこは草原だった。

青空。
風。
スライム。

――あ、これ異世界だ。

俺はゆっくりと上体を起こし、まず最初にやったことは――
ノートパソコンを確認することだった。

ある。

あるじゃねえか。

「……よし」

起動。

ピロン♪

起動音が鳴った瞬間、世界が震えた。

スライムがビクッとした。
遠くの鳥が飛び立った。
なぜか俺の背後に魔法陣が出た。

「おお……これが転生特典か……?」

画面右上を見る。

バッテリー:∞%
通信状態:未知の回線(接続済)

「……女神、仕事できるじゃん」

歩いていると、村が見えた。

木造の家。
畑。
噴水。

テンプレ村だ。

「まずは情報収集だな」

俺は噴水の縁に座り、
ノートPCを開いた。

カタ、カタ。

「……?」

背後に気配。

「……あの」

来た。

異世界でも、
来るのは同じセリフだった。

振り返ると、
槍を持った衛兵っぽい男が立っていた。

「ここで……その……
 パソコン、ですか?」

「はい」

即答した。

間があった。

「えっと……ここ、村の広場でして……」

「はい」

「その……仕事、ですか?」

「はい」

周囲を見ると、
村人がじわじわ集まってきていた。

ヒソヒソ。

「何あれ」
「魔導書?」
「光ってる……」
「カタカタ音が不吉……」

カタ、カタ、ターン。

その瞬間。

村人全員の視線が一斉に俺に刺さった。

――この感じ。
知ってる。

完全に、知ってる。

「……あのー」

今度は村長っぽい老人が来た。

「この村はですね、
 交流と憩いの場でして……」

来た。
完全に来た。

「ええと、つまり……」

老人は言葉を選びながら、
しかし最終的にはこう言った。

「ここでパソコンは……」

俺は、確信した。

世界が変わっても、俺の立場は変わらない。

その瞬間、
脳内にウィンドウが開いた。

【スキル獲得】

《居場所がない者 Lv1》
効果:
・注意されると集中力が上がる
・視線が集まるほど作業効率上昇

《無限電源(仮)》
説明:
・なぜか切れない

《概念Wi-Fi》
説明:
・理由は誰にもわからない

「……あ、これチートだわ」

村長が続ける。

「できれば、その……
 別の場所で……」

「わかりました」

俺はノートPCを閉じ、
立ち上がった。

その瞬間――

作業進捗率:100%

「え?」

俺、
一切作業してないのに終わってる。

周囲がざわつく。

「今、何か……」
「終わった……?」
「一瞬だったぞ……」

俺は静かに言った。

「じゃ、場所変えますね」

村の外。

誰もいない草原。

俺は再び座り、
ノートPCを開いた。

カタ、カタ。

空気が、静まり返った。

風が止まった。
虫が鳴かない。
遠くで魔物が寝始めた。

画面に新しい表示。

【スキル発動】

《絶対静寂領域(試用版)》
※周囲の邪魔が消えます

「……これ」

俺は思った。

叩かれれば叩かれるほど、
 俺、強くなるやつだ。

そのとき、遠くから悲鳴が聞こえた。

「魔物だー!!」

俺はノートPCを閉じ、立ち上がる。

「……仕事の邪魔だな」

異世界はまだ知らない。

この男が、
史上最も“静かに”世界を壊す存在だということを。
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