お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話

湯島二雨

文字の大きさ
15 / 49
第5章…推しはアルバイトをしている

アルバイトを頑張っている推し

しおりを挟む
 俺の推し、柚希はお色気要員としての役割しか与えられてない。この世界の法則でそうなっている。読者を盛り上げるストーリー、設定などが特にない。

それがどうした。ないものは作ればいいんだ。俺と柚希の物語を。

出番がないことには何も始まらないのでまずは柚希の出番を増やしまくる。
そして柚希との確かな繋がりがもっと欲しい。エロい関係だけじゃなくエモい関係を作りたい。

柚希は女子大に通ってるので同じ学校でイチャイチャキャンパスライフ……みたいな展開は不可能だ。

柚希と繋がれるとしたらあとは……アルバイト。
柚希はアルバイトをしている。柚希と同じところでアルバイトできれば……柚希との繋がりを増やすチャンスになる。

好きな女の子と同じバイトをしようとするのはあまりにもキモストーカーな行動だが俺主人公だし柚希も俺のこと好きだしまあトラブルにはならないだろう。たぶん。


だが、原作データによると柚希が何のアルバイトをしているのかは不明だ。
柚希がバイトをしている設定があるというだけで、実際にバイトしている最中の描写はなかった。これからバイトに行く描写とかバイトが終わった後の描写とかはあるんだが……

ちなみにアニメでもバイト描写はなかった。ていうか柚希に関してはほとんど原作通りでアニオリ要素ねぇな。苺や梨乃はアニオリでけっこう描写が盛られてたのに……

原作を読み込んだ俺でもわからない推しの謎。一体何のバイトをしているのだろうか。出番が少ないゆえにまだまだ柚希について知らないことがある。知りたい。柚希のこと、全部知りたい。

こうしちゃいられない、本人に聞いてみればいいだろう。


ドキドキしながら柚希に『今お時間ありますか?』という内容のメッセージを送ってみる。この前送った時は気づかれなかったんだよな。今回返事が来るかどうか……

今回はすぐに返事が来た。1分もしないうちに来た。
『今ヒマだからこれから会おうよ』って言われて俺のテンションは最高潮に達した。



 放課後、柚希ん家の近くにある公園で待ち合わせした。


「柊斗くん!」

むぎゅっ

「わっ!?」


柚希に会った瞬間、柚希に抱きつかれた。
むにゅっとした柔らかい胸の感触で俺の心臓は鷲掴みにされて握り潰されそうになった。


「会いたかったよ柊斗くん……で、今日はどうしたの?」

「いえ、そんな大した用ではないんですが……実は俺、アルバイト始めようかなと思ってまして」

「アルバイト? 柊斗くんが? 柊斗くん家けっこうお金持ちだしアルバイトする必要ないんじゃないかな?」

「それは……社会勉強といいますか……いろいろ経験してみたいと思いまして」

それっぽいことを言ったが俺が勉強したいのは柚希のことだけだ。
前世でも一応バイトの経験はある。すぐ辞めたけど。その時の経験を活かせたらいいなぁ。


「それで……柚希さんアルバイトしてましたよね?」

「ん? うん、してるけど……」

「俺、柚希さんを参考にしたくて。どんなバイトをしてるんですか?」

よし、あまり不自然じゃない感じで聞けた。
柚希はちょっと複雑そうな表情をした。


「うーん……ちょっと恥ずかしいな……」

「ん……?」

「ごめん、私がやってるバイトじゃあまり参考にならないと思うよ。その……だから」

「!?」


恥ずかしくて女の子しかいないバイト……だと……!?
まさか、それって……いかがわしいお店……!?

いや、女性だけが働く場所はいかがわしい店だけじゃないのはわかってるが、前世で何度かそういう店にお世話になったことがある俺としてはそういうことしか考えられない。
この前お風呂で裸で抱きつかれたこともあったしなおさらいやらしいことしか考えられない。

いやまさか……この漫画は少年向けだぞ……いくらお色気要員でもそういうバイトをしてるなんてことは……
しかし原作ではバイト描写はない。描写がないということは少年には見せられない、つまりエロい仕事ということ……なのか!?
しかも柚希は成人済みだぞ。ダメだ、エロを否定しようとすればするほど俺の思考はエロ方向に行ってしまう。自分のピンクな頭が憎い。


「じゃあ柊斗くんも私の働いてる店来てみる? 私がバイトしてる時間と店の場所教えるから」

「えっ!? いいんですか!?」

「もちろんだよ。柊斗くんならサービスしちゃう」

「え!?」


サ……サービスだと……!?
俺が客で柚希が姫で、あんなことやこんなことをする妄想しかできなくなった俺はいろんな部分が爆発した。


「あ、でもけっこう高い店だしもちろん無理にとは言わないけど……」

「いえ、行きます。行かせてください」


金は大丈夫。柊斗の家はけっこう裕福だし、前世で底辺ではあるが一応社会人として働いて稼いだ貯金がなぜかこの世界にもある。
前世の貯金引き継げるとか転生最高かよ。都合良すぎて逆に不安になるレベルだ。



―――



 というわけで柚希がバイトしてる日に柚希に教えてもらった場所に来た。
高い店と聞いてるので前世の貯金をありったけ持ってきた。柚希になら貯金のすべてを捧げてもいいと思っている。

ここ繁華街だな……やっぱりいかがわしい店なんだろうか。不安と緊張と興奮が入り混じって複雑な気分だが、柚希がどんなバイトしてても俺は絶対に否定しない。


……ここ……だよな。
柚希にもらった地図を何度も確認する。

ごく普通の雑居ビル。看板を見るといろんな店がある。ピンク系の店もいくつかあって俺の心臓の動きはより一層加速した。

このビルの、地下1階にあるようだ。看板見ても落書きされててどんな店かよくわかんねぇな……
まあいい、行くぞ。俺は薄暗い階段を降りていった。


「ッ……!?」

心臓が止まるかと思った。地下1階に到着すると、扉があってその前にメチャクチャ怖そうなおっさんが立っていた。

怖ぇ……怖すぎる。黒服にサングラスで完全にカタギには見えねぇよ。誰だよ。原作には存在しないキャラだから余計怖い。
次から次へと何もかも怪しい雰囲気じゃねぇか。やっぱり風俗系で働いてるのか柚希……


サングラスのおっさんは俺がいることに気づくとコツコツと足音を響かせながらこっちに来て、俺は心臓がまた止まりそうになった。
こ、殺される……! 死ぬ……!!


「もしかして栗田柊斗様ですか?」

「え!? は、はい、そうですけど……」

なんで俺の名前を知ってるんだよ。恐怖しかない。


「柚希ちゃんから話は聞いております。さあ、どうぞ」

え、柚希?
柚希の名前が出たことに驚いているとおっさんは扉を開けた。


「いらっしゃいませ~!」


!?

中に入ると、10人くらいのメイドに出迎えられた。
しかもみんな猫耳を装備してるじゃねぇか。猫耳メイドさんだ。
そしてよく知ってるアニソンが流れている。

確認しなくてもわかる、一目見ればわかる、この店の正体。
柚希が働いている店の正体、それはメイド喫茶だった。

なるほど、メイド喫茶だったか……柚希がちょっと恥ずかしそうにしてた理由がわかった。風俗系じゃなくてよかった。


「私はこの店の店長です。よろしくお願いします」

「あ、はい。よろしくお願いします……」

怖そうなサングラスのおっさんはメイド喫茶の店長だった。名刺をもらってしまった。
この店は『にゃんにゃん天国』という名前のようだ。ド直球ヒロインの柚希にふさわしい何の捻りもない直球の名前だ。


「あの、すいません店長さん。柚希さんは……?」

今ここにいるメイドさんは可愛い子ばっかりだが、肝心の柚希がいない。
おかしいな、間違いなく今日この時間に柚希が出勤してるはずなんだが……柚希本人からちゃんと確認したし。

「ああ、柚希ちゃんはちょっと今トイレに……少々お待ちください」

「そ、そうですか」


まあ本命は遅れてやってくるのは物語じゃよくあることだな。
メイド服姿の柚希が見れる……楽しみすぎてワクワクドキドキで心臓が口から出そうだ。

数分待つと、店の奥の扉が開いた。


「お待たせしました~……あ! 柊斗くん!」


他のメイドと同じ服装で、猫耳を装備した柚希が現れた。
それを見た俺は、心臓が口から出ることはなかったが、また心臓を矢で撃ち抜かれた。すごく太い矢だ。

猫耳メイドの推し、破壊力が絶大すぎるんだが。
柚希に見惚れすぎて光り輝いて見える。その他のすべてがぼやけて見える。限界オタクの俺はまた壊れた。

俺に気づいた柚希はすぐに俺に駆け寄ってきた。
走った時にたわわな乳がたゆんって揺れたのを俺は一生脳内に焼きつけた。
しかも谷間もチラッと見えている。本当にちょっとだけだがこのわずかなチラリズムが俺の血流を狂わせた。


「柊斗くん、来てくれたんだ」

「もちろんですよ。行くって言ったでしょ」

柚希のためなら宇宙でも火山でも深海でも地底でもどこでも行くぞ。


「そっか、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいな。……あ、いけない、今の私はメイドで柊斗くんはご主人様だった。いらっしゃいませご主人様っ!」

柚希は俺に深く深く頭を下げた。

「いや、いいですよそんなにかしこまらなくても……」

「そうはいきません。私はメイドなんですから」

真面目に一生懸命仕事してる……可愛い。
そういうところも好きだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

処理中です...