ファーストフラッシュ

紺色橙

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第四章 ダメな大人

4-1

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 働くと言った翌日には、雪はバイト先を決めてきた。
 驚くほどの行動力に戸惑い、心配した。
 大丈夫なのかとあいつを心配するのは、あいつにはできないだろうと無意識に思っているからだろう。
 そんな、嫌な無意識をもって『心配』をしている。

 俺の心配をよそに雪は順調にバイトをしているようだった。
 いい人ですと店長夫婦のことを話す。
 良かったなと俺は喜ぶように返す。

 雪は色んな人間を知るべきだろうと思っていた。
 今でも、思っている。
 たくさんの良い人に出会えば、いい人ぶった偽物の俺からは興味を失うだろうと思った。
 だのに、現にそのように進んでいく雪の腕を引き戻したくなってしまう。
 お前にはできないだろうという上から目線の無意識が崩れ行く。
 外を向けるようになった雪に俺は必要ないのだと日々実感する。

 バイトを始めてから、バイト先に連絡することもあるだろうと俺名義のスマホを与えた。
 あいつの名義で買うことだって出来たのに、俺が与えた。
 雪はきっと、出ていくとしてもそれを置いていく。
 借りていたものはきちんと返していくだろう。
 だから突然帰ってこなくなることはきっとない。
 少なくともそれが残される。
 そう思った。
 もし持って行くというのなら、こちらからの呼びかけに答える気はあるのだろうとも思った。


 2月の雪の誕生日は正確な日を知らないまま通り過ぎてしまった。
 それを謝ると、雪は気にしていないと笑った。
 あいつにとっての誕生日はかなり大事なものだと思うのに、俺はそれを無視してしまった。
 そもそもいつなのかも聞いていなかったんだ。
 雪には興味がなくどうでもいいのだと思われただろう。
 違うと否定しようが事実がそう言っている。
 言い訳をさせてもらうと、正直なところ俺はそういった記念日に元々一切の興味がない。
 クリスマスやらハロウィンやらバレンタインやらは世間が常にアピールして示しているからわかるけれど、人の誕生日を気にしたことが、かつて無い。
 それでもあいつの誕生日には祝ってやろうと思っていたのに。
 だから次はアラームでもつけておくべきだ。
 このアラームが鳴る時に、あいつが隣にいるのかはわからないけれど。

 壊れなければ鳴るだろうアラームをカレンダーで設定した。
 去年も今年も雪が降りそうなほど冷える日があったが、降らなかった。
 来年は降るだろうか。
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