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夢をみた気がした。
何の夢だったかは覚えていないが、夢をみた。それだけはわかる。
ぼくが夢をみたと思ったその日は必ずと言っていいほど雨が降る。意味があるのだろうか。
まるで特別だと言われているようで、少しだけ嬉しくなる。それだけ。
家族は普通の家族だ。母さんも父さんもお互い不倫をしているが、二人ともわかっている。わかっていて今を楽しんでいる。一人に絞れないお互いをわかっていて不倫を楽しんでいる割り切った関係ってやつだ。
そんな僕も何人かを好きになったことがある。小学生のころに三人の女子を好きになった。一人目はやさしいえみちゃん。二人目は怒りっぽいけどツンデレなあすか。三人目はいつも一人のゆきちゃんだった。どこを好きになったのかと問われるとわからない。気づいたら好きだった。なんとなく好きになったのだ。
だけど最近、一途に誰かを想い続けるというのも素敵だと思った。物語の中にしか存在しない架空の人物たちが、ただ一人を想う。
それだけの話。
母さんも父さんもこの話を読んでも何とも言えない反応をするが、決して否定したりはしない。僕の気持ちを尊重してくれている。
今日は学校に行くのをやめることにした。
雨の日は学校を休むと決めているからだ。夢をみた日に雨が降る。学校に行くと決まって不吉なことが起こる。特別なことが起きていること自体は自分自身、普通じゃないみたいで嬉しいが、不吉なことは起こったら巻き戻せるわけでも何かできるわけでもないからただ目の前で起こるというだけ。
それがたまらなく怖いのだ。夢をみてるようで怖くなる。
「怖い夢でも見たの?」
母さんが心配して僕の布団をぽんぽんっとあやすように優しく抱擁した。
「もう帰りたい」
ぶるぶる震える体を母さんはさらにぽんぽんっとしてくれた。
「ここは家だから。大丈夫よ」
「うん……ありがとう母さん」
安心して涙で染みて痛い目を閉じて、眠りについた。
夢をみた気がした。
思い出すことは決してできないであろう夢はいったいいつまで続くのだろうか。夢をみる日は決まっているかのように10日。
どうしてこんなにきになるのだろうか。知ってはいけないとわかっていても好奇心というやつはやっかいで気になることはスマホで調べてみた。調べてみると解決しているのが覚えていない夢らしかった。そんなもんなのだろうか。もっとミステリアスでホラーなことでも書いているのかと期待していたのに残念だ。
でも怖い夢だった気がする。思い出せないし、思い出そうとすると頭が痛くなる。頭が痛くなるこの現象はいったい何なのだろうか。思い出したらもう元には戻れないような気がする。
学校を休んで近くの公園のベンチでぼんやりとしていた。
「こんなところでさぼり?」
「そんなとこ」
隣に図々しく座ってきて馴れ馴れしいのは同級生のゆかだ。いつもすり寄るように僕の近くにいる邪魔なやつ。
そこそこ顔がいいらしい僕はやたら変な奴に好かれやすいらしく、好きになった人とは両想いになれたことがない。
「もういいかな、帰るからさ」
「送っていくよ♡」
語尾に着くであろうハートの絵文字が見えるようで大きくため息をついて飛ばした。
「いいよ。僕は一人で帰りたいんだ」
振り返らずに去った僕に「じゃあね」と元気な声が聞こえてきたけれど、一切振り返ることなく家に着いた。
見た目も派手で喋り方も豪快で苦手な奴だけど、悪い奴ではない。悪い奴ではないが、人にやさしくできる気がしなかった。
次の日、学校に行くと、ゆかの机の上には花瓶が置いてあった。生けられている花は、なぜかどこにでも咲いているシロツメクサだった。
何の夢だったかは覚えていないが、夢をみた。それだけはわかる。
ぼくが夢をみたと思ったその日は必ずと言っていいほど雨が降る。意味があるのだろうか。
まるで特別だと言われているようで、少しだけ嬉しくなる。それだけ。
家族は普通の家族だ。母さんも父さんもお互い不倫をしているが、二人ともわかっている。わかっていて今を楽しんでいる。一人に絞れないお互いをわかっていて不倫を楽しんでいる割り切った関係ってやつだ。
そんな僕も何人かを好きになったことがある。小学生のころに三人の女子を好きになった。一人目はやさしいえみちゃん。二人目は怒りっぽいけどツンデレなあすか。三人目はいつも一人のゆきちゃんだった。どこを好きになったのかと問われるとわからない。気づいたら好きだった。なんとなく好きになったのだ。
だけど最近、一途に誰かを想い続けるというのも素敵だと思った。物語の中にしか存在しない架空の人物たちが、ただ一人を想う。
それだけの話。
母さんも父さんもこの話を読んでも何とも言えない反応をするが、決して否定したりはしない。僕の気持ちを尊重してくれている。
今日は学校に行くのをやめることにした。
雨の日は学校を休むと決めているからだ。夢をみた日に雨が降る。学校に行くと決まって不吉なことが起こる。特別なことが起きていること自体は自分自身、普通じゃないみたいで嬉しいが、不吉なことは起こったら巻き戻せるわけでも何かできるわけでもないからただ目の前で起こるというだけ。
それがたまらなく怖いのだ。夢をみてるようで怖くなる。
「怖い夢でも見たの?」
母さんが心配して僕の布団をぽんぽんっとあやすように優しく抱擁した。
「もう帰りたい」
ぶるぶる震える体を母さんはさらにぽんぽんっとしてくれた。
「ここは家だから。大丈夫よ」
「うん……ありがとう母さん」
安心して涙で染みて痛い目を閉じて、眠りについた。
夢をみた気がした。
思い出すことは決してできないであろう夢はいったいいつまで続くのだろうか。夢をみる日は決まっているかのように10日。
どうしてこんなにきになるのだろうか。知ってはいけないとわかっていても好奇心というやつはやっかいで気になることはスマホで調べてみた。調べてみると解決しているのが覚えていない夢らしかった。そんなもんなのだろうか。もっとミステリアスでホラーなことでも書いているのかと期待していたのに残念だ。
でも怖い夢だった気がする。思い出せないし、思い出そうとすると頭が痛くなる。頭が痛くなるこの現象はいったい何なのだろうか。思い出したらもう元には戻れないような気がする。
学校を休んで近くの公園のベンチでぼんやりとしていた。
「こんなところでさぼり?」
「そんなとこ」
隣に図々しく座ってきて馴れ馴れしいのは同級生のゆかだ。いつもすり寄るように僕の近くにいる邪魔なやつ。
そこそこ顔がいいらしい僕はやたら変な奴に好かれやすいらしく、好きになった人とは両想いになれたことがない。
「もういいかな、帰るからさ」
「送っていくよ♡」
語尾に着くであろうハートの絵文字が見えるようで大きくため息をついて飛ばした。
「いいよ。僕は一人で帰りたいんだ」
振り返らずに去った僕に「じゃあね」と元気な声が聞こえてきたけれど、一切振り返ることなく家に着いた。
見た目も派手で喋り方も豪快で苦手な奴だけど、悪い奴ではない。悪い奴ではないが、人にやさしくできる気がしなかった。
次の日、学校に行くと、ゆかの机の上には花瓶が置いてあった。生けられている花は、なぜかどこにでも咲いているシロツメクサだった。
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