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君じゃなきゃダメなんだ!
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しおりを挟む外に出ると人通りはもうまばらで、早くしないと終電も行ってしまうかもしれない。
それなのに私は彼の足を止めて、どうしても早く聞きたくて聞いてしまった。
「字、間違いすぎ」
「えっ、嘘!」
類くんは振り返ってふ、と軽く笑う。
わざわざ手紙を出してきて、律儀にこれとこれとこれが違うと指差して教えてくる辺り意地悪だと思う。
「わざわざ家まで来て手紙入れたの?」
「うん。住所わかんなかったし、場所は分かるから入れちゃった」
「調べりゃわかったんじゃないの」
バカだなぁ、と類くんはまた笑った。
こんな穏やかな雰囲気、久々だなあと思う。
「…私、いつも付き合ってもね、すぐ振られちゃうんだ。類くんの言う通り、相手に嫌われないように振る舞ってるだけで自分らしくいれてなかったんだと思う」
類くんの斜め後ろを歩いていく。
いつもより類くんも歩くスピードを落としてくれている気がした。
「それでいつも幼馴染の優斗に泣きついて、慰めてもらうとすっきりして次に行けるの」
蒸し暑い夜の道。
照らす街灯の灯り。
どれもこれも今までとは違って見えてくる。
「今回も優斗に話を聞いてもらったの。…優斗は優しいから抱きしめてくれた。でも」
こんなこと言ったらまた類くんを怒らせてしまうかもしれない。
だけどどうしても聞いて欲しかった。
「…でも、全然すっきりしなかった。優斗じゃなくて、ずっと類くんに抱きしめてほしかったの」
彼の服の裾に手を伸ばす。
と、彼は足を止めた。
「あっそ」
一言、いつもみたいに軽く言う。
そしてまたゆっくりと行ってしまう。
これ以上、あとどう伝えたらいいんだろう。
類くんに私のありったけの気持ちを……。
そう考えていると、足を止めていた私に気づいて類くんは振り返った。
「手紙。貰ったもんちゃんと読んだの初めて」
「……それって、ラブレターとか貰っても今までちゃんと読んだ事なかったって事?さすが、割とサイテー」
「今回は気が向いたから読んでやった」
「もう!心込めて書いたんだから、じっくりしっかり読んでよね!」
そう私が叫ぶと彼はまた鼻で笑って、それから微笑んで。
「…家、来ねえの?」
彼の言葉がぼんやりと浮かんで、私は目をパチパチさせて類くんの所まで走った。
そして類くんの腕に手を伸ばして。
「行くっ」
「…終電、間に合うかわかんねえから走るぞ」
類くんが私の手を握って走り出した。
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