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君じゃなきゃダメなんだ!

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「明子ー!」

「あ!キキ!翔太!」


キキがぴょんぴょん跳ねながら手を振ってこっちに走ってきた。
翔太もその後ろを歩いてついてくる。

夏休みになってちょっと経つけど、終業式以来予定が合わずに会えてなくて、私もぴょんぴょん跳びながら出迎えた。


「2人ともお祭り来てたんだ!」

「もちよー!てか明子もデート?やるじゃんッ」


ドンッと強めにキキに小突かれてあはは、と笑う。

類くんはと言うと面倒そうに私から離れてて、既に5メートルくらい離れた端に移動してた。


「意外と夏休み会えててね、バイト終わりだけじゃなくてショッピングに付き合ってもらったり、かき氷にも一緒に並んでくれたんだよ」

「うんうん、SNS見たよ。めーちゃん、立派にデートしてんじゃんー」

「そういえば今日優斗とななも2人で祭り来てるんだって。あとで合流するー?って今聞いてる所なんだけど、明子はどうする?」


キキに首を傾げられ、私は少し目をパチパチさせた。

優斗とななが2人でお祭り、か。
あまり2人がたくさん話してるイメージが無かったから、どっちが誘ったんだろうと思ったりなんかして。

合流かあ…、と思ってちらりと類くんの方を見ると、ギャルっぽい浴衣女子2人組に声をかけられていて私はビクッとする。


「ごめん、合流はやめとく」

「あー。モテる彼氏がいるのも大変ねえ」

「俺だって案外モテてるかもよ!キキ!」


またね!と2人に手を振って慌てて類くんの所に戻ると、すでに自分でギャル達を追っ払っていた様子。


「類くんッ、簡単に逆ナンされるのやめてよ!」

「知るかよ。あっちはもういいのか」

「うん。久しぶりに会った感じがしてちょっと浮かれちゃってた。一人にさせちゃってごめんね」

「べつに。ま、知人に見られる可能性が高いから祭りなんて面倒だってのはあるけど」


類くんは逆に正直にこういうのを話してくれるから、そこら辺は分かりやすい所があるな。

しばらくぼんやりと2人で歩いて、出店でたこ焼きとかポテトを買って半分こしたり輪投げで思いっきり外しまくったり。


「うわあ、残り1回しかない…。類くんやる?」

「やらない」

「絶対そう言うと思った。せめてあのクマのぬいぐるみが取りたいのにぃ!」

「…あのくそでかいクマなんか取ってどうすんだよ」

「耳に輪が引っかかったらいいらしいよ。ベットに置いて一緒に寝るんだーっ」


そう言ったら類くんはふぅ、と息をついて貸してみろと私から輪っかを奪った。

何か知らないけどやる気を出してくれたぞ!

私も後ろから念じて見守るが、類くんが投げた輪っかはクマの足に落ちて隣の小さな指輪の上にポトンと落ちた。


「クマーーッ!」

「ま、あんなでかいクマ最初からいらねえわな」


フッと類くんは素知らぬ顔で戻ってくる。

そしてお情けで取れた小さな銀色の、真ん中にマーガレットみたいな白い花が付いてる安そうな指輪を私の手のひらに落とした。

それをじっと私は見つめる。


「はめて?」


そう言ってちらっと類くんを見上げた。
 
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