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どうやら夏はまだ終わらない
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しおりを挟む唐揚げにハンバーグ、炒飯にローストビーフにコーンスープ。
ビュッフェに来たら私が絶対に取っていくおかずたちを、彼は全てコンプリートしてワンプレートにしてくれた。
「昔からビュッフェに来たら絶対明子はオレンジジュースなんだよな」
そう言って優斗はたっぷり注がれたオレンジジュースもテーブルに置く。
たしかに昔から私の好みって今まで変わってなくて、全て優斗には分かりきっていたみたいで私は驚いた。
「よく覚えてるね」
「そりゃいつも食べるもん決まってるからな」
「そうだっけ」
「いいからちゃんと食べろ。そんで元気出せ」
そう言って今度は自分の分を取りに行った優斗。
優斗は私がどうして元気がないのかも知ってる。
それがなんだか申し訳なくてチラチラとビュッフェの方を見ていると、なな達も戻ってきた。
「あれ、明子取りに行ってたっけ?」
「あーいや、これ優斗が取ってきてくれたんだ」
「もう優斗は、幼馴染だからって明子の面倒見過ぎだよ」
キキと翔太は世話好きだなぁ、なんていつもみたく笑ってた。
私もそれにつられてハハ、と軽く笑う。
「優斗はこんなに優しいし顔も悪くないからモテそうなのに、なんで彼女作んないんだろうね」
それなー!と翔太が言ってケラケラと笑った。
あまり私にもそういう話を優斗は振ってこないし、いつも私の世話ばかり見ているから気にしていなかった。
「てか絶対私の面倒見てるから作る暇ないんだよね。優斗過保護だから」
「まあめーちゃんが危なっかしいってのはわかる」
「私ももう大人なんだし、いい加減彼女作っちゃってもいいのにね」
そう3人で話していると、突然今まで黙っていたなながバンッとテーブルを叩いて立った。
え?という表情で私たちはななを見つめる。
「…ほんっと。明子は何もわかってない」
そう言ってななは私を一瞬見て、そのままご飯も置いて会場を出て行ってしまった。
呆然とする私と、やばいやばいと言って追いかけてくる!とななを追うキキ。
翔太はあわあわしていて、そんな超微妙な雰囲気の所にご飯を盛ってきた優斗が席に戻ってきた。
「あれ?2人は?」
「そ、それが……」
翔太が焦りながら今さっき起きた事を優斗に伝える。
優斗は少し驚いた表情を見せたが、またすぐにいつもの表情に戻ってご飯を食べ始めた。
「なあ、ななめっちゃ怒ってたんだけど、俺何か言ったかな」
「さあ。まあキキが追いかけてるんだし俺らまで行くのは違うだろ。明子も食べろよ」
「う、うん…」
こんな、普通に食べちゃってていいんだろうか。
ななは私に怒っていた。
ななのあんな表情見るの初めてで、こんなこともあったから余計ご飯の味は全くわからなくなってしまった。
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