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どうやら夏はまだ終わらない
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しおりを挟む新幹線を降りて人混みの中を列になってぞろぞろと歩き、集合をかけられて端に集められる。
クラスの中からさらにグループに分かれて、担任が喋る。
「いいかー、予定通りの時間に着いたからこれからまた移動して西本願寺に向かうぞ。ここからはバスで移動するから…」
うだうだと説明されてまただらだらと私たちはバス乗り場に移動する。
うだるような暑さにギラギラと照りつける太陽。
9月だってのにまだ夏が終わりそうもなくて、私たちはクーラーの効ききっていないバスに乗り込みながらまた文句を垂れていた。
「あちーよー…。キキ、お茶ちょうだい」
「翔太汗やば!やだちょっとくっつかないで汗くさい!」
「てかなんで高校生にもなって修学旅行で京都行かないといけないんだろ。小学校も私京都だった」
「俺らも奈良と京都だったな、明子。京都って蒸し暑いし、ずっとバスの中にいたいわ」
「え、あ、うん」
キキと翔太、私となな、その後ろに優斗が座るバスの座席。
そう、私たちは今京都に修学旅行に来ているのだ。
バスが走り出すと修学旅行の委員の子達がレクリエーションを初めて、ビンゴの紙が前から送られてくる。
私はななからそれを受け取ってプツ、と真ん中を穴開けて膝の上に置いた。
「明子?何か今日元気ないね。具合でも悪いの?」
「あ…いや、ごめんノリ悪くて。最近いろいろあってさあ」
「また一条さんのこと?」
はは、と力無く笑うとだろうね、とななはつぶやく。
ビンゴの紙を突きながらななは話す。
「何があったのかは知らないけど、明子は一度一条さんから離れた方がいいんじゃない?」
「…そうかな」
「視野が狭まってるっていうか」
「それはそうかもだけど」
「案外明子に会う人、もっと近くにいるかもよ」
「えー?いたらもうとっくの昔にくっついてるでしょ」
私がそう深くも考えず言うとななはそうだね、と困ったような表情をして笑った。
その後は炎天下の中、寺院を見学。
お昼ご飯を食べていてもグループ行動をしていても、どこかぼんやりと私は類くんのことを考えてしまっていた。
夜になり、今日泊まる温泉宿についてクラスごとに分けられた時間で夕食を食べに行く。
ビュッフェ会場について空いてる席に着くと各々ご飯を取ってくるが、私は暑さも相まって食欲がなく、とりあえず水を飲んで喉を潤した。
「ほれ」
そう言って私の目の前に、私の好物ばかりが乗ったプレートを置いたのは優斗だった。
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