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そして追いかけた
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しおりを挟むそれからテスト週間がきて、いつものごとくバイトをセーブし始めたから類くんにはあれから数回しか顔を合わせていない。
でも類くんは私を見かけると気づかないような素振りで反対方向に行ってしまったり、話すにしても業務的なことばかりでちゃんとコミュニケーションは取れていなかった。
そんなわけで今日は放課後に教室に残って5人でテスト勉強をしているんだけど、私が英語が苦手なのが悪いんだけど、さっきから優斗の距離が近い!
「だから、そこ訳違うんだって。前の章で出てきた単語覚えてる?」
「ん……、たぶん」
「その中にあったよ。文章思い出して」
「…わ、わかってるから、ちょっと待って。優斗は座ってて!」
「座ってるけど」
隣の席から私のノートを覗き込みながら優斗は言う。
優斗はペンで私のノートを突きつつ時々私に目をやって、彼の髪の匂いがふわりと香るくらい近い距離感。
そして目の前には冷静にカリカリと勉強を続けているななの姿。
「とりあえず単語ちゃんと覚え直しな。今回の試験で出るやつここに全部まとめてるから、ほら写せ」
「く……っ、そうやって魅力的な物ばっかり持ってきやがって……!」
「いらないか、そうかそうか」
「いりますごめんなさい優斗様」
ななの手前できるだけ優斗とくっついたり喋ったりしたくないのに、優斗がいつも通り私の面倒を見てしまうからそれに乗ってしまう。
というか今まで何も遠慮してなかった分、2人にどれだけ無配慮だったかに気づいてしまって辛くなる。
「優斗ー、次俺にもその単語まとめ貸してくれよ。英語マジきついもん」
「コーラ」
「わかったから。ちゃんと奢るから」
「ん」
「あーあ、めいちゃんにはタダで貸すのになあ。ほんと優斗のめいちゃん贔屓はえぐいわ」
屈託なく翔太はそう言って、私に次貸してねと言う。
あははと苦笑いするけど多分翔太は何も気づいてないから余計困ってしまう。
「えっと、喉渇いたし何か飲み物買ってこよっかな」
「私ミルクティー」
「俺コーヒー」
「優斗は?」
「いらない」
「じゃあ私も行くよ。選びたいし」
キキと翔太がよろしくー、と言ってお金を渡してくれる。
ななが立ち上がってついてきてくれて私たちは購買部の横にある自販機でジュースを買いに行った。
「やっぱコンポタかな。ちょっと教室寒いし」
「私もそれにしよっと」
それぞれの飲み物を買い教室に戻る。
なんとなくななとの会話にギクシャクしてしまっている自分がいた。
「てか英語の範囲広いよね今回。いつも教科書丸暗記だから次点数取れるか危ういって感じ」
「…ねえ、明子。私に何か遠慮してるでしょ」
そうななが言うから、私も彼女の横顔をちらっと見てはは、と力無く笑う。
「…だって」
「優斗に言われてるから。『今は明子に気持ち伝えるのが必死でななには何も応えられない』って」
どストレートに言ってくれるから私は目を逸らした。
廊下に吹く隙間風がひんやりと足元をかすめる。
「そりゃ傷つかないってのは無理な話だけど、それはもう今更だし。優斗が頑張ってるなら私は私なりに頑張るしかないし」
「なな…」
「だから明子は自分の気持ちに正直になりな。私のためとか優斗のためじゃなく、自分のために」
彼女の長い黒髪がふわりとたなびく。
その凛とした姿がかっこよくて、やっぱり優斗とななは似ているなと思ってしまった。
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