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第一章 仲間
しおりを挟む第一章 仲間
「こんな家出てってやるよ!」
俺は今日、家を飛び出した。いわゆる「家出」と言うやつだろう。もう家に戻る気は無い。
俺には母さんがいない。正確には、もういない。
俺が中一の時、事故で死んだ。それからと言うもの、父さんは酒、タバコ、ギャンブルばかりやり、殆ど家に帰ってこない。久しぶりに帰ってきたと思ったら「金貸せ」だって。聴いて呆れるぜ。だから俺は家を出た。あんな奴とはおさらばだ。
でも、これからどうする?働くか?貯金も六千しかない。親戚も頼れない。泊まるんだったらホテルよりネットカフェの方が安いか。取り敢えずネットカフェに行こう。
「五時間使用で千円になります。」
今が二十三時だから、明日の四時に出る事になる。
まあ、朝起きるのは得意だから良いか。
俺が通っている高校には購買が無いため、自分で弁当を持っていくしか無い。だから、いつも弁当を作るために早くに起きていた。なので、朝起きるのが得意になった。
四時に出て何をする?
求人募集を探すか?
まあ、明日考えれば良いか。
ネットカフェを出たが、これからどうしよう。
まず朝飯か。朝飯を食ってから考えよう。
何か良い所はないか。マクドナルドか?
でも朝からハンバーガーはキツイか?
いや、他に飲食店が無いから良いか。
都会にも飲食店が無い所ってあるんだな。
久しぶりにハンバーガー食ったな。美味かった。
歩いていると、急に目に飛び込んできた。
道端に誰か居る。うずくまっている。泣いている。
「どうしたの?」
見た感じ俺より年下だ。中二くらいか。
「誰だてめぇ」
怖っ
根が悪いのか、機嫌が悪いのか分からないが、怖い。俺の高校にはこんな奴居なかった。だから、何回も言うが、怖い。
鋭い眼光が俺に飛んでくる。
「誰だツッテンだよ!」
「お、お、おお俺は鈴谷匠(スズヤ タクミ)。幕伸高校の二年生だ。」
「何だ、俺より上か。」
何だってどう言うことだ。そう言おうとしたが、止めた。争いにはしたくない。
「君も家出?」
「あゝ。母親が、……こんな奴産まなきゃ良かったって。」
彼は泣きながら語る。
「殴られたり、暴言吐かれたり。」
彼も俺と同じように親に苦しめられて来たのだろう。
「俺と一緒に来るか?」
少し迷ったが、言った。
「良いのか?」
仲間は多い方が良い。
「ああ、もちろん。
俺は鈴谷匠。君は?」
「俺は岩浜輝(イワハマ キラリ)」
「輝、か良い名前だね。」
「キラキラ輝く素敵な人になって欲しいからって。」
そんな意味を込めて名付けたのか。輝かせるどころが、道を塞いでしまうなんて。
「これからどうするんですか?」
急に言葉遣いが丁寧になった。
「別に、敬語じゃなくて良いよ。」
「ありがとう。鈴谷さん。」
「匠で良いよ。」
これからどうしよう。行く当ても無いし、金も無い。
「輝、今何円持ってる?」
「今は…五千円です。」
合わせて九千円か。ヤバイな。
取り敢えずこの時間帯に俺達だけで此処に居たら警察に連れて行かれそうだ。何処か隠れるのに良い所は無いか。そうだ。確かこの近くには川があったはず。と言う事は下水道もあるはず。そこに隠れよう。
「下水道に行く為に川に行くぞ。輝」
「えっ…何で。下水道ならマンホールから」
「マンホールから入ると怪しまれる」
「でも…」
「良いから。行くぞ」
「はい。」
あった。下水道の入口。此処に隠れれば当分は大丈夫だろう。
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