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働きに出るにあたって…

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 それから五日後、お父様からマルロー商会で働くための契約書を渡されました。従業員として働くのですが、私は未成年なので保護者の同意書も含めた労働契約書が必要なのですよね。
 平日は週に二回学園が終わってから二時間、休日は一日だけ六時間の勤務となりました。場所はリシャール様のお店…ではなく、お店の二階にある事務所兼倉庫です。水色の髪は珍しい上、顔が知れているためお店に出るわけにはいきません。私の身分がばれたら即解雇が条件でした。これは安全のためにどうしても、と子爵もお父様も譲らなかったためです。
 それでも…私はリシャール様の側で働けるのが嬉しくて仕方ありませんでした。まずは平民になる覚悟と私の事を知って頂けたらと思います。そりゃあ、家の力を使えばどうにでもなるのででしょうが、それはしたくありません。

「レティ、リシャール君の商会で働くのは再来週の休日からだ。詳しい事はこちらの契約書と、子爵から注意事項が書かれたメモを頂いた。後で目を通しておきなさい」
「ありがとうございます、お父様」

 お父様、お忙しいのに子爵と話し合いをして下さったのですね。まぁ、半分以上は子爵が陛下に出されている申請書の事だったそうですが。聞けば子爵は三月前に申請を出したのに、陛下が忘れていた上に書類を失ってしまったそうで、ちっとも進まなかったそうです。お父様はそれを調べ出してさっさと申請を通してしまったそうですわ。全く、陛下はエルネスト殿下とそっくりですわね。殿下もよく書類をなくして苦情が上がっていましたもの。

「使えるものは何でも使いなさい。でも私が出来るのはここまでだよ。あとは自分で頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ」

 ぽんぽんと頭を軽く叩くと、お父様は登城しました。お忙しいのに色々お手数をおかけしてしまいましたわ。

 その後、私は契約書と子爵からのメモに目を通しました。契約書に関しては特に問題ありませんわね。仕事内容は…書類整理と備品の管理とそれにまつわる雑用…だそうです。完全に下っ端の仕事ですわね。多分重要な部分は担当させて貰えないでしょう。我が家もマルロー商会ほどではありませんが商会を持っているので、そこは仕方ありませんわね。

(動きやすい服って…どんなものかしら?コレット達のような侍女服とか?それとも…)

 子爵のメモに目を通しましたが…う~ん、どうにもピンときませんわね。でも、仕事をするなら動きやすい格好でないとダメなのは当然です。スカートなどは動きにくそうですが…どうなのでしょうか。それに汚れてもいいもので、華美なものは論外ですわね。

(…よくわからないわね。よしっ!叔父様に聞いてみましょう)

 色々考えましたが、やはりこういう事は本業の方に聞いてみるのが一番ですわね。叔父様はお父様の弟で、今はラフォン侯爵家が持つ爵位の一つを受け継いでいらっしゃいますが、商会のお仕事をされているのですよね。きっと叔父様なら私の疑問にも答えて下さるでしょう。


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