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お久しぶりです
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お父様から宰相を目指す気はあるかと聞かれた私は、今後の自分について考えるようになりました。これまでは臣籍降下して公爵になったエルネスト様に嫁ぎ、彼を支えるものだと思っていましたが、その未来はとうに消え去り、今あるのはラフォン侯爵の当主になる事です。
こうなると確かに宰相の地位も考えざるを得ないのですよね。我が家は代々宰相を輩出していますし、十人の当主がいればそのうちの六、七人は宰相になっています。筆頭侯爵家として他の貴族を取りまとめ、王家から守るのも我が家の役目なので、自ずとその地位が回って来るとも言えるのですが…
(だからって、女性の宰相なんて、今までいなかったし…)
そう、リスナール国の様に女王が認められていて、女性進出が目覚ましい国ならまだしも、我が国はそういう点では遅れているのですよね。王女に王位継承権はありませんし、女性が爵位を継げる様になったのも割と最近の事なのです。
ただ、筆頭侯爵家を継ぐのであれば、それなりの役職に就く必要があるのも確かです。宰相がその最たる地位ですが、それに準じる地位も考える必要がありそうですわね。お父様は今後どうしたいか考えてみるようにと仰ったので、これからじっくり考えてみる事にしました。
それからさらに一週間が経ちました。相変わらずリシャール様はお忙しそうで、最後にお会いしたのは何時だったかもわからないくらいです。その間影に…と何度思った事でしょう。でも、リシャール様を信じると決めたので、リシャール様の手が空くまでは待つことにしたのですが…
「レティ、少しよろしいでしょうか?」
リシャール様に声を掛けられたのは、学園が始まってから二週間は優に経った休日、私が私室で今後の事を考えていた時でした。
「リシャール様!どうされましたか?」
思わず顔がにやけてしまうのは惚れた弱みなので、そこは大目に見て欲しいです。でも…見上げたリシャール様は随分お疲れの様子で、浮きたった気持ちが急にしぼんでいきました。
「…リシャール様、大丈夫ですか?お顔色が…」
「ああ、大丈夫です。それよりもすみません、暫くお会い出来なくて…」
「いいえ。それよりもお父様が無理を仰っているのではありませんか?」
全くお父様ったら、リシャール様に負担をかけ過ぎですわ。これはお父様に一言釘をさすべきかもしれません。
「いえ、侯爵、いえ、お義父上のせいではありませんから」
お義父上って…そ、そう言えば結婚したのでリシャール様は義理の息子になったのですよね。当然と言えば当然ですが、何だか照れてしまいますわ。
「レティ、今お時間よろしいですか?」
「え? ええ、大丈夫ですが、何か?」
「でしたら、少しお付き合いくださいませんか?」
そう言ってリシャール様が手を差し出されたので、私はその手を取りました。私よりも大きくて固くて、でも温かいその手にドキドキしてしまいます。
「ここは…」
連れてこられたのは、庭の一角にあるこじんまりとした温室でした。王都は冬になると気温は下がりますが、雪が降る事はありません。お天気がいい日は温室の中は春の様に温かくなるので、こんな季節でも温室の中は初春に咲く花も咲き始めています。ここは代々の当主が妻のためにと手を尽くしている家族専用のプライベート空間で、私やお母様のお気に入りの場所でもあります。
「…温かいですわね。まるで春みたい…」
「ええ。今日は天気もいいので中はすっかり春の陽気ですね。花も咲き始めていますし、この温室は本当に素晴らしいです」
リシャール様も温室を眺めながらそう仰いました。ここにリシャール様と一緒に来るのは初めてですわね。それにしてもどうしてここにいらっしゃったのでしょう。
「レティ、どうぞ」
そう言ってリシャール様に促された私は、温室の椅子に腰を下ろしました。
こうなると確かに宰相の地位も考えざるを得ないのですよね。我が家は代々宰相を輩出していますし、十人の当主がいればそのうちの六、七人は宰相になっています。筆頭侯爵家として他の貴族を取りまとめ、王家から守るのも我が家の役目なので、自ずとその地位が回って来るとも言えるのですが…
(だからって、女性の宰相なんて、今までいなかったし…)
そう、リスナール国の様に女王が認められていて、女性進出が目覚ましい国ならまだしも、我が国はそういう点では遅れているのですよね。王女に王位継承権はありませんし、女性が爵位を継げる様になったのも割と最近の事なのです。
ただ、筆頭侯爵家を継ぐのであれば、それなりの役職に就く必要があるのも確かです。宰相がその最たる地位ですが、それに準じる地位も考える必要がありそうですわね。お父様は今後どうしたいか考えてみるようにと仰ったので、これからじっくり考えてみる事にしました。
それからさらに一週間が経ちました。相変わらずリシャール様はお忙しそうで、最後にお会いしたのは何時だったかもわからないくらいです。その間影に…と何度思った事でしょう。でも、リシャール様を信じると決めたので、リシャール様の手が空くまでは待つことにしたのですが…
「レティ、少しよろしいでしょうか?」
リシャール様に声を掛けられたのは、学園が始まってから二週間は優に経った休日、私が私室で今後の事を考えていた時でした。
「リシャール様!どうされましたか?」
思わず顔がにやけてしまうのは惚れた弱みなので、そこは大目に見て欲しいです。でも…見上げたリシャール様は随分お疲れの様子で、浮きたった気持ちが急にしぼんでいきました。
「…リシャール様、大丈夫ですか?お顔色が…」
「ああ、大丈夫です。それよりもすみません、暫くお会い出来なくて…」
「いいえ。それよりもお父様が無理を仰っているのではありませんか?」
全くお父様ったら、リシャール様に負担をかけ過ぎですわ。これはお父様に一言釘をさすべきかもしれません。
「いえ、侯爵、いえ、お義父上のせいではありませんから」
お義父上って…そ、そう言えば結婚したのでリシャール様は義理の息子になったのですよね。当然と言えば当然ですが、何だか照れてしまいますわ。
「レティ、今お時間よろしいですか?」
「え? ええ、大丈夫ですが、何か?」
「でしたら、少しお付き合いくださいませんか?」
そう言ってリシャール様が手を差し出されたので、私はその手を取りました。私よりも大きくて固くて、でも温かいその手にドキドキしてしまいます。
「ここは…」
連れてこられたのは、庭の一角にあるこじんまりとした温室でした。王都は冬になると気温は下がりますが、雪が降る事はありません。お天気がいい日は温室の中は春の様に温かくなるので、こんな季節でも温室の中は初春に咲く花も咲き始めています。ここは代々の当主が妻のためにと手を尽くしている家族専用のプライベート空間で、私やお母様のお気に入りの場所でもあります。
「…温かいですわね。まるで春みたい…」
「ええ。今日は天気もいいので中はすっかり春の陽気ですね。花も咲き始めていますし、この温室は本当に素晴らしいです」
リシャール様も温室を眺めながらそう仰いました。ここにリシャール様と一緒に来るのは初めてですわね。それにしてもどうしてここにいらっしゃったのでしょう。
「レティ、どうぞ」
そう言ってリシャール様に促された私は、温室の椅子に腰を下ろしました。
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