79 / 86
番外編~レニエ②
しおりを挟む
高位貴族の令息たちに乱暴され、壊れてしまった俺の婚約者。それでも彼女が生きているなら、いつかは回復して普通に暮らせる日が来るならと、ずっと怒りを抑えてきた。
襲ったのはフォルジュ公爵令嬢の実兄とその取り巻きたち。学園を卒業後、初めての夜会に共に参加した俺たちだったが、上司にその日の仕事のことで聞かれたほんの僅かの間に彼女は控室に引きずり込まれて襲われていた。俺が見つけた時には俺が贈ったドレスは無残にも引き千切られ、彼女も正気を失っていた。
貴族間での事件は裁判に掛けられるが、今回は王家が介入してきてそうはならなかった。主犯の男の妹が近々王太子に輿入れするからだ。他国への招待状も送った後、王太子妃になる者には長い年月をかけて教育する必要があるし、教育を終えた彼女は既に公務の手伝いもしていた。今更他の令嬢を立てることも出来ない。王家に頭を下げられ、莫大な慰謝料という名の口止め料と、現王、王太子の代にはミオット侯爵家とロルモー伯爵家に便宜を図り、手を出さないとの盟約を結んだ。もし王家が反故にするようなら今回の顛末を記した公文書を公開してもいいとの条件も得た。
だがそれも、クロエが回復することを前提にしたもの。回復した彼女が表舞台に立てるように、その時に不利なことにならないようにと交わしたものだ。だが亡くなってしまえば話は別だ。
そう思い復讐を誓う俺を止めたのは義父だった。
「どうしてですか!? クロエは……クロエは死んでしまったんですよ!? あいつらに殺されたも同然だ!! 義父上は……義父上は悔しくないんですか!?」
どうしてそう冷静にいられる? あんなにクロエを可愛がっていたじゃないか。俺よりもずっと強く深くクロエを愛していたのに。
「勘違いしてはいけない。泣き寝入りするわけじゃない。だが、その前に我々は生き延びなければならないのだよ」
爆発しそうな感情を止めたのは、静かすぎるほど静かな義父の声だった。
「な、何を……」
こちらは被害者なのに。あいつらは貴族の令嬢を襲ったのに。それなのにお咎めなしなのか? それでは法は何のためにある? どうして義父上はそんなに冷静でいられる?
「落ち着くんだ。いいかね、我々は危うい立場にあるんだ」
義父上はいきり立つ俺を抑えるように両肩に手を置き、俺の顔を覗き込んだ。
「危うい? って……」
「もう一度言う。我々は危うい立場にいる。加害者は次期王太子妃の兄とその取り巻き。だが今更フォルジュ公爵令嬢の輿入れは変更出来ない。式はもう直ぐだし、他国からの賓客も到着し始めている」
そんなことは知っている。クロエが襲われた直後に王家から説明された。国のためにここは堪えてくれと。あいつらは王家が責任をもって処罰するから公表しないでくれと。クロエの名誉のためもあって公表はしないことに同意した。
だが、死んでしまったのだ、クロエは。あいつらのせいで!! なのにあの男の妹がのうのうと結婚するなど、それもいずれは王妃になる地位に就くなど許せるはずがない!!
「そんなもの……!!」
「見誤るな、敵を知れ。あいつらは権力者なんだ」
「だから泣き寝入りしろと仰るのか? だが我が家は建国以来の名家です。我が家の力があれば……」
ミオット侯爵家は建国以来の名家で、王子が婿入りしたことも王女が降嫁したこともある。父は副宰相だし、過去には宰相を輩出したこともある。侯爵家の中でも上位に位置し、十分な財力だって……
「それでも、王家の力には及ばんよ。君は若いからまだ世の中の表面しか見えないだろうが、力がある者はまた裏の顔を持つんだ」
俺の目から視線を外さないまま、義父上は肩に置く手に力を入れた。食い込む指に肩が痛いと主張するが、それは義父の怒りの表れでもあった。
「君が怒りに任せて動けば、王家は黙っていないだろう」
「だが!! 密約がある!!」
そう、密約がある。奴らは俺たちに手が出せない。そうすればあの公文書が表沙汰になるんだ。
「密約など何の意味もないよ」
「なっ!!」
「あれを公表する前に消されるやもしれない。彼らにはそれだけの力がある」
「……そ、れは……」
その一言で頭の中の怒りが一瞬で冷えた。ああ、言いたいことが、義父が案じていることが分かった。
「大人しくしていなければ……消されると?」
「そうなるだろうね」
永遠に消えないと思われた復讐の念も王家の前では無意味だった。国家と一貴族の力の差など説明されなくてもわかる。あいつらが本気で俺たちを消そうと思えば造作もないことなのだ。公文書を、密約を公表する間も与えられることなく、冤罪を着せられて一族郎党処刑される可能性もあるのだ。
「レニエ君、クロエは愛しい娘だ。あの子のためなら死んでもいいと思っていた。それでも……私には両親も、妻も、クロエ以外の子もいる。親族や我が家に仕える者たちもだ。彼らを私は守らねばならないんだ。怒りを見せてはいけない。恨む素振りもだ。わかるね?」
俺にも怒りを見せるなと、復讐など考えるなと義父は言った。残された者たちを守るためだと。そう言われてしまえば何も言えなかった。クロエはいなくなっても、クロエが大切にしていた人が、愛していた人がいるのだ。彼らをこれ以上不幸になど出来ない。握りしめた拳から血が流れても、力を弱めることは出来なかった。
あれから俺は仮面をかぶった。いつも穏やかな笑みを浮かべて人畜無害な風を装い、文官になって務めに励んだ。クロエが亡くなると直ぐに釣書が山積みになったが、妻を失ったばかりでそんな気にはなれないと断り続ければ、いつしかそれも届かなくなった。幼馴染で仲がよかったから周りは愛妻を新婚早々失ったショックなのだろうと何も言わなかった。
そうしている間に俺は目立たないように仕事で実績を積み上げ、味方になってくれそうな相手を探し、見つければ少しずつ近づいて見極めていった。同時に同僚や後輩に手を差し伸べて仲間を増やし、彼らを使って情報を集めることにも力を注いだ。王家やその周りが何を考え企てているかを見極め、身を護る方法を模索した。
ジョセフに出会ったのは五年ほど経った頃だったろうか。ちょうど俺にいた部署に彼が新人として配属されて、それで面倒を見るようになった。伯爵家の嫡男でありながら軽薄な空気をまとい、婚約者を作らずにあちこちの女性と懇意になっている彼に上司は呆れていたが、俺は時々見せる陰のある表情が気になって近付いた。
案の定、彼は自身が子を成せないのではないかとの悩みを抱え、一人鬱々としていた。誰にも相談できず、だからと言って嫡男としての立場から早々に結婚して子を作ることを求められていたのだ。彼の軽薄さ多情さはその裏返しだった。
襲ったのはフォルジュ公爵令嬢の実兄とその取り巻きたち。学園を卒業後、初めての夜会に共に参加した俺たちだったが、上司にその日の仕事のことで聞かれたほんの僅かの間に彼女は控室に引きずり込まれて襲われていた。俺が見つけた時には俺が贈ったドレスは無残にも引き千切られ、彼女も正気を失っていた。
貴族間での事件は裁判に掛けられるが、今回は王家が介入してきてそうはならなかった。主犯の男の妹が近々王太子に輿入れするからだ。他国への招待状も送った後、王太子妃になる者には長い年月をかけて教育する必要があるし、教育を終えた彼女は既に公務の手伝いもしていた。今更他の令嬢を立てることも出来ない。王家に頭を下げられ、莫大な慰謝料という名の口止め料と、現王、王太子の代にはミオット侯爵家とロルモー伯爵家に便宜を図り、手を出さないとの盟約を結んだ。もし王家が反故にするようなら今回の顛末を記した公文書を公開してもいいとの条件も得た。
だがそれも、クロエが回復することを前提にしたもの。回復した彼女が表舞台に立てるように、その時に不利なことにならないようにと交わしたものだ。だが亡くなってしまえば話は別だ。
そう思い復讐を誓う俺を止めたのは義父だった。
「どうしてですか!? クロエは……クロエは死んでしまったんですよ!? あいつらに殺されたも同然だ!! 義父上は……義父上は悔しくないんですか!?」
どうしてそう冷静にいられる? あんなにクロエを可愛がっていたじゃないか。俺よりもずっと強く深くクロエを愛していたのに。
「勘違いしてはいけない。泣き寝入りするわけじゃない。だが、その前に我々は生き延びなければならないのだよ」
爆発しそうな感情を止めたのは、静かすぎるほど静かな義父の声だった。
「な、何を……」
こちらは被害者なのに。あいつらは貴族の令嬢を襲ったのに。それなのにお咎めなしなのか? それでは法は何のためにある? どうして義父上はそんなに冷静でいられる?
「落ち着くんだ。いいかね、我々は危うい立場にあるんだ」
義父上はいきり立つ俺を抑えるように両肩に手を置き、俺の顔を覗き込んだ。
「危うい? って……」
「もう一度言う。我々は危うい立場にいる。加害者は次期王太子妃の兄とその取り巻き。だが今更フォルジュ公爵令嬢の輿入れは変更出来ない。式はもう直ぐだし、他国からの賓客も到着し始めている」
そんなことは知っている。クロエが襲われた直後に王家から説明された。国のためにここは堪えてくれと。あいつらは王家が責任をもって処罰するから公表しないでくれと。クロエの名誉のためもあって公表はしないことに同意した。
だが、死んでしまったのだ、クロエは。あいつらのせいで!! なのにあの男の妹がのうのうと結婚するなど、それもいずれは王妃になる地位に就くなど許せるはずがない!!
「そんなもの……!!」
「見誤るな、敵を知れ。あいつらは権力者なんだ」
「だから泣き寝入りしろと仰るのか? だが我が家は建国以来の名家です。我が家の力があれば……」
ミオット侯爵家は建国以来の名家で、王子が婿入りしたことも王女が降嫁したこともある。父は副宰相だし、過去には宰相を輩出したこともある。侯爵家の中でも上位に位置し、十分な財力だって……
「それでも、王家の力には及ばんよ。君は若いからまだ世の中の表面しか見えないだろうが、力がある者はまた裏の顔を持つんだ」
俺の目から視線を外さないまま、義父上は肩に置く手に力を入れた。食い込む指に肩が痛いと主張するが、それは義父の怒りの表れでもあった。
「君が怒りに任せて動けば、王家は黙っていないだろう」
「だが!! 密約がある!!」
そう、密約がある。奴らは俺たちに手が出せない。そうすればあの公文書が表沙汰になるんだ。
「密約など何の意味もないよ」
「なっ!!」
「あれを公表する前に消されるやもしれない。彼らにはそれだけの力がある」
「……そ、れは……」
その一言で頭の中の怒りが一瞬で冷えた。ああ、言いたいことが、義父が案じていることが分かった。
「大人しくしていなければ……消されると?」
「そうなるだろうね」
永遠に消えないと思われた復讐の念も王家の前では無意味だった。国家と一貴族の力の差など説明されなくてもわかる。あいつらが本気で俺たちを消そうと思えば造作もないことなのだ。公文書を、密約を公表する間も与えられることなく、冤罪を着せられて一族郎党処刑される可能性もあるのだ。
「レニエ君、クロエは愛しい娘だ。あの子のためなら死んでもいいと思っていた。それでも……私には両親も、妻も、クロエ以外の子もいる。親族や我が家に仕える者たちもだ。彼らを私は守らねばならないんだ。怒りを見せてはいけない。恨む素振りもだ。わかるね?」
俺にも怒りを見せるなと、復讐など考えるなと義父は言った。残された者たちを守るためだと。そう言われてしまえば何も言えなかった。クロエはいなくなっても、クロエが大切にしていた人が、愛していた人がいるのだ。彼らをこれ以上不幸になど出来ない。握りしめた拳から血が流れても、力を弱めることは出来なかった。
あれから俺は仮面をかぶった。いつも穏やかな笑みを浮かべて人畜無害な風を装い、文官になって務めに励んだ。クロエが亡くなると直ぐに釣書が山積みになったが、妻を失ったばかりでそんな気にはなれないと断り続ければ、いつしかそれも届かなくなった。幼馴染で仲がよかったから周りは愛妻を新婚早々失ったショックなのだろうと何も言わなかった。
そうしている間に俺は目立たないように仕事で実績を積み上げ、味方になってくれそうな相手を探し、見つければ少しずつ近づいて見極めていった。同時に同僚や後輩に手を差し伸べて仲間を増やし、彼らを使って情報を集めることにも力を注いだ。王家やその周りが何を考え企てているかを見極め、身を護る方法を模索した。
ジョセフに出会ったのは五年ほど経った頃だったろうか。ちょうど俺にいた部署に彼が新人として配属されて、それで面倒を見るようになった。伯爵家の嫡男でありながら軽薄な空気をまとい、婚約者を作らずにあちこちの女性と懇意になっている彼に上司は呆れていたが、俺は時々見せる陰のある表情が気になって近付いた。
案の定、彼は自身が子を成せないのではないかとの悩みを抱え、一人鬱々としていた。誰にも相談できず、だからと言って嫡男としての立場から早々に結婚して子を作ることを求められていたのだ。彼の軽薄さ多情さはその裏返しだった。
459
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
王太子に愛されないので、隣国王子に拾われました
鍛高譚
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる