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第二章 親父たち大陸横断する
親父たち、荒野の決戦
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カルロ率いる無法集団はモヤシ村の一歩手前で立ち往生していた。
立ち往生していた理由はモヤシ村に行く道を含め地形が大幅に変わっていた上に、モヤシ村がまるで山賊の根城の如く逆茂木で囲まれていた。
「おい、一体どうなっているんだ?このあたりはこんな地形になっていなかっただろう。それにモヤシ村はいつからあんな柵ができたんだ?」
「へえ、そのとおりなんですが……なんでこんなことになったんでしょうね?ボス」
「俺に聞くな!」
○
そんな無法者たちを村の高台から眺める親父たちがいた。
「なあ、村正。敵さん来ないな?」
「そりゃ、あからさまに罠を張り巡らされていれば、当然だろうな」
「うむ、とりあえず第一段階は成功したようだな」
「相手の出鼻をくじいたでござる」
「じゃあ、第二段階と行くか?」
「うむ、軍曹に合図を」
「了解でござる」
そういって影は、鏡のかけらを使って櫓の上に居る軍曹に合図をした。
合図を受け取った軍曹は教授が作った狙撃銃もどきを手に取り、櫓の上で狙撃体勢をとった。
「教授。こんな突貫工事で作った銃もどきで親玉を狙撃するのは無理があるんじゃないのか?」
「うむ、村正の言うこともわかるが銃口は初歩的なライフリングも切ってあるし、火縄銃よりは性能は上だよ。それに弾は親玉の近くに当たればいいだけさ」
「当たればいいだけ?なんだそれ」
「見ていればわかるよ」
教授の言葉と共に軍曹はカルロに向かって引き金を引いた。
○
「なんだ!今の音は?」
「ボ、ボスのあた……プ」
手下は口を手で抑えて転げ回った。
「お前何しているんだ?」
手下の変な行動にカルロは他の手下に聞こうとしたが、なぜか全員口を両手で抑えていた。
「お前ら何やっているんだ?」
そうカルロが聞いても手下の誰一人として答えない。
全員の視線はカルロの頭頂部に集中していた。
「俺も頭にどうしたんだ?」
カルロは右手で自分の頭を触って気づいた。前頭部の中心部分から後頭部までの髪がないことに。
そうカルロの髪型は逆モヒカンになっていた。
こうしてカルロは気づいた手下達は笑いを必死になって抑えていることに気づいた。
カルロは自分が狙われたことよりも、部下に笑われたことに対して、怒りの頂点に達した。
カルロは冷酷な男として手下達から恐れられている。
その自分が、手下たちに笑われることは何よりもの侮辱に他ならない。
よって、手下達は全員死刑宣告を受けるのだった。
「おい、今すぐ村に向かって突撃するか、俺に殺されるか決めろ」(怒)
その言葉を聞いて、手下達は手を口から手綱に切り替えて、突進し始めた。
○
「うむ、やっと進軍を始めたようだな。これで作戦を進めることができる」
「軍曹惜しかったな。もう数センチ下だったら、親玉の眉間に鉛玉くらわせることができたの」
「うむ、村正。それ違うぞ」
「なんでだ教授?」
「うむ、親玉であるカルロを殺しても、あの無法者集団を束ねる者が必ず現れる。そうしたら、元の木阿弥だ」
「つまり教授が言いたいのは、無法者集団の殲滅が目的であって、狙撃はあくまで挑発にすぎないと」
「うむ、その通りだよ村正」
「二人とも、雑談はそれくらいで、敵が第一の罠に突入するでござるよ」
「うむ、では相手のお手並みを拝見しよう」
そう言って、親父たちは突進してくる先頭の無法者の乗っている馬がこけるのを見た。
「うむ、面白いように第一の罠プレーリーホールに見事に引っかかったようだね」
「それって、プレーリードッグが入るような小さな穴ぼこを我々があけただけだろ。なんであんなのに引っかかるんだ」
「何を言っているんだ村正。プレーリードッグによってアメリカでは、家畜や人が足を折る事故が多発して駆除対象になっているのだよ」
「そうなのか?教授」
「うむ、だからこそ、今回の第一の罠に使ったんだよ」
「二人とも、第一の罠についての感想はそれくらいにしておけ、敵さん。馬から降りて、こっちに向かってくるぞ」
「うむ、では第二の罠である投石機の準備をしよう」
教授の一言と共に、親父たちはそれぞれの投石機に向かって準備を始めた。
「なあ、村正。本当にこんなので大丈夫なのか?」
「何がだ?ブドウ。投石機の実験ならすでにやっているだろう」
「わしが言っているのは投石機そのものではなく、相手に投げる肝心の弾の事を言っているんだ」
「確かに弾がこれではな」
「せめて小石とかで散弾みたいにはできなかったか?」
「この辺に手頃な岩どころか、小石もそんなになかったからな、次善の策だ。あきらめろ」
「敵さんに同情してしまうな」
「まったくだ」
「うむ、二人ともお喋りはそのくらいにしてレバーを引け」
村正とブドウのそんな会話を気にも止めずに、教授は投石機の発射を促がした。
○
最初に異変に気づいたのは、手下の一人だった。
「おい、なんだあれは……※%◆$¥○」
手下の一人がモヤシ村から飛んできた物体に襲われて、声にならない声で倒れた。
彼らは本能的にその正体を理解し、恐怖した。
「や、奴らなんて物をぶん投げてくるんだ!」
「ああ、人間とは思えない!」
「あいつらはやっていいことと悪いことの区別もつかないのか!」
この会話を聞いた第三者なら、こう言うだろう「無法者のお前たちにだけは言われたくない」と。
親父たちが発射した弾の正体。それはモヤシ村の「汚物」たった。
○
「うむ、奴ら予想通りに動揺しているようだな」
「あたりまえでござる」
「あんな物を投げつけられたんだからな」
「どっかの動物園のゴリラじゃあるまいし」
「肯定であります」
「うむ、ではどんどん発射するぞ」
「「「聞けよ人の話を(でござる)」」」」
教授は聞いていないのか、聞きたくないのか投石機のレバーを引いて無法者集団に汚物弾をぶつける。
親父たちは教授の行動に諦めたのか、現実逃避したのか同じように投石機のレバーを引くのだった。
○
無法者集団は混乱していた。
親父たちが投石機で汚物の雨が自分たちに向かって降り注いでいるのだから、混乱するのも仕方がないことであった。
本来ならこの現状をどうにかするべき無法者集団の首領であるカルロでさえ、右往左往していた。
そんな中、一人の無法者が地面に長い溝があることに気づいて、これ幸いに避難した。
他の無法者たちもそれにならって、われ先に溝に避難していく。
○
無法者たちが地面に消えていく様子に気づいた親父たちは投石機を動かすのやめた。
「教授。どうやら敵さん塹壕に気づいたようだ」
「うむ、作戦通りになったな」
「しかし、教授って本当に何者なんだ?」
「ナパームの件といい今回の戦術といい。経験者の軍曹よりベテランのような気がするでござる」
「肯定であります」
親父たちがそんな会話をしている間に塹壕の中から悲鳴が聞こえてきた。
「うむ、どうやら罠に引っ掛かったようだね」
「教授……本当にやることが汚いな」
「まさか塹壕に落とし穴があるとは誰も思わないような」
「しかも穴の底に竹槍ならぬ木槍を仕込んでいるでござる」
「肯定であります。おまけに毒つき」
「うむ、では次の罠を発動させよう。点火準備」
「イエッサー!」
教授の一言と共に軍曹が導火線に火をつける。
「き、気のせいか?軍曹が生き生きしているような気がする」
「奇遇だな。わしの同じことを感じていた」
「忍びでもないのに、影が薄かったでござるから、今は影が濃くなったでござる」
親父たちの会話を余所に塹壕の端から土が雪崩のように流れてきた。
無法者たちは慌てて流れ込んできた土とは反対方向に逃げる。
途中で何人かが落とし穴に落ち生き埋めになったが、無法者たちはそんなことおかまいなしに進んで村の入り口に到着したが、そこで彼らを待ち受けていたのは「筋肉」だった。
「うむ、最後の罠である村人たちにかかった様だね」
「かかったというより、村の入り口に誘導したから必然的な気もするが、拙者の考えが間違っているのか?」
「村正どの。奇遇でござるな。同じことを考えていたでござる」
「それよりも無法者の一人が村人全員から袋叩きにあっているぞ」
「本当だ。だけどなぜ誰も袋叩きにあっている奴を助けようとしないんだ?」
「村正。それは簡単だ。下手に助けにいけば、自分が次の犠牲者になるのは明白。だから奴ら動きたくても動けないんだ」
「説明ありがとうブドウ」
「うむ、ブドウの言うとおりだが、前方が立ち往生していても、後方から人が次から次へとくるんだ。いずれ決壊したダムの如く無法者たちが入口に溢れる。我々も向かうことにしよう」
「それってまずくないか?急いで駆け付けないと」
「了解であります」
そう言って親父たちが村に入口に駆け付けた時には全てが終わっていた。
「うむ、手遅れだったようだね」
「予想していたが、これほどとは!」
「ブドウどのの案に一票でござる」
親父たちが見た惨劇は村人の半分が無法者たちをジャーマンスープレックスで、ノックダウンしている光景だった。
「あのプロレス技、流行っているのか?」
「あっちではパイルドライバーで上半身が地面にめり込んでいる人がいるぞ」
「うむ、他の村人もプロレス技で無法者たちを片づけている」
村正達はすぐにこうなった原因である人物に質問した。
「「「軍曹、村人に何をしたんだ?」」」
「生き残る術を教えただけであります」
村正達の質問に軍曹は真顔で答えたが、目は視線を逸らしていた。
「まあいい、そんなことよりも無法者集団の親玉を見つけることにしよう」
これ以上尋問しても答えないと悟ったのか、村正は頭を切り替えて、首謀者を見つけることにした。
「おかしいな?どこにもそれらしい人物はいないぞ」
「うむ、確かに頭が逆モヒカンだがらすぐにわかるはず。見当たらないのはおかしい?」
「村正、教授。パイルドライバーされた奴も引っ張り出したが、逆モヒカンではなかったぞ」
「肯定であります」
無法者の親玉であるカルロがいないことに疑問をもつ親父たち。
「うむ、考えられるのは二つ。一つは塹壕の中で生き埋めになっているか?」
「教授。もう一つは……」
「うむ、逃げられたということだ」
「それって、まずくないか?」
「うむ、ブドウの言うとおりだ。将棋やチェスと同じで王を取らなければ、こちらの勝ちにはならない」
「肯定であります」
無法者集団の首謀者であるカルロに逃げられた事に悔しがる親父たちだったが、一つの疑問が浮かんだ。
「「「「影。どこに行った?」」」」」
○
どうしてこうなった?
無法者集団の首謀者であるカルロは荒野を走りながらそう思った。
最初は自分を舐めた村人を躾けるつもりが、結果を見ればボロ負け。
しかも村人たちがモヤシから筋肉に変わっていた。
だから手下たちを囮にして逃げた。
本当は馬に乗って逃げるつもりだったが、あの汚物の雨によって馬はみんなどこかに逃げて行った。
だから走るしかない。
そう自分に言い聞かせて、カルロは足を動かしていた。
そんなカルロを遠くから見ている追跡者がいた。
「恐ろしいほど足の遅い人でござる」
影であった。
無法者たちの中から一人で逃げる者を見かけた影は後を追っていたのだった。
※逆茂木(さかもぎ).
敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵。
※プレーリードッグ
アメリカなどでは、牧草地において家畜が巣穴で足を折るなどした事故や、入植者たちの畑を荒らしたことなどから害獣扱いされているが、駆除により生態系を崩す恐れがあるとされている。
※投石機
石などを投擲して敵の人馬もしくは城などの建築物を標的とし射出攻撃する攻城兵器。
※塹壕
戦争で歩兵が砲撃や銃撃から身を守るために使う穴または溝。
立ち往生していた理由はモヤシ村に行く道を含め地形が大幅に変わっていた上に、モヤシ村がまるで山賊の根城の如く逆茂木で囲まれていた。
「おい、一体どうなっているんだ?このあたりはこんな地形になっていなかっただろう。それにモヤシ村はいつからあんな柵ができたんだ?」
「へえ、そのとおりなんですが……なんでこんなことになったんでしょうね?ボス」
「俺に聞くな!」
○
そんな無法者たちを村の高台から眺める親父たちがいた。
「なあ、村正。敵さん来ないな?」
「そりゃ、あからさまに罠を張り巡らされていれば、当然だろうな」
「うむ、とりあえず第一段階は成功したようだな」
「相手の出鼻をくじいたでござる」
「じゃあ、第二段階と行くか?」
「うむ、軍曹に合図を」
「了解でござる」
そういって影は、鏡のかけらを使って櫓の上に居る軍曹に合図をした。
合図を受け取った軍曹は教授が作った狙撃銃もどきを手に取り、櫓の上で狙撃体勢をとった。
「教授。こんな突貫工事で作った銃もどきで親玉を狙撃するのは無理があるんじゃないのか?」
「うむ、村正の言うこともわかるが銃口は初歩的なライフリングも切ってあるし、火縄銃よりは性能は上だよ。それに弾は親玉の近くに当たればいいだけさ」
「当たればいいだけ?なんだそれ」
「見ていればわかるよ」
教授の言葉と共に軍曹はカルロに向かって引き金を引いた。
○
「なんだ!今の音は?」
「ボ、ボスのあた……プ」
手下は口を手で抑えて転げ回った。
「お前何しているんだ?」
手下の変な行動にカルロは他の手下に聞こうとしたが、なぜか全員口を両手で抑えていた。
「お前ら何やっているんだ?」
そうカルロが聞いても手下の誰一人として答えない。
全員の視線はカルロの頭頂部に集中していた。
「俺も頭にどうしたんだ?」
カルロは右手で自分の頭を触って気づいた。前頭部の中心部分から後頭部までの髪がないことに。
そうカルロの髪型は逆モヒカンになっていた。
こうしてカルロは気づいた手下達は笑いを必死になって抑えていることに気づいた。
カルロは自分が狙われたことよりも、部下に笑われたことに対して、怒りの頂点に達した。
カルロは冷酷な男として手下達から恐れられている。
その自分が、手下たちに笑われることは何よりもの侮辱に他ならない。
よって、手下達は全員死刑宣告を受けるのだった。
「おい、今すぐ村に向かって突撃するか、俺に殺されるか決めろ」(怒)
その言葉を聞いて、手下達は手を口から手綱に切り替えて、突進し始めた。
○
「うむ、やっと進軍を始めたようだな。これで作戦を進めることができる」
「軍曹惜しかったな。もう数センチ下だったら、親玉の眉間に鉛玉くらわせることができたの」
「うむ、村正。それ違うぞ」
「なんでだ教授?」
「うむ、親玉であるカルロを殺しても、あの無法者集団を束ねる者が必ず現れる。そうしたら、元の木阿弥だ」
「つまり教授が言いたいのは、無法者集団の殲滅が目的であって、狙撃はあくまで挑発にすぎないと」
「うむ、その通りだよ村正」
「二人とも、雑談はそれくらいで、敵が第一の罠に突入するでござるよ」
「うむ、では相手のお手並みを拝見しよう」
そう言って、親父たちは突進してくる先頭の無法者の乗っている馬がこけるのを見た。
「うむ、面白いように第一の罠プレーリーホールに見事に引っかかったようだね」
「それって、プレーリードッグが入るような小さな穴ぼこを我々があけただけだろ。なんであんなのに引っかかるんだ」
「何を言っているんだ村正。プレーリードッグによってアメリカでは、家畜や人が足を折る事故が多発して駆除対象になっているのだよ」
「そうなのか?教授」
「うむ、だからこそ、今回の第一の罠に使ったんだよ」
「二人とも、第一の罠についての感想はそれくらいにしておけ、敵さん。馬から降りて、こっちに向かってくるぞ」
「うむ、では第二の罠である投石機の準備をしよう」
教授の一言と共に、親父たちはそれぞれの投石機に向かって準備を始めた。
「なあ、村正。本当にこんなので大丈夫なのか?」
「何がだ?ブドウ。投石機の実験ならすでにやっているだろう」
「わしが言っているのは投石機そのものではなく、相手に投げる肝心の弾の事を言っているんだ」
「確かに弾がこれではな」
「せめて小石とかで散弾みたいにはできなかったか?」
「この辺に手頃な岩どころか、小石もそんなになかったからな、次善の策だ。あきらめろ」
「敵さんに同情してしまうな」
「まったくだ」
「うむ、二人ともお喋りはそのくらいにしてレバーを引け」
村正とブドウのそんな会話を気にも止めずに、教授は投石機の発射を促がした。
○
最初に異変に気づいたのは、手下の一人だった。
「おい、なんだあれは……※%◆$¥○」
手下の一人がモヤシ村から飛んできた物体に襲われて、声にならない声で倒れた。
彼らは本能的にその正体を理解し、恐怖した。
「や、奴らなんて物をぶん投げてくるんだ!」
「ああ、人間とは思えない!」
「あいつらはやっていいことと悪いことの区別もつかないのか!」
この会話を聞いた第三者なら、こう言うだろう「無法者のお前たちにだけは言われたくない」と。
親父たちが発射した弾の正体。それはモヤシ村の「汚物」たった。
○
「うむ、奴ら予想通りに動揺しているようだな」
「あたりまえでござる」
「あんな物を投げつけられたんだからな」
「どっかの動物園のゴリラじゃあるまいし」
「肯定であります」
「うむ、ではどんどん発射するぞ」
「「「聞けよ人の話を(でござる)」」」」
教授は聞いていないのか、聞きたくないのか投石機のレバーを引いて無法者集団に汚物弾をぶつける。
親父たちは教授の行動に諦めたのか、現実逃避したのか同じように投石機のレバーを引くのだった。
○
無法者集団は混乱していた。
親父たちが投石機で汚物の雨が自分たちに向かって降り注いでいるのだから、混乱するのも仕方がないことであった。
本来ならこの現状をどうにかするべき無法者集団の首領であるカルロでさえ、右往左往していた。
そんな中、一人の無法者が地面に長い溝があることに気づいて、これ幸いに避難した。
他の無法者たちもそれにならって、われ先に溝に避難していく。
○
無法者たちが地面に消えていく様子に気づいた親父たちは投石機を動かすのやめた。
「教授。どうやら敵さん塹壕に気づいたようだ」
「うむ、作戦通りになったな」
「しかし、教授って本当に何者なんだ?」
「ナパームの件といい今回の戦術といい。経験者の軍曹よりベテランのような気がするでござる」
「肯定であります」
親父たちがそんな会話をしている間に塹壕の中から悲鳴が聞こえてきた。
「うむ、どうやら罠に引っ掛かったようだね」
「教授……本当にやることが汚いな」
「まさか塹壕に落とし穴があるとは誰も思わないような」
「しかも穴の底に竹槍ならぬ木槍を仕込んでいるでござる」
「肯定であります。おまけに毒つき」
「うむ、では次の罠を発動させよう。点火準備」
「イエッサー!」
教授の一言と共に軍曹が導火線に火をつける。
「き、気のせいか?軍曹が生き生きしているような気がする」
「奇遇だな。わしの同じことを感じていた」
「忍びでもないのに、影が薄かったでござるから、今は影が濃くなったでござる」
親父たちの会話を余所に塹壕の端から土が雪崩のように流れてきた。
無法者たちは慌てて流れ込んできた土とは反対方向に逃げる。
途中で何人かが落とし穴に落ち生き埋めになったが、無法者たちはそんなことおかまいなしに進んで村の入り口に到着したが、そこで彼らを待ち受けていたのは「筋肉」だった。
「うむ、最後の罠である村人たちにかかった様だね」
「かかったというより、村の入り口に誘導したから必然的な気もするが、拙者の考えが間違っているのか?」
「村正どの。奇遇でござるな。同じことを考えていたでござる」
「それよりも無法者の一人が村人全員から袋叩きにあっているぞ」
「本当だ。だけどなぜ誰も袋叩きにあっている奴を助けようとしないんだ?」
「村正。それは簡単だ。下手に助けにいけば、自分が次の犠牲者になるのは明白。だから奴ら動きたくても動けないんだ」
「説明ありがとうブドウ」
「うむ、ブドウの言うとおりだが、前方が立ち往生していても、後方から人が次から次へとくるんだ。いずれ決壊したダムの如く無法者たちが入口に溢れる。我々も向かうことにしよう」
「それってまずくないか?急いで駆け付けないと」
「了解であります」
そう言って親父たちが村に入口に駆け付けた時には全てが終わっていた。
「うむ、手遅れだったようだね」
「予想していたが、これほどとは!」
「ブドウどのの案に一票でござる」
親父たちが見た惨劇は村人の半分が無法者たちをジャーマンスープレックスで、ノックダウンしている光景だった。
「あのプロレス技、流行っているのか?」
「あっちではパイルドライバーで上半身が地面にめり込んでいる人がいるぞ」
「うむ、他の村人もプロレス技で無法者たちを片づけている」
村正達はすぐにこうなった原因である人物に質問した。
「「「軍曹、村人に何をしたんだ?」」」
「生き残る術を教えただけであります」
村正達の質問に軍曹は真顔で答えたが、目は視線を逸らしていた。
「まあいい、そんなことよりも無法者集団の親玉を見つけることにしよう」
これ以上尋問しても答えないと悟ったのか、村正は頭を切り替えて、首謀者を見つけることにした。
「おかしいな?どこにもそれらしい人物はいないぞ」
「うむ、確かに頭が逆モヒカンだがらすぐにわかるはず。見当たらないのはおかしい?」
「村正、教授。パイルドライバーされた奴も引っ張り出したが、逆モヒカンではなかったぞ」
「肯定であります」
無法者の親玉であるカルロがいないことに疑問をもつ親父たち。
「うむ、考えられるのは二つ。一つは塹壕の中で生き埋めになっているか?」
「教授。もう一つは……」
「うむ、逃げられたということだ」
「それって、まずくないか?」
「うむ、ブドウの言うとおりだ。将棋やチェスと同じで王を取らなければ、こちらの勝ちにはならない」
「肯定であります」
無法者集団の首謀者であるカルロに逃げられた事に悔しがる親父たちだったが、一つの疑問が浮かんだ。
「「「「影。どこに行った?」」」」」
○
どうしてこうなった?
無法者集団の首謀者であるカルロは荒野を走りながらそう思った。
最初は自分を舐めた村人を躾けるつもりが、結果を見ればボロ負け。
しかも村人たちがモヤシから筋肉に変わっていた。
だから手下たちを囮にして逃げた。
本当は馬に乗って逃げるつもりだったが、あの汚物の雨によって馬はみんなどこかに逃げて行った。
だから走るしかない。
そう自分に言い聞かせて、カルロは足を動かしていた。
そんなカルロを遠くから見ている追跡者がいた。
「恐ろしいほど足の遅い人でござる」
影であった。
無法者たちの中から一人で逃げる者を見かけた影は後を追っていたのだった。
※逆茂木(さかもぎ).
敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵。
※プレーリードッグ
アメリカなどでは、牧草地において家畜が巣穴で足を折るなどした事故や、入植者たちの畑を荒らしたことなどから害獣扱いされているが、駆除により生態系を崩す恐れがあるとされている。
※投石機
石などを投擲して敵の人馬もしくは城などの建築物を標的とし射出攻撃する攻城兵器。
※塹壕
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