ドラゴンなのに飛べません！〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

第一章

1-1 新たな目覚め

　胸が苦しくなり、倒れた所までは何となく記憶があった。
それからは、体が凄く軽くなりふわふわと、宙を漂っていたと思う。

ふわふわと漂っていたら、眩しい光がさして、その中に引きずり込まれて行った。

光の先には、暖かい風が流れていた気がした。
あっ...。これがあの世っていう所なんだなぁ～。
そう思っていたら、誰かに声を掛けられた。

《おや？キミは...ここに来る子じゃないね。キミは...そうだね...。うん！あっちに行っておいで。いい人生を！》

そう言われると、ポイッと何処かに飛ばされたのだった。

えっ？！死んでもこんな目に遭うのカァー？！と、叫びにならない叫びをした所で、私の意識はまた途絶えたのだった。

　次に意識が戻った時には、温かいのに、なぜか暗くて狭い場所に収まっていた。
なぜ収まっているのかと解ったのは、時々私が"収まっている何かを"コロコロと転がされる振動を、間接的に感じる事が出来たからだ。
そして、若干の重みもだ。

しかしすぐに、私の意識はまた深い闇に溶け込んでいった。

それからしばらくは、意識が戻っては転がされる振動と重みを感じては、意識が途絶える。
を、ひたすら繰り返していた。
それが、どれだけ繰り返されていたのだろうか？

　次に意識を取り戻した時には、何かの声も聴こえてきた。
その声は2種類あって、温かみのある声だった。

最初の頃は、何を言っているのか解らなかった。
しかし、段々と意識を保てる時間が長くなるに連れて、言葉を理解出来る様になっていたのだった。

"元気に産まれておいで"

"愛しい子"

"次に産まれるのは、どんな子だろうか？"

"どんな子でもいいわ。私たちの子供ですもの"

その言葉は、初めて自分に掛けられた、温かみのあるもので、自分が生まれ変わる事が出来たのだと知る事が出来たのだった。

しかも"今度は"、きちんと両親がいるのだ。
どんな人たちだろうか？
"前は"両親が居なかったから、凄く楽しみだ。

と、私は声を聴きながら思ってしまった。
？？？

ちょっとまてよ？
"今度は"?
"前は"?って...えっ？

そう疑問に感じた時だった。
私の中に、以前の記憶が断片のみが走馬灯の様に、流れてきたのだった。

何と私は、以前の記憶を奇跡的に"断片のみ"持ったまま産まれてしまったのだった。
"断片"にと言うのは、流れて来た記憶が所々欠けていたからだ。

それは意図的なのか、私が思い出したくないからかは判らないが、前世の思い出の何かのワンシーンしか流れて来なかったのだ。

まぁ～嫌な人生だったから、全部思い出せなくても気にはならなかった。
それどころか、思い出さなくても良かったとすら、思ってしまったのだ。

せっかくいい気分で、浸っていたのに少しモヤモヤ仕掛けた時だった。
またあの温かい声がしたのだった。

"この卵だけ色も違って、小さいけど大丈夫か？"

その声と同時に、私が"入っている何か"が揺れたのだった。
どうやら私が入っているのは、何かの"卵"の様だった。

???えっ？卵？私、卵に入ってるの？

あまりの驚きに身体を動かしたら、私の入っている卵も動いたのだった。
すると、笑い声が聴こえていた。

"ほら。貴方がそんなこと言うから、抗議してるわよ？"

"これは、失礼。どうやら、元気な子みたいだね。"

別に抗議したつもりは無かったが、私に向けられた声は、暖かく優しいものだった。

"あらあら。静かになったわね。眠ったみたいね"

また優しい声が聴こえたと同時に、温もりが来た。
私はその温もりに何故かホッとすると同時に、睡魔に襲われたのだ。

"しっかりおやすみ。大きくなるのよ。"

優しい声と温もりに包まれて、私はまた眠りに落ちた。
次起きた時、どんな事が待ち受けてるのか楽しみだった。

こんな気持ちで眠りにつけるなんて、初めての出来事だった。