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一章 異世界へようこそ 新たな人生の幕開け

1-4 そろそろ生まれましょうか?

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 僕が相棒と母上のお腹の中で過ごす様になってどれくらい経ったのだろうか?ここでいると時間の流れが全く分からない。

寝ては起きて、気が向いたら動いてまた寝て...の繰り返しをしているだけだからね...。

でも着実に僕らは大きくなっているのは分かる。

最初こそ豆粒みたいな大きさだったのが、人らしき形を取り出して、今ではちゃんと人であることも女か男かも分かるまでになっている。

今いる場所もそろそろ窮屈に感じる様になってきた。

僕達が大きくなるにつれて母上も動く頻度が多くなったみたいで、色んな刺激を感じる機会が増えたように思う。

温度もそうだが、お腹越しに感じる振動や音が日々違って僕も相棒も毎回密かに楽しみにしているのだ。

僕達がお腹にいるのに慣れてきたのか、母上の動きも安定して最初に感じていた変な緊張感?みたいなのを感じなくなった。

あと、お腹の管から流れてくる量や内容も日々増えてくるから僕達も大きくなりやすなってきている。

《ねぇー、今日も甘い香りのするもの食べてるのね。私これ好き!》

お腹の管からものが流れるたびに相棒はこうやって僕に教えてくれる。
僕はいまいち流れてくるものの違いがわからないでいるが、相棒は違うみたい。

毎回、《今日のはアツい!》や《なんか変な感じ!》や《くさい!これいや!》など色んな感想を述べてるからね。

見ていて飽きがこないからいいんだけど...。

《ねぇ~、そろそろ私達外に出てみたいと思わない?》

唐突に相棒がそんな事を言い出した。

(急にどうしたの?)

僕が相棒に不思議そうに質問すると相棒はちょっと複雑そうな表情で答える。

《いゃ~、ね?ここ、そろそろ狭くなってきたと思わない?それに...》

(それに?)

僕が首を傾げながら声をかけると相棒はもじもじしだす。
一体なんだ??相棒の行動が不気味で軽くひいていると意を決したように表情を引き締めて答える。

《毎日流れてくる物の正体しりたくない?!外から聞こえてくる声も!!毎日色んな音が聞こえてくるじゃない?
そりゃ~最初は良く分からなかったけど、最近音の違いもわかる様になってきたじゃない?だから...。》

最初こそ勢いよく喋っていたが、だんだんと声のボリュームが下がってくる相棒。
どうやら気にはなるが...って所なのだろう。

相棒の言いたいことが分かり僕は相棒の方に近寄りそっと手を握り声をかける。

(僕もね...外のことは気になるよ。ここは居心地いいもんね。安心感強いし。
それに比べて外は何があるか...どんなものがあるか分からないから不安だよね。)

僕がそう呟くと相棒は小さく首をこくって動かす。

ずっといるこの場所のほうが僕達にとって安全であるには間違いない。
しかし...ここにずっとはいられないのは僕は知っている。

前世の記憶があるからだと思う。
学校の授業か何かで知り得た知識の中に、母親の胎内でいられるのは"トウツキトウカ"であると。

十ヶ月程しか母親の胎内では過ごせないことを知っている。
時期がくれば外に出る様にお腹の中が少しずつ変化が起きると...。

僕は女の子じゃなかったからそれ以上の詳しい内容は分からない。
でも...今いる環境的に考えると僕達はそろそろ"外に出る時期"が近づいていることは分かる。

今まで自由に上下左右に動けていたこの空間も最近では狭くなり、左右はもちろんのこと上下に動くのも厳しくなってきている。

どちらかというと下に頭を向けている方が楽に感じる事が増えてきているのだ。

おかげで母上の声が遠くになってちょっと不満なんだけどね。

頭が上を向いている方が母上の心臓の音も声の声色もしっかり聞こえて好きなんだけど...その時期が近づいているのだから仕方がない。

僕は目の前で不安そうにしている相棒を見つめ微笑みながら更に声をかける。

("姉さん"不安だよね?僕もだよ。でも...ここからでても僕達はずっと一緒だよ。
何かあったら僕が"姉さん"を助けるから。
だから...勇気を出して外に出てみる?)

僕がそういうと相棒が...姉さんが一瞬目を見開き僕の顔を凝視したかと思ったら優しく微笑み僕を抱きしめる。

《ふふふっ。そうね、私達"姉妹"はずっと一緒よね。分かったわ!私お姉ちゃんだから頑張るわ!先に行って偵察してくるわ!大丈夫だと思ったら私声を出すから後からちゃんとくるのよ?!》

最後の最後までこの人は僕を"妹"だと言いきる。
ちゃんと下に小粒だが付いてるのになぁー...。
そんな事を思いながらも僕は相棒をしっかり抱きしめてお互いに外にでる準備を始める事にした。


 僕達が胎内でそんな話をしている頃、外の世界では母上がいつもよりしんどそうにしていた。

お腹をしきりにさすり身体の向きを頻回に変え、息をするのも大変そうになっていた。

母上専属の侍女達は急ぎ専属医師を呼びに行く。
侍女長は長年の経験からそろそろ時期が来ている事を悟り、側にいる数人の侍女達に指示を出す。

「お前達今から言う事をやっておくれ。お前達は桶を二つ用意して。そこにお湯を張って持ってきておくれ!
そこのお前達は新しいタオルをできるだけ多くもってくるの!
お前達馬旦那様達を呼んできて頂戴!お前達は...。」

次から次へとテキパキと指示をだす侍女長。
その言葉に侍女達は素直に返事をして与えられた仕事をこなしていく。

侍女達がバタバタしているとようやく専属医師がやってきて母上の診察をする。

そして...。

「奥様...そろそろ時期の様です。大丈夫ですか?」

専属医師の言葉に母上は荒い息をしながら静かに頷く。
母上の反応を見て専属医師は侍女長達に指示をだす。

「そろそろ出産の準備に入ります。男性人は外で待機をお願いします。女性の方々はこちらに残って私の補助と奥様の補助をお願いします。
 あと、"メレーセ様"を呼んできてください。」

専属医師の言葉に侍女長と侍女達は頷く。
部屋に到着した父上達は母上の様子を見て不安になるが、専属医師の説明を受けると、母上に励ましの言葉を伝え部屋から出るのだった。

ちなみに"メレーセ様"とは役職の事で、僕がいた世界で助産師さんにあたる方の事をいうのだ。
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