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第二章 歩み〜生活基盤を整えましょう〜
2-5 まず初めに鍛治工房を建てます
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今不在のラミィお兄ちゃんとモッケしゃんが来るまでに鍛冶場と工房を建設してみてはという案がでたので、どの様な建物にするかを話し合うことに。
作るのはお父さんとドムじぃーちゃん。
そして、ドラしゃんも補助的に参加することに決まった。
鍛冶場と工房についてはそこを使うお父さんとドムじぃーちゃんの2人の意見を上手く組み合わせて建てていくことにしたのだが...
「この世界の鍛冶場はどの様なものなんですか?」
そうなのです。
まず、この世界の"建物"についての知識をしっかり習得してからでないとイメージがしにくいので、お父さんは恥を偲んでドムじぃーちゃんに質問をした。
しかしドムじぃーちゃんはお父さんの質問に特に茶化すわけでもなく真剣に回答してくれたのだ。
「この世界のか?そうだな。お前さんは建物と言ったらこういう民家...民家にしては豪勢だけどよ、こんな感じの建物しか知らんのだったな。そりゃ~すまんな。
鍛冶場にしても他の建物にしてもそれぞれの用途に応じて建て方を変えてるのが基本じゃわい。
使う素材も違ってくるしの。ものによったら耐久性がかなり必要になってきたりするからのう。あとは、店の主人の使い勝手の良さかな。
そんでもって、これも人によるんじゃが、道具を作る鍛冶場とこまけぇー細工をする工房を分けて作る奴もいるし、一緒に作ってなかで分けたり、階ごとに分けて使う奴もいるぞ。ようは自分がどうしたいかが重要じゃでな。」
ドムじぃーちゃんがそういって自慢の髭をさする。
するとルミばぁーちゃんがはぁーとため息をつきながらドムじぃーちゃんの話の中で足りなかい部分を補足する。
「これだから男は...。作るりゃー良いってもんじゃないのよ!店は!
良いかい?見栄えも大事なんだよ!良いものをつくっても見栄えが良くなけりゃー売れるものも売れないさね。
良いもの作って売ろうって気があるなら、収納も大事だよ!
作るにも素材を保管する場所がいるでしょうが?そして、作ったものも保管する場所が必要になるでしょうが?
そこらへんに放置する訳にもいかないでしょうに...。」
ルミばぁーちゃんは呆れ顔でそう話とドムじぃーちゃんは作りながら話予定だったんだとルミばぁーちゃんに抗議をするもの軽くあしらわれていた。
2人の話を纏めるとだ...以下のようになる。
鍛冶場、つまり刃物や刀を造る場所と作った刃物類に細かな細工などをする工房とそれらに必要な材料や作ったものを保管する場所と売り場所が必要である事がわかった。
あと、鍛冶場の火は常に灯す必要があるため、耐熱性の強い壁や床が必要なことと空気や煙を逃す煙突が必要なため同じ空間に工房を造るのは難しい事が判明した。
ドムじぃーちゃんやルミばぁーちゃんの説明を聞きながらお父さんは何やら考え込んでいる。考え込むというかあれは...。
「あらあら、お父さん"仕事"モードね。」
お母さんがお父さんの横顔を見ながら呟くと席を外してどこかに。
皆で不思議そうにしているとお母さんは両手にある物を持って戻ってきたと思ったらそれらをそっとお父さんの手元に置いたのだ。
お母さんが持ってきたものは鉛筆と物差しとスケッチブック。しかもどうやらお父さんの部屋から持ってきたものらしく、お父さんは無意識にそれらを使って何かを描き出す。
その様子を全員で見守っているとものの数分で描き上げてそれを見せながらドムじぃーちゃんとドラしゃんに話をしだした。
「すみせん。ドムじぃーちゃんとルミばぁーちゃんの話を聞いて自分なりに纏めて見たものを描いたのですが...。鍛冶場はもちろん火を使う場所なので建物の作りや配置はこの世界のままにしようかと思います。でも、色んなことを考慮してこんな風に建てれたらと思うんですがどうでしょうか?」
お父さんはそう言いながらスケッチブックに描きあげた絵の説明をしていく。
「えっと...汚くて申し訳ないですが、こちらが鍛冶場となります。これはあくまでも自分が記憶している"鍛冶場"をイメージして描いたものなので許してくださいね。
窓を小さめにして数を増やして、建物内の熱があまり外に逃げないように窓はこの部分しか開かないようにするつもりです。
そして...ここに煙突を付けて...壁と床は耐熱性が必要ということなので厚みを持たせてみる事にしました。
あと、その時に必要な材料を置けるように使えと棚をこちらに設置して、それ以外の素材類はこの建物の地下に保管しようと思います。いわゆる"地下収納"です。ここら辺に地下に行く入り口と階段を設けたらと思ってます。」
嬉々と説明していくお父さん。そんなお父さんの説明を目を点にして聞く皆。
私とお兄ちゃん、お母さんはニコニコ顔でお父さんの話を聞く。
(本当にお父さんは建築の話になったら元気なんだよねぇー。)
そんなことを思いながら話を聞いているとお父さんの話はさくさくと進んでいく。
「あと、ここら辺に出入り口を二つ作る予定です。一つは普通に出入りする用。もう一つは工房と繋ぐようの出入り口です。渡り廊下で鍛冶場と工房を繋ぐ予定です。
あとですね、ここに裏口的なもの作ろうかと思います。
あっ!それと工房と売り場を一緒にしませんか?」
お父さんは満面の笑みを浮かべて話を聞いてくれているメンバーに質問を投げかけたのだ。
しかもここ絵を見る限りでは、工房と売り場を透明なガラスの様な物で仕切って売り場から工房が見える様になっている気がする。
もちろん売り場から工房に声が聞こえない様に遮音加工を施すという文字も書かれている。
工房で集中して作業出来る様にや売り場で商品を選んでいるお客様への配慮が盛り込まれていたのだ。
さすが建築士をしていただけあって細かな面まで配慮されている。
「職人さんの技術を見てより自分が購入した物を大事にしてくれます。あと購買意欲も高まるんじゃないかと思ってます。
本当なら鍛冶場も見せてあげたいのですが、火を扱う場所なので危険を伴います。そこは断念したので、せめて細工をしている所だけでも見れたらと思ってこのようにしてみました。
それに職人さんの技術を見て憧れを抱き大きくなった子供達がその道を選んでくれたら職人魅了に付きませんか?
勿論全員がそうだとは言い切れませんが...せめての希望もこめてみました。」
お父さんは照れ臭そうに話がドムじぃーちゃんはもちろんのことドラしゃん達はそれどころではない感じ...。
あまりの内容にかなり驚いているのだ。
彼らからしたらお父さんにここまで建築に関する知識が豊富とは思わなかったのだろう。
この世界では職人にとって技術が全て。
まぁ~、他の世界でも職人というものは皆そうなのではないだろうか。
代々受け継がれている技術もあるのでそれを弟子ならともかく他人に見せるなんて考えもしないもの。
それなのに今のお父さんは自分の持てる知識を惜しみなく提供している状況になるのだ。ドムじぃーちゃんは驚きながらもお父さんに確認する。
「でっ、でもよ?職人にとっては技術が全てだ。人に見せるなんて技術を盗まれる様なもんだぞ?!」
ドムじぃーちゃんの言葉にお父さんは一瞬考えてから返答する。
「私達の世界でも門外不出の技法とかもありますから、全てを見せる事はしません。売り場近くでする作業は最終行程的な部分のみを考えてます。
それ以外は外から見えないように仕切りで区切り、視界から隠すようにします。一部分でも見せる事が大事なんですよ。」
お父さんの言葉にドムじぃーちゃんは、"なる程なぁー。面白いかもなぁー。"と感心する。
全てを見せるのではなく、最後の行程だけ。それがミソとなる。
一般人からしたらその行程すらお金を払っても見たいものだろう。
お父さんの発想にはロドじぃーちゃんもルミばぁーちゃんも感心していた。
「よし、その方向性で建物を建てるか!フレア。可能か?」
ドムじぃーちゃんはドラしゃんに確認すると
ドラしゃんは御二人がそれでいいなら可能であると返事をする。
お父さんが描いた絵の中にドムじぃーちゃんの意見を付け加えていく。
あと、ドラしゃんやルミばぁーちゃん達の助言も付け足していき、建てる予定の建物の構造案は無事完成した。
今度は敷地内のどの辺りに建てるかだ。
場所に悩んでいたらロドじぃーちゃん達が口を開く。
「俺達も立てて欲しいものがあるからそれも念頭に入れてくれよ。」
「売り場も込みで建てるなら建てる場所を統一した方が今後の為にはいいんじゃないかい?」
するとお母さんが皆んなに質問する。
「この辺りに他に何を作るんですか?」
お母さんの質問にロドじぃーちゃんではなくルミばぁーちゃんが答えた。
「訓練場、装飾工房、あとは、小規模ギルド何かも作ろうと考えてるよ。」
するとお母さんが少し考えドラしゃん達に提案をする。
「私達の住居がある場所と工房とかの場所を区切る事はできますか?
"生活する場"と"仕事する場"みたいな感じに...。
場所は...限られてますが生活と仕事を分けてもらえたら助かります。気持ちのメリハリもつきますしね。」
お母さんは"生活する場"と"仕事する場"とで空間を区切る事で気持ちの切り替えを図りたいと伝えるとルミばぁーちゃん達は感心する。
「プライベートと仕事は別にしたいんです。何処かで区切らないと疲れちゃうしね。」
お母さんの意見にもルミばぁーちゃん達は驚きつつも賛同してくれた。
この世界は殆どが職場と家が同じ建物だったり同じ敷地内にあるみたいで、土地の制限があるのはもちろんのことだがそれが当たり前だと教わったからだ。
するとムキじぃーちゃんがある提案をしてくれた。
「生活の場の周をある程度の高さがある木で囲ってみたらいいじゃねぇか?
それは少し土地を広げるかだな。あと、工房周囲は木の柵で囲ってみるのも手だぜ。
少し雰囲気を変えるだけでも違ってくるしな。いまはそれで手を打とうぜ。
もう少し住人が増えたらまた方法を考えりゃいいじゃねぇかぁー?」
この言葉に全員が賛同した。
「確かに周りの雰囲気を変えるだけでも違ってくるなぁー。」
「ついでにこの際だから仕事場となる建物は、外観を変えたらいいじゃないかい。この世界は見た目の作りはどれも一緒だから面白みのかけらもない。唯一違うのが看板があるかないかだからね。
この際だからあんた達しか思い付かない建物を建てるのもありだよ。」
とロドじぃーちゃん、ルミばぁーちゃんが助言をくれたのでお父さんは手元のスケッチブックの新しいページを開き、話しながら絵を描いていく。
スケッチブックには住居とその他の建物の絵が描かれており、住居は外観が"洋風調"でそれ以外の建物に関してはどことなく"和風調"の建物が描かれていた。
そしてちゃんとなんの建物か分かるように看板もつけられている。
お父さんの意見にロドじぃーちゃん達は賛同して喜んでいる。
あらかた皆んなの意見をまとめドラしゃんが行動に移す。
家の外に行き、辺りを見渡したかと思ったら家族が住む住居区域の周囲を家の半分までが隠れるように木の壁で囲んでいく。
行き来が出来る様に何ヵ所かには木の扉がちゃんと付けられていた。しかもベル付き。
防犯対策もしっかりされている。
そして仕事場となる場所をいつくかに区切り、木の柵で囲んでいく。
その区切った一部にまずは鍛冶場と工房を作る事に。
今回はドラしゃんはあまり手伝わずにドムじぃーちゃんとお父さんだけで建てる事にしてみたようで2人はかなり張り切っている。
やる気に満ちている人の邪魔をしないようにと、私達はお父さんとドムじぃーちゃんをその場に残し、一度家に戻り昼ごはんの準備をする事にした。
私達が家に戻ったのを見届けてお父さんとドムじぃーちゃんは早速作業にとりかかる。
「俺が土台と骨組みを建てる。それに合わせてユウダイ。お前さんが肉付けをしていけ。
足りない所は俺が助けるから思うようにしてみろ。ただし、加減はしろよ。
さっき、話した感じの建物にするだぞ?」
ドムじぃーちゃんはお父さんに説明と注意をするとお父さんは素直に頷く。
それを確認してドムじぃーちゃんは作業開始した。
ドムじぃーちゃんはまず最初に建物を建てる場所の土を段差をつけながら掘り下げていく。もちろん魔法でだ。
人力でいけるが...それだと体力の限界が先に来るので魔法を使っていくのが1番効率がいいとのこと。
大きな穴が空いたと思ったら...?!!
なんと一瞬にしてそこには石造の床と壁そして階段の姿が!!
ドムじぃーちゃんが言うには地下を造る建物を建てる際には、地下の部屋から作っていく方が良いとのこと。
地上部分を作ってからでも地下は作れるが地下から作る方が強度が違うらしい。
だから腕のある職人は必ず地下から造るとドムじぃーちゃんはお父さんに教えながら作業を行う。
側から見ていると師匠と弟子のような感じで和気藹々と作業に没頭するふたり。
階段の出入り口部分には一部"ミスリル"素材を使って蓋をつくる。お父さんは本物のミスリルを見た事がないので綺麗な石だなぁーと思いながら見ていた。
きっとそれがミスリルだと知っていたら驚いてドムじぃーちゃんを止めていたと思う。
なぜドムじぃーちゃんがミスリルを使ったかというと...祝いの気持ちを込めたものだからだ。
腕と地位のある職人は弟子や友、身内などの祝い事にはミスリルを使う慣わしがあるそうだ。まぁ~と言ってもごく一部の古臭いしきたりを守っている職人のみの話らしい。
そもそもミスリルは高価な上に加工がかなり難しい鉱石の一種なので、扱える職人もほんのわずかしかいない。
この世界だとドムじぃーちゃんを除けば4、5人しかいないらしい....。
そんな貴重な鉱石を惜しみなく使うドムじぃーちゃん。
しかも鍛冶場から地下へと繋ぐ扉に使うのだから勿体なさすぎる。
地下部分を作り終えると鍛冶場の骨組みを造り出すドムじぃーちゃん。
鍛冶場の床部分のみはドムじぃーちゃんが特製の耐熱性の素材とまたもやミスリルをふんだんに使って造りあげる。
「よし!床と地下はこれでいいだろう。今から骨組みを造っていくからあとはお前さんにまかせるでな。」
ドムじぃーちゃんはお父さんの方を向いてそう言うと、床と同じ素材で固めた柱を四方八方に建てていく。
これで大まかな骨組みは完成した。
骨組みを作り上げたらドムじぃーちゃんはお父さんにアドバイスをする。
「壁や屋根を作り上げるときは熱には強く、だけど部屋の中は気持ち涼しくなるようイメージしてみろ。特に鍛冶場の部分はな。
それ以外はお前さんの思う様に作りな。後の手直しは俺がするから心配ない。
呪文は言わなくていい。魔力を練ってイメージをする。イメージを固めて魔力を放出する、だ。いけるな?」
ドムじぃーちゃんは小さい身体なのにその時はとても大きく見えたと後にお父さんが教えてくれた。
本当に師匠のような人だ。
お父さんは"わかりました"と返事をし、ドムじぃーちゃんが作った床の上に立ち両目を閉じて魔力を練り出すと同時にイメージを固め出す。
「熱に強く...。しかも涼しく...。」
お父さんは"ある場所"を思い浮かべた。それが具体的になってきたらその"場所"に似たものになる様に願いを込めて魔力を放出する。
すると...お父さんを中心に眩い光が辺りを包み出す。
そしてその光は、ドムじぃーちゃんが作った骨組みをも丸っと包み込んでいったのだった。
「こりゃ~...とんでもないのぅ。いやはやたまげたもんじゃわい。」
ドムじぃーちゃんは小さな目を大きく見開いて目の前の光景を見つめる。
限界まで包み込むと光は固定され、それと同時にお父さんが目を開けると...一瞬にして光は消えた。
光が消えるとそこにはお父さんがイメージした場所が綺麗に出来上がっているではないか。
あまりの一瞬の出来事のためドムじぃーちゃんは目は見開き、口は大きく開いて固まるしかなかった。
出来上がった建物はドムじぃーちゃんにとったら未知のもので、お父さんにとったらとても懐かしいもの。
それはお父さんが学生時代の頃、見学した場所...そのものものが綺麗に再現された形で造り出されていたからだ。作り出されていた。
「なんじゃいここは!?凄いのう!
俺もこんな凄い鍛冶場は見た事ないぞ。」
ドムじぃーちゃんは驚きやら関心やら色んな感情が入り混じた声色で呟く。
それもそのはず。目の前にあるものはお父さんが昔見学した、ガラス工房と刀の鍛冶場をミックスした感じの建物だから。
鍛冶場には鋼を溶かす炉にはじまり、色んな鋼を重ね合わせる様の炉、色を付けていく炉、仕上げをしていく炉の4種類の炉がつくられている。
あとは冷ます水場。打台まで造られていた。
換気用の最小限の大きさの窓もだ。
そして、ある程度の熱を感知したら適温になる様に天井にも仕掛けが密かに造られている始末。
内側の壁も耐熱性に優れており厚みもしっかりしてあり、文句のつけどろこがない。
しかもあの短時間で造られているのは鍛冶場だけではない。鍛冶場の壁の裏手側にはしっかり工房と売り場も綺麗に造られているのだから...。
工房と鍛冶場はちゃんと渡り廊下で繋がっており、それぞれの廊下の先には頑丈な扉も付いている。
工房の方は鍛冶場とはまた違った雰囲気に造られていて、床には畳が敷かれている。
壁は漆喰の白壁で円形の小窓もあり、壁に沿って木の机が設置してあるではないか?!
工房内の3分の2辺りから木の衝立が立てられていてちゃんと売り場からの目隠しもしてある。
その先は売り場と接する最終仕上げをする場所となっていて、売り場は上半分透明な板があり下半分は木の壁の造りが施されている。
売り場と工房が行き来出来る様に扉も設置してある。
売り場の方には、カウンターや商品棚もしっかり造られているではないか。
「良かった。イメージ通りに出来ました。」
お父さんはほっと一安心していた。
そんな、お父さんにドムじぃーちゃんは声をかける。
「お前さん、凄いなぁー!こんな建物どこで見たんだ?!実際にあるのか?」
ドムじぃーちゃんは凄く興奮していた。
ドムじぃーちゃんの中の大工の血が騒いでいたみたいで、お父さんは押され気味に。
「はい。私達の住んでた世界に似た様な場所があるんです。
学生時代に見学したガラス工房と刀の鍛冶場をイメージしました。
売り場と工房の一部は京都のお店をイメージしました。
あのう...このままで大丈夫ですか?」
お父さんは苦笑いしながら説明したのだが、ドムじぃーちゃんには聞き慣れない言葉ばかりの様子。
しかし、お父さんが造り出した場所をみてますます興味を掻き立てられてもいた。
「お前さんの世界は凄いのう!
このままで大丈夫だ!この建物意外にもこの世界に馴染むぞ!
いいのぅー!いやぁ~これから一緒に作業するの楽しみだのう。」
ドムじぃーちゃんは大笑いしながらお父さんをバシバシ叩いていた。
「あっ、ありがとうございます。」
お父さんはひたすら苦笑いをしていた。
「ところで名前は何にするかのう?」
ドムじぃーちゃんは周りを見渡しながら話し出す。
流石にお父さんは名前までは考えてなかったみたいで悩み出す。
「名前は...考えてなかったです。
ドムじぃーちゃん。考えて貰っていいですか?
ついでに、看板も作って頂けたらありがたいです。」
お父さんはドムじぃーちゃんにお願いした。
ドムじぃーちゃんはお父さんを連れて建物の外に出る。
外観もみてドムじぃーちゃんは名前を決めた。
そして、ドムじぃーちゃんは名前を刻んだ看板を店の入り口の上に付けた。
【異世界 鍛冶工房】
「いい名前だろう?」
「はい。直ぐに覚えてもらえそうですね。」
看板をみてお父さんとドムじぃーちゃんは顔を見合わせて笑顔に。
「建物できたし腹も減ったから戻るかぁ?」
ドムじぃーちゃんがそう言うとお父さんの代わりにお腹の虫が返事をする。
2人は笑いながら私達の待つ家に帰っていくのだった。
作るのはお父さんとドムじぃーちゃん。
そして、ドラしゃんも補助的に参加することに決まった。
鍛冶場と工房についてはそこを使うお父さんとドムじぃーちゃんの2人の意見を上手く組み合わせて建てていくことにしたのだが...
「この世界の鍛冶場はどの様なものなんですか?」
そうなのです。
まず、この世界の"建物"についての知識をしっかり習得してからでないとイメージがしにくいので、お父さんは恥を偲んでドムじぃーちゃんに質問をした。
しかしドムじぃーちゃんはお父さんの質問に特に茶化すわけでもなく真剣に回答してくれたのだ。
「この世界のか?そうだな。お前さんは建物と言ったらこういう民家...民家にしては豪勢だけどよ、こんな感じの建物しか知らんのだったな。そりゃ~すまんな。
鍛冶場にしても他の建物にしてもそれぞれの用途に応じて建て方を変えてるのが基本じゃわい。
使う素材も違ってくるしの。ものによったら耐久性がかなり必要になってきたりするからのう。あとは、店の主人の使い勝手の良さかな。
そんでもって、これも人によるんじゃが、道具を作る鍛冶場とこまけぇー細工をする工房を分けて作る奴もいるし、一緒に作ってなかで分けたり、階ごとに分けて使う奴もいるぞ。ようは自分がどうしたいかが重要じゃでな。」
ドムじぃーちゃんがそういって自慢の髭をさする。
するとルミばぁーちゃんがはぁーとため息をつきながらドムじぃーちゃんの話の中で足りなかい部分を補足する。
「これだから男は...。作るりゃー良いってもんじゃないのよ!店は!
良いかい?見栄えも大事なんだよ!良いものをつくっても見栄えが良くなけりゃー売れるものも売れないさね。
良いもの作って売ろうって気があるなら、収納も大事だよ!
作るにも素材を保管する場所がいるでしょうが?そして、作ったものも保管する場所が必要になるでしょうが?
そこらへんに放置する訳にもいかないでしょうに...。」
ルミばぁーちゃんは呆れ顔でそう話とドムじぃーちゃんは作りながら話予定だったんだとルミばぁーちゃんに抗議をするもの軽くあしらわれていた。
2人の話を纏めるとだ...以下のようになる。
鍛冶場、つまり刃物や刀を造る場所と作った刃物類に細かな細工などをする工房とそれらに必要な材料や作ったものを保管する場所と売り場所が必要である事がわかった。
あと、鍛冶場の火は常に灯す必要があるため、耐熱性の強い壁や床が必要なことと空気や煙を逃す煙突が必要なため同じ空間に工房を造るのは難しい事が判明した。
ドムじぃーちゃんやルミばぁーちゃんの説明を聞きながらお父さんは何やら考え込んでいる。考え込むというかあれは...。
「あらあら、お父さん"仕事"モードね。」
お母さんがお父さんの横顔を見ながら呟くと席を外してどこかに。
皆で不思議そうにしているとお母さんは両手にある物を持って戻ってきたと思ったらそれらをそっとお父さんの手元に置いたのだ。
お母さんが持ってきたものは鉛筆と物差しとスケッチブック。しかもどうやらお父さんの部屋から持ってきたものらしく、お父さんは無意識にそれらを使って何かを描き出す。
その様子を全員で見守っているとものの数分で描き上げてそれを見せながらドムじぃーちゃんとドラしゃんに話をしだした。
「すみせん。ドムじぃーちゃんとルミばぁーちゃんの話を聞いて自分なりに纏めて見たものを描いたのですが...。鍛冶場はもちろん火を使う場所なので建物の作りや配置はこの世界のままにしようかと思います。でも、色んなことを考慮してこんな風に建てれたらと思うんですがどうでしょうか?」
お父さんはそう言いながらスケッチブックに描きあげた絵の説明をしていく。
「えっと...汚くて申し訳ないですが、こちらが鍛冶場となります。これはあくまでも自分が記憶している"鍛冶場"をイメージして描いたものなので許してくださいね。
窓を小さめにして数を増やして、建物内の熱があまり外に逃げないように窓はこの部分しか開かないようにするつもりです。
そして...ここに煙突を付けて...壁と床は耐熱性が必要ということなので厚みを持たせてみる事にしました。
あと、その時に必要な材料を置けるように使えと棚をこちらに設置して、それ以外の素材類はこの建物の地下に保管しようと思います。いわゆる"地下収納"です。ここら辺に地下に行く入り口と階段を設けたらと思ってます。」
嬉々と説明していくお父さん。そんなお父さんの説明を目を点にして聞く皆。
私とお兄ちゃん、お母さんはニコニコ顔でお父さんの話を聞く。
(本当にお父さんは建築の話になったら元気なんだよねぇー。)
そんなことを思いながら話を聞いているとお父さんの話はさくさくと進んでいく。
「あと、ここら辺に出入り口を二つ作る予定です。一つは普通に出入りする用。もう一つは工房と繋ぐようの出入り口です。渡り廊下で鍛冶場と工房を繋ぐ予定です。
あとですね、ここに裏口的なもの作ろうかと思います。
あっ!それと工房と売り場を一緒にしませんか?」
お父さんは満面の笑みを浮かべて話を聞いてくれているメンバーに質問を投げかけたのだ。
しかもここ絵を見る限りでは、工房と売り場を透明なガラスの様な物で仕切って売り場から工房が見える様になっている気がする。
もちろん売り場から工房に声が聞こえない様に遮音加工を施すという文字も書かれている。
工房で集中して作業出来る様にや売り場で商品を選んでいるお客様への配慮が盛り込まれていたのだ。
さすが建築士をしていただけあって細かな面まで配慮されている。
「職人さんの技術を見てより自分が購入した物を大事にしてくれます。あと購買意欲も高まるんじゃないかと思ってます。
本当なら鍛冶場も見せてあげたいのですが、火を扱う場所なので危険を伴います。そこは断念したので、せめて細工をしている所だけでも見れたらと思ってこのようにしてみました。
それに職人さんの技術を見て憧れを抱き大きくなった子供達がその道を選んでくれたら職人魅了に付きませんか?
勿論全員がそうだとは言い切れませんが...せめての希望もこめてみました。」
お父さんは照れ臭そうに話がドムじぃーちゃんはもちろんのことドラしゃん達はそれどころではない感じ...。
あまりの内容にかなり驚いているのだ。
彼らからしたらお父さんにここまで建築に関する知識が豊富とは思わなかったのだろう。
この世界では職人にとって技術が全て。
まぁ~、他の世界でも職人というものは皆そうなのではないだろうか。
代々受け継がれている技術もあるのでそれを弟子ならともかく他人に見せるなんて考えもしないもの。
それなのに今のお父さんは自分の持てる知識を惜しみなく提供している状況になるのだ。ドムじぃーちゃんは驚きながらもお父さんに確認する。
「でっ、でもよ?職人にとっては技術が全てだ。人に見せるなんて技術を盗まれる様なもんだぞ?!」
ドムじぃーちゃんの言葉にお父さんは一瞬考えてから返答する。
「私達の世界でも門外不出の技法とかもありますから、全てを見せる事はしません。売り場近くでする作業は最終行程的な部分のみを考えてます。
それ以外は外から見えないように仕切りで区切り、視界から隠すようにします。一部分でも見せる事が大事なんですよ。」
お父さんの言葉にドムじぃーちゃんは、"なる程なぁー。面白いかもなぁー。"と感心する。
全てを見せるのではなく、最後の行程だけ。それがミソとなる。
一般人からしたらその行程すらお金を払っても見たいものだろう。
お父さんの発想にはロドじぃーちゃんもルミばぁーちゃんも感心していた。
「よし、その方向性で建物を建てるか!フレア。可能か?」
ドムじぃーちゃんはドラしゃんに確認すると
ドラしゃんは御二人がそれでいいなら可能であると返事をする。
お父さんが描いた絵の中にドムじぃーちゃんの意見を付け加えていく。
あと、ドラしゃんやルミばぁーちゃん達の助言も付け足していき、建てる予定の建物の構造案は無事完成した。
今度は敷地内のどの辺りに建てるかだ。
場所に悩んでいたらロドじぃーちゃん達が口を開く。
「俺達も立てて欲しいものがあるからそれも念頭に入れてくれよ。」
「売り場も込みで建てるなら建てる場所を統一した方が今後の為にはいいんじゃないかい?」
するとお母さんが皆んなに質問する。
「この辺りに他に何を作るんですか?」
お母さんの質問にロドじぃーちゃんではなくルミばぁーちゃんが答えた。
「訓練場、装飾工房、あとは、小規模ギルド何かも作ろうと考えてるよ。」
するとお母さんが少し考えドラしゃん達に提案をする。
「私達の住居がある場所と工房とかの場所を区切る事はできますか?
"生活する場"と"仕事する場"みたいな感じに...。
場所は...限られてますが生活と仕事を分けてもらえたら助かります。気持ちのメリハリもつきますしね。」
お母さんは"生活する場"と"仕事する場"とで空間を区切る事で気持ちの切り替えを図りたいと伝えるとルミばぁーちゃん達は感心する。
「プライベートと仕事は別にしたいんです。何処かで区切らないと疲れちゃうしね。」
お母さんの意見にもルミばぁーちゃん達は驚きつつも賛同してくれた。
この世界は殆どが職場と家が同じ建物だったり同じ敷地内にあるみたいで、土地の制限があるのはもちろんのことだがそれが当たり前だと教わったからだ。
するとムキじぃーちゃんがある提案をしてくれた。
「生活の場の周をある程度の高さがある木で囲ってみたらいいじゃねぇか?
それは少し土地を広げるかだな。あと、工房周囲は木の柵で囲ってみるのも手だぜ。
少し雰囲気を変えるだけでも違ってくるしな。いまはそれで手を打とうぜ。
もう少し住人が増えたらまた方法を考えりゃいいじゃねぇかぁー?」
この言葉に全員が賛同した。
「確かに周りの雰囲気を変えるだけでも違ってくるなぁー。」
「ついでにこの際だから仕事場となる建物は、外観を変えたらいいじゃないかい。この世界は見た目の作りはどれも一緒だから面白みのかけらもない。唯一違うのが看板があるかないかだからね。
この際だからあんた達しか思い付かない建物を建てるのもありだよ。」
とロドじぃーちゃん、ルミばぁーちゃんが助言をくれたのでお父さんは手元のスケッチブックの新しいページを開き、話しながら絵を描いていく。
スケッチブックには住居とその他の建物の絵が描かれており、住居は外観が"洋風調"でそれ以外の建物に関してはどことなく"和風調"の建物が描かれていた。
そしてちゃんとなんの建物か分かるように看板もつけられている。
お父さんの意見にロドじぃーちゃん達は賛同して喜んでいる。
あらかた皆んなの意見をまとめドラしゃんが行動に移す。
家の外に行き、辺りを見渡したかと思ったら家族が住む住居区域の周囲を家の半分までが隠れるように木の壁で囲んでいく。
行き来が出来る様に何ヵ所かには木の扉がちゃんと付けられていた。しかもベル付き。
防犯対策もしっかりされている。
そして仕事場となる場所をいつくかに区切り、木の柵で囲んでいく。
その区切った一部にまずは鍛冶場と工房を作る事に。
今回はドラしゃんはあまり手伝わずにドムじぃーちゃんとお父さんだけで建てる事にしてみたようで2人はかなり張り切っている。
やる気に満ちている人の邪魔をしないようにと、私達はお父さんとドムじぃーちゃんをその場に残し、一度家に戻り昼ごはんの準備をする事にした。
私達が家に戻ったのを見届けてお父さんとドムじぃーちゃんは早速作業にとりかかる。
「俺が土台と骨組みを建てる。それに合わせてユウダイ。お前さんが肉付けをしていけ。
足りない所は俺が助けるから思うようにしてみろ。ただし、加減はしろよ。
さっき、話した感じの建物にするだぞ?」
ドムじぃーちゃんはお父さんに説明と注意をするとお父さんは素直に頷く。
それを確認してドムじぃーちゃんは作業開始した。
ドムじぃーちゃんはまず最初に建物を建てる場所の土を段差をつけながら掘り下げていく。もちろん魔法でだ。
人力でいけるが...それだと体力の限界が先に来るので魔法を使っていくのが1番効率がいいとのこと。
大きな穴が空いたと思ったら...?!!
なんと一瞬にしてそこには石造の床と壁そして階段の姿が!!
ドムじぃーちゃんが言うには地下を造る建物を建てる際には、地下の部屋から作っていく方が良いとのこと。
地上部分を作ってからでも地下は作れるが地下から作る方が強度が違うらしい。
だから腕のある職人は必ず地下から造るとドムじぃーちゃんはお父さんに教えながら作業を行う。
側から見ていると師匠と弟子のような感じで和気藹々と作業に没頭するふたり。
階段の出入り口部分には一部"ミスリル"素材を使って蓋をつくる。お父さんは本物のミスリルを見た事がないので綺麗な石だなぁーと思いながら見ていた。
きっとそれがミスリルだと知っていたら驚いてドムじぃーちゃんを止めていたと思う。
なぜドムじぃーちゃんがミスリルを使ったかというと...祝いの気持ちを込めたものだからだ。
腕と地位のある職人は弟子や友、身内などの祝い事にはミスリルを使う慣わしがあるそうだ。まぁ~と言ってもごく一部の古臭いしきたりを守っている職人のみの話らしい。
そもそもミスリルは高価な上に加工がかなり難しい鉱石の一種なので、扱える職人もほんのわずかしかいない。
この世界だとドムじぃーちゃんを除けば4、5人しかいないらしい....。
そんな貴重な鉱石を惜しみなく使うドムじぃーちゃん。
しかも鍛冶場から地下へと繋ぐ扉に使うのだから勿体なさすぎる。
地下部分を作り終えると鍛冶場の骨組みを造り出すドムじぃーちゃん。
鍛冶場の床部分のみはドムじぃーちゃんが特製の耐熱性の素材とまたもやミスリルをふんだんに使って造りあげる。
「よし!床と地下はこれでいいだろう。今から骨組みを造っていくからあとはお前さんにまかせるでな。」
ドムじぃーちゃんはお父さんの方を向いてそう言うと、床と同じ素材で固めた柱を四方八方に建てていく。
これで大まかな骨組みは完成した。
骨組みを作り上げたらドムじぃーちゃんはお父さんにアドバイスをする。
「壁や屋根を作り上げるときは熱には強く、だけど部屋の中は気持ち涼しくなるようイメージしてみろ。特に鍛冶場の部分はな。
それ以外はお前さんの思う様に作りな。後の手直しは俺がするから心配ない。
呪文は言わなくていい。魔力を練ってイメージをする。イメージを固めて魔力を放出する、だ。いけるな?」
ドムじぃーちゃんは小さい身体なのにその時はとても大きく見えたと後にお父さんが教えてくれた。
本当に師匠のような人だ。
お父さんは"わかりました"と返事をし、ドムじぃーちゃんが作った床の上に立ち両目を閉じて魔力を練り出すと同時にイメージを固め出す。
「熱に強く...。しかも涼しく...。」
お父さんは"ある場所"を思い浮かべた。それが具体的になってきたらその"場所"に似たものになる様に願いを込めて魔力を放出する。
すると...お父さんを中心に眩い光が辺りを包み出す。
そしてその光は、ドムじぃーちゃんが作った骨組みをも丸っと包み込んでいったのだった。
「こりゃ~...とんでもないのぅ。いやはやたまげたもんじゃわい。」
ドムじぃーちゃんは小さな目を大きく見開いて目の前の光景を見つめる。
限界まで包み込むと光は固定され、それと同時にお父さんが目を開けると...一瞬にして光は消えた。
光が消えるとそこにはお父さんがイメージした場所が綺麗に出来上がっているではないか。
あまりの一瞬の出来事のためドムじぃーちゃんは目は見開き、口は大きく開いて固まるしかなかった。
出来上がった建物はドムじぃーちゃんにとったら未知のもので、お父さんにとったらとても懐かしいもの。
それはお父さんが学生時代の頃、見学した場所...そのものものが綺麗に再現された形で造り出されていたからだ。作り出されていた。
「なんじゃいここは!?凄いのう!
俺もこんな凄い鍛冶場は見た事ないぞ。」
ドムじぃーちゃんは驚きやら関心やら色んな感情が入り混じた声色で呟く。
それもそのはず。目の前にあるものはお父さんが昔見学した、ガラス工房と刀の鍛冶場をミックスした感じの建物だから。
鍛冶場には鋼を溶かす炉にはじまり、色んな鋼を重ね合わせる様の炉、色を付けていく炉、仕上げをしていく炉の4種類の炉がつくられている。
あとは冷ます水場。打台まで造られていた。
換気用の最小限の大きさの窓もだ。
そして、ある程度の熱を感知したら適温になる様に天井にも仕掛けが密かに造られている始末。
内側の壁も耐熱性に優れており厚みもしっかりしてあり、文句のつけどろこがない。
しかもあの短時間で造られているのは鍛冶場だけではない。鍛冶場の壁の裏手側にはしっかり工房と売り場も綺麗に造られているのだから...。
工房と鍛冶場はちゃんと渡り廊下で繋がっており、それぞれの廊下の先には頑丈な扉も付いている。
工房の方は鍛冶場とはまた違った雰囲気に造られていて、床には畳が敷かれている。
壁は漆喰の白壁で円形の小窓もあり、壁に沿って木の机が設置してあるではないか?!
工房内の3分の2辺りから木の衝立が立てられていてちゃんと売り場からの目隠しもしてある。
その先は売り場と接する最終仕上げをする場所となっていて、売り場は上半分透明な板があり下半分は木の壁の造りが施されている。
売り場と工房が行き来出来る様に扉も設置してある。
売り場の方には、カウンターや商品棚もしっかり造られているではないか。
「良かった。イメージ通りに出来ました。」
お父さんはほっと一安心していた。
そんな、お父さんにドムじぃーちゃんは声をかける。
「お前さん、凄いなぁー!こんな建物どこで見たんだ?!実際にあるのか?」
ドムじぃーちゃんは凄く興奮していた。
ドムじぃーちゃんの中の大工の血が騒いでいたみたいで、お父さんは押され気味に。
「はい。私達の住んでた世界に似た様な場所があるんです。
学生時代に見学したガラス工房と刀の鍛冶場をイメージしました。
売り場と工房の一部は京都のお店をイメージしました。
あのう...このままで大丈夫ですか?」
お父さんは苦笑いしながら説明したのだが、ドムじぃーちゃんには聞き慣れない言葉ばかりの様子。
しかし、お父さんが造り出した場所をみてますます興味を掻き立てられてもいた。
「お前さんの世界は凄いのう!
このままで大丈夫だ!この建物意外にもこの世界に馴染むぞ!
いいのぅー!いやぁ~これから一緒に作業するの楽しみだのう。」
ドムじぃーちゃんは大笑いしながらお父さんをバシバシ叩いていた。
「あっ、ありがとうございます。」
お父さんはひたすら苦笑いをしていた。
「ところで名前は何にするかのう?」
ドムじぃーちゃんは周りを見渡しながら話し出す。
流石にお父さんは名前までは考えてなかったみたいで悩み出す。
「名前は...考えてなかったです。
ドムじぃーちゃん。考えて貰っていいですか?
ついでに、看板も作って頂けたらありがたいです。」
お父さんはドムじぃーちゃんにお願いした。
ドムじぃーちゃんはお父さんを連れて建物の外に出る。
外観もみてドムじぃーちゃんは名前を決めた。
そして、ドムじぃーちゃんは名前を刻んだ看板を店の入り口の上に付けた。
【異世界 鍛冶工房】
「いい名前だろう?」
「はい。直ぐに覚えてもらえそうですね。」
看板をみてお父さんとドムじぃーちゃんは顔を見合わせて笑顔に。
「建物できたし腹も減ったから戻るかぁ?」
ドムじぃーちゃんがそう言うとお父さんの代わりにお腹の虫が返事をする。
2人は笑いながら私達の待つ家に帰っていくのだった。
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