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第三章 発展〜街から小さな国へ〜
3-14 訓練場のお兄ちゃん
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訓練場までなんとかたどり着いた私とドラしゃんは、ムキじぃーちゃんを探しに建物の中に入って行く。
私は訓練場が出来てから初めて入るのでドキドキだった。
もちろんだが移動は全てドラしゃんの腕の中。
ロドじぃーちゃん達と別れてから一度も??いやー、出かけてから一度も自分の足で歩いてない気が...。
そこで、ここまで来る間にドラしゃんにあるお願いをしてみた。
「ドラしゃん。わたし、歩きたい。だめ?」
私がお願いするとドラしゃんが少し辛そうな顔をする。
『お嬢様。私の腕の中はお嫌ですか?』
そう言われたら嫌ではないが歩きたいとは言えなかった。
「うんうん。いやじゃないよ。」
私がそう言うとドラしゃんは笑顔になって
『では、このままで。』
と、言うやり取りになったので諦めた。
今日は怒るお母さんもいないので大丈夫だろう。
しかし、初めめて入った訓練場の中は見た目よりかなり広かった。
建物は地下に伸びて行っているにも関わらず明るく圧迫感も感じない建物。
ドラしゃんの腕の中からキョロキョロと周りを見ていると声が聞こえて来た。
声がする部屋に行くとそこにはお兄ちゃんと王子2人にムキじぃーちゃんがいた。
訓練場で見るお兄ちゃん達は普段の姿とまた違っていた。
木の棒を握りしめて掛け声を出しながら動いていた。
汗もたっぷり吹き出しているのにも関わらず、気にもならないのか表情ひとつ変えず真剣な面持ちだった。
「お兄ちゃんなのに、お兄ちゃんじゃない。」
思わず私はそう呟いていた。
私の知るお兄ちゃんとは違った姿だったので思わずそう呟いてしまった。
不思議な違和感を感じたが決してお兄ちゃんが嫌いになった訳ではない。
でもなんか...ただ少しだけ、ほんの少しだけ寂しくなった感じがするだけ。
これからこうやって少しずつ自分の知らないお兄ちゃんが増えて来るのだとなんとなく思った。
寂しそうな顔でお兄ちゃんを見つめる私に気付いたドラしゃんはそっと優しく私の頭を撫でてくれた。
別に私を慰めるわけでもなく馬鹿にするわけでもなく。
本当にそっと優しく撫でてくれた。
『坊っちゃま。いいえ、アキラ様はこの訓練場が出来てから少しずつ成長されてますよ。
それは、良い方にですよ。でもその言葉はこの世界での話。
本来ならこんな事しなくて良い人生を送るはずでしたから我らも複雑です。』
そう言うと少し切なそうな顔をしたドラしゃん。
その顔のまま言葉を続ける。
『この世界で生きる覚悟をされましたら闘いは必須となります。
この世界には魔獣や野盗などが居る世界ですから。
弱き者から淘汰されていきますからね。
弱肉強食。まさにその言葉がしっくりくる世界です。
もちろん、私達が居る間は全力でお嬢様や御一家をお守りします。
わざわざご自身の手を汚すような真似はしなくて良いようにね。
しかし私達もこの先、永遠に生きていける保証はございません。
私達がいなくなった後でも、自らの力で生きていける術を今、アキラ様は学んでおられますよ。
ですから大丈夫です。
アキラ様はアキラ様です。ずっとお嬢様のお兄様ですよ。』
ドラしゃんはそう話すと優しく微笑む。
話してくれた内容の8割?いや9割りは...意味が理解出来なかったが、お兄ちゃんはお兄ちゃんだと言うドラしゃんの最後の言葉だけは理解できた。
「リンのお兄ちゃん。かっこいいね。」
私が笑顔でそう話すとドラしゃんはもちろんですと言って嬉しそうな表情を浮かべる。
そして、訓練を受けているお兄ちゃん達を見つめた。
どれくらい見ていただろうか?
私達が声をかける前に扉の外で中の様子を見ている私達に気付いたムキじぃーちゃんと目があった。
ムキじぃーちゃんは私達に中に入るように手招きをしたので、私とドラしゃんは訓練場の一室に入って行く。
私達が入って行っても訓練に集中しているためか、お兄ちゃん達は気付いていないようす。
そんなお兄ちゃん達に気を遣ってか、ドラしゃんも気配を押し殺してムキじぃーちゃんの側までいく。
ムキじぃーちゃんはそんな私達に気付いてか小声で話しかけて来た。
「珍しいじゃねぇーか?どうしたんだ?」
ムキじぃーちゃんの言葉に私の代わりにドラしゃんが答えてくれた。
『お前に伝達があって来たんだ。ついでに坊っちゃまの訓練姿を見ていただけだ。』
その言葉にムキじぃーちゃんは微笑した。
かと思うとお兄ちゃん達に声をかけた。
「訓練やめい!一旦休憩だ!」
その言葉にお兄ちゃん達は動きを止めた。
お兄ちゃん達は汗をかきながらも荒れた呼吸を整えていく。
そして顔を上げた瞬間に私達と目が合った。
お兄ちゃんも王子達も固まっていた。
まさか私やドラしゃんが居るとは思っていなかったからだ。
私はドラしゃんにお願いして降ろして貰った。
そして、お兄ちゃんの元に駆け寄っていく。
「お兄ちゃん。カッコいいね。凄いね。」
私が笑顔でお兄ちゃんに声をかけるといまいち状況が掴めていないのか、キョトンとしていた。
そんなお兄ちゃんにドラしゃんも声をかけた。
『坊っちゃま。訓練姿が勇ましくなりましたね。お嬢様も驚いていましたよ。』
ドラしゃんの言葉でやっと状況を掴めたのか、お兄ちゃんの顔は真っ赤になっていく。
「もしかして、ずっと見てたの?」
お兄ちゃんの言葉に私は笑顔で答えた。
「うんうん。とちゅうから。でも、カッコよかったよ。」
私の言葉にお兄ちゃんは凄く照れていた。
そんな私達を恨めしそうに見ている人物ががいた。
「ずるいぞ!アキラばっかり。」
「そうですよ。僕達も居ます!」
ブツブツとお兄ちゃんの後ろで、ふたりが呟いていた。
「??あっ!いたんだ!」
私は後ろのふたりに向かって声をかけた。
私の言葉にふたりは落ち込む。
そんなふたりを置いてドラしゃんはムキじぃーちゃんに話の続きをした。
『モッケロンが連れて来る予定の住人の住居なんだが、兵舎の裏に仮設で住居を造った。ある程度、この街での生活に慣れてから別に建てる事にしたんだ。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんは特に異論を言う事はなかった。
「いつ頃着く予定なんだ?」
ムキじぃーちゃんはドラしゃんにそれだけ尋ねた。
『もう少しだと思う。食糧が尽きかけているそうだからしばらく大変かもな。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんは少し悩んでいた。
しばらく悩んで悩んで悩みまくっていた。
唸り声を上げたと思ったら、手を叩いた。考えを纏めたのか私達に向き合って話し出した。
「ヨシ!しばらくは訓練内容変更だ。菜園と休息場を増設するぞ!あとは、家畜場もだな。」
ムキじぃーちゃんの言葉に私とお兄ちゃん達は驚いた。
ドラしゃんは特に驚くこともなく、"わかった"と返事をするだけだ。
「ヨシ!そうと決まれば、お前達。明日からは予定変更だ。今日は、このまま訓練継続だ。フレア。他の連中にもそう伝えてくれ!詳しい事は明日話そう。」
ムキじぃーちゃんはそれだけドラしゃんに伝えると、休んでいたお兄ちゃん達に声をかけて次の訓練を開始し出した。
私はドラしゃんに回収されその場を離れる事になった。
リン:
訓練してるお兄ちゃんかっこいいね^ ^
アキラ:
恥ずかしいよ(//∇//)
それ程でもないよ。
ムキじぃーちゃんには、まだまだ追いつかないしね。
すぐへばるから悔しいよ。
ドラしゃん:
坊っちゃまは、頑張り屋さんですね。
大丈夫ですよ。努力を毎日重ねていたら、結果は実を結びますよ^ ^
リン:
だって!お兄ちゃん^ ^
良かったね( ^ω^ )
アキラ:
ありがとう^ ^
頑張るよ!
ドラしゃん:
お嬢様も、坊っちゃまぐらい、謙虚でしたら助かりますのに...
リン:
????何か言った?
ドラしゃん:
いいえ^ ^何も。
では、皆さま次回もよろしくお願いします^ ^
私は訓練場が出来てから初めて入るのでドキドキだった。
もちろんだが移動は全てドラしゃんの腕の中。
ロドじぃーちゃん達と別れてから一度も??いやー、出かけてから一度も自分の足で歩いてない気が...。
そこで、ここまで来る間にドラしゃんにあるお願いをしてみた。
「ドラしゃん。わたし、歩きたい。だめ?」
私がお願いするとドラしゃんが少し辛そうな顔をする。
『お嬢様。私の腕の中はお嫌ですか?』
そう言われたら嫌ではないが歩きたいとは言えなかった。
「うんうん。いやじゃないよ。」
私がそう言うとドラしゃんは笑顔になって
『では、このままで。』
と、言うやり取りになったので諦めた。
今日は怒るお母さんもいないので大丈夫だろう。
しかし、初めめて入った訓練場の中は見た目よりかなり広かった。
建物は地下に伸びて行っているにも関わらず明るく圧迫感も感じない建物。
ドラしゃんの腕の中からキョロキョロと周りを見ていると声が聞こえて来た。
声がする部屋に行くとそこにはお兄ちゃんと王子2人にムキじぃーちゃんがいた。
訓練場で見るお兄ちゃん達は普段の姿とまた違っていた。
木の棒を握りしめて掛け声を出しながら動いていた。
汗もたっぷり吹き出しているのにも関わらず、気にもならないのか表情ひとつ変えず真剣な面持ちだった。
「お兄ちゃんなのに、お兄ちゃんじゃない。」
思わず私はそう呟いていた。
私の知るお兄ちゃんとは違った姿だったので思わずそう呟いてしまった。
不思議な違和感を感じたが決してお兄ちゃんが嫌いになった訳ではない。
でもなんか...ただ少しだけ、ほんの少しだけ寂しくなった感じがするだけ。
これからこうやって少しずつ自分の知らないお兄ちゃんが増えて来るのだとなんとなく思った。
寂しそうな顔でお兄ちゃんを見つめる私に気付いたドラしゃんはそっと優しく私の頭を撫でてくれた。
別に私を慰めるわけでもなく馬鹿にするわけでもなく。
本当にそっと優しく撫でてくれた。
『坊っちゃま。いいえ、アキラ様はこの訓練場が出来てから少しずつ成長されてますよ。
それは、良い方にですよ。でもその言葉はこの世界での話。
本来ならこんな事しなくて良い人生を送るはずでしたから我らも複雑です。』
そう言うと少し切なそうな顔をしたドラしゃん。
その顔のまま言葉を続ける。
『この世界で生きる覚悟をされましたら闘いは必須となります。
この世界には魔獣や野盗などが居る世界ですから。
弱き者から淘汰されていきますからね。
弱肉強食。まさにその言葉がしっくりくる世界です。
もちろん、私達が居る間は全力でお嬢様や御一家をお守りします。
わざわざご自身の手を汚すような真似はしなくて良いようにね。
しかし私達もこの先、永遠に生きていける保証はございません。
私達がいなくなった後でも、自らの力で生きていける術を今、アキラ様は学んでおられますよ。
ですから大丈夫です。
アキラ様はアキラ様です。ずっとお嬢様のお兄様ですよ。』
ドラしゃんはそう話すと優しく微笑む。
話してくれた内容の8割?いや9割りは...意味が理解出来なかったが、お兄ちゃんはお兄ちゃんだと言うドラしゃんの最後の言葉だけは理解できた。
「リンのお兄ちゃん。かっこいいね。」
私が笑顔でそう話すとドラしゃんはもちろんですと言って嬉しそうな表情を浮かべる。
そして、訓練を受けているお兄ちゃん達を見つめた。
どれくらい見ていただろうか?
私達が声をかける前に扉の外で中の様子を見ている私達に気付いたムキじぃーちゃんと目があった。
ムキじぃーちゃんは私達に中に入るように手招きをしたので、私とドラしゃんは訓練場の一室に入って行く。
私達が入って行っても訓練に集中しているためか、お兄ちゃん達は気付いていないようす。
そんなお兄ちゃん達に気を遣ってか、ドラしゃんも気配を押し殺してムキじぃーちゃんの側までいく。
ムキじぃーちゃんはそんな私達に気付いてか小声で話しかけて来た。
「珍しいじゃねぇーか?どうしたんだ?」
ムキじぃーちゃんの言葉に私の代わりにドラしゃんが答えてくれた。
『お前に伝達があって来たんだ。ついでに坊っちゃまの訓練姿を見ていただけだ。』
その言葉にムキじぃーちゃんは微笑した。
かと思うとお兄ちゃん達に声をかけた。
「訓練やめい!一旦休憩だ!」
その言葉にお兄ちゃん達は動きを止めた。
お兄ちゃん達は汗をかきながらも荒れた呼吸を整えていく。
そして顔を上げた瞬間に私達と目が合った。
お兄ちゃんも王子達も固まっていた。
まさか私やドラしゃんが居るとは思っていなかったからだ。
私はドラしゃんにお願いして降ろして貰った。
そして、お兄ちゃんの元に駆け寄っていく。
「お兄ちゃん。カッコいいね。凄いね。」
私が笑顔でお兄ちゃんに声をかけるといまいち状況が掴めていないのか、キョトンとしていた。
そんなお兄ちゃんにドラしゃんも声をかけた。
『坊っちゃま。訓練姿が勇ましくなりましたね。お嬢様も驚いていましたよ。』
ドラしゃんの言葉でやっと状況を掴めたのか、お兄ちゃんの顔は真っ赤になっていく。
「もしかして、ずっと見てたの?」
お兄ちゃんの言葉に私は笑顔で答えた。
「うんうん。とちゅうから。でも、カッコよかったよ。」
私の言葉にお兄ちゃんは凄く照れていた。
そんな私達を恨めしそうに見ている人物ががいた。
「ずるいぞ!アキラばっかり。」
「そうですよ。僕達も居ます!」
ブツブツとお兄ちゃんの後ろで、ふたりが呟いていた。
「??あっ!いたんだ!」
私は後ろのふたりに向かって声をかけた。
私の言葉にふたりは落ち込む。
そんなふたりを置いてドラしゃんはムキじぃーちゃんに話の続きをした。
『モッケロンが連れて来る予定の住人の住居なんだが、兵舎の裏に仮設で住居を造った。ある程度、この街での生活に慣れてから別に建てる事にしたんだ。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんは特に異論を言う事はなかった。
「いつ頃着く予定なんだ?」
ムキじぃーちゃんはドラしゃんにそれだけ尋ねた。
『もう少しだと思う。食糧が尽きかけているそうだからしばらく大変かもな。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんは少し悩んでいた。
しばらく悩んで悩んで悩みまくっていた。
唸り声を上げたと思ったら、手を叩いた。考えを纏めたのか私達に向き合って話し出した。
「ヨシ!しばらくは訓練内容変更だ。菜園と休息場を増設するぞ!あとは、家畜場もだな。」
ムキじぃーちゃんの言葉に私とお兄ちゃん達は驚いた。
ドラしゃんは特に驚くこともなく、"わかった"と返事をするだけだ。
「ヨシ!そうと決まれば、お前達。明日からは予定変更だ。今日は、このまま訓練継続だ。フレア。他の連中にもそう伝えてくれ!詳しい事は明日話そう。」
ムキじぃーちゃんはそれだけドラしゃんに伝えると、休んでいたお兄ちゃん達に声をかけて次の訓練を開始し出した。
私はドラしゃんに回収されその場を離れる事になった。
リン:
訓練してるお兄ちゃんかっこいいね^ ^
アキラ:
恥ずかしいよ(//∇//)
それ程でもないよ。
ムキじぃーちゃんには、まだまだ追いつかないしね。
すぐへばるから悔しいよ。
ドラしゃん:
坊っちゃまは、頑張り屋さんですね。
大丈夫ですよ。努力を毎日重ねていたら、結果は実を結びますよ^ ^
リン:
だって!お兄ちゃん^ ^
良かったね( ^ω^ )
アキラ:
ありがとう^ ^
頑張るよ!
ドラしゃん:
お嬢様も、坊っちゃまぐらい、謙虚でしたら助かりますのに...
リン:
????何か言った?
ドラしゃん:
いいえ^ ^何も。
では、皆さま次回もよろしくお願いします^ ^
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