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第三章 発展〜街から小さな国へ〜
3-18 不信感と安心と知られたくなかった思い
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私とお兄ちゃん、そしてドラしゃんの3人で全然来ないルミばぁーちゃん達を迎えに行く事になったので、兵舎裏に新しく建てた仮住居に向かっていく。
すると...なんだか少し建物の中から騒がしいく人の声がする。
不思議に思った私達は窓からそっと中を覗く事に。すると...中では見習い兵士のお兄ちゃん達が、あわあわしていたいた。
反対側の部屋の隅では、モッケしゃんと一緒に来た人達が震えながら固まっているではないか。
そんな彼らから少し距離を置いた場所でルミばぁーちゃんが頭を抱えていた。
私はドラしゃんの腕の中から降りて、家の中へ向かった。
慌ててお兄ちゃんが私を追いかけようとしたが、何故かドラしゃんに止められた。
『ここは、お嬢様にお任せしてみましょう。』
そう言って、ドラしゃんはお兄ちゃんを抱えて窓から中を見守る。
ドラしゃんに止められたので、お兄ちゃんもそのまま窓から中を伺う事にした。
私が家の扉を開けると、視線が集中する。
私の姿を見たルミばぁーちゃんは、驚いていた。それは、見習い兵士達も同じだった。
私はルミばぁーちゃん達に目もくれずに、部屋の隅で固まっている人達の元へ歩いて行く。
彼らは私の登場に驚いて、更に警戒を強めた。
何故、子供の私までそこまで警戒を強めるのか不思議だったが、私は彼らの前まで行くと、笑顔を向けた。
そして...。
「初めまして。わたしは、リンです。この街でかぞくと住んでます。
さいきんににゃって、4才になりました。」
私は自分の自己紹介をした。彼らは警戒を緩める事なくじっと私を見つめていた。
私はそんな彼らの反応をまるっきり無視して話を続けた。
「ここには、わたしのかぞくと、わたしたちをたすけてくれる、あたらしいかぞくしかいましぇん。
みんなをいじめるような、わりゅい人はいないよ。コワイいきものもこないし、あんぜんだよ。
まぁ~、ときどきお母さんとルミばぁーちゃんがおこって、カミナリがおちるぐらいかなぁ?
こわいことっていったら、しょれぐらいよ。
それいがいは、こわいことないよ。
あんしんして、ねれるし、皆んなちゅよいし、だいじょうぶだよ。
もし、みんなにいじわる人がいたら、わたしが、めっ!ってするね。」
彼らにここがいかに安全で安心できる場所であるかを自分なりに必死に説明した。
話終えると、私は彼らの前で座り込み、静かに腕輪を彼らの前に出す。
彼らは、静かに私の動きを見守った。
すると、腕輪からミニサイズの【大聖霊】達が出てきた。
不安そうにしている彼らに向かって【大聖霊】達が話し出す。
『私達は、この小さな主人に仕えてます。【大聖霊】が1人、ドライアドと申します。こんな姿で失礼します。
この街を護っていますひとりです。ここは安心して過ごせる場所なので心ゆくまで過ごしてくださいね。』
『僕は、【大聖霊】が1人、ノーム。よろしくね。この主人がいる以上、この街ほど安全な所はないよ。敵もこれないしね。まず、僕たち以上に過保護な保護者たちがいるから世界で一番安全な場所だよ。』
『俺様は、【大聖霊】が1人、ウンディーナだ。コイツらの言うことは本当だぜ。それによ、この主人に何かあれば黙っていない保護者が大勢いるわけさ。』
『俺様は、【大聖霊】が1人、イフリートだ。よろくしな。だから、アンタらは心配する必要ないぜ。のんびり過ごせばいいさ!』
『僕は、【大聖霊】が1人、シルフだよ。よろしくね。
ここには、僕たち以外にも神様の守護も1番濃いからね。安全で安心して暮らせる所だよ。君たちは良い所に来れたよ!』
『初めまして...【大聖霊】...1人...ミスト。ここ...すごく...安全。この...世界の...王様...も来るしね...。』
『私は、【大聖霊】が1人、サク・フラワーだよ。ここにきた以上、主人の家族の一員なんだから、私達が全力で守って上げるわよ。だからさぁー。』
『『この街の人達を信じてあげて。』』
小さな女の子にも説得され、更に【大聖霊】達にも説得された彼ら。
自然と身体の緊張が解れて涙するのだった。
「もう大丈夫だよ。」
私は、後ろでことの顛末を見守っていたルミばぁーちゃん達に声をかけた。
それから、行動は早かった。
ルミばぁーちゃんを、筆頭に見習い兵士達で泣く彼らを慰めながら、風呂場へ案内していった。
まだ、できていなかった彼らの着替えや身体確認やお風呂を行なっていく。
「助かったよ。リン。私らが何を言っても、彼奴らは隅に固まって動こうともしないし、何も言わないから困ってたんだよ。」
ルミばぁーちゃんは、そう言って私に御礼を言う。
私は笑顔でルミばぁーちゃんを見た。
そして、見習い兵士達に促されて着替えやお風呂に入る人達を見つめた。
皆ボロボロの服を着ていて、体も痩せ細っていた。
中には、痣や怪我をしている人もいた。
私は彼らに向かって更に声をかけた。
「お風呂に入って、ピカピカになったら皆でごはん食べようね。」
その言葉に、1人の男性から返事が来た。
「アンタを疑う訳ではない。しかし、信用するにも...。
いったい、俺たちをどうする気だ?
着る物や風呂、食事はありがたい。
しかし、俺たちにはアンタらに払う金もなければ土地もない!」
その言葉に、他の人からも声が上がった。
「そうです。私たちには何もありません。」
「俺たちをどうする気だ。」
すんなり動いてくれる様になったが、まだまだ信用は得られて内容だった。
そして、警戒も完全には解けてないようだった。
ルミばぁーちゃんは、彼らの言葉に憤りを感じて、何か言葉を発する前に私が彼らに答えたのだ。
「べつに。とくになにもないよ。
すむとこがないなら、ここにすむといいよ。私たちもそうしたから。
ここはね。こまってる人をみしゅてる人はだれもいないよ。」
そう言うと、私の後ろからお兄ちゃんの声もした。
「そうですよ!ここの人達は、皆んな親切ですよ。僕達も困ってるところを助けられました。
それに、住むところや仕事もここならあります。」
私とお兄ちゃんの言葉に、彼らは驚いていた。
しかし、子供の言う事を安易とは信じてはくれそうになかった。
すると、外で見守っていたドラしゃんもいつの間にか入って来て、彼らに声をかけた。
『辛い目にあったから、人を疑うのは仕方がないのは、百歩譲りましょう。
しかし、本当に疑うべき相手か、そうでないかぐらいは判断がつくでしょう?
それすらも分からないほど、あなた方は落ちぶれたのですか?』
そう言うと、ドラしゃんは私を抱きあげた。
ドラしゃんの言葉に、押し黙る彼らに見習い兵士達も声をかけた。
「私達も、実は職を失う所を彼等に救っていただきました。」
「私達半端者の獣人で、王宮の兵士としては本来なら不採用なんですが、王様のご慈悲にて採用されました。」
「しかし、やはり失敗続きで王宮の兵士としては、役に立てずクビを言い渡される寸前でした。」
「それを、ここの方々に救って頂きました。住むところや仕事も与えてもらってます。
しかし、ここの人達は与えてくれるが、見返りを欲求された事は一切ありませんでした。ですから、私達は自分達が出来る事をして、ここの人達に恩を返してます。」
見習い兵士達にそんな経緯があったなんて、私もお兄ちゃんも知らなかったので驚いた。
兵士達の言葉に、彼等も納得しつつあった。
そこでトドメを刺したのが、ルミばぁーちゃんだった。
「ここにはね、元ギルマスの私やロドムカ。ドワーフ族族長のドムやこの世界最強竜種のドラゴンであるフレア。そして、元王宮近衛騎士団隊長なんかも居るんだよ?
しかも、【大聖霊】まで居るんだよ?
どう悪さするって言うんだい。
できる奴がいたら、顔を拝みたいもんだね。
見返りを要求するほど、私らは落ちぶれではないよ。
それに、この子見てもわかるだろうに。
この子の親も無理難題を押し付けたりするよつな奴らではないよ。
アンタらの為に、自分達の食糧を根こそぎ用意する様な奴等だよ。
この家やアンタらに用意した服だってそうだ。
それより、これ以上このお嬢ちゃんを困らせる事する方が...アンタら危ないよ。」
ルミばぁーちゃんの言葉に、最初の方はウンウンと頷けていたが...?最後の言葉に疑問を感じた。
私とお兄ちゃんは首を傾げたが、どうやら彼等には意味が理解できた様だった。
私を抱き上げているのは、この世界最強のドラゴンなのだ。
見た目は、優しい老紳士なのだが...。
彼の背後から、ドラゴンの威圧の影が出ているのに察した彼らは、今度こそ素直に納得したようで、そこからの行動は早かった。
速やかに、お風呂と着替えを済ませて皆が待つ広場へと彼らと向かった。
広場へ行くと、美味しい匂いが立ち込めていた。
匂いを嗅いだ彼らのお腹は正直だった。
街の皆で、彼らを席に案内した。
戸惑いながらも素直に応じる彼ら。
時々チラチラと私とドラしゃんの方を見ていたので、私は笑顔を向けた。
ドラしゃんは気に留めてもいなかった。
さぁー、みんな揃ったので今から大宴会の始まりだ!
それぞれ席に着いたのを確認して、ルミばぁーちゃんが言葉を発した。
「よし!皆揃ったね。改まった自己紹介とかは、後日するよ。
今は、無事に皆が居ることと、久しぶりの友との再会を祝おうじゃないかい。久しぶりに、まともな食事を採るものも居るだろう。無理のない範囲で食べるんだよ。」
そう言うと、続いてお父さんが話をした。
「この街に来てくれた事を感謝します。人との出会いは、何をきっかけに出会うかはわかりません。
しかし、一度出会ったのは何かの縁があると私は思います。
この街に居る間は安全です。食や住む所の心配はありません。仕事も無ければ提供します。
ですから、今はしっかり食べて、飲んで、疲れた心と体を癒やして下さい。
では、新たな出会いと友との再会を祝って、乾杯!!」
「「「『乾杯!!』」」」
乾杯の合図で、宴会が幕を開けた。
モッケしゃんが連れてきた、彼らも最初は恐る恐る、目の前の食事に手を付けていたが、一口食べると無言で次々と箸を進めていった。
そんな彼らに、ナナばぁーちゃん達が声をかけた。
「焦らずゆっくり噛んでお食べ。おかわりは十分に用意してあるよ。」
「そうよ。誰もとったりしないわ。もしも、とる様な人が居たら私らがぶっ飛ばすから安心おしよ。」
そう笑顔で話していた。
その言葉に、顔を青ざめる男が2人居たが気にしないでおいた。
食事をとる彼らを見て、お母さんもお父さんも安心した表情をしていた。
それは、ルミばぁーちゃんやロドじぃーちゃん達も同じだった。
「これなら安心ね。」
「そうだね。食事がとれるなら一安心だ。」
お母さんとお父さんは、そう言って嬉しそうにしていた。
「後は、住む家と仕事だな。」
「まずは、アイツらの話も聞いてやらんとな。」
「そうだね。名前すらも今はわからない状態だからね。」
彼らに関する問題はまだまだあるが、とりあえずは一安心しても良さそうだった。
モッケしゃんも嬉しそうだし。
モッケしゃんは、また泣きながらドラしゃんに絡んでいた。
ドラしゃんは嫌そうにしていだが、私を抱えているので、邪険にできずに耐えていた。
そんな様子をロドじぃーちゃん達は、面白そうに眺める。
「あれは、わざとだな。」
「そうりゃ~そうだろう。」
「リンが居るからね。アイツも邪険に扱われないのを心得てるさね。」
ニアニアと笑みをこぼしながら、ドラしゃんとモッケしゃんのやり取りを眺めて居る人達に気付き、益々苛立ちを募らせていたドラしゃん。
「助けなくてよろしいんですか?」
ラミィお兄ちゃんは、ハラハラしながらルミばぁーちゃん達に確認していた。
ルミばぁーちゃん達は、そんなラミィお兄ちゃんに"ほっといたらいいのさ"と言って、自分達も酒盛りを始めたのだった。
私はモッケしゃんに絡まれているドラしゃんの腕の中から、隣に居るお兄ちゃんと王子達に声をかけた。
「あのね。お願いがあるの。きょうりょくしてくれる?」
私の言葉にお兄ちゃんと王子達は、不思議そうにしながらも快く承諾してくれた。
「何をするのだ?」
ユウキが、私に質問した。
私は、その質問に笑顔で答えた。
「内緒だよ。でも、凄くいい事なの。でも、リン1人ではできないからお願いね。」
私の言葉にユウキとユウタ、そしてお兄ちゃんも笑顔で頷いてくれたのだった。
まだまだ問題は山積みだけど、大きなトラブルもなく、なんとか宴は無事に幕を閉じた。
いつもは飲んだくれの男性陣も、ナナばぁーちゃん達の鬼視線が気になり、程々で飲み終えた。
主役のモッケしゃんのみ、ベロンベロンに酔い潰れていたが、久し振りの再会なのもありそこは大目に見ることに。
宴が御開きになったら、酔い潰れたモッケしゃんをドムじぃーちゃんとムキじぃーちゃんが家まで送って行った。
そのまま、ドムじぃーちゃんとムキじぃーちゃんは帰宅する。
片付けは、ギルド職員の皆さんと見習い兵士達やルミばぁーちゃん達が手分けして行ってくれた。
私達一家はと言うと...。
モッケしゃんが連れてきた彼らに、なぜか捕まってしまった。
捕まったって言うと語弊があった。
食事中の街の人達の様子から、私達一家がこの街の中心人物なのだと感じ取り、宴後に話がしたいと言われて、囲まれているのだった。
「夜も遅いし、明日にしては?」
と言うラミィお兄ちゃんの提案は、彼らによって却下された。
とにかく気になる事だけでいいから、話をしたいと言われて、やも得なく話を聞く事にした。
「あの?話とは...なんでしょうか?」
お父さんが恐る恐る声を掛けた。
すると、1番年長と思われる人が代表で話をする事になった。
「失礼を承知でお聞きします。
私は、今はなき"ドファル村"の村長をしていたカブと言います。」
ムキじぃーちゃんより、かなり年配のおじぃーちゃんがそう名乗った。
そして、そのまま話を続けた。
「私共は。ここにいる者達皆住んでいた町や村を野盗や魔物に襲われて、家や住む場所、財産と呼べる物全てを失いました。いいえ、それだけではありません。
親しかった友や身内も失った者もいます。
その為、我らはもう行く所も帰る所もありません。
それに、返す物やお渡しする物もありません。
そんな我らをこのまま受け入れて貰えるのでしょうか?」
その言葉は、彼ら全員の思いの様だった。
カブさんの後ろに控えている彼らは、頷き真剣な顔で私達を見つめていた。
そんな彼らをお父さんとお母さん、そして私とお兄ちゃんは目が点で見つめた。
私達の後ろで、ドラしゃんは何も言わず静かに見守っていた。
私達が中々返事をしないので、彼らからざわつきが出た。
痺れを切らしたのだろうか、カブと名乗った人がまた、私達に声を掛けた。
「あのう...やはり無理なはなしだったのだうか?」
カブさんの言葉に、お父さんとお母さんは笑い出した。
それに対して、若手の男性が怒りを露わにした。
「この!俺たちを馬鹿にしてるのかぁ!!!」
その声に、カブさんは宥めた。
「これ!ワシが話をすると言っただろうが!」
ざわつきが少し大きくなった所で、お母さんが声を出した。
「ごめんなさい。笑ったりして失礼しましたわ。あまりにも、変な事をお聞きになるから思わず笑ってしまったの。」
お母さんの言葉に、彼らから驚きの声が上がった。
「私達もこの街にって言うか、この世界に身一つで来たの。ここに居るドラしゃんに私達も助けられた身なのよね。
でも、ドラしゃんや他の人達は見返りを要求する事は一切なかったわ。」
そう言うと、お父さんに"そうよね?"と確認した。
お母さんの問いに、お父さんも笑顔で頷いた。
「そうです。私達も与えて貰ってばかりです。ですので、そんな私達があなた方に見返りを要求するなんてあり得ませんよ。
私達も今、ドラしゃんやそれ以外の方々から受けた恩を自分達が出来ることを増やして、少しずつ恩を返しています。
それも、強要されてって言う訳ではなく、自主的にしてるんですけどね。」
お父さんとお母さんの言葉に、彼ら以外にドラしゃんやルミばぁーちゃん達も驚いていた。
「だからいったでしょう?なにもいらないよ?みんなが元気になってくれることがいちばんよ。」
私はそう呟いた。
それには、お兄ちゃんも頷いたのだった。
「僕達の家族になってくれたら嬉しいです。これからよろしくお願いします。
」
お兄ちゃんの言葉にお父さんとお母さんも頷いた。
「そうよ。ここに来たからには、もうみんな家族よ。困った事があったら言ってね。」
「そうだね。もう家族だね。まずは、ゆっくり身体を休めてしっかり栄養をとってください。
そこから先の事は、また話し合いましょう。
今は仮住居なので狭いですが、皆さんが落ち着いたらそれぞに家も提供します。
仕事もです。だから安心して下さい。」
私達の言葉に、また彼らは涙を流し出した。
そして、しこりのようにあった根深い警戒がようやく解けたのだった。
「疑って申し訳なかった。しかし、これ以上...。ぐっ...。」
カブさんは言葉に詰まっていた。
彼らは、ここに来るまで想像を絶する思いや体験をしているのだ。
そう思うと、怒る事は出来ない。
最初からするつもりもなかった。
「もうあんしんだね。」
私の言葉に、更に涙が流れ出した。
それに慌ててお父さんが声かけた。
「皆さんの家の前は、兵舎ですから警備面も安全ですよ。
今日は皆さんお疲れでしょうから、休みましょう?」
お父さんとお母さんに促されて、彼らは住居へゆっくり歩いて行った。
ルミばぁーちゃんの提案で、見習い兵士達が付き添った。
彼らは、何回も頭を下げていた。
私達は、彼らの姿が消えるまで見送る。
彼らの姿が消えたのを確認して、私達も家に帰る事にした。
するとずっと黙っていたドラしゃんが私達に声を掛けてきた。
『皆様がそんな事を思っていたとは知りませんでした。』
ドラしゃんの言葉に、お母さんとお父さんは笑顔で答えた。
「本当はずっと黙ってるつもりだったのよね。でも、彼らには正直に答えないと駄目だったからね。」
「気にしないで下さいね。あくまでも、私達が勝手に思っている事ですよ。」
その言葉にドラしゃんの目に薄らと涙が浮かんでいた。
それには、私達は焦った。
まさかドラしゃんが泣くの?
『私達は、別に恩を売ったつもりはありません。皆様にしている事は、私達が好きでやっている事ですから。』
その言葉にお父さん達は、どう返事しようか悩んでいた。
その中、私はドラしゃんに向かって声を掛けた。
「わたしたちもね、すきでやるの。おそろいだね。これからもよろしくね。」
私の言葉にドラしゃんは勿論だが、その場に居た人達が涙した。
そして、みんなから"こちらこそ"と返事を貰ったのだった。
今日はモッケしゃんといい、彼らにはじまってまさか、あのドラしゃんの涙まで見る事が出来るとは思わなかった。
宴の片付けを確認した後、ドラしゃんと一緒に家へと戻った。
その日の夜は、ドラしゃんを含めて皆んなでお風呂に入った。
ドラしゃんの背中を皆んなで交代して洗ったり、髪の毛も洗い合いっこをした。
風呂上がりには、皆でお茶を飲んで今日の事を振り返った。
その後は、ドラしゃんも一緒に私とお兄ちゃんの3人で同じベッドで寝たのだった。
いつもは小さなドラゴンの姿になって寝ていたが、今日は人間の姿でベッドの真ん中でドラしゃんに寝てもらい、私とお兄ちゃんで挟んで眠った。
川の字(真ん中の棒が長いが)になって寝たのだった。
今日は特別いい夢が見れる気がしたのだった。
リン:
ドラしゃんも、泣く事あるんだね?
ドラしゃん:
気のせいですよ。忘れて下さい(>人<;)
リン:
照れないでよ^ ^
いいものが見れたんだから^ ^
ドラしゃん:
お嬢様!
ルミばぁーちゃん:
リン。お前さんが大きくなって嫁に行く事になったら、もう一度見られるよ。
フレアだけでなく、男共全員の泣き顔が見れるわよ( ̄∇ ̄)
リン:
???
アキラ:
それは駄目だよ!
ユウダイ:
駄目!
ムキじぃーちゃん:
許さん!
ドムじぃーちゃん:
駄目!!
ロドじぃーちゃん:
(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
ドラしゃん:
Σ(゚д゚lll)_| ̄|○
ユイカ:
まだ先なのに...。
ラミィお兄ちゃん:
これは、先が大変ですねʅ(◞‿◟)ʃ
リン:
よくわからないけど、大丈夫よ^ ^
次回は何があるかなぁ?
また、見てね^ ^
すると...なんだか少し建物の中から騒がしいく人の声がする。
不思議に思った私達は窓からそっと中を覗く事に。すると...中では見習い兵士のお兄ちゃん達が、あわあわしていたいた。
反対側の部屋の隅では、モッケしゃんと一緒に来た人達が震えながら固まっているではないか。
そんな彼らから少し距離を置いた場所でルミばぁーちゃんが頭を抱えていた。
私はドラしゃんの腕の中から降りて、家の中へ向かった。
慌ててお兄ちゃんが私を追いかけようとしたが、何故かドラしゃんに止められた。
『ここは、お嬢様にお任せしてみましょう。』
そう言って、ドラしゃんはお兄ちゃんを抱えて窓から中を見守る。
ドラしゃんに止められたので、お兄ちゃんもそのまま窓から中を伺う事にした。
私が家の扉を開けると、視線が集中する。
私の姿を見たルミばぁーちゃんは、驚いていた。それは、見習い兵士達も同じだった。
私はルミばぁーちゃん達に目もくれずに、部屋の隅で固まっている人達の元へ歩いて行く。
彼らは私の登場に驚いて、更に警戒を強めた。
何故、子供の私までそこまで警戒を強めるのか不思議だったが、私は彼らの前まで行くと、笑顔を向けた。
そして...。
「初めまして。わたしは、リンです。この街でかぞくと住んでます。
さいきんににゃって、4才になりました。」
私は自分の自己紹介をした。彼らは警戒を緩める事なくじっと私を見つめていた。
私はそんな彼らの反応をまるっきり無視して話を続けた。
「ここには、わたしのかぞくと、わたしたちをたすけてくれる、あたらしいかぞくしかいましぇん。
みんなをいじめるような、わりゅい人はいないよ。コワイいきものもこないし、あんぜんだよ。
まぁ~、ときどきお母さんとルミばぁーちゃんがおこって、カミナリがおちるぐらいかなぁ?
こわいことっていったら、しょれぐらいよ。
それいがいは、こわいことないよ。
あんしんして、ねれるし、皆んなちゅよいし、だいじょうぶだよ。
もし、みんなにいじわる人がいたら、わたしが、めっ!ってするね。」
彼らにここがいかに安全で安心できる場所であるかを自分なりに必死に説明した。
話終えると、私は彼らの前で座り込み、静かに腕輪を彼らの前に出す。
彼らは、静かに私の動きを見守った。
すると、腕輪からミニサイズの【大聖霊】達が出てきた。
不安そうにしている彼らに向かって【大聖霊】達が話し出す。
『私達は、この小さな主人に仕えてます。【大聖霊】が1人、ドライアドと申します。こんな姿で失礼します。
この街を護っていますひとりです。ここは安心して過ごせる場所なので心ゆくまで過ごしてくださいね。』
『僕は、【大聖霊】が1人、ノーム。よろしくね。この主人がいる以上、この街ほど安全な所はないよ。敵もこれないしね。まず、僕たち以上に過保護な保護者たちがいるから世界で一番安全な場所だよ。』
『俺様は、【大聖霊】が1人、ウンディーナだ。コイツらの言うことは本当だぜ。それによ、この主人に何かあれば黙っていない保護者が大勢いるわけさ。』
『俺様は、【大聖霊】が1人、イフリートだ。よろくしな。だから、アンタらは心配する必要ないぜ。のんびり過ごせばいいさ!』
『僕は、【大聖霊】が1人、シルフだよ。よろしくね。
ここには、僕たち以外にも神様の守護も1番濃いからね。安全で安心して暮らせる所だよ。君たちは良い所に来れたよ!』
『初めまして...【大聖霊】...1人...ミスト。ここ...すごく...安全。この...世界の...王様...も来るしね...。』
『私は、【大聖霊】が1人、サク・フラワーだよ。ここにきた以上、主人の家族の一員なんだから、私達が全力で守って上げるわよ。だからさぁー。』
『『この街の人達を信じてあげて。』』
小さな女の子にも説得され、更に【大聖霊】達にも説得された彼ら。
自然と身体の緊張が解れて涙するのだった。
「もう大丈夫だよ。」
私は、後ろでことの顛末を見守っていたルミばぁーちゃん達に声をかけた。
それから、行動は早かった。
ルミばぁーちゃんを、筆頭に見習い兵士達で泣く彼らを慰めながら、風呂場へ案内していった。
まだ、できていなかった彼らの着替えや身体確認やお風呂を行なっていく。
「助かったよ。リン。私らが何を言っても、彼奴らは隅に固まって動こうともしないし、何も言わないから困ってたんだよ。」
ルミばぁーちゃんは、そう言って私に御礼を言う。
私は笑顔でルミばぁーちゃんを見た。
そして、見習い兵士達に促されて着替えやお風呂に入る人達を見つめた。
皆ボロボロの服を着ていて、体も痩せ細っていた。
中には、痣や怪我をしている人もいた。
私は彼らに向かって更に声をかけた。
「お風呂に入って、ピカピカになったら皆でごはん食べようね。」
その言葉に、1人の男性から返事が来た。
「アンタを疑う訳ではない。しかし、信用するにも...。
いったい、俺たちをどうする気だ?
着る物や風呂、食事はありがたい。
しかし、俺たちにはアンタらに払う金もなければ土地もない!」
その言葉に、他の人からも声が上がった。
「そうです。私たちには何もありません。」
「俺たちをどうする気だ。」
すんなり動いてくれる様になったが、まだまだ信用は得られて内容だった。
そして、警戒も完全には解けてないようだった。
ルミばぁーちゃんは、彼らの言葉に憤りを感じて、何か言葉を発する前に私が彼らに答えたのだ。
「べつに。とくになにもないよ。
すむとこがないなら、ここにすむといいよ。私たちもそうしたから。
ここはね。こまってる人をみしゅてる人はだれもいないよ。」
そう言うと、私の後ろからお兄ちゃんの声もした。
「そうですよ!ここの人達は、皆んな親切ですよ。僕達も困ってるところを助けられました。
それに、住むところや仕事もここならあります。」
私とお兄ちゃんの言葉に、彼らは驚いていた。
しかし、子供の言う事を安易とは信じてはくれそうになかった。
すると、外で見守っていたドラしゃんもいつの間にか入って来て、彼らに声をかけた。
『辛い目にあったから、人を疑うのは仕方がないのは、百歩譲りましょう。
しかし、本当に疑うべき相手か、そうでないかぐらいは判断がつくでしょう?
それすらも分からないほど、あなた方は落ちぶれたのですか?』
そう言うと、ドラしゃんは私を抱きあげた。
ドラしゃんの言葉に、押し黙る彼らに見習い兵士達も声をかけた。
「私達も、実は職を失う所を彼等に救っていただきました。」
「私達半端者の獣人で、王宮の兵士としては本来なら不採用なんですが、王様のご慈悲にて採用されました。」
「しかし、やはり失敗続きで王宮の兵士としては、役に立てずクビを言い渡される寸前でした。」
「それを、ここの方々に救って頂きました。住むところや仕事も与えてもらってます。
しかし、ここの人達は与えてくれるが、見返りを欲求された事は一切ありませんでした。ですから、私達は自分達が出来る事をして、ここの人達に恩を返してます。」
見習い兵士達にそんな経緯があったなんて、私もお兄ちゃんも知らなかったので驚いた。
兵士達の言葉に、彼等も納得しつつあった。
そこでトドメを刺したのが、ルミばぁーちゃんだった。
「ここにはね、元ギルマスの私やロドムカ。ドワーフ族族長のドムやこの世界最強竜種のドラゴンであるフレア。そして、元王宮近衛騎士団隊長なんかも居るんだよ?
しかも、【大聖霊】まで居るんだよ?
どう悪さするって言うんだい。
できる奴がいたら、顔を拝みたいもんだね。
見返りを要求するほど、私らは落ちぶれではないよ。
それに、この子見てもわかるだろうに。
この子の親も無理難題を押し付けたりするよつな奴らではないよ。
アンタらの為に、自分達の食糧を根こそぎ用意する様な奴等だよ。
この家やアンタらに用意した服だってそうだ。
それより、これ以上このお嬢ちゃんを困らせる事する方が...アンタら危ないよ。」
ルミばぁーちゃんの言葉に、最初の方はウンウンと頷けていたが...?最後の言葉に疑問を感じた。
私とお兄ちゃんは首を傾げたが、どうやら彼等には意味が理解できた様だった。
私を抱き上げているのは、この世界最強のドラゴンなのだ。
見た目は、優しい老紳士なのだが...。
彼の背後から、ドラゴンの威圧の影が出ているのに察した彼らは、今度こそ素直に納得したようで、そこからの行動は早かった。
速やかに、お風呂と着替えを済ませて皆が待つ広場へと彼らと向かった。
広場へ行くと、美味しい匂いが立ち込めていた。
匂いを嗅いだ彼らのお腹は正直だった。
街の皆で、彼らを席に案内した。
戸惑いながらも素直に応じる彼ら。
時々チラチラと私とドラしゃんの方を見ていたので、私は笑顔を向けた。
ドラしゃんは気に留めてもいなかった。
さぁー、みんな揃ったので今から大宴会の始まりだ!
それぞれ席に着いたのを確認して、ルミばぁーちゃんが言葉を発した。
「よし!皆揃ったね。改まった自己紹介とかは、後日するよ。
今は、無事に皆が居ることと、久しぶりの友との再会を祝おうじゃないかい。久しぶりに、まともな食事を採るものも居るだろう。無理のない範囲で食べるんだよ。」
そう言うと、続いてお父さんが話をした。
「この街に来てくれた事を感謝します。人との出会いは、何をきっかけに出会うかはわかりません。
しかし、一度出会ったのは何かの縁があると私は思います。
この街に居る間は安全です。食や住む所の心配はありません。仕事も無ければ提供します。
ですから、今はしっかり食べて、飲んで、疲れた心と体を癒やして下さい。
では、新たな出会いと友との再会を祝って、乾杯!!」
「「「『乾杯!!』」」」
乾杯の合図で、宴会が幕を開けた。
モッケしゃんが連れてきた、彼らも最初は恐る恐る、目の前の食事に手を付けていたが、一口食べると無言で次々と箸を進めていった。
そんな彼らに、ナナばぁーちゃん達が声をかけた。
「焦らずゆっくり噛んでお食べ。おかわりは十分に用意してあるよ。」
「そうよ。誰もとったりしないわ。もしも、とる様な人が居たら私らがぶっ飛ばすから安心おしよ。」
そう笑顔で話していた。
その言葉に、顔を青ざめる男が2人居たが気にしないでおいた。
食事をとる彼らを見て、お母さんもお父さんも安心した表情をしていた。
それは、ルミばぁーちゃんやロドじぃーちゃん達も同じだった。
「これなら安心ね。」
「そうだね。食事がとれるなら一安心だ。」
お母さんとお父さんは、そう言って嬉しそうにしていた。
「後は、住む家と仕事だな。」
「まずは、アイツらの話も聞いてやらんとな。」
「そうだね。名前すらも今はわからない状態だからね。」
彼らに関する問題はまだまだあるが、とりあえずは一安心しても良さそうだった。
モッケしゃんも嬉しそうだし。
モッケしゃんは、また泣きながらドラしゃんに絡んでいた。
ドラしゃんは嫌そうにしていだが、私を抱えているので、邪険にできずに耐えていた。
そんな様子をロドじぃーちゃん達は、面白そうに眺める。
「あれは、わざとだな。」
「そうりゃ~そうだろう。」
「リンが居るからね。アイツも邪険に扱われないのを心得てるさね。」
ニアニアと笑みをこぼしながら、ドラしゃんとモッケしゃんのやり取りを眺めて居る人達に気付き、益々苛立ちを募らせていたドラしゃん。
「助けなくてよろしいんですか?」
ラミィお兄ちゃんは、ハラハラしながらルミばぁーちゃん達に確認していた。
ルミばぁーちゃん達は、そんなラミィお兄ちゃんに"ほっといたらいいのさ"と言って、自分達も酒盛りを始めたのだった。
私はモッケしゃんに絡まれているドラしゃんの腕の中から、隣に居るお兄ちゃんと王子達に声をかけた。
「あのね。お願いがあるの。きょうりょくしてくれる?」
私の言葉にお兄ちゃんと王子達は、不思議そうにしながらも快く承諾してくれた。
「何をするのだ?」
ユウキが、私に質問した。
私は、その質問に笑顔で答えた。
「内緒だよ。でも、凄くいい事なの。でも、リン1人ではできないからお願いね。」
私の言葉にユウキとユウタ、そしてお兄ちゃんも笑顔で頷いてくれたのだった。
まだまだ問題は山積みだけど、大きなトラブルもなく、なんとか宴は無事に幕を閉じた。
いつもは飲んだくれの男性陣も、ナナばぁーちゃん達の鬼視線が気になり、程々で飲み終えた。
主役のモッケしゃんのみ、ベロンベロンに酔い潰れていたが、久し振りの再会なのもありそこは大目に見ることに。
宴が御開きになったら、酔い潰れたモッケしゃんをドムじぃーちゃんとムキじぃーちゃんが家まで送って行った。
そのまま、ドムじぃーちゃんとムキじぃーちゃんは帰宅する。
片付けは、ギルド職員の皆さんと見習い兵士達やルミばぁーちゃん達が手分けして行ってくれた。
私達一家はと言うと...。
モッケしゃんが連れてきた彼らに、なぜか捕まってしまった。
捕まったって言うと語弊があった。
食事中の街の人達の様子から、私達一家がこの街の中心人物なのだと感じ取り、宴後に話がしたいと言われて、囲まれているのだった。
「夜も遅いし、明日にしては?」
と言うラミィお兄ちゃんの提案は、彼らによって却下された。
とにかく気になる事だけでいいから、話をしたいと言われて、やも得なく話を聞く事にした。
「あの?話とは...なんでしょうか?」
お父さんが恐る恐る声を掛けた。
すると、1番年長と思われる人が代表で話をする事になった。
「失礼を承知でお聞きします。
私は、今はなき"ドファル村"の村長をしていたカブと言います。」
ムキじぃーちゃんより、かなり年配のおじぃーちゃんがそう名乗った。
そして、そのまま話を続けた。
「私共は。ここにいる者達皆住んでいた町や村を野盗や魔物に襲われて、家や住む場所、財産と呼べる物全てを失いました。いいえ、それだけではありません。
親しかった友や身内も失った者もいます。
その為、我らはもう行く所も帰る所もありません。
それに、返す物やお渡しする物もありません。
そんな我らをこのまま受け入れて貰えるのでしょうか?」
その言葉は、彼ら全員の思いの様だった。
カブさんの後ろに控えている彼らは、頷き真剣な顔で私達を見つめていた。
そんな彼らをお父さんとお母さん、そして私とお兄ちゃんは目が点で見つめた。
私達の後ろで、ドラしゃんは何も言わず静かに見守っていた。
私達が中々返事をしないので、彼らからざわつきが出た。
痺れを切らしたのだろうか、カブと名乗った人がまた、私達に声を掛けた。
「あのう...やはり無理なはなしだったのだうか?」
カブさんの言葉に、お父さんとお母さんは笑い出した。
それに対して、若手の男性が怒りを露わにした。
「この!俺たちを馬鹿にしてるのかぁ!!!」
その声に、カブさんは宥めた。
「これ!ワシが話をすると言っただろうが!」
ざわつきが少し大きくなった所で、お母さんが声を出した。
「ごめんなさい。笑ったりして失礼しましたわ。あまりにも、変な事をお聞きになるから思わず笑ってしまったの。」
お母さんの言葉に、彼らから驚きの声が上がった。
「私達もこの街にって言うか、この世界に身一つで来たの。ここに居るドラしゃんに私達も助けられた身なのよね。
でも、ドラしゃんや他の人達は見返りを要求する事は一切なかったわ。」
そう言うと、お父さんに"そうよね?"と確認した。
お母さんの問いに、お父さんも笑顔で頷いた。
「そうです。私達も与えて貰ってばかりです。ですので、そんな私達があなた方に見返りを要求するなんてあり得ませんよ。
私達も今、ドラしゃんやそれ以外の方々から受けた恩を自分達が出来ることを増やして、少しずつ恩を返しています。
それも、強要されてって言う訳ではなく、自主的にしてるんですけどね。」
お父さんとお母さんの言葉に、彼ら以外にドラしゃんやルミばぁーちゃん達も驚いていた。
「だからいったでしょう?なにもいらないよ?みんなが元気になってくれることがいちばんよ。」
私はそう呟いた。
それには、お兄ちゃんも頷いたのだった。
「僕達の家族になってくれたら嬉しいです。これからよろしくお願いします。
」
お兄ちゃんの言葉にお父さんとお母さんも頷いた。
「そうよ。ここに来たからには、もうみんな家族よ。困った事があったら言ってね。」
「そうだね。もう家族だね。まずは、ゆっくり身体を休めてしっかり栄養をとってください。
そこから先の事は、また話し合いましょう。
今は仮住居なので狭いですが、皆さんが落ち着いたらそれぞに家も提供します。
仕事もです。だから安心して下さい。」
私達の言葉に、また彼らは涙を流し出した。
そして、しこりのようにあった根深い警戒がようやく解けたのだった。
「疑って申し訳なかった。しかし、これ以上...。ぐっ...。」
カブさんは言葉に詰まっていた。
彼らは、ここに来るまで想像を絶する思いや体験をしているのだ。
そう思うと、怒る事は出来ない。
最初からするつもりもなかった。
「もうあんしんだね。」
私の言葉に、更に涙が流れ出した。
それに慌ててお父さんが声かけた。
「皆さんの家の前は、兵舎ですから警備面も安全ですよ。
今日は皆さんお疲れでしょうから、休みましょう?」
お父さんとお母さんに促されて、彼らは住居へゆっくり歩いて行った。
ルミばぁーちゃんの提案で、見習い兵士達が付き添った。
彼らは、何回も頭を下げていた。
私達は、彼らの姿が消えるまで見送る。
彼らの姿が消えたのを確認して、私達も家に帰る事にした。
するとずっと黙っていたドラしゃんが私達に声を掛けてきた。
『皆様がそんな事を思っていたとは知りませんでした。』
ドラしゃんの言葉に、お母さんとお父さんは笑顔で答えた。
「本当はずっと黙ってるつもりだったのよね。でも、彼らには正直に答えないと駄目だったからね。」
「気にしないで下さいね。あくまでも、私達が勝手に思っている事ですよ。」
その言葉にドラしゃんの目に薄らと涙が浮かんでいた。
それには、私達は焦った。
まさかドラしゃんが泣くの?
『私達は、別に恩を売ったつもりはありません。皆様にしている事は、私達が好きでやっている事ですから。』
その言葉にお父さん達は、どう返事しようか悩んでいた。
その中、私はドラしゃんに向かって声を掛けた。
「わたしたちもね、すきでやるの。おそろいだね。これからもよろしくね。」
私の言葉にドラしゃんは勿論だが、その場に居た人達が涙した。
そして、みんなから"こちらこそ"と返事を貰ったのだった。
今日はモッケしゃんといい、彼らにはじまってまさか、あのドラしゃんの涙まで見る事が出来るとは思わなかった。
宴の片付けを確認した後、ドラしゃんと一緒に家へと戻った。
その日の夜は、ドラしゃんを含めて皆んなでお風呂に入った。
ドラしゃんの背中を皆んなで交代して洗ったり、髪の毛も洗い合いっこをした。
風呂上がりには、皆でお茶を飲んで今日の事を振り返った。
その後は、ドラしゃんも一緒に私とお兄ちゃんの3人で同じベッドで寝たのだった。
いつもは小さなドラゴンの姿になって寝ていたが、今日は人間の姿でベッドの真ん中でドラしゃんに寝てもらい、私とお兄ちゃんで挟んで眠った。
川の字(真ん中の棒が長いが)になって寝たのだった。
今日は特別いい夢が見れる気がしたのだった。
リン:
ドラしゃんも、泣く事あるんだね?
ドラしゃん:
気のせいですよ。忘れて下さい(>人<;)
リン:
照れないでよ^ ^
いいものが見れたんだから^ ^
ドラしゃん:
お嬢様!
ルミばぁーちゃん:
リン。お前さんが大きくなって嫁に行く事になったら、もう一度見られるよ。
フレアだけでなく、男共全員の泣き顔が見れるわよ( ̄∇ ̄)
リン:
???
アキラ:
それは駄目だよ!
ユウダイ:
駄目!
ムキじぃーちゃん:
許さん!
ドムじぃーちゃん:
駄目!!
ロドじぃーちゃん:
(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
ドラしゃん:
Σ(゚д゚lll)_| ̄|○
ユイカ:
まだ先なのに...。
ラミィお兄ちゃん:
これは、先が大変ですねʅ(◞‿◟)ʃ
リン:
よくわからないけど、大丈夫よ^ ^
次回は何があるかなぁ?
また、見てね^ ^
22
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