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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-5 約束事(ルール)と役職
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再度皆の気持ちを確認しあい、気持ちを合わせてこの世界で、この街で、この国で私達は新たに再スタートを切る事となった。
改めて、王様達から謝罪を受けて私達は仲直りをして良好な関係を結ぶ事が出来た。
これでお互いに心にしこりなく関係性が築くことができたと思う。
特に王様達の方がかな?表情がえらくスッキリしていたからね。
その上で、再度王様達は自分達の国に戻り私達の国への人材を集めに行くことに。
王様達が戻ってくるまでのその間、私達はと言うと...。
残った王様とセバしゃんから国としての在り方のアドバイスを受けていた。
勿論皆で一緒に受けた。
「俺も王としても、国の統治者としてもまだまだ未熟だから、これと言って教える程立派な人間ではないが、お前さん達よりは長くやっているだけだ。
その面で、アドバイスをさせて貰うぞ。」
そう言って王様はもじもじしながら話出した。
「お前さん達、特にユウダイやユイカには、既に俺以上の統治者としての資質は備わっている。ただ、この世界での常識や価値観が違うだけで、それはすごいものだ。
だから、それはそのまま失わずに持っていて欲しい。」
王様がそう言うと、お父さんとお母さんは目をパチクリさせて、首を傾げる。
どうやら無意識下の事なので、自覚がない様だった。
王様はそれに気付き驚きながらも、微笑し話を続けた。
「いいさ。その内分かるさ。分からなくても、そのままの自分達で居てくれたらいいさ。」
王様がそう言うので、お父さん達はとりあえず頷いていた。
「で、本題に入るが。まず、国としての運営するなら、ある程度のルールや法律が必要だ。
あと、役職と位だ。」
王様のその言葉に、お父さんが何か言おうとすると、セバしゃんが口を開いた。
「大丈夫です。ランク付けや差別をするために行うんではないんです。
これから、確実にここには人が増えます。
人が増えて来るに連れて、誰に、何を相談すれば良いのか、このままではやあふやで、トラブルの元になります。それを防ぐためだと思って下さい。」
セバしゃんの言う事は最もだった。
今迄は、多人数と思いながらも、規模的には少人数の部類に入る方。
それに、馴染んだ人達ばかりだったから、ある程度"この事は、ロドじぃーちゃんに""あの事は、ルミばぁーちゃんに"って、各自で判断してなんとなくて乗り切っていた部分が多かった。
私達は楽だったが、頼られた側は専門分野以外の事もあり、大変だったと思う。
そう考えると...王様やセバしゃんの言うことは一理ある。
「お前さん達の気持ちも分かる。位や役職なんかを付けると、それによる差別や偏見が産まれるのは知っている。
しかし、逆に自分もああなりたいと思う気持ちを産み出すのも、位や役職だ。」
王様の言葉に、お父さんとお母さんは納得した。
王様の言う事は、間違ってないからだ。
「そこでだ。国だから、王とお妃の役職がまず必要だ。
我々の中では、【大聖霊】や【聖獣】と契約している、このおちびちゃんを代表にして納得しているが、表向きはそうもいかない。」
王様の言葉を聞いて、お父さんとお母さんは青ざめた。
そうなのだ。
「悪いが、ユウダイ、ユイカ。お前さん達が初代のこの国の王とお妃になってもらうぞ。」
その言葉を聞いて、お父さん達は白目を向いて倒れてしまった。
『旦那様!!奥様!!お気をしっかり!!』
急に白目を向いて倒れた両親を心配そうに、介抱するドラしゃん。
もちろん、ルミばぁーちゃん達も慌てて介抱してくれていた。
「やっぱりこうなるかぁー。」
倒れた両親をみて、王様はそう呟く。
まぁ~一般家庭育ちの人間にいきなりそんな事を言ったらこうなりますよね...。
私とお兄ちゃんは、倒れた両親を皆に任せて、セバしゃんの元へ。
そして。
「セバしゃん。あのね。お父さんたちじゃないとだめなの?」
「そうそう。影武者みたいなのを作るのはダメなのですか?」
私達の言葉に、セバしゃんと王様は驚いていた。
「おい?チビどもどう言う事だ?」
王様は、私達の言葉に興味を示した様で、背を屈めて私達に声をかけて来た。
「あのね。わたしたちも、この国にすむ、ふつうの人がいいの。」
「王様とか王子とかいやです。ですので、架空の王様とかを立てるのはどうですか?
だって、王様達はこの国の中心人物は知ってるんでしょう?
だったら、それでいいのではないかと思いまして。」
「せいれいしゃんがね。きょうりょくしてくれるんだって。」
私達の言葉に、セバしゃんと王様は顔を見合わせて、もっと詳しく話をと言われた。
その為、面倒になったので腕輪にお願いしたら、ドライアドが代表で出て来てくれて、2人に説明をしてくれた。
『仕方がありませんわね。一度しか説明しませんよ。
同盟国の代表である、王達は既に誰がこの国の代表か知っているのでしょ?
問題なのは、これからこの国に増えて来るであろう、民に知らしめる国の代表が必要なのでしょ?
それが、無理に主人達でなくて良いのでは?と言う話です。
同盟国同士の話し合いには、これまで通りに、主人や主人の保護者であるご両親が出向くのでそちらは問題ないでしょ?
民に対して、架空の統治者を用意すれば良いのですよ。
我らの力を持ってすれば容易い事。
主人が、成人するまで我らの力で架空の統治者を作り出して乗り切るのです。
まぁ~、表立って出てくる機会を減らせば問題ないでしょう。
表立って出てくるのは、主人や主人の保護者で十分ですわ。
時期に民もそれに馴染んでくるのでは?
そうすれば、主人達も今まで通りの生活が送れるのですよ。
少し考えれば分かる事ですわ。では、私はこれにて』
そう言うと、ドライアドは腕輪に戻って行った。
勿論だが、この話はドラしゃんやルミばぁーちゃん達にも聞こえていた。
王様とセバしゃんは、ドライアドの話を聞いて、ニヤリと笑っていた。
そして...。
「いいな。いいじゃねぇーか!よし!その手で行こうぜ!いいなぁーお前さん達の国は。
なぁ~?今度おちびちゃんを貸してくれんか?忙しくなった時におちびちゃんの力をかりて...グハッ!」
そう言った王様は、笑顔のセバしゃんに鳩尾に一発入れられて、吹っ飛んで行った。
「あんな馬鹿な大人にならない様にして下さいね。
【大聖霊】様方が協力して下さるなら、その手で行きましょう。」
セバしゃんは、そう言うと私とお兄ちゃんを抱き抱えて、ドラしゃん達の元へ。
吹っ飛んでいった王様はというと...、地面にめり込みピクピクしていた。
私達を抱えてドラしゃん達の元へ言ったセバしゃんは、皆に声をかけた。
「先程の話を皆さんも聞いてたと思います。その手で、国の代表は乗り切って行きましょう。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんもルミばぁーちゃん達も頷く。
「あとは、細かいルールや法律についてですが、御二方が目覚めてからにしましょう。とりあえず、今はお二人を安全な場所へ。
あー、アレはほっておいて結構です。」
そう言って、皆んなでお父さん達を休ませるために、王様を残してギルドへ向かった。
お父さん達をギルドの休息室に寝かせて、私達は会議室の方へ移動した。
会議室に移動して、どうしようかと悩んでいるとセバしゃんが口を開いた。
「では、お二人がお休みの間にそれぞれの役職と位を決めておきましょう。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんが意義を申し出た。
『なぜお前が仕切る?それに、旦那様達抜きで、何故話を進める?』
ドラしゃんの言葉に、ムキじぃーちゃん達も頷いてセバしゃんの方を向く。
「言い出しっぺは、うちのアホですので、私が代わりに仕切るのは仕方がないかと。
それに、お2人抜きでもこれぐらいは話し合いができるかと。
お2人の立ち位置としては、表向きは"この国の王の身内"と言う立場で居てもらう予定ですから。
それに備えて、周りで支えるあなた方の役職等を決めて置く方が動き易いのかと思いましてね。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんは舌打ちをしていた。
「周りから固めてしまえって、やつか...。」
ムキじぃーちゃんが、そう呟くとセバしゃんが、"そう思って下さい"と返事をした。
その言葉を聞いて、それまで静かにしていたルミばぁーちゃんが口をひらいた。
「それなら、そのほうが良いかもね。あの子達の性格上、周りから固めて置いた方が話が早く進むんじゃないかい?」
ルミばぁーちゃんの一言で、セバしゃんの定案をドラしゃんも渋々承諾した。
ドラしゃんも納得したので、話を進めて行く。
「では役職なんですが、この街に居る皆さん全員についてもらいます。」
セバしゃんの申し出に、皆が驚いた。
特にカブさん達の驚きは半端なかったのだ。
「いやいや。おかしいです。皆さんはともかく、私らは平民です。」
カブさんの言葉に、モチさん達も頷いていた。
しかし、セバしゃんは容赦なくカブさん達の言い分を打ち消したのだった。
「これから増えて来るであろう、住人の取りまとめ役が必要です。
それに、相談するにも段階を踏んで行く方が、信憑性がますでしょう。
それなら、今この街に居る皆さん、特に大人の方々にはそれぞれ役職を振り分けます。」
セバしゃんの言葉に、カブさん達は慌てふためくしかなかった。
「難しく考えなくて結構です。村や町で生活していた時にも、その場にはそれなりの立場の人もいたでしょ?
そんな感じに捉えて下さい。」
セバしゃんの言う事は分かるが...てな空気が流れ出した。
「この街が、街から国になったら私や王は今まで通りの対応が取れません。
ですから、御一家には頼れる相手はもう皆さんだけとなります。
もちろん私達もそれなりの助力はして行くつもりです。
しかし、これからは同盟国としての助力しか出来ません。」
そうだった。
今までは、何かあればドラしゃん経由で王様やセバしゃんに相談して対応とって貰っていたが、今後それが出来なくなるのだった。
セバしゃんのその言葉を聞いて、皆はハッとした表情をする。
「私達が御一家にして差し上げられる事は、ごく僅かになります。
あとは、ずっと御一家を身近で支えて来た皆様の手に委ねるしかありません。
しかし、今のままでは不自然な部分も出てきます。
特に、これから増えて来るであろう住人からすればなおさらです。
私達が手助けしやすい様にするためでもありますし、今後も皆さんが1番身近で御一家を手助けしやすい様にするためでもあるので、お願いします。」
そう言って、セバしゃんは皆に頭を下げた。
セバしゃんの言葉と行動に、今度は誰も意義を申し出なかった。
いや、出るはずがなかった。
だって皆の気持ちはセバしゃんと同じだったからだ。
「わかりました。私達は、御一家に命と人生を救われました。
残り少ない人生で、恩を返す事が出来るならやりましょう。」
セバしゃんの言葉に、カブさんはそう返事した。
「そうだな。俺たちは助けて貰ってばかりだからな。今度は俺たちが助けてやれるなら良いよな?」
モチさんの言葉に、他の人達も頷いた。
「そうだな。ここまでくりゃーなんだってしてやるさ。こんな老ぼれでも多少は役に立つならよ。」
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんも。
「仕方がないね。そう簡単には引退出来ないと思っていたが、やれるだけの事はしようじゃないかい。
滅多に体験出来る事じゃーないからね。」
ルミばぁーちゃんも。
それぞれ街の皆は、私も、俺も、ワテもっと言って賛同してくれた。
『で?役職はどんなものを考えで?』
賑やかになった会議室で、ドラしゃんは冷静に言葉を放った。
ドラしゃんの言葉を聞いて、セバしゃんは下げていた頭を上げて、皆に話の続きをはじめた。
部屋に置いてある文字ボードに皆な分かりやすいように記入しながら説明して行く。
皆の経験値や得意なことを聞き出して、それぞれに役割を振り分けていく。
「役割には責任が重いものから軽いものまでありますが、どれも重要なものだと言うことを忘れないでくださいね。」
セバしゃんはそう言って皆の顔を見つめる。
そんなセバしゃんにムキじぃーちゃん達は少し不服そうな表情を向ける。
「結局は面倒くさい役割は俺たちじゃねぇーなぁーよぉ~!」
「まぁ~わかってたことじゃないかい。」
ムキじぃーちゃんの言葉にルミばぁーちゃんが呆れ顔で呟く。
『さすが腹黒ですね。まぁ~妥当と言えば妥当な配役ですよ。
カブさん達も問題なさそうですからどうにかなるでしょう。』
一番悔しそうな表情を浮かべドラしゃんが呟くとカブさん達はホッとした表情で頷くのだった。
お父さん達が休んでいる間に、街の皆に新しい役職が割り振れた。
それと同時に、この国が建国される様にぬった理由と、私達がここに来るまでの理由についても、色々脚色される事になった。
しかも、私達一家だけでなく、街の人全員だ。
新しい国ができる事に、まだ腑に落ちてない人達もいるため、誰に聞かれても違和感なく対応出来る様にする為と言う理由だった。
まず、私達の一家についてだ。
無理矢理な様な気もするが、この国の国王の身内という事になった。
この国の王様は、実は昔滅ぼされた国の王族の生き残りである事が判明して、ウォルト国で匿っていた。
しかし、立派に成人して統治者としての資質があるため、他の国の国王達と話し合って独立する事になった。
この度、この国を立ち上げ他の国と同盟を結んだ。
その時、異世界から来た私達を、最初はウォルト国の王様がその王族の生き残りの人と一緒に、面倒を見ていたが、この度独立して国を立ち上げるのにあたって、私達一家を引き受ける事になった。
しかも、自分には身内がいないからと言って、後継人として名乗りを上げてくれただけでなく、私達を"身内"として籍を用意してくれたと言う事に。
その為、私達一家は助けてくれた国王に恩を返すために、この国の街を仕切る"領主一家"としてこの国に来た。
と言うシナリオになったのだ。
ちょっと無理があるかと思うが、セバしゃんが問題ないと言うので...その通りにすることに。
ドラしゃんに関しては、ウォルト国で生活していた時から私達の生活をサポートする為に、ドラしゃんが付きっきりで面倒を見てくれていて、執事の役割をしてくれていた。
今回、この国に移住するにあたって、
異世界の人間の対応に慣れており、なりよりこの世界の事に神様の次に詳しい人物となるし、私達一家とも家族同然の為、一緒に移住して来た。
ちなみに、我が家の執事と言う立ち位置は変わらずだ。
次に、ムキじぃーちゃんに関してだが、私達家族の護衛として隠居生活をしていたムキじぃーちゃんに白羽の矢が刺さり、ウォルト国の王様経由で雇われた。
しかし、護衛よりお兄ちゃんの剣術指南役の方がしっくりきていて、護衛をしながら剣術指南役もしてくれてた。
そして、この度私達一家と一緒に移住を決意してくれて、この国の初の冒険者ギルドの冒険者教官長としても働く事に。
あと、ルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんに関しては、この国にギルドを立ち上げる為に、誰かいないかとウォルト国の王様に相談した所、隠居生活をしていたルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんに白羽の矢がブスリと。
ドラしゃんやムキじぃーちゃんとも面識があり、私達一家ともすぐに打ち解けたので、この国初のギルドのマスターとして雇用される事に。
ルミばぁーちゃんは、以前と変わらず商業ギルドのギルマス。
ロドじぃーちゃんは、冒険者ギルドのギルマスだ。
ドムじぃーちゃんは、昔ロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんと一緒に冒険者をしていたと言う縁もあり、この街を発展させる為に引き抜かれた、鍛治工房のギルマス兼職人だ。
ラミィお兄ちゃんは、エルフの住処を増やす為にこの国にエルフ族代表として来た、エルフ族親善大使。
モッケしゃんは、行商人を引退後の生活の場を求めてこの国に来る事になった。
そして、この国で店を構える事になり、異国雑貨店オーナー兼商業ギルドの副ギルマスに。
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは、王様の国の近衛隊を引退後の余生を楽しむ為、夫婦で私達の国へ移住。
その後、私達の国の警備に不安を抱き警備指導教官と副教官として名乗りを上げてくれて、そのまま就任。
それぞれの奥さんは、料理の腕を見込まれてギルドの料理長と副料理長へ就任。
見習い兵士だった、ラミリィー、キャリー、バハム、ロッツは、慕っていたラディじぃーちゃん達を追って、この国へ移住。
この街で、兵士としてのそれぞれの特技を生かして頭角を表して、この国の国王に認められて、この国の近衛隊に。
ラミリィーとキャリーは、近衛隊偵察部隊長と副隊長へ。
バハムとロッツは、近衛隊先行部隊隊長と副隊長へ。
コイムさんやレイシさん達は、ルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんがギルド職員として引き抜いて来て、そのまま移住する事に。
ギルド職員としての役職は、今まで通りの役職でと言う事に。
カブさん達は、ウォルト国で住んでいた場所を無くして、彷徨っているところをモッケしゃんに拾われて、一緒にこの国へ。
そして、カブさんは最年長と言うのもあるが、私達の両親の祖父的な存在になり、この国の国王より、私達家族の相談役兼副領主に任命された。
ホイさんは、以前もウォルト国で民宿をやっていたこともあり、この街の最初の民宿の主人兼副領主補佐に。
カブさんの息子のカブラさんは、この国にある街の住民と私達とを繋ぐ相談窓口に当たる役割を担ってもらう事に。
その為、新たに新設する事になった、相談区役所所長に就任。
ララムさんとサラさんは、手先の器用さを見込まれて、お母さんが立ち上げた工房の工房長と副工房長に。
ちなみにお母さんは、会長だ。
ココさんとヤカさんは、自らドムじぃーちゃんとお父さんに鍛治士としての技術を磨きたいと志願して、弟子入りした。
そして、お父さんの工房の工房長と副工房長に。
冒険者達は、ムキじぃーちゃんやロドじぃーちゃんを慕っていた人達ばかりなので、この国へ移住する事を聞いて、一緒について来た。
そして、それぞれこの国の近衛隊や警備部隊兼この街の冒険者となったと言う事に。
最後に、動物達の世話などに関しては今まで通り、工房の仕事をしながらカブさん達が交代で面倒を見る事となった。
大筋として、それぞれの役職と役割が与えられ、生い立ちが構成されたのだった。
他の国の国王達にもこの内容で、既に伝えてあり話は通していたのだ。
いつもながら手際のいい大人達がたくさんで凄いところだなぁーと思う。
今はまだしっくり来ないが、住人が増えて来たら慣れていくだろうと言う事だった。
細かい手続きとか、書類上の事は全て王様達がカモフラージュしてくれるとの事だった。
あとは...。
「この街の皆が、この筋書き通りに役割をこなす事にかかっているわけだなぁー...」
ロドじぃーちゃんの言葉に、やる気に満ちていた皆に、一気に不安の空気が押し寄せた。
まさか...。
「まさか、俺たちにこんな役割がふられんなんざぁー...」
モチさん達は、顔色を無くしていた。
そんな大人達に、私とお兄ちゃんは声をかけた。
「ねぇーねぇー。なんでみんな、そんなにかおいろがわりゅいの?」
「話を聞いている限りでは、普段と変わらない気がしますよ?」
私とお兄ちゃんの言葉に、皆がえっ?となった。
「ルミばぁーちゃんたちは、そのままだし、カブさんたちもね?」
「お父さんが野菜の育て方で悩んでたら相談に乗ってくれていましたし、カブラさんは、皆んなの旦那さんの愚痴や奥さんの愚痴とかも分け隔てなく聞いてましたし...何が違うのかわかりません。」
私達の言葉に、大人達はポカンとしていた。
私達からすれば、役職が付いたと言うだけで、普段と変わらない事をするだけとしか思えなかったのだ。
「お父さんやお母さんがいそがしいときは、こうぼうのしごとしくれるしね。」
「冒険者の皆さんも、街の警護をしながら素材集めもしてくれてましたし。
今とかわらないですよ?」
そんな私とお兄ちゃんの言葉にムキじぃーちゃんが豪快に笑う。
「確かに、言われたらそうだな。今までも肩書きがあろうがなかろうが、やる事は一緒だったしな。」
ムキじぃーちゃんの笑い声と言葉に、一瞬にて空気が元に戻った。
「そうだね。私らはともかく、カブさん達もやる事は一緒さ。
普段と変わらず、すごしゃーいいのさ。やる事は今まで通りなんだから。」
「頭でわかっているだがなぁー。いやぁー、リンとアキラには負けるぜ。
そうだな。俺たちの過ごし方はなんちゃかわらねぇーなぁー。」
ルミばぁーちゃん、ラディじぃーちゃんの言葉に、皆の顔に笑みが戻った。
「一応私がお話した、役職は書類上の物です。ギルドに書類上残す事になりますが、過ごし方は以前と大差はないかと。
ただ、これから増える方々より貴方が先輩。上の立場に居るという証明と思って下さい。」
セバしゃんの言葉に皆は頷いた。
皆の顔色が戻り、笑顔も戻って一安心。
「これからは、私と王は必要以上に御一家に手出しができません。
他の国とのバランスを取る為です。
今からは、皆様方が頼りです。よろしくお願いします。」
セバしゃんは、そう言って私達の代わりに皆にお願いしてくれたのだ。
そんなセバしゃんに、カブさんが声をかけた。
「なんの。そこまで言われなくても大丈夫です。私らは、御一家あってこそなんですから。
無条件で"家族"として迎えられた時から私らは微力ながらも手助けするつもりでしたから。心配不要です。」
そんなカブさんの言葉に、他の人達も口々に声を上げたのだ。
「そうです。"家族"は助け合うのが当たり前です。ユウダイさんやユイカさんがよく言ってました。
"困った時はお互い様。助け合うのは苦ではない。"って。」
「そうですよ。私らで出来る事は何でもします。」
「たしかに!どんな失敗しても、めげずに私達を励ましてくれたんですから、助けるのは当たり前です!」
「俺たちは、付き合いが短いが、獣人であるのに煙たがらす普通に接してくれるだ。それだけでもありがたいのによ、住む場所や仕事まで与えてくれるんだぜ?協力しないわけがないぜ。」
皆の温かい言葉に、セバしゃんもドラしゃんも皆笑顔になっていた。
「ねぇーねぇードラしゃん。これからがたのしみだね。」
私はドラしゃんの服を引っ張りながら、そう呟いた。
私の呟きに、ドラしゃんは笑顔で"そうですね"と答えてくれた。
しかし、こんな余裕な雰囲気で過ごせるのは、この日までだと言うのは、この時誰もが予想しなかったのだった。
改めて、王様達から謝罪を受けて私達は仲直りをして良好な関係を結ぶ事が出来た。
これでお互いに心にしこりなく関係性が築くことができたと思う。
特に王様達の方がかな?表情がえらくスッキリしていたからね。
その上で、再度王様達は自分達の国に戻り私達の国への人材を集めに行くことに。
王様達が戻ってくるまでのその間、私達はと言うと...。
残った王様とセバしゃんから国としての在り方のアドバイスを受けていた。
勿論皆で一緒に受けた。
「俺も王としても、国の統治者としてもまだまだ未熟だから、これと言って教える程立派な人間ではないが、お前さん達よりは長くやっているだけだ。
その面で、アドバイスをさせて貰うぞ。」
そう言って王様はもじもじしながら話出した。
「お前さん達、特にユウダイやユイカには、既に俺以上の統治者としての資質は備わっている。ただ、この世界での常識や価値観が違うだけで、それはすごいものだ。
だから、それはそのまま失わずに持っていて欲しい。」
王様がそう言うと、お父さんとお母さんは目をパチクリさせて、首を傾げる。
どうやら無意識下の事なので、自覚がない様だった。
王様はそれに気付き驚きながらも、微笑し話を続けた。
「いいさ。その内分かるさ。分からなくても、そのままの自分達で居てくれたらいいさ。」
王様がそう言うので、お父さん達はとりあえず頷いていた。
「で、本題に入るが。まず、国としての運営するなら、ある程度のルールや法律が必要だ。
あと、役職と位だ。」
王様のその言葉に、お父さんが何か言おうとすると、セバしゃんが口を開いた。
「大丈夫です。ランク付けや差別をするために行うんではないんです。
これから、確実にここには人が増えます。
人が増えて来るに連れて、誰に、何を相談すれば良いのか、このままではやあふやで、トラブルの元になります。それを防ぐためだと思って下さい。」
セバしゃんの言う事は最もだった。
今迄は、多人数と思いながらも、規模的には少人数の部類に入る方。
それに、馴染んだ人達ばかりだったから、ある程度"この事は、ロドじぃーちゃんに""あの事は、ルミばぁーちゃんに"って、各自で判断してなんとなくて乗り切っていた部分が多かった。
私達は楽だったが、頼られた側は専門分野以外の事もあり、大変だったと思う。
そう考えると...王様やセバしゃんの言うことは一理ある。
「お前さん達の気持ちも分かる。位や役職なんかを付けると、それによる差別や偏見が産まれるのは知っている。
しかし、逆に自分もああなりたいと思う気持ちを産み出すのも、位や役職だ。」
王様の言葉に、お父さんとお母さんは納得した。
王様の言う事は、間違ってないからだ。
「そこでだ。国だから、王とお妃の役職がまず必要だ。
我々の中では、【大聖霊】や【聖獣】と契約している、このおちびちゃんを代表にして納得しているが、表向きはそうもいかない。」
王様の言葉を聞いて、お父さんとお母さんは青ざめた。
そうなのだ。
「悪いが、ユウダイ、ユイカ。お前さん達が初代のこの国の王とお妃になってもらうぞ。」
その言葉を聞いて、お父さん達は白目を向いて倒れてしまった。
『旦那様!!奥様!!お気をしっかり!!』
急に白目を向いて倒れた両親を心配そうに、介抱するドラしゃん。
もちろん、ルミばぁーちゃん達も慌てて介抱してくれていた。
「やっぱりこうなるかぁー。」
倒れた両親をみて、王様はそう呟く。
まぁ~一般家庭育ちの人間にいきなりそんな事を言ったらこうなりますよね...。
私とお兄ちゃんは、倒れた両親を皆に任せて、セバしゃんの元へ。
そして。
「セバしゃん。あのね。お父さんたちじゃないとだめなの?」
「そうそう。影武者みたいなのを作るのはダメなのですか?」
私達の言葉に、セバしゃんと王様は驚いていた。
「おい?チビどもどう言う事だ?」
王様は、私達の言葉に興味を示した様で、背を屈めて私達に声をかけて来た。
「あのね。わたしたちも、この国にすむ、ふつうの人がいいの。」
「王様とか王子とかいやです。ですので、架空の王様とかを立てるのはどうですか?
だって、王様達はこの国の中心人物は知ってるんでしょう?
だったら、それでいいのではないかと思いまして。」
「せいれいしゃんがね。きょうりょくしてくれるんだって。」
私達の言葉に、セバしゃんと王様は顔を見合わせて、もっと詳しく話をと言われた。
その為、面倒になったので腕輪にお願いしたら、ドライアドが代表で出て来てくれて、2人に説明をしてくれた。
『仕方がありませんわね。一度しか説明しませんよ。
同盟国の代表である、王達は既に誰がこの国の代表か知っているのでしょ?
問題なのは、これからこの国に増えて来るであろう、民に知らしめる国の代表が必要なのでしょ?
それが、無理に主人達でなくて良いのでは?と言う話です。
同盟国同士の話し合いには、これまで通りに、主人や主人の保護者であるご両親が出向くのでそちらは問題ないでしょ?
民に対して、架空の統治者を用意すれば良いのですよ。
我らの力を持ってすれば容易い事。
主人が、成人するまで我らの力で架空の統治者を作り出して乗り切るのです。
まぁ~、表立って出てくる機会を減らせば問題ないでしょう。
表立って出てくるのは、主人や主人の保護者で十分ですわ。
時期に民もそれに馴染んでくるのでは?
そうすれば、主人達も今まで通りの生活が送れるのですよ。
少し考えれば分かる事ですわ。では、私はこれにて』
そう言うと、ドライアドは腕輪に戻って行った。
勿論だが、この話はドラしゃんやルミばぁーちゃん達にも聞こえていた。
王様とセバしゃんは、ドライアドの話を聞いて、ニヤリと笑っていた。
そして...。
「いいな。いいじゃねぇーか!よし!その手で行こうぜ!いいなぁーお前さん達の国は。
なぁ~?今度おちびちゃんを貸してくれんか?忙しくなった時におちびちゃんの力をかりて...グハッ!」
そう言った王様は、笑顔のセバしゃんに鳩尾に一発入れられて、吹っ飛んで行った。
「あんな馬鹿な大人にならない様にして下さいね。
【大聖霊】様方が協力して下さるなら、その手で行きましょう。」
セバしゃんは、そう言うと私とお兄ちゃんを抱き抱えて、ドラしゃん達の元へ。
吹っ飛んでいった王様はというと...、地面にめり込みピクピクしていた。
私達を抱えてドラしゃん達の元へ言ったセバしゃんは、皆に声をかけた。
「先程の話を皆さんも聞いてたと思います。その手で、国の代表は乗り切って行きましょう。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんもルミばぁーちゃん達も頷く。
「あとは、細かいルールや法律についてですが、御二方が目覚めてからにしましょう。とりあえず、今はお二人を安全な場所へ。
あー、アレはほっておいて結構です。」
そう言って、皆んなでお父さん達を休ませるために、王様を残してギルドへ向かった。
お父さん達をギルドの休息室に寝かせて、私達は会議室の方へ移動した。
会議室に移動して、どうしようかと悩んでいるとセバしゃんが口を開いた。
「では、お二人がお休みの間にそれぞれの役職と位を決めておきましょう。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんが意義を申し出た。
『なぜお前が仕切る?それに、旦那様達抜きで、何故話を進める?』
ドラしゃんの言葉に、ムキじぃーちゃん達も頷いてセバしゃんの方を向く。
「言い出しっぺは、うちのアホですので、私が代わりに仕切るのは仕方がないかと。
それに、お2人抜きでもこれぐらいは話し合いができるかと。
お2人の立ち位置としては、表向きは"この国の王の身内"と言う立場で居てもらう予定ですから。
それに備えて、周りで支えるあなた方の役職等を決めて置く方が動き易いのかと思いましてね。」
セバしゃんの言葉に、ドラしゃんは舌打ちをしていた。
「周りから固めてしまえって、やつか...。」
ムキじぃーちゃんが、そう呟くとセバしゃんが、"そう思って下さい"と返事をした。
その言葉を聞いて、それまで静かにしていたルミばぁーちゃんが口をひらいた。
「それなら、そのほうが良いかもね。あの子達の性格上、周りから固めて置いた方が話が早く進むんじゃないかい?」
ルミばぁーちゃんの一言で、セバしゃんの定案をドラしゃんも渋々承諾した。
ドラしゃんも納得したので、話を進めて行く。
「では役職なんですが、この街に居る皆さん全員についてもらいます。」
セバしゃんの申し出に、皆が驚いた。
特にカブさん達の驚きは半端なかったのだ。
「いやいや。おかしいです。皆さんはともかく、私らは平民です。」
カブさんの言葉に、モチさん達も頷いていた。
しかし、セバしゃんは容赦なくカブさん達の言い分を打ち消したのだった。
「これから増えて来るであろう、住人の取りまとめ役が必要です。
それに、相談するにも段階を踏んで行く方が、信憑性がますでしょう。
それなら、今この街に居る皆さん、特に大人の方々にはそれぞれ役職を振り分けます。」
セバしゃんの言葉に、カブさん達は慌てふためくしかなかった。
「難しく考えなくて結構です。村や町で生活していた時にも、その場にはそれなりの立場の人もいたでしょ?
そんな感じに捉えて下さい。」
セバしゃんの言う事は分かるが...てな空気が流れ出した。
「この街が、街から国になったら私や王は今まで通りの対応が取れません。
ですから、御一家には頼れる相手はもう皆さんだけとなります。
もちろん私達もそれなりの助力はして行くつもりです。
しかし、これからは同盟国としての助力しか出来ません。」
そうだった。
今までは、何かあればドラしゃん経由で王様やセバしゃんに相談して対応とって貰っていたが、今後それが出来なくなるのだった。
セバしゃんのその言葉を聞いて、皆はハッとした表情をする。
「私達が御一家にして差し上げられる事は、ごく僅かになります。
あとは、ずっと御一家を身近で支えて来た皆様の手に委ねるしかありません。
しかし、今のままでは不自然な部分も出てきます。
特に、これから増えて来るであろう住人からすればなおさらです。
私達が手助けしやすい様にするためでもありますし、今後も皆さんが1番身近で御一家を手助けしやすい様にするためでもあるので、お願いします。」
そう言って、セバしゃんは皆に頭を下げた。
セバしゃんの言葉と行動に、今度は誰も意義を申し出なかった。
いや、出るはずがなかった。
だって皆の気持ちはセバしゃんと同じだったからだ。
「わかりました。私達は、御一家に命と人生を救われました。
残り少ない人生で、恩を返す事が出来るならやりましょう。」
セバしゃんの言葉に、カブさんはそう返事した。
「そうだな。俺たちは助けて貰ってばかりだからな。今度は俺たちが助けてやれるなら良いよな?」
モチさんの言葉に、他の人達も頷いた。
「そうだな。ここまでくりゃーなんだってしてやるさ。こんな老ぼれでも多少は役に立つならよ。」
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんも。
「仕方がないね。そう簡単には引退出来ないと思っていたが、やれるだけの事はしようじゃないかい。
滅多に体験出来る事じゃーないからね。」
ルミばぁーちゃんも。
それぞれ街の皆は、私も、俺も、ワテもっと言って賛同してくれた。
『で?役職はどんなものを考えで?』
賑やかになった会議室で、ドラしゃんは冷静に言葉を放った。
ドラしゃんの言葉を聞いて、セバしゃんは下げていた頭を上げて、皆に話の続きをはじめた。
部屋に置いてある文字ボードに皆な分かりやすいように記入しながら説明して行く。
皆の経験値や得意なことを聞き出して、それぞれに役割を振り分けていく。
「役割には責任が重いものから軽いものまでありますが、どれも重要なものだと言うことを忘れないでくださいね。」
セバしゃんはそう言って皆の顔を見つめる。
そんなセバしゃんにムキじぃーちゃん達は少し不服そうな表情を向ける。
「結局は面倒くさい役割は俺たちじゃねぇーなぁーよぉ~!」
「まぁ~わかってたことじゃないかい。」
ムキじぃーちゃんの言葉にルミばぁーちゃんが呆れ顔で呟く。
『さすが腹黒ですね。まぁ~妥当と言えば妥当な配役ですよ。
カブさん達も問題なさそうですからどうにかなるでしょう。』
一番悔しそうな表情を浮かべドラしゃんが呟くとカブさん達はホッとした表情で頷くのだった。
お父さん達が休んでいる間に、街の皆に新しい役職が割り振れた。
それと同時に、この国が建国される様にぬった理由と、私達がここに来るまでの理由についても、色々脚色される事になった。
しかも、私達一家だけでなく、街の人全員だ。
新しい国ができる事に、まだ腑に落ちてない人達もいるため、誰に聞かれても違和感なく対応出来る様にする為と言う理由だった。
まず、私達の一家についてだ。
無理矢理な様な気もするが、この国の国王の身内という事になった。
この国の王様は、実は昔滅ぼされた国の王族の生き残りである事が判明して、ウォルト国で匿っていた。
しかし、立派に成人して統治者としての資質があるため、他の国の国王達と話し合って独立する事になった。
この度、この国を立ち上げ他の国と同盟を結んだ。
その時、異世界から来た私達を、最初はウォルト国の王様がその王族の生き残りの人と一緒に、面倒を見ていたが、この度独立して国を立ち上げるのにあたって、私達一家を引き受ける事になった。
しかも、自分には身内がいないからと言って、後継人として名乗りを上げてくれただけでなく、私達を"身内"として籍を用意してくれたと言う事に。
その為、私達一家は助けてくれた国王に恩を返すために、この国の街を仕切る"領主一家"としてこの国に来た。
と言うシナリオになったのだ。
ちょっと無理があるかと思うが、セバしゃんが問題ないと言うので...その通りにすることに。
ドラしゃんに関しては、ウォルト国で生活していた時から私達の生活をサポートする為に、ドラしゃんが付きっきりで面倒を見てくれていて、執事の役割をしてくれていた。
今回、この国に移住するにあたって、
異世界の人間の対応に慣れており、なりよりこの世界の事に神様の次に詳しい人物となるし、私達一家とも家族同然の為、一緒に移住して来た。
ちなみに、我が家の執事と言う立ち位置は変わらずだ。
次に、ムキじぃーちゃんに関してだが、私達家族の護衛として隠居生活をしていたムキじぃーちゃんに白羽の矢が刺さり、ウォルト国の王様経由で雇われた。
しかし、護衛よりお兄ちゃんの剣術指南役の方がしっくりきていて、護衛をしながら剣術指南役もしてくれてた。
そして、この度私達一家と一緒に移住を決意してくれて、この国の初の冒険者ギルドの冒険者教官長としても働く事に。
あと、ルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんに関しては、この国にギルドを立ち上げる為に、誰かいないかとウォルト国の王様に相談した所、隠居生活をしていたルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんに白羽の矢がブスリと。
ドラしゃんやムキじぃーちゃんとも面識があり、私達一家ともすぐに打ち解けたので、この国初のギルドのマスターとして雇用される事に。
ルミばぁーちゃんは、以前と変わらず商業ギルドのギルマス。
ロドじぃーちゃんは、冒険者ギルドのギルマスだ。
ドムじぃーちゃんは、昔ロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんと一緒に冒険者をしていたと言う縁もあり、この街を発展させる為に引き抜かれた、鍛治工房のギルマス兼職人だ。
ラミィお兄ちゃんは、エルフの住処を増やす為にこの国にエルフ族代表として来た、エルフ族親善大使。
モッケしゃんは、行商人を引退後の生活の場を求めてこの国に来る事になった。
そして、この国で店を構える事になり、異国雑貨店オーナー兼商業ギルドの副ギルマスに。
ラディじぃーちゃんとカシムじぃーちゃんは、王様の国の近衛隊を引退後の余生を楽しむ為、夫婦で私達の国へ移住。
その後、私達の国の警備に不安を抱き警備指導教官と副教官として名乗りを上げてくれて、そのまま就任。
それぞれの奥さんは、料理の腕を見込まれてギルドの料理長と副料理長へ就任。
見習い兵士だった、ラミリィー、キャリー、バハム、ロッツは、慕っていたラディじぃーちゃん達を追って、この国へ移住。
この街で、兵士としてのそれぞれの特技を生かして頭角を表して、この国の国王に認められて、この国の近衛隊に。
ラミリィーとキャリーは、近衛隊偵察部隊長と副隊長へ。
バハムとロッツは、近衛隊先行部隊隊長と副隊長へ。
コイムさんやレイシさん達は、ルミばぁーちゃんとロドじぃーちゃんがギルド職員として引き抜いて来て、そのまま移住する事に。
ギルド職員としての役職は、今まで通りの役職でと言う事に。
カブさん達は、ウォルト国で住んでいた場所を無くして、彷徨っているところをモッケしゃんに拾われて、一緒にこの国へ。
そして、カブさんは最年長と言うのもあるが、私達の両親の祖父的な存在になり、この国の国王より、私達家族の相談役兼副領主に任命された。
ホイさんは、以前もウォルト国で民宿をやっていたこともあり、この街の最初の民宿の主人兼副領主補佐に。
カブさんの息子のカブラさんは、この国にある街の住民と私達とを繋ぐ相談窓口に当たる役割を担ってもらう事に。
その為、新たに新設する事になった、相談区役所所長に就任。
ララムさんとサラさんは、手先の器用さを見込まれて、お母さんが立ち上げた工房の工房長と副工房長に。
ちなみにお母さんは、会長だ。
ココさんとヤカさんは、自らドムじぃーちゃんとお父さんに鍛治士としての技術を磨きたいと志願して、弟子入りした。
そして、お父さんの工房の工房長と副工房長に。
冒険者達は、ムキじぃーちゃんやロドじぃーちゃんを慕っていた人達ばかりなので、この国へ移住する事を聞いて、一緒について来た。
そして、それぞれこの国の近衛隊や警備部隊兼この街の冒険者となったと言う事に。
最後に、動物達の世話などに関しては今まで通り、工房の仕事をしながらカブさん達が交代で面倒を見る事となった。
大筋として、それぞれの役職と役割が与えられ、生い立ちが構成されたのだった。
他の国の国王達にもこの内容で、既に伝えてあり話は通していたのだ。
いつもながら手際のいい大人達がたくさんで凄いところだなぁーと思う。
今はまだしっくり来ないが、住人が増えて来たら慣れていくだろうと言う事だった。
細かい手続きとか、書類上の事は全て王様達がカモフラージュしてくれるとの事だった。
あとは...。
「この街の皆が、この筋書き通りに役割をこなす事にかかっているわけだなぁー...」
ロドじぃーちゃんの言葉に、やる気に満ちていた皆に、一気に不安の空気が押し寄せた。
まさか...。
「まさか、俺たちにこんな役割がふられんなんざぁー...」
モチさん達は、顔色を無くしていた。
そんな大人達に、私とお兄ちゃんは声をかけた。
「ねぇーねぇー。なんでみんな、そんなにかおいろがわりゅいの?」
「話を聞いている限りでは、普段と変わらない気がしますよ?」
私とお兄ちゃんの言葉に、皆がえっ?となった。
「ルミばぁーちゃんたちは、そのままだし、カブさんたちもね?」
「お父さんが野菜の育て方で悩んでたら相談に乗ってくれていましたし、カブラさんは、皆んなの旦那さんの愚痴や奥さんの愚痴とかも分け隔てなく聞いてましたし...何が違うのかわかりません。」
私達の言葉に、大人達はポカンとしていた。
私達からすれば、役職が付いたと言うだけで、普段と変わらない事をするだけとしか思えなかったのだ。
「お父さんやお母さんがいそがしいときは、こうぼうのしごとしくれるしね。」
「冒険者の皆さんも、街の警護をしながら素材集めもしてくれてましたし。
今とかわらないですよ?」
そんな私とお兄ちゃんの言葉にムキじぃーちゃんが豪快に笑う。
「確かに、言われたらそうだな。今までも肩書きがあろうがなかろうが、やる事は一緒だったしな。」
ムキじぃーちゃんの笑い声と言葉に、一瞬にて空気が元に戻った。
「そうだね。私らはともかく、カブさん達もやる事は一緒さ。
普段と変わらず、すごしゃーいいのさ。やる事は今まで通りなんだから。」
「頭でわかっているだがなぁー。いやぁー、リンとアキラには負けるぜ。
そうだな。俺たちの過ごし方はなんちゃかわらねぇーなぁー。」
ルミばぁーちゃん、ラディじぃーちゃんの言葉に、皆の顔に笑みが戻った。
「一応私がお話した、役職は書類上の物です。ギルドに書類上残す事になりますが、過ごし方は以前と大差はないかと。
ただ、これから増える方々より貴方が先輩。上の立場に居るという証明と思って下さい。」
セバしゃんの言葉に皆は頷いた。
皆の顔色が戻り、笑顔も戻って一安心。
「これからは、私と王は必要以上に御一家に手出しができません。
他の国とのバランスを取る為です。
今からは、皆様方が頼りです。よろしくお願いします。」
セバしゃんは、そう言って私達の代わりに皆にお願いしてくれたのだ。
そんなセバしゃんに、カブさんが声をかけた。
「なんの。そこまで言われなくても大丈夫です。私らは、御一家あってこそなんですから。
無条件で"家族"として迎えられた時から私らは微力ながらも手助けするつもりでしたから。心配不要です。」
そんなカブさんの言葉に、他の人達も口々に声を上げたのだ。
「そうです。"家族"は助け合うのが当たり前です。ユウダイさんやユイカさんがよく言ってました。
"困った時はお互い様。助け合うのは苦ではない。"って。」
「そうですよ。私らで出来る事は何でもします。」
「たしかに!どんな失敗しても、めげずに私達を励ましてくれたんですから、助けるのは当たり前です!」
「俺たちは、付き合いが短いが、獣人であるのに煙たがらす普通に接してくれるだ。それだけでもありがたいのによ、住む場所や仕事まで与えてくれるんだぜ?協力しないわけがないぜ。」
皆の温かい言葉に、セバしゃんもドラしゃんも皆笑顔になっていた。
「ねぇーねぇードラしゃん。これからがたのしみだね。」
私はドラしゃんの服を引っ張りながら、そう呟いた。
私の呟きに、ドラしゃんは笑顔で"そうですね"と答えてくれた。
しかし、こんな余裕な雰囲気で過ごせるのは、この日までだと言うのは、この時誰もが予想しなかったのだった。
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