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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜
5-33 初めての見張り対応中に?!
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特に何事もなく自分達の見張りの時間を過ごす。
気付くとアサくんと交代の時間まで後少しとなった。
このままにしていても良いと思ったが、そうなるとアサくん一人で大変な思いをする事になるのでそれは...ね?
そう思い意を決してお兄ちゃんを起こす事に。
「お兄ちゃん??起きて。交代の時間だよ!」
私はお兄ちゃんに声をかけながらもお兄ちゃんの弱い部分に攻撃を仕掛けた。
すると...。
「やっ、やめてぇー!!」
お兄ちゃんはそう言いながら目を覚ました。
「あっ!起きた?おはよう!もう少ししたら交代の時間だよ。」
私は笑顔であっけらかんに言い放った。
私の言葉にお兄ちゃんは驚いていた。
「えっ?う、嘘だろう?」
お兄ちゃんは目をパチクリしせながら私に質問してきたが、私と側にいた【聖獣】はいたって普通に"本当だよ"と答える。
すると...お兄ちゃんは項垂れてしまった。
「最悪だぁ~。」
どうやら見張りをせずに寝こけてしまった事をかなりショックを受けている様だった。
私はそんなお兄ちゃんに優しく声をかけた。
「大丈夫よ。これね、私と【大聖霊】の仕業だから。」
私の言葉にお兄ちゃんは涙を浮かべた目を私に向ける。
泣くほど辛かったのか?!と少し驚きはしたが冷静にお兄ちゃんに説明する。
「お兄ちゃん、一番見張りをする時間が長いでしょう?
だから、私と見張りをしている間ぐらいゆっくりして欲しかったの。
そこで、【大聖霊】達に頼んでお兄ちゃんの椅子のみ仕掛けをしてもらったの。
私との見張りの間だけゆっくり休めるように。
まぁ~いざとなったら魔獣達や【聖獣】達、それに【大聖霊】達が居てくれるから大丈夫って思って。
それに、少しでも休んでた方が後半の見張りが楽でしょう?」
私が伝えるとお兄ちゃんはホッとした表情を浮かべていた。
そして...。
「頼むから、次からは事前にそう言う事は言ってくれよ。心臓に悪いから。」
と小声で訴えてきたので、私は素直にお兄ちゃんごめんと伝えた。
しばらくお兄ちゃんと見張りの間の事を話していると交代のためにアサくんが欠伸をしながらやって来た。
「よっ!お前ら元気だな。リン。交代だ。お前はゆっくり休めよ。」
アサくんはそう言って声をかけて来たので、私はアサくんに返事を返す。
「はーい。あっこの椅子どうぞ。このまま使ってね。
あっ、魔獣達はどうしようか?」
私は自分が座っていた椅子をアサくんに譲りながら質問する。
アサくんはこんな椅子どこから調達したんだ?と質問して来たが、気不味そうなお兄ちゃんの表情を見て何かを察した様だった。
「お前達の見張りの間はどうもなかったんだろう?なら別に連れて行ってくれてかまわないぞ。」
アサくんはそう言って軽く準備体操をし出した。
さっきまで休んでいたから少しでも身体を動かさないといざと言う時に困るからだと言って。
「特に問題はなかったけど、やっぱり魔物達が周りを取り囲んでるみたいなの。」
私の言葉にアサくんはゲッで顔を一瞬したがすぐいつもの表情に戻した。
「だから魔獣達にはそのまま見張りをお願いする事にするわ。ただ、朝日が登る前には皆を戻す様にするわ。」
「そっか。朝日が駄目な子もいるからね。それでいいか?」
私とお兄ちゃんの言葉にアサくんは、
「お前達がそれでいいなら俺は構わないぜ。お前達が契約した奴らだ。お前達に任せるよ。」
私とお兄ちゃんはアサくんの言葉を聞いてそれぞれの魔獣達に念話をして伝えていく。
「朝日が登る際までこのまま見張りをお願い。」
「朝日が登る前には戻って来て。」
私とお兄ちゃんの言葉に魔獣達は"わかった"と返事を返してくれた。
私はアサくんとお兄ちゃんに頑張ってと言って【聖獣】を連れて寝床へ向かった。
私達の寝床は村の端に即席の倉庫を立ててその中で寝泊まりをさせてもらっている。
ちなみに即席の倉庫を作ったのは保護者二人。
なので、見た目は簡素な木造の倉庫だけど...中は...ははは。
もう皆さんの想像にお任せしますよ。
見た目と反した内装。
わかっていても入るのに躊躇してしまう。
このまま入り口でいても仕方がないので中に入ることに。
倉庫に入るとお嬢様とアキラ様の部屋はこちらと書かれた紙に従って進んでいくと私とお兄ちゃんの名前が書かれたドアの前に来た。
そのドアを開けると...。
もう考えるのも諦めたくなる様な光景が...。
なんと扉を開けると家の寝室と繋がっていたのだ。
もう...いいや。
私は考える事を放棄して、寝巻きに着替え、寝慣れているベッドに入て休むことに。
私が寝床へ行っている間、アサくんとお兄ちゃんはと言うと...。
「お前、偉くスッキリした表情だな。
なんだ?寝こけていたのか?」
アサくんの言葉にお兄ちゃんは傷口に塩を塗られてしまった。
素直にダメージを受けている事からアサくんはえっ?!と驚いていた。
当てずっぽで言っただけのようだったのだが...。
「おいおい。マジか?!」
「ああ。リンにしてやられたよ。」
「あーー。リンかぁ~。なら仕方がないな。でも良いじゃないか。今から挽回しろよ。」
落ち込むお兄ちゃんにアサくんは明るく言い放つ。
お兄ちゃんにとってアサくんは良き相談相手でお兄ちゃんみたいな存在だ。
小さい頃から一緒に育ったのもありなんでも言い合える相手の一人。
私にとってももう一人のお兄ちゃん的存在なのだ。
私もお兄ちゃんも何故かアサくんには逆らえない。
決して威圧しているわけでもないのだが、アサくんに注意されると素直に従ってしまうのだ。
私達の両親いわくアサくんは私達兄弟の調教に成功した一人との事だ。
アサくん自身は普通に接しているだけなんだけどね。
その普通が当時の私達にはありがたかったのだ。
だから私とお兄ちゃんにとってアサくんは特別な人だから、素直に言う事を聞いてしまうみたい。
お兄ちゃんとアサくんは一度村を一回りしてして異常がないかを確認する。
魔獣達はアサくんには対して普通に接していた。
それは私達がアサくんに対してそう接するからだそうだ。
私達が敵とみなしたものは彼らにとっても敵なんだって。
彼らはアサくんの質問にも普通に答えていた。
異常がない事を確認して二人は私が渡したおにぎりと味噌汁を食べる事にした様だ。
鞄から取り出すと...。
「凄い。温かい。」
「ああ。これはありがたいなぁー。」
お兄ちゃんとアサくんは笑顔で温かいおにぎりと味噌汁を食べていく。
「塩加減最高!あっ!中身はシャケだ!」
「こっちは梅だ。俺これ好きなんだよなぁー。」
アサくんは昔私達の家でもてなした時にでた"梅干し"を食べてから虜となってしまったのだ。
あの頃のアサくんは住んでいた村を魔物達に襲われて両親や友達を亡くした。
唯一残った妹達と私達の住む街へ避難して来たのだ。
そんな事もあり、警戒心が強く"お兄ちゃん"だからと言って一切我儘を言ったりせず我慢強い子供だった。
そんな子が満面の笑顔を浮かべて梅干しを食べる姿を見てなんも感じない人はいない。
あの日から私達のお母さんはアサくんのために梅干しを使った料理やお菓子をたくさん作っていった。
そのかいもあってか、今やアサくんの好物は"梅"となったのだ。
アサくん自身もお母さんから梅干しの作り方を習って今では自分で自分用の梅干しを作っているんだって。
他の料理も習ったんだけど、アサくんが唯一作れたのが梅干しのみ。
だから私が料理をする様になってからは私がアサくんの好物を作っては、アサくんに定期的に渡しているのだ。
「俺も梅干しを作っているが、なぜかこの味にはならないんだよなぁー。」
そう言いながらアサくんは梅干しの入ったおにぎりを美味しそうに食べていた。
そんなアサくんをお兄ちゃんは嬉しそうに見つめる。
私が渡したおにぎりと味噌汁を残さず平らげたお兄ちゃんとアサくんは見張りを続行する。
ホカホカの料理のため身体は十分に暖まったようだ。
「俺、このまま朝まで見張りが出来そうだわ。」
「マジ?僕もだよ。中からホカホカしてるから頑張れるよ。」
そんな風に話していると村の入り口の直ぐ側で物音がした。
お兄ちゃんとアサくんは瞬時に武器を構える。
すると...木の上に金色に光目が二つ浮かび上がっているのに気付く。
よく目を凝らしてみていると大きな鷲の様な鳥が木の枝にとまってこちらを見つめていた。
「魔物...なのか??」
「分からん。気配がしないからそうなんだろう。」
お兄ちゃんとアサくんは警戒を強める。
するとだ。どこからか声がきこえてくる。
お兄ちゃんとアサくんは警戒をしながらも辺りをキョロキョロ見回す。
するとまた声が...。
《おい。さっき食べていた白い粒に囲まれて埋まっていた赤い実はなんだ?
美味しいのか?》
お兄ちゃんは急いで念話を飛ばし魔獣達に確認した。
しかしどうやら魔獣達の誰でもないそうだ。
するとだ...。
「なんだ?お前がしゃべっているのか?」
アサくんが木の枝に止まっている鳥に向かって声をかけたのだ。
するとアサくんの問いかけに答えるようにまた声がした。
《はっ?!そんな事もわからないのか?人間の子供とはそこまで知能が低いのか?》
小馬鹿にした様な発言をするので、アサくんは鳥に向かって武器を投げつけようとした。
それを慌ててお兄ちゃんが止める。
「アサくん!落ち着いて!!相手は鳥だよ!」
「明日の朝飯の材料にしてやる!」
お兄ちゃんとアサくんのやり取りを木の枝から眺めながらもその鳥は話しかけ来た。
《おい。そんな事より私の質問に答えよ!あの白い粒に埋もれていた赤い実は美味いのか?》
鳥の言葉にアサくんは苛立ちながらも答える。
「ああ!美味いよ!世界一の美味さだ!」
すると鳥は羽を広げて驚く。
《なんと!!ならお前と居ればその赤い実を食せるのだなぁ?!よし!小僧!お前と契約してやる!喜べ!!》
鳥は一方的にそう言い放つとアサくんといきなり契約を結んだのだった。
あっけにとられるお兄ちゃんとアサくん。
アサくんの右手にはいつのまにか契約紋章が刻まれていた。
すると木の枝にいた鳥がアサくんに向かって飛んでくるではないか?!!
《我はシャードゥファルコンと呼ばれている魔鳥だ。今日からお主と契約してやる。喜べ!》
全身真っ黒な羽毛に包まれて、首と目の周りがシルバーががった色の羽毛が生えている鳥。
《主人殿、そやつは魔鳥の中でも高ランクの魔物です。知能が高く滅多と人の前には姿を表しません。》
《基本は肉食ですが、木のみも好んで食べる変わった奴です。》
お兄ちゃんが契約している魔獣達がそう言ってお兄ちゃんに教える。
それをお兄ちゃんがこそっとアサくんに教えるとアサくんは驚いていた。
「お前強いのか?」
目の前にいる鳥に質問するアサくん。
すると鳥は意外な言葉を放った。
《そこにいる小僧や先程までいた小娘程ではないがな。あと、お前達の保護者共に比べたらまだまだ幼い程だが、役には立つぞ。》
どうやらこの鳥はずっと私達の事を見ていた様だ。
《本当は声をかけるつもりはなかったのだ。
しかしそやつがとても美味そうな木のみを食ってるではないか?!
ずるいと思ってついつい声をかけてしまったのだ!》
鳥の言葉に溜息を吐くお兄ちゃんとアサくん。
「なぁーアキラ。」
「何アサくん。」
「なんか、俺らの周りって...。」
「うん。なんか食い意地の張った子が集まりやすいみたいだね。」
どうやらお兄ちゃんとアサくんいわく、私とこの鳥は似ていると言うのだ。
失礼しちゃうわ!!
《ところで小僧!さっきの赤い木のみを我にもよこせ!》
鳥はそう言って羽をばたつかせながらアサくんに訴えかける。
アサくんは面倒くさげに鳥に対して返事をした。
「あれは俺が用意したものじゃないからもうない。」
《何!!では...あの小娘か!》
鳥は何かを察した様で私が休んでいる場所へと向かおうとしたがアサくんが止めた。
「辞めておけ。でないとお前、あの実を食べる前にお前が消されるぞ。」
止めるアサくんを振り切って私の方へと行こうとする鳥に対して殺気の籠った重圧が...。
そのため鳥は地面にはたき落とされて身動きが取れなくなっていた。
そんな鳥をみてアサくんはため息を吐く。
「だから言っただろう。」
地面に叩き落とされた鳥の目の前には、殺気のこもったオーラを纏った保護者が二人立っていた。
さすがの鳥も二人の姿を見て怯えていた。
『これはこれは。明日の朝食に良さそうな鶏肉が落ちているではないですか。』
「そうですね。羽なんかは髪飾りに良さそうですね。」
二人の言葉に鳥は自分の死を覚悟していたその時だった。
「ドラしゃん!ラミィお兄ちゃん!敵襲?!」
二人の背後から寝巻き姿の私が登場したのだ。
実はベッドに入ったものの中々寝付けなくって水分を飲みに起きてきたら二人のただなる気配を感じたので思わず飛び出してきたのだった。
私の姿をみて二人は慌てて殺気を消す。
私は首を傾げながら二人を見つめていると地面に鳥が倒れているのを発見した。
私は慌てて二人の間をすり抜けて地面に倒れている鳥を抱き上げる。
「鳥さん大丈夫??あれ?この子誰かと契約している??」
私は抱き上げた鳥がただの鳥でない事を感じた。
すると...。
「それ、俺と契約した魔鳥だ。」
そうアサくんが答える。
「えっ!そうなの。良かったね!アサくん契約魔獣がほしいって言ってたじゃん!
この子カッコいし、いいパートナーになりそうね。
鳥さん、アサくんをお願いね。
あっ、私リンって言うの。アサくんとは同じパーティーで冒険者してるの。よろしくね。」
私は鳥の羽を整えながら話しかけてアサくんへと手渡す。
「もう!ドラしゃんもラミィお兄ちゃんもはやとちりしたのね。ちゃんと休まないといけないよ?
あっ!なんなら私と一緒に休む?」
冗談半分で保護者二人に話しかけると二人は満面の笑顔になって一緒に休むと返事をかえしてきた。
「では、リンちゃんのお言葉に甘えて私達も休みましょうか。」
『そうですね。では、アキラ様、アサ。見張りよろしくお願いしますね。』
二人はそうお兄ちゃん達に伝えると私を連れて寝床へとそそくさと向かうのだった。
「良かったな。お前。」
「命拾いしたね。」
お兄ちゃんとアサくんは呆然としながら命拾いした鳥にそう声をかける。
鳥も自分の命が助かり涙していたのだった。
アキラ:
リン!今回はナイスだよ!
リン:
へっ???
アキラ:
尊い命を救ったね!
リン:
えっ?そうなの??
気付くとアサくんと交代の時間まで後少しとなった。
このままにしていても良いと思ったが、そうなるとアサくん一人で大変な思いをする事になるのでそれは...ね?
そう思い意を決してお兄ちゃんを起こす事に。
「お兄ちゃん??起きて。交代の時間だよ!」
私はお兄ちゃんに声をかけながらもお兄ちゃんの弱い部分に攻撃を仕掛けた。
すると...。
「やっ、やめてぇー!!」
お兄ちゃんはそう言いながら目を覚ました。
「あっ!起きた?おはよう!もう少ししたら交代の時間だよ。」
私は笑顔であっけらかんに言い放った。
私の言葉にお兄ちゃんは驚いていた。
「えっ?う、嘘だろう?」
お兄ちゃんは目をパチクリしせながら私に質問してきたが、私と側にいた【聖獣】はいたって普通に"本当だよ"と答える。
すると...お兄ちゃんは項垂れてしまった。
「最悪だぁ~。」
どうやら見張りをせずに寝こけてしまった事をかなりショックを受けている様だった。
私はそんなお兄ちゃんに優しく声をかけた。
「大丈夫よ。これね、私と【大聖霊】の仕業だから。」
私の言葉にお兄ちゃんは涙を浮かべた目を私に向ける。
泣くほど辛かったのか?!と少し驚きはしたが冷静にお兄ちゃんに説明する。
「お兄ちゃん、一番見張りをする時間が長いでしょう?
だから、私と見張りをしている間ぐらいゆっくりして欲しかったの。
そこで、【大聖霊】達に頼んでお兄ちゃんの椅子のみ仕掛けをしてもらったの。
私との見張りの間だけゆっくり休めるように。
まぁ~いざとなったら魔獣達や【聖獣】達、それに【大聖霊】達が居てくれるから大丈夫って思って。
それに、少しでも休んでた方が後半の見張りが楽でしょう?」
私が伝えるとお兄ちゃんはホッとした表情を浮かべていた。
そして...。
「頼むから、次からは事前にそう言う事は言ってくれよ。心臓に悪いから。」
と小声で訴えてきたので、私は素直にお兄ちゃんごめんと伝えた。
しばらくお兄ちゃんと見張りの間の事を話していると交代のためにアサくんが欠伸をしながらやって来た。
「よっ!お前ら元気だな。リン。交代だ。お前はゆっくり休めよ。」
アサくんはそう言って声をかけて来たので、私はアサくんに返事を返す。
「はーい。あっこの椅子どうぞ。このまま使ってね。
あっ、魔獣達はどうしようか?」
私は自分が座っていた椅子をアサくんに譲りながら質問する。
アサくんはこんな椅子どこから調達したんだ?と質問して来たが、気不味そうなお兄ちゃんの表情を見て何かを察した様だった。
「お前達の見張りの間はどうもなかったんだろう?なら別に連れて行ってくれてかまわないぞ。」
アサくんはそう言って軽く準備体操をし出した。
さっきまで休んでいたから少しでも身体を動かさないといざと言う時に困るからだと言って。
「特に問題はなかったけど、やっぱり魔物達が周りを取り囲んでるみたいなの。」
私の言葉にアサくんはゲッで顔を一瞬したがすぐいつもの表情に戻した。
「だから魔獣達にはそのまま見張りをお願いする事にするわ。ただ、朝日が登る前には皆を戻す様にするわ。」
「そっか。朝日が駄目な子もいるからね。それでいいか?」
私とお兄ちゃんの言葉にアサくんは、
「お前達がそれでいいなら俺は構わないぜ。お前達が契約した奴らだ。お前達に任せるよ。」
私とお兄ちゃんはアサくんの言葉を聞いてそれぞれの魔獣達に念話をして伝えていく。
「朝日が登る際までこのまま見張りをお願い。」
「朝日が登る前には戻って来て。」
私とお兄ちゃんの言葉に魔獣達は"わかった"と返事を返してくれた。
私はアサくんとお兄ちゃんに頑張ってと言って【聖獣】を連れて寝床へ向かった。
私達の寝床は村の端に即席の倉庫を立ててその中で寝泊まりをさせてもらっている。
ちなみに即席の倉庫を作ったのは保護者二人。
なので、見た目は簡素な木造の倉庫だけど...中は...ははは。
もう皆さんの想像にお任せしますよ。
見た目と反した内装。
わかっていても入るのに躊躇してしまう。
このまま入り口でいても仕方がないので中に入ることに。
倉庫に入るとお嬢様とアキラ様の部屋はこちらと書かれた紙に従って進んでいくと私とお兄ちゃんの名前が書かれたドアの前に来た。
そのドアを開けると...。
もう考えるのも諦めたくなる様な光景が...。
なんと扉を開けると家の寝室と繋がっていたのだ。
もう...いいや。
私は考える事を放棄して、寝巻きに着替え、寝慣れているベッドに入て休むことに。
私が寝床へ行っている間、アサくんとお兄ちゃんはと言うと...。
「お前、偉くスッキリした表情だな。
なんだ?寝こけていたのか?」
アサくんの言葉にお兄ちゃんは傷口に塩を塗られてしまった。
素直にダメージを受けている事からアサくんはえっ?!と驚いていた。
当てずっぽで言っただけのようだったのだが...。
「おいおい。マジか?!」
「ああ。リンにしてやられたよ。」
「あーー。リンかぁ~。なら仕方がないな。でも良いじゃないか。今から挽回しろよ。」
落ち込むお兄ちゃんにアサくんは明るく言い放つ。
お兄ちゃんにとってアサくんは良き相談相手でお兄ちゃんみたいな存在だ。
小さい頃から一緒に育ったのもありなんでも言い合える相手の一人。
私にとってももう一人のお兄ちゃん的存在なのだ。
私もお兄ちゃんも何故かアサくんには逆らえない。
決して威圧しているわけでもないのだが、アサくんに注意されると素直に従ってしまうのだ。
私達の両親いわくアサくんは私達兄弟の調教に成功した一人との事だ。
アサくん自身は普通に接しているだけなんだけどね。
その普通が当時の私達にはありがたかったのだ。
だから私とお兄ちゃんにとってアサくんは特別な人だから、素直に言う事を聞いてしまうみたい。
お兄ちゃんとアサくんは一度村を一回りしてして異常がないかを確認する。
魔獣達はアサくんには対して普通に接していた。
それは私達がアサくんに対してそう接するからだそうだ。
私達が敵とみなしたものは彼らにとっても敵なんだって。
彼らはアサくんの質問にも普通に答えていた。
異常がない事を確認して二人は私が渡したおにぎりと味噌汁を食べる事にした様だ。
鞄から取り出すと...。
「凄い。温かい。」
「ああ。これはありがたいなぁー。」
お兄ちゃんとアサくんは笑顔で温かいおにぎりと味噌汁を食べていく。
「塩加減最高!あっ!中身はシャケだ!」
「こっちは梅だ。俺これ好きなんだよなぁー。」
アサくんは昔私達の家でもてなした時にでた"梅干し"を食べてから虜となってしまったのだ。
あの頃のアサくんは住んでいた村を魔物達に襲われて両親や友達を亡くした。
唯一残った妹達と私達の住む街へ避難して来たのだ。
そんな事もあり、警戒心が強く"お兄ちゃん"だからと言って一切我儘を言ったりせず我慢強い子供だった。
そんな子が満面の笑顔を浮かべて梅干しを食べる姿を見てなんも感じない人はいない。
あの日から私達のお母さんはアサくんのために梅干しを使った料理やお菓子をたくさん作っていった。
そのかいもあってか、今やアサくんの好物は"梅"となったのだ。
アサくん自身もお母さんから梅干しの作り方を習って今では自分で自分用の梅干しを作っているんだって。
他の料理も習ったんだけど、アサくんが唯一作れたのが梅干しのみ。
だから私が料理をする様になってからは私がアサくんの好物を作っては、アサくんに定期的に渡しているのだ。
「俺も梅干しを作っているが、なぜかこの味にはならないんだよなぁー。」
そう言いながらアサくんは梅干しの入ったおにぎりを美味しそうに食べていた。
そんなアサくんをお兄ちゃんは嬉しそうに見つめる。
私が渡したおにぎりと味噌汁を残さず平らげたお兄ちゃんとアサくんは見張りを続行する。
ホカホカの料理のため身体は十分に暖まったようだ。
「俺、このまま朝まで見張りが出来そうだわ。」
「マジ?僕もだよ。中からホカホカしてるから頑張れるよ。」
そんな風に話していると村の入り口の直ぐ側で物音がした。
お兄ちゃんとアサくんは瞬時に武器を構える。
すると...木の上に金色に光目が二つ浮かび上がっているのに気付く。
よく目を凝らしてみていると大きな鷲の様な鳥が木の枝にとまってこちらを見つめていた。
「魔物...なのか??」
「分からん。気配がしないからそうなんだろう。」
お兄ちゃんとアサくんは警戒を強める。
するとだ。どこからか声がきこえてくる。
お兄ちゃんとアサくんは警戒をしながらも辺りをキョロキョロ見回す。
するとまた声が...。
《おい。さっき食べていた白い粒に囲まれて埋まっていた赤い実はなんだ?
美味しいのか?》
お兄ちゃんは急いで念話を飛ばし魔獣達に確認した。
しかしどうやら魔獣達の誰でもないそうだ。
するとだ...。
「なんだ?お前がしゃべっているのか?」
アサくんが木の枝に止まっている鳥に向かって声をかけたのだ。
するとアサくんの問いかけに答えるようにまた声がした。
《はっ?!そんな事もわからないのか?人間の子供とはそこまで知能が低いのか?》
小馬鹿にした様な発言をするので、アサくんは鳥に向かって武器を投げつけようとした。
それを慌ててお兄ちゃんが止める。
「アサくん!落ち着いて!!相手は鳥だよ!」
「明日の朝飯の材料にしてやる!」
お兄ちゃんとアサくんのやり取りを木の枝から眺めながらもその鳥は話しかけ来た。
《おい。そんな事より私の質問に答えよ!あの白い粒に埋もれていた赤い実は美味いのか?》
鳥の言葉にアサくんは苛立ちながらも答える。
「ああ!美味いよ!世界一の美味さだ!」
すると鳥は羽を広げて驚く。
《なんと!!ならお前と居ればその赤い実を食せるのだなぁ?!よし!小僧!お前と契約してやる!喜べ!!》
鳥は一方的にそう言い放つとアサくんといきなり契約を結んだのだった。
あっけにとられるお兄ちゃんとアサくん。
アサくんの右手にはいつのまにか契約紋章が刻まれていた。
すると木の枝にいた鳥がアサくんに向かって飛んでくるではないか?!!
《我はシャードゥファルコンと呼ばれている魔鳥だ。今日からお主と契約してやる。喜べ!》
全身真っ黒な羽毛に包まれて、首と目の周りがシルバーががった色の羽毛が生えている鳥。
《主人殿、そやつは魔鳥の中でも高ランクの魔物です。知能が高く滅多と人の前には姿を表しません。》
《基本は肉食ですが、木のみも好んで食べる変わった奴です。》
お兄ちゃんが契約している魔獣達がそう言ってお兄ちゃんに教える。
それをお兄ちゃんがこそっとアサくんに教えるとアサくんは驚いていた。
「お前強いのか?」
目の前にいる鳥に質問するアサくん。
すると鳥は意外な言葉を放った。
《そこにいる小僧や先程までいた小娘程ではないがな。あと、お前達の保護者共に比べたらまだまだ幼い程だが、役には立つぞ。》
どうやらこの鳥はずっと私達の事を見ていた様だ。
《本当は声をかけるつもりはなかったのだ。
しかしそやつがとても美味そうな木のみを食ってるではないか?!
ずるいと思ってついつい声をかけてしまったのだ!》
鳥の言葉に溜息を吐くお兄ちゃんとアサくん。
「なぁーアキラ。」
「何アサくん。」
「なんか、俺らの周りって...。」
「うん。なんか食い意地の張った子が集まりやすいみたいだね。」
どうやらお兄ちゃんとアサくんいわく、私とこの鳥は似ていると言うのだ。
失礼しちゃうわ!!
《ところで小僧!さっきの赤い木のみを我にもよこせ!》
鳥はそう言って羽をばたつかせながらアサくんに訴えかける。
アサくんは面倒くさげに鳥に対して返事をした。
「あれは俺が用意したものじゃないからもうない。」
《何!!では...あの小娘か!》
鳥は何かを察した様で私が休んでいる場所へと向かおうとしたがアサくんが止めた。
「辞めておけ。でないとお前、あの実を食べる前にお前が消されるぞ。」
止めるアサくんを振り切って私の方へと行こうとする鳥に対して殺気の籠った重圧が...。
そのため鳥は地面にはたき落とされて身動きが取れなくなっていた。
そんな鳥をみてアサくんはため息を吐く。
「だから言っただろう。」
地面に叩き落とされた鳥の目の前には、殺気のこもったオーラを纏った保護者が二人立っていた。
さすがの鳥も二人の姿を見て怯えていた。
『これはこれは。明日の朝食に良さそうな鶏肉が落ちているではないですか。』
「そうですね。羽なんかは髪飾りに良さそうですね。」
二人の言葉に鳥は自分の死を覚悟していたその時だった。
「ドラしゃん!ラミィお兄ちゃん!敵襲?!」
二人の背後から寝巻き姿の私が登場したのだ。
実はベッドに入ったものの中々寝付けなくって水分を飲みに起きてきたら二人のただなる気配を感じたので思わず飛び出してきたのだった。
私の姿をみて二人は慌てて殺気を消す。
私は首を傾げながら二人を見つめていると地面に鳥が倒れているのを発見した。
私は慌てて二人の間をすり抜けて地面に倒れている鳥を抱き上げる。
「鳥さん大丈夫??あれ?この子誰かと契約している??」
私は抱き上げた鳥がただの鳥でない事を感じた。
すると...。
「それ、俺と契約した魔鳥だ。」
そうアサくんが答える。
「えっ!そうなの。良かったね!アサくん契約魔獣がほしいって言ってたじゃん!
この子カッコいし、いいパートナーになりそうね。
鳥さん、アサくんをお願いね。
あっ、私リンって言うの。アサくんとは同じパーティーで冒険者してるの。よろしくね。」
私は鳥の羽を整えながら話しかけてアサくんへと手渡す。
「もう!ドラしゃんもラミィお兄ちゃんもはやとちりしたのね。ちゃんと休まないといけないよ?
あっ!なんなら私と一緒に休む?」
冗談半分で保護者二人に話しかけると二人は満面の笑顔になって一緒に休むと返事をかえしてきた。
「では、リンちゃんのお言葉に甘えて私達も休みましょうか。」
『そうですね。では、アキラ様、アサ。見張りよろしくお願いしますね。』
二人はそうお兄ちゃん達に伝えると私を連れて寝床へとそそくさと向かうのだった。
「良かったな。お前。」
「命拾いしたね。」
お兄ちゃんとアサくんは呆然としながら命拾いした鳥にそう声をかける。
鳥も自分の命が助かり涙していたのだった。
アキラ:
リン!今回はナイスだよ!
リン:
へっ???
アキラ:
尊い命を救ったね!
リン:
えっ?そうなの??
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感想、ご指摘もありがとうございます。
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読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
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