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第34話『日本米とタイ米くらいの違いでしかない』
しおりを挟む「その魔の気は前世の力を受け継いでいるだけだということはわかった」
敗北した風魔先輩は俺を狩ろうとするのを諦めてくれた。
誤解も解けて万事解決――と思ったのだが。
「現在の君が魔の者ではないことは信じよう。だが、魔の者であった頃の記憶がある以上は油断できない。君がいつ前世の性質を取り戻して、乙女の不浄の穴を狙う存在になるかわからないからな」
前世だって別に興味はなかったんですけど!?
前世はそうだったみたいな決めつけやめてくれません?
あと、魔の者じゃなくて魔族な! 誤解、解けてない!
「君も彼の近くにいるつもりなら気をつけておきたまえ。魔の者は気が強い女子の穴を特に好むと聞く」
風魔先輩が結城優紗に視線を送って忠告した。
何言ってくれちゃってるんだコイツ。
結城優紗、真に受けるなよ?
なんか深刻そうに頷いてるけど。
風魔先輩の中で『魔=不浄の穴を狙う存在』という図式は確定しているらしい。
それ、そもそも本当に正しい情報なんすかね……。
ソースどこよ。
とても疑わしい。
「俺の前世は地球に住む魔の者とは別種だと思うんですが……」
異世界の種族だし。
極端な話だけど、魔族って寿命とか平均魔力量が違うだけの人間ですぜ。
「ふむ……言われてみれば少し違ったかもしれない。だが、禍々しさを感じたのは同じだ。日本米とタイ米くらいの違いでしかない」
その例えは何なの……。
「あの腕力で屈服させるような戦い方は実に『らしさ』を感じる要素だったぞ……はふぅ……」
「…………」
結局、風魔先輩は俺を敵視することはやめてくれたが『魔の者』と完全に無関係だとは認めてくれなかった。
おまけに連絡先の交換を迫られ、魔の者としての衝動が抑えられなくなっていないか定期的に確認させてくれと頼んできた。
もし衝動が抑えきれなくなったら真っ先に知らせて欲しいとも言われた。
それはもう非常に熱心に……。
「やれやれ、風魔先輩も困った人だったな」
「ええ、そうね……」
風魔先輩が去り、二人になった後で話しかけると結城優紗の態度はなぜかぎこちなかった。
なんか、不自然に身体の正面しか俺に向けてこないような……?
「結城、おはよう」
「ひっ! し、新庄、おはよう……」
それからしばらく。
結城優紗は俺と会うと、警戒したように尻を押さえて後退りするようになった。
だから興味ねえって言ってるだろ!
魔の者とかいう輩共のせいでとんでもない風評被害だ……!
もしそいつらを見つけたら絶対に一発殴ってやる。
俺は心に決めたのだった。
風魔先輩の襲撃から二週間が経った。
クラスでの人間関係は変わらずだが、風魔先輩を最後に妙な絡み方をしてくる輩が現れなくなったので俺の高校生活は随分と過ごしやすくなっていた。
中間テストも丸出さんや結城優紗にノートを見せて貰ったり、勉強を教えて貰ったおかげで無事に乗り越えることができた。
全教科平均点以上は一ヶ月のハンデありにしては頑張ったほうだと思う。
停学期間中に自主勉強しててよかった。
そうそう、テスト勉強では部の皆とファミレスやファストフード店に行ったんだよね。
ずっと憧れていた青春のシチュエーションだったから感激しちゃったよ。
夢が一つ叶ってマジ嬉しい。
その思いの丈を結城優紗に語ったら『これが必死に倒そうとしていた魔王だなんて……』と複雑そうな顔をされた。
知らんがな。
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