前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい

のみかん

文字の大きさ
35 / 69

第35話『江入杏南の様子』

しおりを挟む


 



 ◇◇◇◇◇


 その日の放課後は部室に行く前に丸出さんから集合がかかっていた。
 呼び出された場所は人通りの少ない裏庭。
 集まっているのは俺と丸出さんと結城優紗の三人。

 一体何の用件だろう。
 この三人だけで話すこととは?
 一年生という括りなら江入さんだけハブかれてるし。

「実は皆に相談したいのは江入さんのことなの」

 丸出さんは神妙な表情で俺たちに言った。

「前から思ってたんだけど、近頃の江入さんは様子がおかしいわよね?」

「ああ、そのことね……」

 丸出さんの言葉に頷く結城優紗。
 彼女には思い当たるフシがあるようだ。
 だが――

「そんなに前と違ってるかな……」

 そこまで江入さんを注視していなかった俺はピンとこなかった。

 俺に喧嘩を吹っ掛けて敗北してからは大人しく高校生をしてるだけに見えるけど。

「全然違うわよ! 前まではちゃんと手入れされたサラサラの髪だったのに今は寝癖をつけたまま登校してくるしボサボサで艶もなくなってるし! あと、制服のブラウスもしっかりアイロンかけて糊付けまでしてあったのが皺だらけで……」

 結城優紗が変更ポイントをグチグチ言ってくる。
 そんなにいろいろ違うのか……。
 そうやって例を具体的に出されると、気づかなかった俺が節穴みたいな感じになってくる。

 丸出さんも俺にジト目を向けてきていた。

 結城優紗はともかく、丸出さんからこういう視線を頂くのはつらい。

「極めつけは中間テストの結果ね。入学直後の実力テストでは学年で一桁台だったのに今回は全科目赤点だったらしいのよ。ありえない下がり方でしょう? 授業中に当てられても答えられなくなってたし。生徒指導室にも呼び出されていたわ」

 結城優紗曰く、体育の授業でも入学時から見せていた万能の運動神経が見る影もないという。

 足の速さなどの身体能力は変わりないらしいが。

「それとわたしからも一つ。ここ数週間、江入さんと対局をしても以前のようなAIじみた正確無比な指し回しじゃなくなってるのよ。弱くなったとか調子が悪いとかの次元じゃなくて、本当に別人みたいに将棋が変わってしまっているというか……」

 丸出さんは部活の将棋部分を司る立場ならではの視点で違和感を伝えてくる。
 二人してそんなに異変を感じているのか。
 俺は深く関わりたくない一心だったからよく見えていなかったのかもしれない。

「もしかして家出とかをしてるんじゃないかって思ってるんだけど……」

 丸出さんが僅かに声を震えさせて言う。
 家出ねえ……。
 確かに年頃の少女が家に戻らずフラフラしていると考えたら心配もするだろう。

 それが同じ部活のメンバーなら余計に。
 けど、江入さんは普通の女の子じゃないからなぁ……。
 彼女は宇宙なんとか帝国から地球を調査しにきた宇宙人なのだ。

 いざとなればあの鎧とかを着て身を守るだろう。
 あれ? 家といえば、江入さんって普段どこで暮らしてるんだ?
 地球に潜伏するにあたっていろいろ偽装してるとは思うんだけど。

 てか、地球に残っているということはまだ侵略を諦めていないのかな?

 まあとにかく、江入さんの生活態度やパーソナリティが別人のようになってしまって、丸出さんたちはそれが気になっているということか。

「なあ、江入さんがおかしくなったのはどれくらい前からなんだ?」

「大体、三週間とか……一ヶ月くらい前かな?」 

「あたしも教室でおかしいって感じたのはそれくらいね」

 丸出さんと結城優紗の意見が一致しているということは概ね正しい時期なのだろう。

 ん? 三週間から一ヶ月前? あれ? 確かその辺で……。

 俺は何となく嫌な予感がした。

「家の事情かもしれないから強く踏み込むべきじゃないとは思うんだけどね……。もし訊いてみて話してくれるようならなるべく力になってあげたいの」

 俺たちは部室に入って江入さんと話すことにした。




 江入さんは部室の椅子に腰掛けて読書に勤しんでいた。
 入部当初からいつも見ている姿である。
 だが、言われてみればかつての彼女より髪質が悪くなっていて制服もヨレていた。

 ついでに読んでる本が前よりエンタメ系寄りになっている。
 部室には他に酒井先輩がいて、サンドバッグを一心不乱に殴りつけていた。
 鳥谷先輩は来ていない模様。

 鳥谷先輩はフリーダムだから来たりこなかったりなんだよな。



 丸出さんが先程の懸念を江入さんに問う。
 すると、江入さんはパタリと本を閉じて一言。

「彼だけなら話す」

 俺を見て静かにそう告げた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...