前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい

のみかん

文字の大きさ
54 / 69

第54話『馬飼学園四天王で最強の男』

しおりを挟む





 段田理恩もとい、ダンタリオンとの勝負から日は経ち。

 今日は七月上旬、期末テストの最終日である。

 朝、校門の前で偶然にも鳥谷先輩と会ったので俺は彼女と一緒に昇降口まで向かっていた。

 並んで歩きながら、テストが終わったら試験休み期間でどっか行こうぜ! みたいな話を二人でしていると、

「姐さーん! てーへんだ! てーへんだぁ!」

 鳥谷先輩の舎弟の一人が息を切らしながら駆け寄ってきた。

「な、なんだとぉ! 誰の成績が底辺だッ! 言っておくけど、昨日のテストは40点か50点くらい取れた手応えがあるんだからな!」

 鳥谷先輩は舎弟さんの言葉に憤慨した態度を見せる。

「いや、違うんすよ! 底辺じゃなくて、大変なんすよぉ!」

「はあ? 何が大変だっていうんだよ」

 鳥谷先輩に凄まれた舎弟さんは泣きそうになりながら話を続けた。

「実はオレ……昨日、駅で見ちゃったんすよ! あいつが戻ってきてるのを……!」

 あいつ……?
 思い当たるフシがなくて俺は首を傾げる。
 あっ、もしかして花ぞ――

「あの男……馬飼学園四天王で最強の男、月光雷鳳つきみつらいほうが帰ってきたんですよぉ!」

 全然違ったわ。





「わたしは別にあいつが最強だなんて認めてないけどな! まあ、対外的な評価がそうだってのは知ってるし、結構……そこそこ紙一重でわたしより強いのはそうだけど……」

 テストが終わった後、将棋ボクシング文芸部のメンバーは何となく部室に集まっていた。

 溜まり場っぽい感じだから、自然と足が向いちゃうんだよな。

 鳥谷先輩は今朝の話題を蒸し返しながら不平を漏らしている。

 唇を尖らせて椅子の上で上体を前後に揺らす姿はちっちゃい子供が拗ねているようでどこか微笑ましい。

「ねえ、その月光って人、ずっと学校に来てなかったのよね? 一体、今までどこで何をやってたのかしら?」

 結城優紗がもっともな疑問を口に出す。

「そうっすね、なんかキャリーケースとバックパックを背負ってて……どっかに旅行でも行ってたんじゃないかなぁって出で立ちでしたよ」

 今日のお茶汲み係は朝、鳥谷先輩と俺に報告をしにきた舎弟さんであった。

「旅行? 一学期を丸々休んでまで旅行って、普通そんなことするもんか……?」

 俺からするとありえないことなんだが。

 出席日数とかテストとかぶっちして旅行って進級できないじゃん。

「うーん、でも、あいつは少しおかしいからなぁ……」

「そうだな、あの男は常軌を逸している。彼奴ならさもありなんといったところだ」

 鳥谷先輩と風魔先輩、この二人がそこまで言うのか。
 ん……?
 風魔先輩だって?

「月光が帰ってきたとなれば、ほぼ間違いなく君に勝負を持ちかけるだろうな」

 開かれたサッシの向こう側に風魔先輩が立っていた。

 当然な顔で外から会話に参戦してきてるの何なの……。

「風魔先輩……」

「窓が開いていたのでな。部屋の中に失礼してもいいだろうか?」

「アッハイ」

 俺が頷くと、風魔先輩はドアを開けてスムーズに入ってきた。

「どうしてうちの部室に……?」

 そこはかとなく怖いなぁと思いながら俺は訊ねる。

「月光は……あの男は弱者には興味がないが、少しでも強いと噂になった者には片っ端から戦いを仕掛けにいく危険な性質の持ち主だ。恐らく、入学してから一気に名を上げた君は狙われてしまうだろうと思って警告に来た」

 風魔先輩が部室の椅子に座りながら言う。

 凜とした雰囲気の容姿のせいか、ただ腰掛けただけなのにその所作には気品のようなものが感じられた。

 ああ、武道とかやってて姿勢がいいせいでもあるのかな?

「おい、何が警告だ! そういうのはわたしが教えてあげるからお前はいらないんだ! しんじょーの先輩はわたしだぞ!」

「私も彼の先輩だが? ついでに言えば君の先輩でもある」

「わ、わたしは部活においても先輩だ! 繋がりがダンチなんだ!」

 張り合う鳥谷先輩。

 彼女の中で先輩風ブームが来ているのだろうか。

「ならば私もこの部に入ろうか? 確か、馬飼学園の校則では学期の途中からでも入部は許されていたはず」

 風魔先輩が恐ろしいことをのたまいだした。

 鳥谷先輩が論破して断ってくれないと、俺は放課後にひたすら不浄の穴についての布教をされてしまうかもしれない。

「悪いな、風魔、この将棋ボクシング文芸部は六人用なんだ!」

 …………。

 これは無理か……俺が諦めていると、

「むむ、そうなのか……? そういうしきたりがあるのなら致し方あるまい……」

 鳥谷先輩の適当な言い分で納得する風魔先輩。

 この人、見た目に反して簡単に良くない人に騙されそうだね……。

「別にそういう決まりはないんだけどなぁ」

 黙々と棋譜並べに勤しんでいた丸出さんが静かにツッコミを入れる。
 ホントだよね。
 今年、人数不足で合同になって誕生した部にそんなルールあるわけないのに。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...