21 / 126
第一章
チンピラと徒手格闘2『普通に年上です。本当にありがとうございました。』
しおりを挟む=====
「すいません。この町の奴隷商の場所を訊きたいんですけど」
ギルドで屈辱を味わった俺だったが、気持ちを切り替えて奴隷商について調べることにした。
適当に声をかけた道行くおっさんに奴隷商の所在地を訊ねてみる。
「奴隷商の場所かい……?」
声をかけたおっさんは俺と目が合うと視線をスッと下に落とす。そして、
「あんたまさか……」
おっさんは声を震えさせながら顔をしかめた。なぜだ?
奴隷の話をストレートに切り出したのがまずかったのかね。
通りすがりの他人に軽々しく訊ねるには不適当な話題だっただろうか?
「…………」
おっさんは場所を教えてくれたものの、終始けったいそうな目で俺を見ていた。
去り際にも『まだ若いっていうのにねぇ……』と表情を曇らせていた。
理由は知らないが、どうやら彼に悪い印象を与えてしまったようだった。
まあもう二度と会わない赤の他人だし、気にしない方向で行くとしよう。
俺はおっさんに訊いた場所に向けて足を踏み出した。
「さっきのおじさんにいろいろ勘違いされちゃったみたいだねぇ?」
人々とすれ違いながら町中を歩いていると、おかしそうに響く陽気な笑い声がした。
未だに俺の腰にしがみついている平たいビッチだった。
「勘違いって何の話だ?」
意味深な台詞の意図を訊ねると、平たいビッチは『別にぃ?』と勿体ぶった態度ではぐらかして笑い声を漏らす。
しかし、こいつはいつまで付き纏ってくるつもりなんだろう?
俺に何やら要件があるみたいだったが。
興味がないのでこちらから訊ねたりはしないけど。
「むぅ……」
俺が無反応でいると平たいビッチはつまらなそうな声を上げる。
「……お兄さんってさぁ、女慣れしてる感じあるよね。何をしても動じないっていうか、達観してるっていうか。やっぱりエルフってモテモテなの? 人間の女を食いまくってるからそんなに冷静なの?」
「…………」
平たいビッチは俺が振り落とさないのをいいことに再び調子に乗っていた。
「俺は今朝里を出てきたばかりだ」
「じゃあまだ未使用なんだね」
こいつの話は下劣なものばかりだった。
町の人間がこんなやつばかりでないと信じたい。
「エルフのお兄さんは奴隷に興味があるの? 奴隷って高いし、養うのも割と負担になるもんなんだよ?」
奴隷商の店に向かっている途中、ウエストバッグのようにくっついたままの平たいビッチがまともな忠告してきた。
見当違いではあるが、こいつもこんなことを言えるんだなと俺は密かに驚嘆した。
「奴隷を買うつもりはないよ。だが、奴隷を扱っている連中には興味がある」
知り合いが売られていたら買い取ることも考えるが、基本はノータッチでいくつもりだ。
それよりも黒幕の実態をよく調べて、必要なら残らず轢いておかないといけない。
「奴隷商でバイトでもするの? ノコノコ出向いたら逆に奴隷にされちゃうかもよ?」
「お前の心配は無用だ」
「お兄さんのために言ってあげてるのになぁ」
……そういえばこの女、なんて名前なんだろうな。覚える必要なんてないんだけど。
「というか、さっきからそのお兄さんってなんだよ。そんなに年は変わらんだろ。むしろお前のほうが年上じゃないのか?」
「えー? そんなわけないじゃん。わたし、十六歳だよ?」
何気なく年齢の話を振ると平たいビッチはケタケタ笑い飛ばして言った。
普通に年上です。本当にありがとうございました。
「俺は十五歳なんだが」
「えっ、年下!? エルフって外見と実年齢が伴わない種族って聞いてたんだけど!?」
「十五歳の時は普通に十五歳だよ。人間と違って年を重ねて行けば乖離していくけどな」
見た目と年齢が釣り合わないのはエルフの成長が人と比べて遅いわけではなく、若い期間が長いだけのこと。
ただ、精神の老成は人間よりも緩やからしいが。
見た目に引っ張られてそうなるのかどうかは知らない。
「うっわー。じゃあ三十年後はわたしだけおばさんになってるのか。嫌だなぁ……」
ため息をついて陰鬱そうに呟く平たいビッチ。
「心配するな。その頃には俺とお前は無関係になっているから比べることもない」
「随分冷たい反応をするんだね?」
「…………」
なぜそういう対応をとられるのか、胸に手を当てて自分たちがしたことを思い出してみろと言いたくなった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる