トラックエルフ ~走行力と強度を保ったままトラックがエルフに転生~

のみかん

文字の大きさ
56 / 126
第二章

幼女と出立1『わたしは何もミテイナイ……』

しおりを挟む


 便箋を懐にしまい、溜息を吐く。

 軽い息抜きでクエストを受けたらとんでもないものを拾ってしまった。

 テックアート家に発見されたって、これ、きっと奴隷商に関係するやつだよな……。

 なぜこんなところに無造作に落ちていたんだ? 周りには誰もいないようだし。密書っぽいのに扱いが雑すぎるだろ。

 しかし王立魔道学園には奴隷商の協力者がいるのか。

 学園には少しだけ興味があったが、こういう形で関わってくるとは。

 この手紙は御令嬢に見せるべきだろうな。

「……お兄さん、何が書いてあったの?」

 リリンが顔をひょっこり下から覗かせてくる。

「知りたいか?」

「う、うーん。やめとこうかな?」

 何かを察したらしく、リリンはあっさり引いた。そうだな。そうしたほうがいい。知らないほうがいいことが世の中にはあるのだ。

「さて、と……」

「ねえ、本当に開けちゃうの?」

 リリンは馬車の中身にビビっているようだった。

 大丈夫だよ。多分、お前の思っているようなもんは入ってないから。

 ……その代わり、他の胸糞悪いものは入ってるかもしれんが。

 本音を言えば、俺だって見たくない。

 だが、確認しないで帰るという選択肢は選べない。

「リリン、ちょっと後ろ向いててくれ」

「うん、わかった」

 リリンは素直に後ろを向いた。そして、耳を塞ぎながら

「わたしは何もミテイナイ……わたしは何もキイテナイ……見たのはエルフのお兄さんだけ……だから関係ナイ……」

「…………」

 ある意味、清々しい生き様だな。いろんな意味で感心した。




「ああ、くそ、やっぱりかよ……」

 馬車を開けると、中にいたのは衰弱した奴隷たちだった。

 また、捕まっていたのはエルフだけではなかった。

 ダークエルフに加え、牛のような角が生えた少女、翼と角、さらに鱗に覆われた尻尾が特徴的な……うわ、幼女といっていい歳の子まで……。

 くそったれが。なかなか手広く商売をやっていやがる。

 だが馬車の中には俺の里のエルフはいなかった。

 ほっとすべきなのか、残念に思うところなのか。複雑なところだ。

「お兄さん、終わった?」
「ああ、いいぞ」

 とりあえず扉を閉める。

 見たところ奴隷たちは首輪の効果でジンジャーと同じく意識が曖昧になっていた。

 この場で解放してもいいが、森の中でパニックを起こされても困る。

 となれば、まずは領主のところに連れて行くのがいいだろう。

「……ねえ、なんで馬車を持ってこうとしてるの?」

「助けるためだ」

「お兄さん。馬車の中身って……」

「聞きたいか?」

「……やめとく」

 大体察してるんだろ? もうあきらめろよ、リリン。




 俺は奴隷たちを乗せた馬車を引っぱって森道を歩いていた。

 馬ではなく、エルフである俺が大きな馬車を引いている。

 傍から見ると線の細いエルフが虐げられているような光景だ。

 御者台に座るリリンはさしずめ悪の女主人といったところか。

 そんな悪の女主人が心配そうに訊いてくる。

「お兄さん、重くない?」

「全然問題ないぞ」

 俺の鍛え上げた肉体とトラック相当の脚力はこれしきで音を上げたりしない。

「はへぇ。最近のエルフってすごいんだねぇ……」

 リリンが驚きに舌を巻く。

 彼女にとってエルフの基準が俺になりつつあるようだった。

 どうか一生そのまま勘違いしていてほしい。

 イチイチやることなすことに突っ込みを入れられたら面倒だからな。


しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...