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第二章
盗賊と二号さん2『これがプロのメイドってやつなのか……?』
しおりを挟む「おい、他にも誰かいやがるぞ!」
「赤い髪の男とガキだ! ガキは女だ!」
「男も、ありゃエルフだぜ! 捕まえりゃ高く売れる!」
…………。
盗賊たちに気づかれた。
ゴブリンやオークと違って相手は人間だもんな
いくら知能が低い盗賊とはいえ、ちらちら顔を出していれば発見されるのは当然だった。
メイドと騎士もこちらを振り向く。
「むぅ、エルフだと? 困ったな……」
「守り切るのが難しくなりそうですね」
騎士とメイドがひそひそと語り合う。
俺たちの身の安全も気にかけてくれるとは……。
やはりそれだけ余裕があるということか?
「俺たちにはお構いなく。自分の身は守れますので」
足手まといになるのは避けたかったので俺は気にしないよう告げた。
命がかかってるんだから全力で戦ってほしいじゃん?
「敵意はなさそうだな」
「彼らのことはいないものと考えてよさそうですね」
あれ? 困ったっていうのは俺を敵だと思って言ったの? うわ、恥ずかしい……。
自意識過剰じゃねーか。心配してもらってると勘違いして痛いこと言っちまった。
「グレン、おなかすいたの?」
リュキアがちょっとだけ落ち込んだ俺の背中をポンポン叩いて慰めてくれる。
優しさが羞恥心を刺激した。やめて、ここはスルーするところだから……。
まあ、幼女にはわかんないよな。
切り替えて戦況を見守ろう。果たしてどうなるか。
馬車の横に佇んでリュキアと高みの見物に回る。
「ジェロム、右端の四人はあなたがやりなさい」
「あいよっ」
メイドの女が騎士の男に向かって指示を出した。
ん、騎士が四人? じゃあ残りは誰が……。
「ニゴー家の馬車に手を出したことを後悔なさい」
メイドが冷たく言い放った。
メイドの女は小型のナイフを両手に持ち、低い前傾姿勢で盗賊たちに向かっていった。
「なんだぁ、この女!?」
「早えぞ!?」
「叩き潰せ!」
盗賊たちは這いずるように急接近するメイドに武器を振り下ろそうとする。
メイドは盗賊たちの目前で素早く体勢を起こし、また沈める。
盗賊たちはその動作に怯んで腕を高く構えたまま硬直させた。
激しい上下の変化に盗賊たちはメイドの姿を一瞬だけ見失ったのである。
その僅かなラグが彼らの命取りになった。
再び姿勢を低くしたメイドは流れるような動きで盗賊たちの懐に潜り込み、次々と喉元に刃を突き立てていった。
「うげっ……!」
「ぐへっ……!」
「あぱっ!」
「ひぎぃ!」
「あがっ……」
仲間の死に反応する暇もなく刈り取られていく盗賊たちの命。これは戦いではなく作業と称するべきだな……。それくらい、メイドと盗賊たちには実力差があった。
「ぐぎゃあっ!?」
最後の一人を顎への回し蹴りで気絶させ、彼女の戦闘は終わった。
呆気ないもんだったな……。
「さすがだな、サラス。元腕利き冒険者の腕は錆びついてねえ」
自身が引き受けた盗賊の首をすべて跳ね飛ばし終えた騎士がメイドに声をかけた。
涼しい顔で剣を鞘に納める彼の足元には無残な姿になった盗賊たちが転がっていた。
この男も強い。まるで苦戦した様子がない。
「以前より低い姿勢を取るのがきつくなりました。そのせいで刃を入れる角度が甘くなって時間が無駄にかかりました」
眉間にシワを寄せ、メイドはいささか不満そうに答える。
いやいや、騎士の倍近い敵を引き受けて同じ時間で片づけるメイドって何者だよ。
レグル嬢のところにいる女騎士やデリック君では彼女のようにはいかないだろう。
俺が感心して眺めていると。
「ふひゃひゃ! 魔法使いが隠れているとは思わなかっただろ! こうなりゃ貴族の娘だけでも貰っていくぜぇ!」
敵はすべて片付いたと思いきや、どこからか下種な男の声が響いてくる。
辺りを見れば、若干離れた位置からローブ姿の男が馬車に向けて火の玉を放ってくるところだった。
まだ隠れてたやつがいたのか。
「おっと、危ない」
俺は飛んできた火の玉を手で払い落とす。
……うわ、熱ッ! 当たり前だけど。咄嗟に手が出ちまったぜ。
攫うつもりなのになんで攻撃するんだよ。バカなのか?
素手で弾いた俺も大概かもしれんが。めっちゃ熱いよ。
「くたばれ賊め!」
「ぐぎゃ!」
魔法を放ってきた男は騎士によって斬り捨てられた。
ノコノコ出てこなきゃ死なずに済んだのに……。
俺はヒリヒリする手を回復魔法で癒す。さあ、治れ。
「ご協力、感謝します。おかげでお嬢様に危害が加えられずに済みました。心よりのお礼を申し上げます」
手の痛みを取り払っていると、メイドがいつの間にか傍に立っていた。ハッとするほど綺麗な角度で頭を下げられた。
気配を悟られずに接近。これがプロのメイドってやつなのか……?
「ああ、どうも……。あんたらは貴族なのか?」
「はい。私とそこの騎士、ジェロムは貴族の家にお仕えしております。」
……なんとなくだけど、彼女たちなら俺が何もしなくても馬車の主を守れていたんじゃないかな。
立て板に水のように答えたメイドを見て、そんなふうに思った。
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