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第二章
盗賊と二号さん4『やれやれ、一仕事しちゃったぜ。』
しおりを挟む「しゃーねえな。オラ、立てよ。アジトまで連れてけ」
ジェロムは盗賊を無理やり立たせて案内役に駆り立てる。
エルーシャにいくら言っても聞かないと諦めたようだ。
「グレン、あのひとたち、どこいくの?」
おんぶされたままのリュキアが半死の盗賊になぜか興味を示した。
「ああ、盗賊の仲間をやっつけに行くんだってよ」
「アレとおなじのが、ほかにもいっぱいいるの!?」
アレ呼ばわりとか何気に辛辣な幼女である。
「いるだろうけど……なんでそんなに食い気味なんだ?」
「グレン、わたしたちもいこう!」
「は?」
謎のテンションアップをしたリュキアに俺は困惑せざるを得ない。
「いや、行く理由がないんだが……」
「いきたい! いきたい!」
背中でグラインドして暴れるリュキア。おいおい、こんな聞き分けのない子だったか?
「……しょうがねえなぁ」
俺は根負けする形でエルーシャたちに同行を申し出ることにした。
まあ、車ってのは運転手の望む先へ運ぶものだし?
『……じゅるり』
耳元で聞こえた、御馳走を前にした舌なめずりのような音は気のせいだよな……?
「なるほど。グレン様は里の風習で世の中を見て回る旅をしている最中だと」
「ああ、その通りだ。いろいろ厄介ごとを抱えてて、それどころじゃないんだけどな」
俺たちはエルーシャ嬢の一行と盗賊の拠点に向かっていた。
まあ最初は同行を拒否されてしまったのだが、そこは俺の巧みな交渉術で覆した。
『これはお嬢様の私用ですのであなた方がついてくる必要はないのですよ?』
『いや、うちのお嬢さん(リュキア)がどうしても行きたいって聞かなくて』
『しかし、戦闘中にあんたらは守れないぜ? 俺らはお嬢の護衛だからな』
『大丈夫だ、俺も結構戦えるから』
そう言って俺はそこらにあった木をいくつか薙ぎ倒して頑強さをアピールした。
実力のわからないやつに助力を申し出られても不安だろうしな。
『すげえな……』
『これはエルフの魔法によるものなのでしょうか……?』
『わあ、なんかすごい!』
彼女らは三者三様の反応を見せ、最後には首を縦に振って同行を認めてくれた。
わざわざ自然破壊した甲斐があったというものだ。
やれやれ、一仕事しちゃったぜ。
里の大人にバレたら怒られそうだけど。
そんな感じで――。
「わははー!」
「ふんふんふーん、じゅるる……」
先頭を行くのはエルーシャとリュキア。
彼女らは木の棒を振り回しながらワイワイ仲良く並んで歩いている。
遠足気分か。
ちなみに木の棒は俺が倒した木からとったものだ。
次に続くのが拘束された盗賊と騎士ジェロム。
最後尾が俺とメイドのサラスである。
馬車は後から来る他の騎士が拾うらしいので放置していった。
「しかし、驚きましたね。人間を疎むエルフにそのような風習があったとは」
「俺の里では人嫌いのエルフなんかいなかったんだがなぁ……」
普通に人間と浮気してるアホもいたし。
たびたび出てくる認識の違いはホントなんなんだろ。
王都周辺で流行ってる考え方なのか?
「エルフでも地域によって考え方が異なるものなのですね」
サラスはそういう方向で納得することにしたらしい。
俺も考えるのが面倒になったのでまあそんなとこだろうなと思うことにした。
にしても、サラスたちはやたらと落ち着いているよな。
一応、これから盗賊の一団を相手取るはずなのに。
そちらに関してはまったく憂慮していない様子だ。
大した肝の据わりようだが……。
「なにか気になる点でも?」
疑問が顔に出ていたのだろう。
サラスが怪訝そうに訊ねてきた。
「いや、知り合いの伯爵家の騎士よりもあんたらのほうが強そうで不思議だなと」
別に隊長やデリック君たちを貶すつもりはないが、サラスやジェロムの実力は彼らを遥かに凌いでるように見えた。
戦いを前にした態度や風格がなんか違うもん。
子爵って確か貴族の階級だと伯爵より下だったよな?
家の格からすると普通は逆だと思うんだけど。
「何も不思議なことじゃねえさ。爵位がそのまま手持ちの騎士の練度に直結するとは限らねえんだぜ? 文官の家なら騎士の育成にはそこまで力を入れないだろうしな」
話を聞いていたのか、ジェロムがこちらを向いて言ってくる。
「そうですね。特にニゴー家は武闘派の貴族ですから。兵の規模では伯爵家に及びませんが、その質は国内有数と自負しております」
「……武闘派だとメイドも強いの?」
俺はジト目でサラスを見やる。
「普通のメイドはそうでもありません。私はお嬢様の専属メイドですので……」
それって、そうでもない程度には強いってこと?
……武闘派貴族ってすごいんだな。
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