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第二章
王都と門番5『全部魔法、全部全部、魔法のせいなのね。』
しおりを挟む「ふあっはっあっはっは!」
「ぐ、ううう……」
俺は脇腹を抑えてうずくまった。いくらトラックのボディだといっても、硬いものをぶつけられたら表面に傷はつく。
相応の衝撃だってあるのだ。特に脇腹のような脆い箇所は。どういうことか? 要するに結構痛いんだよ! 致命傷にはならんけどね。
青年門番は俺が苦しんでいるだけということに気が付いたのだろう。槍の先端をまじまじ見て高笑いを止めた。
「……待て、なぜ鎧も着ていないのに槍が貫通していない?」
「そりゃしねえだろ」
俺は涙目で立ち上がる。ちくしょー。魔法の風は大して痛くなかったのに。物理攻撃だと耐久度が下がるのか?
この身体は矛盾の塊みたいなもんだから、いろいろとわからないことが多い。何でもかんでも受け止めるのはやめたほうがいいな。
「そうか、エルフの魔法か……小賢しい!」
また魔法のせいということで納得してもらえた。
全部魔法、全部全部、魔法のせいなのね。
「小手先の力なんぞ、オレの鍛え上げた肉体と技術で粉砕してくれる!」
槍を構え直し、青年門番は次なる攻撃の準備に入った。
技術は小手先じゃないんかい……。もうこいつに突っ込んでいたらキリがねえ!
「鍛えた肉体なら俺だって負ける気はないぞ――」
俺は息を整え、丹田に力を入れる。俺はエルフでありながらトラックでもある。
人を運ぶため、野山を駆け巡り、幼き日々をトレーニングに費やしてきたのだ。
レグル嬢の家の人間ならうっかり撥ね飛ばして殺してはいけないだろう。
スピードは抑え気味で行こう……。
「ふしっ!」
バゴォォォォォン――ッ!!!!
速度がフルスロットルじゃなかったせいか。
それとも青年門番の反射神経がすごかったのか。
「どわあああぁああぁぁっ――!?」
俺は叫びながら門をぶち壊していた。
突撃は寸前で躱され、俺は停止の加減を制御できず、テックアート家を守る鉄の門にぶつかってしまった。
門の柵はひしゃげて粉砕。
なおも勢いは止まらず、俺は敷地内をゴロゴロ転がっていく。
くっ、うっかりダイナミック来訪してしまった。
服についた埃を払い落としながら立ち上がって周りを見る。
この家、庭広いな。レンガが敷き詰められた庭園。
噴水までついてるとか金持ち感すごいわ。
「な、なんだ貴様は……!? 鋼鉄の門を突き破っただと……」
「お前が避けたせいで門を壊しちゃっただろうが!」
狼狽する青年門番に一喝。これ、俺のせいになんのかな。後から請求されたりしないよな。
謝りはするけど賠償はできないぞ。ない袖は振れぬ。
絡まれた結果なんだから、この門番の給料から引いてくれることを願う。
「グレン、がんばってぇ!」
リュキアはキャッキャと跳ねながら声援を送ってくる。
この状況を楽しんでるとかマジかよ。逞しい幼女だな、お前はホント……。
「くっ、化け物エルフめ……こうなったら……」
冷や汗を垂らす青年門番。さて、彼はここからどう出るか。
窺っていると、彼は無邪気にはしゃいでいるリュキアに視線を移した
「ん、お前まさか……」
そして青年門番が俺ではない相手の方向に一歩踏み出そうとしたその時である。
「おいコラ! 貴様、何をやっておるかぁ――ッ!」
屋敷のほうから焦ったような様子で鎧を着た中年のおっさん騎士が怒鳴り声を上げながらドタドタ走ってきた。
援軍か? 一人二人増えても大局に変わりはないが、面倒ではあるな。
青年門番は安堵したような顔になり、向かう方角を改めた。ふむ、気の迷いだったなら見なかったことにしておくか。
……あの中年騎士には一応、事情を説明するところから入ってみようかね。
デリック君や女騎士みたいな話の通じる人かもしれないし。
そうあってほしいと願いながら俺は騎士が来るのを待った。
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