69 / 126
第二章
王都と門番4『なんでこんなに喧嘩腰なんだ。』
しおりを挟む門番の青年は書状に目を通すと、敵対心のこもった表情を向けてきた。
俺は思わず間の抜けた声を上げてしまう。
「なぜエルフがレグルお嬢様の名前で書かれた家紋入りの書状を持っている?」
「いや、それは……」
「怪しいな……さては貴様、書状を捏造したな!」
門番は俺の説明に言葉を被せてシャットアウトすると、目を吊り上げて凄んできた。
でえ、ええ~。そういう面倒臭い感じですかぁ? なんでそうなるの?
「貴族の証文を偽造することは情状酌量の余地なく重罪だぞ! この下賤なエルフめ!」
門番の青年は口から唾を飛ばしながら恫喝し、書状を地面に叩きつけた。
「…………」
レグル嬢、話が違うじゃんよ。この紙を見せれば大丈夫って言ってたじゃん。余計ややこしくなってるんだけど?
「ねーグレン? まだ?」
「ああ、もうちょっと待ってな」
俺はリュキアを宥め、門番の誤解を解こうとする。きっとどこかに行き違いがあるはずだ。
「ちゃんと御令嬢本人からもらったんだって。ニッサンの町で別れたエルフのグレンだよ。聞いていないか? もう彼女は帰ってるんだろ?」
「貴様など知らんし、どこのどいつとも知れない馬の骨にお嬢様が在宅しておられるかを教えるわけにいかん。そもそも、どこで伯爵家の御令嬢であるお嬢様がエルフなんかと関わり合いになるというのだ? そこがまずありえないだろう。上手くやりたいのだったらもう少しマシな嘘を考えるべきだったな!」
青年門番は取り付く島もなく鼻を鳴らして笑った。この野郎……。
さっきから黙って聞いてりゃ、下賤だとかエルフなんかとか、エルフを見下したようなことばっか言いやがって……。
主を守るために土下座までしてきた女騎士と同じ家に仕える者とは思えない。
隊長やデリック君たちにあった謙虚さがこいつにはまったくないようだ。
俺はこいつの気に障ることを何かしたのか……?
なんでこんなに喧嘩腰なんだ。
「あのさ、この家の門番は書状を持って訪ねてきた客をいちいち疑ってかかるのか?」
いい加減面倒臭い。俺の口調も多少ぶっきらぼうになる。
「ふふん、まあ普通のやつなら通していただろう。だがオレは他の連中とは違う。敵を見分ける嗅覚っていうのかな……そういう野生の勘に優れているんだ……」
ニタァと鼻の下を擦って笑う門番。おいおい、完全に浸ってるぞ。自分を有能だと勘違いして世界に入り込んでしまっている。もしかして気に入る気に入らないとかじゃなくて、こいつがアホなだけだったのか?
「もういい。話にならないから、とりあえず御令嬢をここに直接呼んでくれ。もしくはデリック君とか、女騎士……ええとエヴァンジェリン? とか、隊長とか」
「ほざけ! お嬢様は先ほど帰られたばかりでお疲れだ! 大体、敵対貴族の暗殺者を主君筋の人間に会わせるわけないだろう!」
オイいぃ、お嬢様のいるいない言っちゃってるぞぉ! さっき教えるわけにいかんって言ってただろうが!
しかもいつの間にか俺は他家の放った暗殺者に仕立て上げられていた。
「貴様なぞ、デリック様やエヴァンジェリン様、隊長殿が出るまでもない!」
とうとう青年は所持していた槍の先端を俺のほうに向け、戦闘態勢に入ってしまった。
まいっちまうぜ。
「ふわぁ……」
リュキアが退屈そうに欠伸をする。この幼女、なかなか神経太いな。盗賊を前にしても平然としてたし今更かもだが。
はあ、俺も疲れたよ。
レグル嬢、これからは書状に『本物です』って書いておいてくれ。ああ、家紋がそれを証明するんだっけ? それを疑われちゃどうしようもないな。
「グレン、あんさつしゃなの?」
「違げえよ……」
この門番はリュキアの教育に悪い男だ。
むやみやたらと人に言いがかりをつけてはいけないんだぞ。
反面教師にするなら最高だろうけど。
「ここでオレが優れた騎士だということを証明して、一気に出世街道を駆け上がってやる! 地元で十年に一度の天才と謳われたオレの槍術を食らって手柄となれ!」
エイヤーと門番青年が特攻してきた。その目は野心に満ちて光っていた。
恐らく彼の頭の中では機転を利かせて奸計を見破り、屋敷に入り込もうとした賊を成敗する自分の姿が浮かんでいるのだろう。
偽物を見破ったとなれば確かに大手柄だが、俺の書状が本物だってことを疑いもしない。
エルフだからありえねーって決めつけてる。すごい勝負をかけてきたな。
本物だったときのことを考えていないのだろうか。きっとめっちゃ怒られるぞ。
その思い切りの良さは好感を持てるが、この場合は馬鹿としかいいようがない。
迫りくる槍の先端。よく見て躱して……あれ、見失った! 青年門番による足捌きや体重移動、槍の動きなどは巧みだった。
フェイントを加えられ、俺はなす術なく棒立ちのまま攻撃を受けてしまう。
「討ち取ったりぃ!」
「あ、イテーッ!」
ガツン。と槍が俺の脇腹を小突いた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる